誰も教えてくれない。お客様との関係の中から生まれた営業スタイル

「営業って、ひとを騙すひと」──

秀野は営業という仕事に就くまで、そんな先入観を持っていました。Veevaに入社するまで何度か転職を経験しましたが、実は営業職に就いたのは前職が初めてでした。

前職の外資系IT企業に入社した直後は、ヘルプデスクや製品のテスト、クオリティコントールに携わっていた秀野。

入社間もなく営業担当に抜てきされます。営業体制の見直しがあり、営業メンバーは総入れ替え、さらに人員も大幅に減少という大改革でした。だから秀野に「営業の仕事とは」を教えてくれる上司や先輩もいませんでした。

秀野 「最初は、なぜ私が……と戸惑いました。でも私が売らなければ会社が成り立たないし、かといって売り方もまったくわからないという状況でした」

秀野はお客様に相談しながら手探りで、自分なりの営業スタイルを積み上げていくしかありませんでした。

秀野 「社会や業界の変化を分析して、お客様のビジネスを成功させる方法を一生懸命考えて伝える。とにかくそれを繰り返しました。最初は『違う!』と受け入れられないことも多かったけれど、そのうち理解されるようになって、気付いたらサポートしてくださるお客様が増えていました」

“ひとの役に立ったり、感謝されたり“という実感を得るうちに、“営業はひとを騙す“という先入観も払拭されました。

秀野 「信頼関係を築く中で、営業職とは、お客様の立場で役立つことを考え、お客様と自社をつなぐ役割だと気付きました。それも自社の製品だけでなく、より広い視点で全体ソリューションを提案する。自分のスタイルが確立すると、どんどんおもしろくなっていきましたね」

秀野は次々に成果を出し続け、責任範囲もどんどん拡大しました。マネージャー、西日本営業本部長、そしてとうとうグローバルビジネスの日本展開を担う新規事業ダイレクターなど。しかし、そこで大きな転機が訪れます。

ある企業に買収されたことで会社の方針が大きく変化し、顧客に対する姿勢がまったく変わってしまったのです。自分が大事にするお客様との関係性を貫くため、秀野は転職を考え始めます。

そこで出会ったのが、Veeva──。2011年、Veeva Japanが設立された年のことでした。

本気でここまでカスタマーサクセスを突き詰めている会社が他にはあるか?

秀野が最初に知ったのは、アメリカのVeevaです。日本法人の設立前でした。

グローバルのIT業界を調べるうち、インダストリークラウドであるVeevaのもつ可能性や将来性に強く引かれ、前職でも開発チームにVeevaのように、Salesforce上でアプリを構築すべきじゃないかと提案もしました。またSalesforceを用いて、ビジネス展開しているMBA同期の会社に訪問してどのようなことができるのか勉強しました。

そんなときにすでに前職から離れていた、秀野を営業に抜てきしたマネジメントから「Veevaの日本立ち上げに興味がないか?」と声がかかり、CEOのPeter Gassnerと話す機会を得ます。

秀野 「彼自身のビジネスに対する姿勢や人柄、Veevaが大事にしていること、カスタマーサービスサクセスへの想い、話せば話すほど引かれました。世間が無理だと言うような難しいことであっても、自分を信じてチャレンジする姿勢にも引かれました。

たとえば、今では完全に定着したVeevaのソフトウェアの定期的なバージョンアップですが、立ち上げの当初は社員でさえも、多くの企業が乗っているプラットフォームの定期的なバージョンアップに懐疑的でした。経営者自身が、業界全体をよくしていきたいとこんなに真剣に取り組んでいる企業は、他にないんじゃないかと思いましたね。

Veevaであれば、自分が大事にするお客様に満足いただけるものを提供できると信じることができました。それは、入社して9年経つ今でも間違っていなかったと確信しています」

Veevaの根幹ともなるその部分に、秀野は強く共感したのです。

売ることも売らないこともカスタマーサクセス

秀野「前職では、一度だけ、売らないという選択をしたことがあります。大手企業での大規模なシステムの入れ替え、本来であれば最新の自社システムを買ってもらうのが営業としての使命。ただ、当時多くの問題があったことからシステムを売らないと決め、CIO、ビジネス側の責任者に課題の共有に行きました。これが会社に知られたら首と・・と背水の陣でひとりミーティングに臨みました。

Veevaでは、売らないという選択肢は、普通のこと。カスタマーサクセスを全員が価値観として共有しているからこそ、”このお客様には、この製品を今売るべきではない”というディスカッションが普通になされます。売るときも一緒、売ることによって、一体どんなことをお客様が達成できるのか、それは実現可能なのか、今やるべきなのか考え抜いた上で提案書を完成させていきます。

会社の売上よりカスタマーサクセス、これが健全なビジネスの成長とどこにも負けない優れた企業文化を築いていると思っています」

そして、秀野が今もっとも力をいれているのは「愛されるチームづくり」です。

秀野 「Veevaは“チームターゲット“というしくみなので、個人の売上ではなくチームの売上が評価されます。だから助け合うという意識はかなり強いです。外資系ソフトウェア業界にイメージされるような数字の取り合いなどもありません。

