未来への可能性を強く感じ、トヨタへ入社

▲アメリカ大学院時代の1枚、写真右が大西

私はもともと学士までは日本の大学に進み、人工知能に関する研究に取り組んでいました。

これからは人工知能、機械学習の時代が来る──そう思ったのが、この研究を選んだきっかけです。 

2013年当時、グローバル化という言葉を盛んに耳にしたこともあり、「世界で戦えるコミュニケーション能力と、最先端の人工知能技術を身につけるためには、本場のアメリカで学ぶ必要がある」と思っていた私は、渡米し、2013年から2020年まで機械学習を専門的に学び、Ph.D.を取得しました。 

学生時代から、学術は学術で終わるのではなく「世界にインパクトを与えてこそ面白い」という信念がありました。そのため、7年間の留学中には学術的な研究だけでなく、多くの企業や大学でインターンとして働くことにより、実社会に根差した応用研究も行っていました。

カルフォルニアの企業で機械学習を製品のマニュアルに役立てたり、東海岸の大学で医療のために機械学習を活用したり。さまざまな研究に携わりました。

また、アメリカのインターンシップは日本のように短期間ではなく3カ月ほどあり、学生はそこでしっかりと研究テーマに取り組みます。

規模の大きい研究テーマではメンターに加え、何名かの学生とも一緒に取り組むのですが、私はそこで多方面から専門家が集まり、ひとつの研究目標をお互いの専門知識を活かして達成することの面白さを実感しました。

その経験を踏まえ、就職活動では、情報システムだけではなく機械工学や生産技術など、多種多様な技術が集結したものづくりを行っている企業を探しました。そこでトヨタに出会ったのです。

過去に一時帰国した際に知り合っていた今の上司から「ロボットやAI技術といった新技術を駆使したスマートシティにつながる基盤研究を行っているので、一緒にやらないか」とのお誘いを受けました。

その誘いもあり、「スマートシティは機械学習を実用化するための実験場として、やりたいことが実現できる場所だ」と可能性を強く感じ、就職するならここしかないと思い入社しました。

リーダーシップを発揮しPh.D.としての知識を活かす

▲リーダーシップをとり、積極的にアイデアを出す

入社後は静岡県にある東富士研究所に配属され、2021年現在は愛知県の本社にある同じ部署で働いています。現在も流行している新型コロナウイルスの影響で、同じ部署の社員でも東富士、愛知、東京と各地で分散して勤務するようになったからです。 

実際に勤務を始めると学生時代とは異なり、プロジェクトに関わる人数がとても多いことに驚きました。私の関わってきた大学の研究であれば大きな研究室でも先生5人学生10人ほどでしたが、企業の研究は規模が違います。研究グループの研究者だけでなく、データ収集をする人材など、幅広い人たちと関わっていくことが必要だとわかりました。

一方で、入社直後からリーダーシップを発揮できる場を与えられたことは、とても幸運だと感じています。

以前、あるグループ企業から「データサイエンスを活用したい」という相談を受けたことがあります。その時に、抽象的なイメージはあるものの何をすべきかが不明確だったため、具体的な解決策を提示するために、私はデモンストレーションのプログラムを組んで提案しました。するとそれが先方にも好評を得て、チーム内でも「よくやった」と賞賛されたのです。

今では私が提案した方向でプロジェクトが進行しています。まだ入社して1年も経過していないのですが、問題意識をもってリーダーシップを執り、解決に導く力があれば、正しく評価され、実際に成果を残すことができる職場だと感じた印象的な出来事でした。

年次に関わらず意見を発信できる環境も、私が入社して感じた現部署の魅力です。

自ら発案したり、それが採用されなくても問題点を上司に忌憚なく伝えたり。プロジェクトの解決のために上司と部下ではなく専門家としての意見が奨励され、7年間勉強してきた知識を現場で活かすことができています。的を得た意見であれば、すぐに実行させてもらえるスピード感もありがたいです。

リーダーシップをとる。誰からの意見も取り入れていく。そういうことに関しては非常に柔軟な職場です。だからこそトヨタは良い製品をつくれるのだと信じています。

苦しみを糧に、今と未来のお客様への技術をつくる

▲社内施設にて、オンライン&対面の打合せで、仲間の言葉に真摯に耳を傾ける

現在私が携わっている業務について紹介します。メイン業務は2つあります。

1つ目はグループ企業と連携し、経済データを活用してグループ企業の悩みに対するソリューションを提案することです。2つ目は、Ph.D.を活かした未来の社会へ向けた研究です。

