野球少年が美術大学へ進学──諦めなかったのは周囲の人々の支えだった

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▲高校時代の柏木

柏木は、3人兄弟の末っ子で幼いころから2人の兄と一緒にスポーツをずっと続けていました。2人の兄が先に習っていた野球、水泳のほかに、体操にも取り組み、関東大会に出るほどの成績だったと話します。 

柏木 「兄の影響をたくさん受けて育ち、小学校から野球、水泳、体操を習っていて、とくに野球は高校3年生まで続けていたので、今の自分の性格に通じている部分があると思います。

体操は兄弟で唯一、自分の意志で始めたので、自分自身で探求し、結果も残せていたと感じていたのでとても夢中になっていたのですが、中学生になってからは野球一本にしました。

試合に勝ったとき、負けたときには、本気で嬉しかったり、悔しかったり……。個人競技の体操や水泳では味わえない感情を仲間と共有できる体験ができ、みんなで切磋琢磨していた日常は今考えると特別な日々で、最高の青春でしたね」

高校3年生の夏まで、野球をやり切った柏木。やっと進路を真剣に考え始めた柏木が目指したのは、美術大学でした。

柏木 「部活を引退してから自分のやりたいことはなんなのか、振り返って考えたときに、思い出したものが、高校2年のときに起きた東日本大震災で、4名の有名な建築家が立ち上げた『みんなの家』プロジェクト。

被災者たちへ向けて“また集う場”を町の人々と造ったという記事を読み、建築としての表の美しさだけではなく、プロセス根本からリスペクトを感じました。そして、上手くはありませんでしたが絵を描くことが好きだったんです。

当時の担任の先生は画家としても活動していて、アトリエを見せてくれたり、学校生活の中で時間があれば美術や芸術の美しさに触れさせてくれたりしました。高校3年生の夏、進路の三者面談で母に話すと、『やりたいことならなんでもやってみなさい』と背中を押してもらったこともあり、一歩踏み出すことを決めました」

高校3年生の夏に、美術大学への進学を志した柏木。部活引退後は、高校の放課後1人で残ってひたすらデッサンを描き続けていたと話します。

柏木 「担任の先生の全面協力のもと、受験のためにひたすらデッサンの練習をたった1人でしていましたが、孤独はまったく感じませんでしたね。“高校球児の坊主頭でデッサンを描く”揶揄いなのかちょっかいなのか、仲間が私を見に来てくれたり、先生は忙しい中時間を割いて、夜な夜な私のデッサンの講評をしてくれたりしました。

そのおかげもあり不安な気持ちよりも無我夢中で……。気づけば受験当日。そんな感じでした」

運命的な出会い。ビジョンに共感し、この人についていきたいと思った

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▲大学時代、同学科の仲間と

2013年4月、柏木は武蔵野美術大学へ現役合格を果たします。

柏木 「やり切った中で、無事に入学が決まったことはホッとしました。ただ、入学してからもとても大変でしたね。幼いころから芸術や美術に触れてきていた友人と、約半年前に足を踏み入れた私。

コンプレックスを感じたこともありましたが、これも一つのアイデンティティだとポジティブに捉え、受験の続きのようにたくさんのコト・モノに触れ、たくさんの人々とコニュニケーションを取る。そんな前向きな毎日でした」

そんな彼が大学時代通っていたゼミで運命の出会いを果たします。

柏木 「片山 正通さん(インテリアデザイナー、武蔵野美術大学空間演出デザイン学科教授)のゼミに通っていて、ゼミ長も務めていました。その際に卒業制作課題の特別講師としてお越しいただいた横川さん(株式会社ウェルカム代表取締役:横川 正紀)と出会い、自分の作品を見てもらったんです。

なんとなく格好のいい建物(模型)ばかりを作っていたわれわれ学生に、『店づくりは街づくり』と横川さんは話をしてくれました。

その考え方が自分の中にスッと入ってきたんです。建築はハード(外側)だけではなく、ソフト(内側)から建物ができていったとき、その一軒の建物から集う人々の交流が生まれ、街が彩られていく──という考え方に、感銘を受け、私がやりたかった空間や建築って、こういうことなのかもしれないと思い至り、これまた気づけばウェルカム一本。すぐにエントリーしていました」

販売職からBtoBへ──社会人になっても自分らしさを追いかけ続けて

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▲CIBONEにて、イベント時の集合写真

選考会におけるウェルカムの第一印象を次のように語る柏木。

柏木 「説明会では人事の担当メンバーがフランクに出迎えてくださり、年齢や性別関係なく楽しんで仕事に取り組んでいるような雰囲気で居心地が良いなと感じたことが初めての印象でした。この印象は、選考が進んでも変わることはありませんでした。働いているメンバーが話す言葉や、会社が大切にしているビジョンに心から共鳴していったんだと思います。

