サッカー少年が人との触れ合いから気づいた進む道──モノづくりの仕事に魅せられて
幼いころからさまざまな習い事に通っていた長野にとって、最初の成功体験はサッカーでした。
長野 「小学校2年生から始めたサッカーで、レギュラーポジションで背番号の入ったユニフォームをもらえたのが嬉しくて、ひたすら続けていました。現役を引退してからもサッカーへの情熱はあったので、サッカークラブのジュニアユース部門のコーチをしていましたね。そのころから人に伝えたり、触れ合ったりすることが好きでした」
人に教える喜びを実感した彼は、教職の道も将来の視野に入れ大学に進学します。
長野 「教員免許が取れる大学へ進学しました。在学中は周りの刺激を受けて、デザインに憧れを抱くようになりました。実は、大学に入ってからもサッカーは変わらず好きだったのですが、日本の選手が海外でも活躍しているのを見て、海外のカルチャーに興味を持つようになっていったんです。
海外チームのユニフォームのデザインやスタジアムの雰囲気、街全体がスポーツを通じて同じ高揚感を感じられる部分など、本当に些細なことがきっかけでした(笑)」
就職活動の時期には、長野は教職の道ではなく、モノづくりに関わる仕事に興味を持つようになっていました。
長野 「就職活動では広告代理店や印刷会社、商社の企画部門などを中心に受けていましたが、結局アパレル関係の商社に営業職として内定が決まりました。無事に内定が決まったものの、心の中で『この仕事を続けていけるのか?』という疑問が生まれたんです」
自分が後悔しないように考えた結果、モノをつくったり、自分でカタチを残したりすることのできる仕事がしたい、と明確な目標を見つけた長野は、迷わず新しい道へと進みます。
長野 「その会社には申し訳ないことをしましたが、後悔のない選択をしたと思っています。内定を辞退して、インテリアや家具、建築のデザイン・モノづくりを学べる専門学校へ進むことに決めました」
就職、ではなく専門学校への道を選択した長野。不安はなかったと笑って話します。
長野 「将来に対する不安はまったくありませんでしたね。やりたいことを我慢して就職するより、この時間を大切にした方が良い、と考えていました。周りにはもちろん就職した人もいましたが、起業をした人も、海外に行った人も、みんな自分の好きなことをしている人が多かったので、影響を受けていたと思います」
専門学校に通い出した長野は、設計事務所で長期のインターン就職をすることになります。
自分が経験して感じた、モノをつくる仕事のよろこび、そして難しさ
2011年、2年制の専門学校を卒業した長野は、当時のインターン先だった建築事務所へ就職することを決めました。
長野 「設計事務所では、プロジェクトの模型作成や図面・3Dパースなどを作っていました。リアルなプロジェクトで仕事ができるのは楽しかった一方、朝も夜も関係ない職場はとても大変でしたね。
働き始めて2年ほど経って、一連の仕事が一人前にできるようになったころ、自分がつくったモノを、別の誰かがプレゼンをしに行くことに違和感を持ち始めたんです。業務の切り分けで、仕方のないことなのかもしれませんが、人と話したり、伝えたりすることも好きだったので、自分の言葉でお客様に直接伝えたいと思いました」
そのタイミングで、結婚・新しい家族の誕生とライフイベントも重なった長野。新しいことにチャレンジしようと思ったきっかけでもありました。
長野 「一連の業務をやり切ったと思えたタイミングで、転職することを決意しました。デザインに関わることができ、その中で働く人も会社選びの軸として転職活動をした結果、家具・インテリア業界の企業に転職が決まりました」
2013年、北欧輸入家具の販売などを行う企業で販売職として次のキャリアを歩むことを決めた長野。今までとは違う環境でも違和感はなかったと言います。
長野 「とても楽しく働けていましたね。周りのヒトに恵まれていたのもあるかもしれませんが、自分の好きなデザインが近くにあり、日々それについて学び、お客様と直接話ができることにやりがいもありました。
店舗での販売だけではなく、在籍していた約3年の間で新店舗の立ち上げやマネージャー、BtoBの営業と多岐にわたって経験することができ、とても感謝しています」
2015年に北陸へ転居することになった長野。このタイミングを機に、もう一度キャリアチェンジを決意します。
長野 「働いていた会社はもちろん好きでしたが、転居した後も働き続けていくのは難しいと考え、ここは思い切って挑戦してみようと思ったんです」
専門学校時代は設計事務所、前職では家具販売。その次に彼が選択したのは、自然派住宅の販売を行う企業でした。
長野 「家族ができてから、自分のライフスタイルへの考え方も大きく変わりました。都心から北陸に移動して、自然豊かで時間の流れもゆっくり感じられるような場所での生活に変わり、住宅に関わる仕事にチャレンジしたいと感じました。
