あえて未経験の挑戦を選びながら自らの進む道を拓き続けてきた
「若いころからファッションやデザインが好きだった」と話す、コミュニケーションデザイン統括部の栗山浩二。独自のファッションセンスを突き詰めていった結果、最近はほぼ1年中白シャツしか着なくなってしまったそう。
栗山 「めんどうになったというのもあるのですが、なんにでも合わせられるし合理的じゃないですか」
そう言ってほほ笑む栗山は、多彩なITアウトソーシングサービスを展開するトランスコスモスで、クリエイティブとデータ分析を司る部門の要職を務める立場にあります。
そんな彼も、かつてはまったく異なる分野の仕事に従事していました。
栗山 「最初は、大阪にある繊維系専門商社の営業マンでした。でも、ルートセールスだったこともあり、新しいことをしたいという気持ちが高まっていったのです。
そんな折、大阪にはシーズンごとの企画や新規顧客獲得の企画提案を行う担当がいなかったため、自ら起案し、部門創設と異動が決定。企画として業務に当たるうちに、個人事業主としても企画の仕事をいただけるようになっていきました」
二足のわらじの状態から、30歳を目前にして独立。約2年間は個人で仕事をしていましたが、常に新鮮な経験をしたいと別の職を求め、再び会社勤めを決意します。そのときに出会ったのが、トランスコスモスでした。
栗山 「約 1年半にわたり、個人事業を続けながら契約社員として大阪のコールセンターに勤務しました。いわゆるお客様の電話対応です。
その後、対応していた事業所閉鎖が決定し、退職を検討したときに『企画やデザインの経験があるなら、Webの部門に行ってみないか?』と声をかけられたのです」
ちょうどWebが隆盛期に差しかかっていたこともあり、「まずは話を聞いてみよう」と考えた栗山。専門的に取り組んだ経験はなかったものの、ディレクターとして新たなフィールドに踏み出しました。
栗山 「 Webは未経験でしたし、業界も日進月歩ですので、やればやるだけ新たな知識や経験を得られ、やりがいのある仕事だと感じましたね。
未経験なのは気になりませんでした。目的や目標を設定し、手段を決め、プロセスを分解し進行していく……というのは普遍的ですし、業界を問わず通用するだろうと考えていましたから」
目の前の事象をシンプルに捉え直し、目指す目標に向けて論理的に進めていくこと。
栗山はその明快なスタンスで次々と新たな経験を積みながら、独自の道を切り拓いていくこととなるのです。
ロジカルさと真摯な姿勢、お客様の数値改善から見えた成功への指針
ディレクターとして最初の数年は、Webサイトの構築と運用を担当。その後、栗山はある大型案件のプロジェクトマネージャーになります。
栗山 「関西の通販会社のメールマガジン運用をサポートすることになりました。当時はまだ LINEもなく、生活者とのデジタルのタッチポイントと言えばメールマガジンが最盛期。
われわれがお手伝いをする前は月間 300通程度のメール配信数でしたが、それを月間 800通以上に増やしました。パーソナライズした配信内容に変更して、配信回数も増やしたんです。生活者との接触回数が増えたことで、メールマガジン経由の売上が大きく伸びました」
当初は3名だった部門スタッフも、1年後には10名を超える体制に。運用のみならず企画段階から依頼を受けるようになるなど、仕事の範囲が拡大していきました。
栗山 「毎日数十種類のメールを配信するので、数値を見ながら改善のアクションを取らなくてはいけません。開封率やリターン率、メールのどこをクリックしているかというデータから、この人はこのセグメントでいいか、どうしたら反応が良くなるかを考え、ひたすら ABテストを繰り返していました。
人手も時間も足りず、対応するための知見も手探りでしたが、このころの経験が “データからアクションにつなげる ”原体験になったと思います」
単純な改善プロジェクトに見えますが、このPDCAを実現するには、効率的なメール配信業務を担う体制構築が必要でした。立ち上げ時はその体制構築に苦労したと言います。
栗山 「お客様先の業務がとにかく属人化していて、整理しなければまるで身動きが取れない状態。配信しているメールマガジンごとに担当の方がいらっしゃったのですが、企画から配信、振り返りのプロセスは人によってバラバラ。
業務内容を事細かに把握するのに朝から晩まで一日中その担当者に張りついたこともありました」
地道な作業を経て、業務プロセスの可視化・しくみ化には半年という時間を費やしましたが、足元をしっかり固めたことが後の数値改善にもつながっていきました。
栗山 「業務効率化と成果のクオリティを見据えたプロセス設計は大変でもありましたが、現在にもつながる大きな経験でした。複雑なものをそのままにするのではなく、情報の分解、集約、ピックアップ、並べ替え……それを繰り返して整理していきました。
それと同時に、ロジカルな部分だけでなく『より良くしたい』と真摯に対応する姿勢の大切さも改めて学びました。
目先の業務ではお客様の要望を実現できないこともありましたが、達成したい目標・理想の状態をしっかり理解することで、先のことまで考えて本質的な話ができ、パートナーとしての信頼感につながったと思います」
理論整然と効率や合理性を語るだけでなく、できるだけわかりやすい言葉でかみ砕いて想いを伝えることで、確実に信頼してもらう存在になる。
その想いは常に、ぶれることなく進むべき道を照らす道しるべとなっていました。
データ×クリエイティブの実現とデータオリエンテッドの思想
メールマーケティングの大型案件を担当したことをきっかけに、西日本でその専門部隊を立ち上げることになり、栗山は中心メンバーとして組織づくりに加わります。そこから4年の間に計6つの新規部門立ち上げを経験しました。
栗山 「メールマーケティングから始まり、そこに SNS運用もひもづくようになりました。