ウェルカムで自分らしさを磨きながら、自分のことを整理して、ウェルカムのために、自分のために、ここで働きたいと感じたんです。その時点で選考は一つしか受けておらず、もし不採用の連絡をもらったとしても、もう一回受ける気持ちでした(笑)」

選考を受けながらも自分がやりたいのはマネジメントなのか、お店創りなのか、明確な未来の目標を探していた柏木でしたが、やりたいことを見つけながら自分らしく働けると感じたウェルカムの選考を突破し、入社することを決めました。

柏木 「内定をもらってから、CIBONEで行われた短期イベントの立ち上げにインターンとして携わりました。中に入って現場で働いているメンバーに会って、さらにウェルカムの魅力を感じました。CIBONEは外側から見ているとクールでかっこいい美術館のような場所でしたが、その中で働くヒトは想いの熱いメンバーばかりで純粋にかっこいいなと感じました」

2017年4月、新卒社員としてウェルカムに入社した柏木が最初に配属になった場所はデザイングループのCIBONEでした。

柏木 「入社前ウェルカムのインターンが初めての接客経験だったので、人と関わりながら働いていくのはとても新鮮で、仕事とは思えないくらい楽しかったですね。CIBONEは作家さんとの関わりがとくに強いブランドで、その中でも特に思い出に残っていることはうつわの担当を任されたときに、お取引先様のうつわギャラリーへ、オープニングスタッフとして出張体験をさせていただいたことです。

さまざまな作家さんとの作品を取り扱っているところで、実際に作家さんとも対等にお話して作品への想いを直に受け取ることができた貴重な機会でした。どんな仕事も外側で見ているだけではわからないやりがいや責任があることを知って、お客様に伝える熱量も高くなりました」

CIBONEで、素敵なもの(商品)に囲まれ、感性を共鳴し合える顧客様や働くメンバーと関わる毎日を楽しみながらウェルカムで働いてきた柏木。そんな彼に、転機が訪れます。

柏木 「30歳を目の前にして、もう一度自分がこれから何をしていきたいか考えていたときに、自分自身を違う環境に置いてみようと思いました。

そのタイミングで、ちょうどウェルカムの人事制度『社内公募』で事業開発の募集が出ているのを見つけたんです。2021年の春のことでした。クライアントさんとデザイナーさんやクリエイターさんたちの間に立ってコミュニケーションを取り、この瞬間に存在しないものをカタチにする仕事に夢と魅力を感じて応募することに決めました」

そして2021年7月、事業開発室への異動が決まります。

新卒だからこそトライし続ける──新しい挑戦のその先に

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▲2023年1月現在の柏木

事業開発室に異動してから約1年半。柏木は現在どんな仕事を行っているのでしょうか。

柏木 「主にBtoBの仕事をしています。具体的には、クライアントさんが叶えたいものをヒアリングして、カタチにしていくためのお手伝いです。プロデュース、ディレクション、コミュニケーション設計、デザイン監修など……。

そしてつくるだけで終わりではなく、オープン後のオペレーションやクオリティ監修などのコンサルティングも行います。施設として空間をつくることもあれば、プロダクトもつくり、イベントを企画することもあります。つくることに対しての思いやりや、こだわりの熱い何でも屋さんの部署ですね(笑)。

異動してみて、ウェルカムの中にも本当にいろいろな世界があるなと思いました。プロジェクトによってさまざまな部門のメンバーとコミュニケーションを取るので、その度どのチームにもプロフェッショナルがたくさんいると改めて実感しています」

そんな彼が大切にしている価値観も話してくれました。

柏木 「1つのモノ・コトに対してさまざまな角度から触れて、深く知ることを大切にしています。幼いころは、1番になること。有名になること。が結果の全てだと思っていましたが、父から『大きさや知名度といった目に見えるものだけではなく、奥深い人間になってほしい』と伝えられました。

深さは地上から計り知れないけれど、目に見えないからこそ無限大です。そんな時代の流行りに影響されない深みは魅力にもつながるんです」

表を見ているだけではわからない魅力を残さず、大切に伝えていきたいと話す柏木。

今後目指す目標がこちらです。

柏木 「異動してから1年以上が経ちましたが、まだまだ一人前とまでは程遠いので、 “柏木に任せたら大丈夫”と思ってもらえるような存在になっていきたいと思います。そのためには、組み立てる力、人を巻き込む力をつけてチームにとってかけがえのない存在になっていけるように、今自分にできるコトをがむしゃらに取り組んでいきたいです。

デザイングループから、開発グループに異動したメンバーは、私が初めてです。所属する部門は変わりましたが、目指しているビジョンは変わらず、仕事に取り組めています。日々楽しんで働けているので、キャリアや可能性を広げていくことも目標の1つです。同じように新卒で入社するメンバーが、どんなことにもチャレンジできるように、私自身もチャレンジすることを止めません!」

 力強く未来の目標を語ってくれた柏木の挑戦はまだまだ始まったばかり。今後の活躍に期待が高まります。