料理人の始まりは、アパレルの仕事との兼業で始めたキッチンアルバイト

▲2020年、DEAN & DELUCA 品川店にて当時のメンバーと

2022年現在、DEAN & DELUCA MARKET 東日本エリアシェフを務める村瀬 洋平ですが、彼が社会人として働き始めたのはアパレル企業でした。

村瀬 「アパレルに興味を持ったのは、中学生の頃です。当時流行っていた古着やスニーカーに魅力を感じていたんです。それから本や映画を見て服の作り方を学び始めて、高校卒業後は名古屋の専門学校に進学し、卒業後に就職したのが東京のアパレル企業でした。

そして、アパレル企業に勤める傍ら、兼業で飲食店のキッチンアルバイトを始めたんです。そこで働くうちに自分の気持ちがどんどん料理に向いて、2年ほど働いた後、料理人になろうと決意しました」

そこで村瀬が選んだのが、オーナーシェフとそのご家族で運営するフレンチレストラン。選んだ理由は、雰囲気が良く、素朴でわかりやすいメニューを作っていたからでした。ここで彼は、料理の基礎を学びながら、その楽しさにのめり込んでいきます。

村瀬 「最初は、正しい包丁の持ち方も、野菜の扱い方もわからず、お味噌汁さえも作れなかったんです(笑)。本当に丁寧に教えてもらいながら働いていましたが、そのころはとても苦しかったです。

頭では理解できても、手が動かない。『反復して練習するしかない』と取り組んでみても、わからないことばかり。専門学校で学んでいないので当たり前のことを何も知らないんです。フランス語で書かれているメニューや食材が全然読めなかった時も、しんどいな、と思いましたね」

このレストランで3年間勤め続けた村瀬。しんどくても悔しくても、心を折らずに続けられたのは、自分の成長が感じられたからでした。

村瀬 「20席ほどの小さなお店だったので、料理だけではなく、ホールサービスも同時にやらせてもらったんです。おかげで、お客様の表情や声もダイレクトに感じられました。やはり目の前のお客様の『美味しかった。また来るね』が最高に嬉しいんですよね。

喜んでもらいたいという一心で努力していたから、そういう言葉を努力の結果として素直に喜べるんですよ。この“料理人のやりがいみたいなもの”を毎日体感できたことも、続けられた理由の一つです。

また、ここは厳しかったですが、自分の料理人としての土台を作ってくれた場所。話を聞き、仕事の様を観察して、自分を成長させようと考えてくれるオーナーシェフの姿を目の前で見て、それに応えたいと本気で思っていました。経験がないにも関わらず採用してくれたことにも感謝していますし、恩返ししたいと思っていたことも続けられた理由ですね」

海外で気持ちを一度リセット。気づいた料理への想いから、次の舞台へと進む

▲2013年、フランス リヨンの旧市街にて

フレンチレストランで、前菜からスイーツ、コーヒーの煎れ方まで、基本を学んだ村瀬。次に、キッチンで6〜7名が働く、規模が大きなレストランで挑戦することを決意しました。

村瀬 「ここでも3年間ほど勤めていて、新しいことも学べましたが、いくつかに分かれているポジションをすべて経験したかったので、早く仕事を覚えて次に進めるように必死でした。

ひと通りできるようになった後にふと、“自分には規模の小さいお店が合っている”と感じて、もう一度小さなお店に移りました。そこのシェフがとてもユニークな方で、前々から気になっていたのですが、募集記事を見かけてすぐに電話しましたね」

村瀬の転職活動の軸は、“おもしろそうなコトをやっているのか・自分が学びたいジャンルの料理であるか”の2つ。自分自身の学びたい想いを最優先にしつつ、料理の腕を磨き続けていきました。

村瀬 「当時は休みもあまり取らずに働き続けていて、それはそれで楽しかったのですが、2年ほど働いた時に仕事に疲れてしまったんです。30歳になったタイミングでもあったので、一度仕事を辞めて今後について考えようと思いました。それで向かったのが、海外です。

ベトナム・カンボジア・タイ・ネパール・フランスを、半年間かけて回りました。広い世界を見ながら今後のことを考えていて、その土地の飲食店や街の雰囲気を味わえたのは良かったですね。現地に住む人と友だちになり、その土地の青果店を案内してもらったこともあります。自分が知らない食材もたくさんあり、料理を学び続けたいとあらためて感じました」


そして海外から帰国した村瀬は2013年12月、DEAN & DELUCA 恵比寿店でパートナーとして働き始めます。

村瀬 「DEAN & DELUCAの存在は知っていたのですが、あまり料理を見たことがなかったんです。だけどあるとき、ふと近くの店舗に目が留まって、あらためてショーケースの中を見てみると、手の込んだ料理を作っていると感じました。

また、私はそれまでずっとクラシックなフランス料理を作っていて、創作料理をあまり受け入れられずに過ごしてきました。DEAN & DELUCAのプリペアードフード(惣菜・デリ)には、創作的な料理もあるんですが、しっかりルーツを考えた上でアレンジしている料理も多いんです。そのことに魅力を感じると同時に、『この会社ならいろんな料理にチャレンジできるのかな?』と思い入社を決めました」

