就職氷河期の最中の船出──ハードな営業職からスタートした社会人生活

2022年8月現在、エンジニアリング系の派遣会社であるトライアローで営業として活躍する野村氏ですが、社会人としてのキャリアのスタートは、人材業界でもエンジニアリング業界でもなかったといいます。

野村 「大学を卒業して新卒で入社した会社は先物取引の会社でした。いわゆる就職氷河期世代で、当時は今のように働き方改革が叫ばれるような時代ではなかったこともあり、なかなかハードでしたね(笑)。

朝6時に出社して、会社の営業メンバーと日経新聞の読み合わせをした後、営業資料を作成して、客先企業の始業を見計らってテレアポの繰り返しでした」

テレアポ以外の業務はどんなことをしていたのでしょうか。

野村 「飛び込み営業ですね。1日に100件を目標にして、1時間おきに交換できた名刺の枚数を上司に報告していました」

ハードな営業会社でキャリアのスタートを切った野村氏は、この経験を経て人材業界と出会うことになっていきます。

派遣登録に行ったはずが、二度も起きた珍事が人材業界のキャリアのスタートに

そんな生活を1年ほど続けていたところ、思わぬきっかけから人材業界の営業に転身することとなりました。

野村 「ファーストキャリアのときは全力で走りすぎていたので、退職後は少しの間のんびりしていました。ただ、生活をしないといけないので、日雇い派遣にでも登録しようかなと思って短期専門の派遣会社に登録しに行ったんです。そうしたら『派遣としてではなくて、ウチの営業として働かない?』と思わぬオファーをもらったんです。そのオファーを受ける形で派遣会社の営業としてのキャリアをスタートさせました」

セカンドキャリアに派遣会社の営業経験を挟んで、トライアローに入社した野村氏。トライアローへの入社のきっかけはどんなものだったのでしょうか。

野村 「その派遣会社では、正直なところ成り行きで働いてしまったという気持ちもあって、4年くらい働いたあたりで自分のやりたいことを真剣に考えたんです。ちょうど大学でも理系の勉強をしていたこともあって、そのときはITエンジニアになろうと思い、トライアローのプログラマー募集の求人に応募しました」

営業としてではなく、エンジニア志望として応募したという野村氏。ところが、またもや思わぬオファーを受けることとなります。

野村 「面接に行くと、派遣会社での営業経験があるという経歴を見て、またもや『ウチの営業として働かない?』というオファーを受けたんです(笑)。確かに、プログラマーの業務経験がなかったのでゼロからのスタートになりますが、営業ならば経験があります。

正直プログラマーになりたいという希望もぼんやりしていたところもあり、『技術系の派遣会社で営業をすればIT業界にも詳しくなれるし、エンジニアを目指すならそれからでも良いかな』という気持ちも出てきて、そのオファーを受けることにしました。

それから、前職は日雇い派遣の営業だったので、案件にスケジュールが合う人を機械的にマッチングさせていく仕事の進め方でしたが、トライアローは無期雇用の正社員エンジニアの割合が高くて、派遣する先も長期の大きなプロジェクトがほとんどです。エンジニアと『人と人とのつながり』を感じられるって、きっとやりがいを感じられるだろうなと思ったのも入社の決め手でした」

大量離職の危機!特需が去った後に野村氏が取った行動

トライアローのベテラン営業として、エンジニアからも営業メンバーからも頼られる野村氏ですが、数々の困難な場面を乗り越えて、今があると語ります。

野村 「トライアローはITと並んで携帯電話基地局の設置や点検などといった通信分野も得意としています。スマホの普及と平行して進んでいたプラチナバンドの整備が一巡したことで、一気に通信系のエンジニアの求人数が減少してしまったタイミングがありました。

派遣会社にとって求人数が減るというのは、ただ単純に売上が減るということだけではありません。私たちの立ち回り次第では、その職に従事していた人を失業させてしまうことにもなりかねません。プラチナバンドや4G LTEの整備の特需があまりに大きかった分、その反動も激しく、それでも長く一緒にやってきた通信エンジニアの皆さんの雇用をなんとか守りたいと、あのときは本当にその一心で奔走しました」

そんな困難な状況の中で、野村氏は一筋の光を見出します。

野村 「ちょうど営業に行っていた先のお客様に、高速道路上の電気設備の維持・管理をされている会社がありました。高速道路の設備管理ともなれば、かなり大量の人員が必要です。ところがその会社が求める条件が『高速道路での設備管理・保全作業の経験者』となっていて、非常にターゲットが狭かったんですね。そのため、その会社の担当者の方も『全然人が採用できない』と悩んでいました。

実はその企業には、以前トライアローで技術職として働いていた方が転職していました。彼に前述のような業務経験はなく、なおかつ彼は今回大量に離職が発生してしまいそうな『移動体通信エンジニア』でした。彼の経歴を改めて考えたところ、『電気通信に従事していた』ということと、無線系の国家資格である『第1級陸上特殊無線技士の資格を持っていた』という点が彼の目立った経歴があったことから、試しにお客様に職歴ではなく、保有資格で提案をしてみることにしました。つまり、移動体通信という電気通信業務の経験とそれに伴う資格があれば、当社の通信エンジニアの皆さんがお役に立てるのではないかと提案してみたんですね。

すると実際には、経験よりも保有資格が優先されることがわかりました。しかも必要な資格は、トライアローの通信エンジニアが保有している資格ばかりだったんです。エンジニアの保有資格を軸にした紹介が軌道に乗り、多くの通信エンジニアの皆さんをシフトすることができました。以降、その会社は大口取引先となっています」

業務の本質を見抜き、顧客のニーズにうまく応えた野村氏。何よりも「一緒に頑張ってきたエンジニアの皆さんの雇用を守れたことが本当に嬉しかった」と語ります。

本人の望まぬ退職ゼロへ──より多くの選択肢を提示できる営業でありたい

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▲いつでも求職者やエンジニアと真剣に向き合う野村氏

インフラ整備はどうしても繁閑の差が発生してしまいがちで、大小さまざまな苦労があるという野村氏に、今後の目標について聞きました。

野村 「エンジニア本人の望まない退職ゼロ!これが究極の目標です。派遣会社はどうしてもプロジェクトごとでお客様先の企業と契約をするので、プロジェクトの契約終了期日までにエンジニアが納得できる次の仕事先を紹介できなければ、残念ながら退職となるケースもあります。これはお互いにとって悲しいこと。

ですので、担当するエンジニアさんの適性を正確に見極めて、少しでも多くの選択肢を用意できる状態でいること、これが大事だと思っています」

エンジニアの人生や生活を預かる身としての責任を感じながら、野村氏は日々の営業に励みます。将来的には、エンジニアだけでなく支店の役にも立ちたいと考えています。

野村「社歴も長いので、やはり後進の育成もしっかりやっていきたいです。エンジニアファーストで考え、行動すること、これは私だけではなくトライアローがすごく大事にしていることです。こういう考えや姿勢をしっかり伝えていこうと思っています。

また、個人的にはより支店のみんなから頼られる存在になりたいです。たとえば、支店の数字が苦しい、もう打つ手がないといった状況で、誰も持っていなかった案件を持ってこられるような存在になりたいです」

「雇用を守りたい」という一心で仕事に励んできた野村氏の心がけは、きっと周囲を巻き込み、後輩にも伝わって行くことでしょう。野村氏の「望まぬ退職ゼロ!」への挑戦はこれからも続きます。