製薬会社の事業を支えるクラウドソリューションを広島から届ける

ライフサイエンス業界に特化したクラウドソリューションを提供するVeevaは、世界各国に拠点を展開しています。そのオフィスのひとつとして2021年新たに生まれたのが、Veeva Japan広島オフィスです。米屋 優希は、この広島オフィスから始まる新たな航海の船員として船出を経験したひとりでした。

米屋 「事業拡大に伴い、Veeva Japanの東京に次ぐ拠点として選ばれたのが広島です。非対面型のサービスを地方都市へ移設することを検討していたところ、コロナ禍で地方オフィスの可能性が再確認されたことも手伝って、企業誘致に積極的な行政との連携を経て、新オフィスを設立したのです。私は広島オフィス開設を機に、東京から広島へ引っ越してきました」

2021年4月現在、米屋を含め、広島オフィスのメンバーは約10名。カスタマーサクセスや新規事業の製品開発、データ管理業務の請負サービスなど、複数の業務を担当するメンバーが共に働いています。

米屋 「私は実消化データの運用を担当していますが、広島オフィスでは新しいメンバーを迎えるため、現地の人事採用を担いました。現在は人材教育に力を注ぎつつ、製品品質の維持に努めています」

『実消化』とは、医薬品が製薬会社から卸、そして病院や薬局へと販売されていく経路のことを指します。医薬品は複数の事業者などを通じて患者のもとへ届くため、これらのデータを各所から収集し、管理しなければ、売上を正確に数値化することができません。それらをクラウド管理する実消化システムを通じて、Veeva Japanは製薬会社に対して販売データを届けています。

米屋 「私たちが分析・販売するデータは、製薬会社の営業戦略や計画立案の基盤です。主軸であるCRM(Customer Relationship Management)サービスと連携することで、実消化データをレポートとして確認することができます。ほとんどの製薬会社は、こうしたクラウドソリューションから得られるデータを事業に役立てています」

人々の健康を支える医薬品の流通や製薬に貢献するデータ提供。こうした事業を主軸とするVeeva Japanに米屋が興味を抱いたきっかけは、自分自身が外資製薬会社に勤めていた頃、ひとりのユーザーとしてVeevaに触れていたからでした。

使う人から作る人へ──製薬会社の課題解決に挑んだ新規事業開発

CRMを主軸とするVeeva Japanが、新たに実消化システムを開発する。米屋がVeeva Japanの顧問からそのことを知らされたのは、2016年のことでした。

米屋 「その方とランチを食べながら新規事業について説明されたことがきっかけで、実消化を扱う新規事業に興味を抱きました。前職で実消化の関連システムを担当していたので、知見を活かせるかもしれない、と考えたのです。

今までVeevaを利用する製薬会社側の人間だったからこそ、製薬会社が抱える課題や悩みを知っています。今度はそれを解決する製品やサービスを提供してみたかったんです」

面接では、製薬会社の課題を克服する製品内容についてプレゼンし、Veeva Japanの面接担当者と議論を交わすシーンも。その時間を楽しめたことが、米屋の意思を固めました。そして入社後は、ゼロから実消化システムを作る一員に。製品名を決めるところから、挑戦は始まりました。

米屋 「業界のスタンダードとしては、実消化関連のシステムをスクラッチで入れるのが主流で、製品を使うという認識はそれほど浸透していません。実消化を扱う他社製品はあるのですが、そこからユーザーである製薬会社側が加工を施さなければ使えませんでした。

一方、Veeva製品は、導入してすぐに使えるようになるのが最大の魅力です。あらかじめプリセットされたデータやデータモデル、売上データの取り込みからレポートまでのプロセスを一気通貫して提供できるよう開発しました。お客様に喜ばれる機能はどういったものか、一生懸命考えて導き出した結論です」

Veeva Japanには、米屋をはじめ製薬業界に精通したメンバーが多いことも、顧客視点に立った製品開発に結びついています。企業規模や製品の成熟度に応じてクライアントから要望をヒアリングし、製品の品質やサービスを高めていきました。そして、その姿勢の根底には、Veevaのカルチャーがあります。

米屋 「Veevaのカルチャーの象徴は、“Captain of your own ship”です。メンバー一人ひとりが舵を取り、船の進路を定めて航海するように働いています。会社から定められたルールはほとんどなく、主導権が自分にある。

また、各々の学びを共有し、困っているメンバーを助けるサポーティブなカルチャーも備わっています。グローバル企業であることも、こうしたカルチャーの背景にあるかもしれません。

私は今まで新規の製品開発に携わった経験がありませんでしたが、入社直後から携わったこの実消化システムのサービス定義を通じて、自分自身が船を漕いでいる感覚をつかみました」