入社一年後には、シェフの座に。マネジメントに苦戦しつつも、見つけた新たな楽しみ

▲キッチンに立つ村瀬

パートナーとして入社した村瀬ですが、実績を認められ3カ月後には社員へと昇格。1年後の2015年にはシェフの話が飛び込んできました。

村瀬 「経験してきた店舗は、恵比寿・有楽町・品川・吉祥寺の4つです。今まで、シェフとして働いた経験はなかったので、パートナーとして入社してから当時の上司に『シェフになりたい』と言い続けて、認めてもらえるようにがむしゃらに働いていました。

シェフを目指していたので社員昇格もすぐに受けて、セカンドシェフのようなことを任せてもらい、1年後にはシェフの話が来て、すぐに受けることを決めましたね」

シェフに昇格すると、マネジメントも仕事の中に入ってきます。それまでシェフの仕事を近くで見ていた村瀬ですが、いざ自分がやるとなると、その難しさに苦戦してしまいます。

村瀬 「今までは自分自身の技術を磨いていくことを一番に考えていましたが、シェフになってからはメンバーの成長を促しつつ、会社の予算もクリアしていかなければなりません。

DEAN & DELUCAではアルバイトや、料理未経験のメンバーも働いています。その人たちの力を見極めて輝けるようにしつつ、苦手な部分はサポートする必要があったので最初は慣れませんでした。特に最初の方は、厳しく対応しすぎた、と反省していますね。

自分が料理の中でも厳しい世界でしかやってこなかったので、自分の考えを押し付けてしまって、それがメンバーの負担になっていたと思います。自分では厳しく言っているつもりがなくても、相手にそう聞こえてしまったら悩みの種になるんですよね。キッチン内の雰囲気が暗くなっているのを感じて、あらためて考えました。その結果、一人ひとりのメンバーと向き合って、それぞれの個性を引き出し、成長を促しながら仕事をしていこうと強く思ったんです」

考え方を改めたことは、仕事のやりがいにも変化をもたらしています。

村瀬 「昔は自分の技術が高まったときに楽しさを感じましたが、今は一緒に働いていたメンバーが活躍しているのを見たり、他の場所に移ったメンバーがその場所で頑張っていることを聞いたりすると嬉しくなります。メンバーの成長を感じることが自分のやりがいになっているんですよ」

作りたいのは、“やりたいことに挑戦するメンバー”みんなが活躍できるステージ

▲現在の村瀬

料理人として、約16年のキャリアを重ねた村瀬は、仕事の上では「基本が大切だ」と考えています。

村瀬 「食材の扱い方や料理の基本もそうですが、特に仕事の基本が大切です。たとえば掃除や整理整頓の場合、毎日隅々までやらないと、料理をしている時に、汚れや作業台に水滴が残っているという細かい変化に気がつけないんです。逆に毎日隅々まで掃除をしていれば、いつもと状態が違うな、と気がつきます。

私は料理の基本を最初のお店で学びましたが、こういうベースもしっかりと身につけられたことで、どんな場所に行っても対応できたんです。なので、一緒に働くメンバーにも大切にしてもらいたいなと思いますね」

2022年5月現在は、DEAN & DELUCA東日本エリアシェフとして働く村瀬。売上の管理だけでなく、人の育成にも力を入れています。

村瀬 「各店のシェフと毎週必ず1on1で話す時間を作って、コミュニケーションを取るようにしています。シェフたちにもお店のメンバーとのコミュニケーションの質を上げてもらい、その結果として売上に反映できたらいいなと考えています。

シェフのメンバーには、私と同じで不器用な人が多いです。だから、まずは私が自分の気持ちや考えていることをシェアするように意識していて、シェフたちもそれができるようになったらいいなと思いますね。

またシェフたちは、コロナ禍になってから売上が厳しい状況になっても、それを打破するために考えて行動してくれているので、自分もその働きに見合う以上のものを還元していきたいです。それぞれの力を存分に発揮できる環境を作りつつ、新しいステージも用意していきたいと考えています」

そんな村瀬は現在、未来のメンバーとの面接も担当しています。

村瀬 「『自分はこんなことがやりたい、こんな風に仕事をしたい』というものを持っている方と一緒に働きたいなと思いますね。

安定して働きたい方もいるとは思うんですが、いくつになっても前向きな姿勢で考えてみて、チャレンジする姿勢が見える方はとても魅力的だなと感じます。自分のやりたいことがあるメンバーたちと一緒に新しいポジションを作り、チーム全体をもっともっと盛り上げていきたいですね」

一緒に働くメンバーたちを一番に考えながら、日々真剣に仕事に向き合う村瀬。

チームメンバーの長所が発揮できるポジションを作れるように整えつつ、自分自身のチャレンジにも絶えずトライしていきます。