この会社では、展示場に来場されたお客様に対して接客販売を行う営業職でした。自分が良い、と思ったモノをお客様に提案できることが、やりがいにつながりましたね」
そして、ここで営業と新人教育の経験を3年間積んだ長野は、再び東京に戻る決断をします。
ヒトは企業の最も大切な資源。だからこそメンバーをサポートできる存在に
3年間過ごした北陸を離れ、東京へ戻ることを決めた長野。タイミングを見て関東に戻ってこようと考えていたと話します。
長野 「住宅販売の営業もひと段落ついて、前職時代の上司から『HAY』の店舗を日本に出店することになったと連絡があったんです。HAYは以前から知っていましたし、ゆくゆくは関東に戻ろうと決めていたので一度考えてみようと思いました。
横川さん(代表取締役社長:横川 正紀)のFacebookを見て言葉のチョイスが自分の考えとマッチする部分もありましたし、自分が気になっていたHAYでブランディングビジネスを作っていくというところに惹かれ、2017年の11月にジョインすることに決めました」
HAY TOKYOがオープンしたのは2018年11月。立ち上げまでの仕事内容も話してくれました。
長野 「HAYのマネージャーとして入社することが決まったのですが、立ち上げ期間に入るまではPOP UP STOREの運営全般に携わったり、WS職を経験させてもらったりしました。前職までのいろいろな経験が役に立ったことも多くあるので、いろいろなチャレンジをしてきて良かったと思います」
それから、2018年11月のHAY TOKYOオープンの立ち上げ、マネージャー業務、法人対応やHAY KOBE の POP UP STORE運営とHAY OSAKA立ち上げ、ノンストップで走り続けていた長野に大きな転機が訪れます。
長野 「社内公募制度で、育成企画マネージャーの募集が出ていたんです。その募集を見て、すぐに『これにチャレンジしたい』と思い社内メンバーに話しました。
ヒトは企業の最も重要な資源なので、ヒトに伝える仕事にいつかは就きたいと思っていました。また、これまでデザイングループのHAYというブランドの中で走ってきましたが、新規ブランドということもあり、前例のない中で業務を進めていかなければならないこと、横軸とのコミュニケーションが取りづらいという課題に何度もぶつかってきました。
マネージャーとして他のブランドがわからない悔しさもありましたし、サポートしてくれるような部署が社内にあれば、今後の会社の成長につながるのではと考えていたところでした」
今ある自分の“やりたい”は、過去の自分から託された「希望」
ウェルカムグループに入社して5年。2022年に大きくキャリアチェンジを決意した長野が掲げているミッションを語ります。
長野 「育成企画というポジションなので、全社の育成企画作成そして実施、新入社員研修の企画と実施、動画研修ツールを使ったプロジェクトのマネジメントもできるようになることが目下の目標ですね。
HAYで働いている時に、研修がしっかりとできないままオープンした経験があるので、ウェルカムのメンバーが苦労しないようにと、優秀なメンバーをさらなる成長へ導くためにもつかず離れずのバランスを大切にしつつサポートしたいです」
デザイングループ、そしてコーポレートグループで働く長野から見た、ウェルカムの雰囲気について話します。
長野 「自分の仕事に責任とプライドを持っていて、キャリアの背景も多種多様なメンバーが多いと感じますね。また、仕事プライベートも分け隔てなく楽しんでいる方が多く在籍しているように感じます」
仕事に対して真摯に向き合うメンバーが多いという長野。仕事を進めていく上で大切にしていることを次のように語ります。
長野 「何かを伝える際には、常にその先に“ヒト”がいることを忘れないこと。どんなモノやコトにも、その先には必ずお客様や、つくり手やメンバーが存在します。伝えた先にヒトが居ることを念頭に置いてから話し始めることを心がけています。
また、マネジメント業務ではメンバーがお客様にまっすぐ向き合えるように、まずはそのメンバーの“やりたい”に目を向けること。一人ひとり目指している姿をヒアリングし、その実現のために全力でサポートできるように動いていくことも大切だと思います」
メンバーの“在りたい姿”をサポートする長野。これからどのような存在になっていきたいと考えているのでしょうか。
長野 「ウェルカムは、食とデザインの両軸を走らせている企業として、さまざまなブランドを運営しています。そんな会社だからこそ、それぞれのビジョンを理解して、ブランドごとに寄り添った仕事をしたいです。今よりもチャレンジすることを応援できる土壌をつくり、応援できる存在になりたいですね」
現状の進み方を続けていくことも、時には道が変わることも大切だと話す長野。 “世の中の価値観”をいつも頭に入れておきたいとも話します。
新しい挑戦に向けて進み続ける彼をこれからも追いかけていきます。