インターン時代から引かれていたサイエンス×コンピューターの世界へ
幼少のころから海外暮らしを経験し、中学・高校はシンガポールのアメリカンスクールに進学。その後、米国ペンシルバニア州立大学へと進み、化学の研究を続けながら、製薬会社や化学系の企業のインターンをするという学生生活を送ってきました。
森 「大学を一時休学し、その間に企業でアルバイト代をもらいながらインターンをしていました。1年の半分くらいしか大学には行かないのですが、その半分に1年分を詰め込んで勉強して、残りの時間は収入を得ながら社会勉強をさせてもらうというわけです」
大学を卒業後は、インディアナ大学の大学院に進学。製薬会社でのインターンを経験し、製薬シミュレーションのソフトウェアに興味を引かれたことから、大学院でもコンピューターのシミュレーションを活用して化学の研究に取り組んでいました。
ところが諸事情により、博士論文を書いているさなかに日本に帰らなければならなくなってしまいます。心残りがありながらも、気を取り直して日本でめぐりあった就職先が、製薬やバイオテクノロジー分野などをターゲットにしたソフトウェア企業、アクセルリス株式会社(現ダッソー・システムズ・バイオビア)でした。
入社後は9年間にわたり、プリセールスとして営業に帯同し、自動車、電機、化学、製薬の分野に分子シミュレーションや、それらの情報を管理するインフォマティックスのソフトウェアの営業を経験。エンドユーザーが研究者ということもあり、さまざまな学会での発表や業界紙での執筆も積極的に行いました。
そして、2011年、ヘッドハンティングによりアボットジャパンに転職。同社では主力製品であるIAシステムのプロダクトマネージャーや新製品の立案に取り組みながら、医療施設への営業提案も行っていました。
そして7年間の勤務を経て、アクセルリス社で同僚だったVeevaの大澤 毅顕の誘いを受け、Veevaへの転職を決意。2017年のことでした。
「Do the right thing」を体現する会社で、顧客と向き合う
大澤からは3年にわたってVeevaへ来ないかと誘いを受けていたという森。アクセルリスで大澤と共に働いた期間はそう長くありませんでしたが、職場が分かれてからも定期的に食事をしながら語り合う友人関係は続いていました。
森 「大澤と話していて、Veevaがいい会社なんだということが伝わってきました。そして、なにより私が感銘を受けたのは、Veevaのバリューのひとつである“Do the right thingを体現している点です。
正しいことをする──シンプルですが、ビジネスの世界でそう簡単にできることではありませんよね。それができるのは、グローバルCEOのPeter Gassnerの信念によるところが大きいと思います」
たとえば、プロダクトの魅力をよく理解し、価値を感じている顧客は、適正な金額で契約を結んでくれます。しかし他社との価格競争や営業目標の数値などが絡んでくると、値引きをしてでも契約をとる判断をすることもビジネスの世界ではよくあること。
しかしそうなれば、自社プロダクトの価値を認めてくださる優良顧客なのに優遇されない、というアンフェアな状況に陥ってしまいます。
森 「当社では企業の規模や従業員数に応じて一律の価格が設定されています。その上で、価値を認めてくださる企業には適正な価格でプロダクトを提供して、その逆の場合、価値を感じていただけない企業には、価格の提示すらしないこともあるんです。
考え方によっては高飛車に見えるかもしれません。しかし、カスタマーサクセスの面でも、新規顧客だけでなく既存の顧客もしっかり大切にしてお付き合いしていきたいのです。きちんとポリシーを持って正しいことをする、という姿勢が明確で、信頼できる会社だと自負しています」
現在、森が率いるR&Dのプリセールスチームはカスタマーサクセスの業務も一部担っており、グローバル企業の日本法人に出向いてサポートを行うことも多々あります。
昨今では新型コロナウイルスにまつわる臨床試験が日本や米国、ヨーロッパなど各国で同時に進行しており、各国に法人を置く企業であっても、グローバルプロジェクトとして統合的に動くケースが多くなっています。
そうなると、外資系企業の場合、セールスのターゲットとなるのはあくまで本社です。
森 「日本独自のルールや慣習があるため、日本法人でVeevaのプロダクトを導入する際は、そこを理解しているVeeva Japanのメンバーが日本にいるエンドユーザーのサポートを丁寧に行います。
ある意味当たり前のことをやっているだけですが、日本での良好な関係構築が、回り回ってグローバルでも評価を得たり、他の内資系製薬企業にも良い評判が伝播したりと、長期的な成果へとつながっていくこともあります」
業界特化でブレずに信頼を培うということ