また、精度を高めるには数値やデータ分析が不可欠なので、データ分析の専門部隊も発足。さらに、業務効率化とスピードアップのために、新しいシステムの構築やサービス開発もしました。
時代の流れに合わせて、その時必要だと思われるチームを立ち上げていったという感じです」
2019年現在もトランスコスモスのDECサービスで提供されている、スピーディーにGoogleアナリティクスのデータを分析するサービスや、ランディングページの分析サービスなど、データからアクションにつなげるサービスを立ち上げるにつれ、ひとつの考えに至ります。
栗山 「データ分析の専門性を高めたり、その手法を標準化したとしても、有効に活用されなければ意味がない。その活用先で生活者にもっとも近いのがクリエイティブだと思いました」
これまでの経験からも、クリエイティブの良し悪しは生活者の反応にダイレクトに影響を与えると感じていた栗山。しかしデータも含めた議論ではなく、センスや感性のみで語られることが多いと感じていました。
栗山 「成功確率を上げるのが “理論 ”で、それを飛躍させるクリエイティブは “感性 ”から生まれます。そして、このふたつを下支えし “根拠 ”となるのがデータ。これらが三位一体となって機能する状態こそ理想的な強さを生み出せると思いました」
データだけ見ていても、生活者の心には響かない。かといって、ビジネスの世界において感性だけのクリエイティブでは必ずしも成果が出せるとは限らない。定量的なデータだけでなく定性的な情報も読み解くことで、心を動かす“強いクリエイティブ”になる確率を上げられます。
栗山 「データの活用というと “データドリブン ”という言葉がイメージされます。しかし、私たちは単純にデータのみを起点にアクションするのではなく、データを重視しつつほかの情報も含めてアクション設計する “データオリエンテッド ”の実現を掲げています」
データオリエンテッドとは聞き慣れない言葉ですが、数字で表せられるデータに加え、その先にある人の想いや商品・サービスの特徴など、数字で表せない情報も考慮することを指します。
栗山 「私たちのミッションの本質は、お客様の “成果を上げる ”こと。それを実現するための考え方のひとつがデータオリエンテッドですが、わりと基本に忠実だと思っています」
そんなクリエイティブとデータの融合で、クオリティを向上させる思想のもと、2016年に発足したのがコミュニケーションデザイン統括部です。栗山自身、現在は副統括部長として、東名阪をまたがってクリエイティブとデータ分析の組織を統括する立場になりました。
栗山 「現在は、たとえば広告クリエイティブの場合、制作の前にソーシャルリスニングなどを基に訴求開発を行い、広告媒体の特性に応じた制作本数を用意。その後に配信した結果数値を見ながら次の制作を進めるというフレームワークが確立されています。
定性的な情報と定量的なデータの双方を見ることにより、成功確率を上げ、継続的な成果向上を実現するのです」
実際、この考え方や手法を用いて、これまでお客様や他社で制作されていたクリエイティブに比べ、CVR5倍、CPA1/2へ改善するなど、多くの成果創出に成功しています。
そう話す姿にはデータ×クリエイティブの新たな可能性を追い求める情熱が秘められていました。
しなやかに目指すゴールへ向かう “普遍性”という強さを羅針盤として
いかにデータオリエンテッドな考え方で成功確率を高めるとはいえ、すべての活動において百発百中で成功……というわけにはいきません。
しかし、たとえ試行錯誤しチャレンジした結果が失敗でも、次に生かせることは必ずあり、より良い結果へつなげていくことができる。これはトランスコスモスの社風とも重なり、積極的なチャレンジを推奨する文化が根づいていると栗山は言います。
栗山 「どんな仕事も正解はひとつだけじゃない。そして、答えを探るのは決してひとりが背負う仕事でもない。
クリエイティブとデータ分析、それぞれのプロフェッショナルがそろっているコミュニケーションデザイン統括部だからこそ、できることがあるはずだと思っています。それが、常に前を見て進み続けられる原動力なのかもしれません」
また、栗山自身の哲学として「目的地を見失わなければ、たとえ流れに身を任せても、その中で仕事の楽しさを見つけ出せば良い」という考えもあります。
栗山 「目指すゴールにたどりつけるなら、途中のルートにはあまり固執しません。大きな流れに逆らうのは大変ですし、その流れの中にも仕事の楽しさややりがいは見いだせるものですから。強いて言うなら “流されても波に乗る ”というイメージですね」
ここにもまた、環境や状況を受け入れ、しなやかな強さで仕事と向き合う栗山のスタイルが垣間見えます。
この先、仕事でどんな夢を実現していきたいかという問いにも、真摯な姿勢がぶれることはありません。
栗山 「データオリエンテッド、そして統合マーケティング( DEC)というのは、トランスコスモスの提供価値を高めるポイント。その点はきっちりと全うしていく必要がありますよね。
その上で、コミュニケーションデザイン統括部のスローガンである、”タノシクリエイティブ(たのしく×クリエイティブ)”な活動を通じて、『トランスコスモスのクリエイティブは、かっこいいよね』と言われるレベルを目指していきたいです」
論理的かつ情熱的に生み出されるクリエイティブの強さで勝負したい──。
それこそが、トランスコスモスの企業姿勢を映し出した進化的クリエイティビティなのかもしれません。
「目指すべき姿に向かって、目の前の課題を解決するというシンプルなことを地道に積み重ねているだけなんですけどね」と、栗山は最後まで謙虚な姿勢を崩しませんでした。
もしかすると、その普遍性こそ、栗山が求め続けるビジネスの理想なのかもしれません。