そうすると緩々と仕事をやっているように思われるかもしれませんが、実は全員がハードワーカです。Veevaの文化のおかげか、直接自分の数字にならないようなことでも一生懸命サポートするようなメンバーが集まっています。

そうして、会社はそのような点を高く評価します。もちろん売上を上げることも高く評価されますが、チームで仕事ができない人は結果的に長くVeevaにはいられないと思います」

既存のお客様の業務をサポートにすることも大事な営業活動です。Veevaの販売のストラテジーは“リファレンスセリング“、要は口コミです。既存のお客様がVeevaに満足いただいていてVeevaを好きであれば、必ずそれは他のお客様に伝わります。

この業界はお客様の横のつながりも強く、良いことも悪いこともすぐに伝わります。だから営業は日々真剣にお客様に向き合って売ることではなく、どうやってお客様をサポートし、新たに生まれる課題を解決できるかを考える必要があるのです。

ひとつの業界に特化するからこそ、お客様の成功に“深く”携われる醍醐味

ライフサイエンス業界に特化した、インダストリークラウドであること──

これが秀野に事業としての将来性、そしておもしろさを感じさせた部分です。

秀野 「幅広い業界に製品を販売するという営業もあると思います。それはそれでおもしろみもあると思いますね。ただ、私はニッチであってもひとつの場所で、とことん顧客と向き合ってお客様と一緒に育っていくことを実感できる環境で、営業職ができたことを本当に有難く思っています。

Veevaと出会って、進化する真のクラウドサービスを大事なお客様にご提案でき、業界全体の効率化に貢献できること。これはときには患者という立場に立つ自分自身や家族にとっても有意義なことだと思っています。

VeevaCRMは海外どの国のお客様であろう、実はひとつのコアシステムを使っています。お客様ごとに設定を変えることで、まったく違う販売戦略を実現することができる。こういうしくみだからこそ、進化もすごく速いし、セキュリティも強固です」

さらにライフサイエンス業界に特化するということは、一見その活動範囲が限られているように感じますが、まったくそうではないと言います。

秀野 「Veevaのビジネスは特化しながら、むしろ拡大しています。顧客CRMからスタートし、その周辺業務だけでなく、医薬品の開発分野においても飛躍的な成長を遂げています。ベンチャーのお客様の場合など、ビジネスで利用する主要なソフトウェアの大半をすべてVeevaのクラウドが担っている企業もあります。

つまりVeevaにおいては、ただ一部の歯車的な機能を提供するのではなく、包括的な業務へかかわることができます。また、現在は存在しないサービスであってもお客様に求められたり、もしくはVeeva自身がチャレンジすべきだと考えたりした場合には、新規に製品もしくはサービスなどを立上げることができる、そんな体力がある企業になりつつあります。

たとえば、直近では医療機関が治験に利用できるソフトや治験者向けのソフトを無償で提供したりすることで、治験の効率を高めVeevaで業務が完結するようにするなど、会社の体力が増しました。よって顧客や業界全体の課題に対して提案できることの幅もどんどん広がっています。この業界に特化し、深く掘り下げとことんお客様と業界に貢献するビジネスモデルによって、欠かせない存在になれると思っています」

つねに世界のライフサイエンス業界が頭にあるからグローバル視点が磨かれる

「日本だけをみても業界の効率を考えれば、まだまだ効率化のためにやれることはある」と秀野は考えています。

秀野 「各社が個別に同じような業務をやっているケースもまだまだあります。それでは効率が悪い。これからはさらに効率化が求められる時代。共通化を進めるべきところにはシステムにとどまらず業務まで踏み込んだ提案をしていきたいのです」

もちろんVeevaが「業界」という言葉を使うとき、日本国内だけでなく、その先には必ず「世界」があります。実際に、秀野自身、Veeva Japanのメンバーでありながら、グローバルのメンバーとのやりとりは日々行っていると言います。

秀野 「日本企業を担当していても、その企業自体がグローバルに拠点を構えているケースもあります。もちろん外資系企業を担当すれば、グローバルとのやりとりは必須。

そういう意味では、グローバルメンバーは物理的には離れているけれど、とても近い存在です。課題を共有し、いっしょに解決しようと助け合います。Veevaは、グローバルでワンチーム。

文化が異なっても同じカスタマーサクセスの価値観を共有するメンバーが集まって、どうすればお客様にとって最善の提案ができるかを考えるので、非常に有意義なディスカッションができます」

秀野が、ひとりで試行錯誤しながら、独力で身につけてきた「お客様との信頼関係を深く築く営業スタイル」。Veevaに出会い、志を同じくするメンバーとの絆は、一気に世界へ広がりました。より良いライフサイエンス業界に貢献するために、その拡大のスピードが落ちることはありません。