私たちVeevaは、ライフサイエンス業界に特化してクラウドベースのアプリケーションを開発、提供しています。特定の業界にフォーカスをして事業を展開していくためには、継続的に顧客との信頼関係を築いていくことが、事業を成長させていくことにおいてとくに重要だと考えられています。
森 「企業の成長という面でいうと、多角化によって事業の間口を広げていくというのもひとつの方法です。しかし、あまりにも手を広げすぎてしまって、コアとなる事業が強さを失ってしまう例も少なくありません」
ライフサイエンス業界は、決して広いものではありません。そのためひとつの施設、部門で信頼を得られれば隣の部門、関連施設とユーザーの輪が広がり、導入していただけるプロダクトも増えていきます。
反対に一顧客の信頼が失墜すれば負の影響も広がりやすい傾向があります。そのような部分がライフサイエンス業界に特化したプロダクトに携わる上でのおもしろさであり、難しさでもありますね。
森 「今、業界に特化して仕事をしながら事業を成長させていくことで、顧客の成功はもちろん、私たち働く人間の成功にもつながるとてもハッピーな状態がつくれていると思っています」
そんな森にとって、一緒に仕事を進めてきた取引先から「良い仕事をしてくれたね」、「サポートしてくれてありがとう」といった感謝の言葉が、大きなやりがいになっています。それは単なる感謝の言葉というだけではなく、それまで取り組んできた、挑戦してきたことが実を結んだことの表れでもあるからです。
森 「お客様は一緒にひとつの目標に向かい、ある意味、私の仕事を見つづけてきてくれた同志のような存在だと思うんです。その方が評価してくれたことで勇気づけられ、他にもこんなことをしてみようと、さらに先の仕事を見いだすきっかけにもなりますよね。
あれもダメ、これもやってはいけないという考え方が強いと、新しいことをするにも、必ずやらない理由を見つけてしまうようなマインドになってしまいます。環境に支えられてこそ新しいチャレンジに向かうことができる──その気持ちを大切にしたいですね」
新しいソリューションの種が次々と生まれてくる楽しさ
仕事を進める上で森のモチベーションは、「いかに自分が新しいことをできるか、興味をもつことができるか」がほぼすべてだと言います。Veevaはライフサイエンス業界に特化する中でも、新しいプロダクトが次々と開発されており「いくらでもおもしろいものがこれからも出てきそうだ」と期待しています。
森 「実は私自身は、自分で何か目標を見つけ出して突き進むより、周りの人間から勧められた物事の方がうまくいくタイプのようなんです。もっと若いころは、『自分で道を切り開くんだ』などと、ちょっと驕っていた部分もあったんです。
でもそういうのはあまりうまくいかないことが多くて……反対に、大澤がVeevaへ誘ってくれたように『森にはこういうことが向いてるんじゃないか』と、請われたことのほうが成功するんです。
おそらく、どんな人間でも自分ひとりでできることってほとんどないんだと思います。『森に任せたい』と言ってもらえるということは、言い方を変えるとすでに周りが私をサポートするしくみを用意してくれているんですね。だから成功する。
これからも、プリセールスでもそうでない仕事でも、『森にはこれをやってほしいんだ』と声がかかれば喜んでチャレンジしていきたいですね」
ただし、Veevaで仕事をしていく上では積極性も求められます。それは必ずしも「自分はこれがやりたい」と手を挙げるという意味ではなく、周りを見回したときに、業務改善のためのヒントを拾い、チャンスに変えていく自発的な態度です。
このような企業文化は、グローバルCEOのPeterの考え方の影響が色濃く反映されています。社内教育や研修プログラムの設計中にも、Peterは「自分自身は枠が決められた学校教育の中で身についたと思うことはほとんどない。
なによりも自分が興味を持ったことこそが身についたという感覚がある。学ぶことは自分自身で見つけていくべきだ」と述べています。
森 「会社の中には、まだ手つかずのニッチな領域がたくさん落ちていて、それを自発的に見つけてチャンスに変えていくことができる人は、Veevaの中ですごく伸びると思います。
自分自身もいきいきと仕事に取り組めるんじゃないでしょうか。自発性、積極性を持って興味のあることに取り組むことを楽しめる──この感覚があれば、Veevaはいくらでも学ぶことができる場です。ぜひ、一緒に新しいチャレンジを重ねていきたいですね」
学生時代から、興味の赴くままに化学の分野で研究に従事してきた森。常に“新しいモノ“を求め続ける姿勢があったからこそ、チャレンジできる機会が舞い込んできました。これからも森は「Do the right thing」の言葉を胸に、自身が楽しんでチャレンジできる場所を追い求めていきます。