その時々で船頭となって判断していく──その基準となっているのが、Veevaが掲げる4つのバリュー「Do the right thing(正しいことをする)」「Customer Success(顧客の成功)」「Employee Success(従業員の成功)」「Speed(スピード)」です。

米屋 「判断が必要なとき、4つのバリューを意識しています。これは本当に正しいことなのか、これは本当に顧客の成功につながっているのか、同時にスピード、従業員の成功についても満たしているのか。そういったことを考えながら取捨選択して前に進んでいく感覚があります」

こうして自らが先導者である自覚を携えた米屋に、新たな転機がやってきたのは2021年のことです。新たに設立する広島オフィスで、その立ち上げに関わることが決まりました。

地方に生まれた拠点の原動力となる、新たな仲間を求めて

東京から広島へ。その決断は大きなものですが、米屋にとってはビジネスパーソンとしてだけでなく、家族を想う一人の女性としても利点のあるものでした。

米屋 「広島には、父が他界したあと、ひとり病を抱えて暮らす母がいます。ここ数年東京と広島を往復していたため、広島に拠点を移すことはむしろありがたい話でした。また、小学校低学年の子どもがいるのですが、高学年になる前に拠点を移せたおかげで、新たな環境にスムーズに慣れることができたようで安心しました」

拠点を移したことで、家族との時間を充実させることが叶った米屋。一方仕事については、東京とさほどギャップを感じない環境であるものの、採用面では都心との差を実感します。応募職種を“エンジニア”と書いて募集を出すと、クレーンのサービスエンジニアの募集と誤解を招くケースも。東京と比べるとIT企業の母数が少ない広島での採用は、課題が山積みでした。

米屋 「知見やスキルといった観点で採用を試みると、県内で適した人材を見つけることは非常に難しいです。ただし、広島は広島大学をはじめ工学系の学部を有する大学も多い地域ですから、採用したい人材は決してゼロではありません。

彼らの多くは、職を求めて都心へ出ていきます。今後私たちのように地方各所で人材を求めるIT企業が増えれば、こうした悩みは軽減されていくのかもしれません」

米屋が広島オフィスに迎える新しいメンバーを選ぶ人材要件としたのは、Veevaのカルチャーである“船を漕げる人”であるかどうかです。それはスキルを軸とした採用ではなく、今後共に歩んでいく仲間としての素質を見抜く採用でした。

米屋 「たとえ未経験でも、船を漕いで進める力があればいい。具体的に重視したのは、コミュニケーション能力と意欲です。Veevaでどんなふうに働きたいかしっかりイメージを描き、自らコミュニケーションを取って前に進んで行こうとする力を持つ方に来ていただきました」

大海原を航海するように、多様な船員と共に目指す事業拡大

こうして広島オフィスは新たなメンバーを迎え、2021年5月現在は約10名で航海を続けています。新しく入ったメンバーの中には、もともとは学校で数学教師をしていた方も。東京オフィスとは異なり、さまざまな職種を経験してきたライフサイエンス業界やIT業界未経験のメンバーが多いことが、広島オフィスの特徴です。

米屋 「Veeva はグローバル企業ですから、広島にいながらさまざまな国の仲間と関わりつつ仕事ができます。また、東京オフィスへの出張の機会があることなど、広島県内で収まらない刺激のある職場とも言えるでしょう。またなんと言っても大きいのがVeevaカルチャーの中で働けることが最大の魅力だと思います。この環境を活かし、新しいメンバーにはどんどん成長してほしいです」

あたたかなイメージのあるオーク材を活かした広島オフィスのデザインは、県内のデザイン事務所が手がけたもの。リラックススペースには厳島神社の鳥居をイメージした栂(つが)の木の装飾が施されていたりと、居心地の良い空間を目指して作られたオフィスには、個々が自由な働き方を選べる工夫が凝らされています。広島県内の人材や魅力を引き出しながら、全国に通用する製品やサービスを提供していくことが、広島オフィスのビジョンです。

米屋 「まずは広島のメンバーと共に成長しながら、事業を拡大していくことが喫緊の目標ですね。長いスパンでの目標は……あえて決めていないんです。現在もっとも重要なところにフォーカスして、行動する。1カ月後にはまた世界が大きく変わっているかもしれませんから、1カ月後のことはまた1カ月後に決める。そうしていくことで、変化に対応していける柔軟なチームでありたいです」

それはまさに、波や風を肌で感じながら舵を取る、大海原の航海そのものです。その先のまだ見ぬ景色を臨みながら、Veeva Japan広島オフィスの挑戦は続きます。