グループ企業との連携では、今現在のお客様に対して価値を提供していますが、研究では5年、10年、20年先にいるお客様に対して、どのような価値を我々が提供できるのかを考え、新技術の研究を行っています。

どのような研究をすれば、未来のお客様のためのコア技術になり、知見が得られて今後のビジネスに繋がっていくのか。そんなふうに、未来に向けた答えのない研究を進めることは容易ではありません。

そこで、重要なのは「良い研究テーマを考える」ことです。そして、私はありがたいことに、アメリカにいた7年間で徹底的にそれに挑戦する機会が与えられていました。

渡米した初期の頃、先生に研究テーマを相談したときに「やりたいことをやりなさい(Do whatever you want)」と言われました。

それから研究について考えるようになりましたが、学部を卒業して、研究者を志したばかりの私にとって、「良い研究とはなんなのか?」、「そもそも研究とはなんなのか?」、「どういう研究をしていけばいいのか?」というこれらの問いは、まさに最大の難問でした……。しかし、そこから7年間、その言葉に苦しみ続けながらも乗り越えてきました。

また、インターンシップでも企業から「どのような研究をしてくれますか」と求められ続けましたが、提案し、時に失敗し、時に打ち勝ってきました。このように常に挑戦し、失敗し、最後には打ち勝った成果が今現れていると思います。

業務を進める中でやりがいに繋がっているのは、やはりリーダーシップを発揮して課題に向かい、解決のために自らが主導し、解決策を掲示して成果が出せる点です。ただし独りよがりにはなってはいけません。だからこそ大事にしているのが、徹底して相手の話を聞いた上でリーダーシップをとることです。

グループ企業との連携ではまず相手の話を聞き、課題を理解し、その上で課題解決への提案を行います。研究テーマを検討する時も、グループ企業の現場に出向いて声を聞き、現在の現場や社会の流れを見つめ、そこから未来の社会とお客様、そしてその時提供すべき価値とそれに必要な技術を思い描き、今我々が取り組むべきテーマを導きます。

そしてチームで研究にあたる場合も、できる限り相手の考えを聞き、理解してから、私の意見を提示するようにしています。私自身も話したいことは多くあるのですが、まずは相手の声に耳を傾け、考えを理解するよう心掛けています。

マネジメント力を養い、世に役立つ技術を生む大きな研究を

▲トヨタ本社地区にて

今後の課題として「マネジメント力」を向上させたいと強く思っています。

学生時代と異なり、トヨタで多くの人々と関わる中で感銘を受けたのが、先輩社員のマネジメント能力の高さです。

アメリカ的な文化では、問題があるなら率直に言うべき、という感覚がどうしてもあります。しかし、先輩方の相手の気持ちや立場に立って考えたり、あるいは相手が気にしていそうなことに気付いたり、相手の声にならない気持ちを汲んだりする点が素晴らしく、ぜひとも見習いたいと思っています。

そうした先輩の姿を見たこともあり、リーダーシップとマネジメントは、全く違うことだと私は考えています。

学生時代には先頭に立ちさまざまなことに取り組みリーダーシップを養いましたが、マネジメントでは自らが進むのではなく、適材適所に人を配置し、それぞれのメンバーが力を発揮できる環境を整えてあげることが重要なようです。

まだまだマネジメントとは何か理解できていないので、先輩社員や上司をよく観察して、マネジメントについて知ることから始めようと思います。

また、自分の専門性を確立させ、コンピューターサイエンスと人工知能や機械学習の知識を深めることも注力したい点です。その上で専門性を広げていきたいと思います。

そして近い将来、トヨタの総合力を活かした大きな研究を主導していくのが夢です。知識が広がればより大勢の人と関われると思うので、マネジメント力を向上させつつ、たくさんの専門家とより大きな研究を進めたいと考えています。

その先の未来として、「研究には価値がある」ことが一般に広まってほしいと思います。日本では博士というと世に役立たない研究というイメージがもたれがちです。

しかし、アメリカでPh.D.を取得した人たちが世界を変えていったように、研究者というのは研究室に引きこもっている世捨て人では決してありません。社会と関わり大きく貢献する仕事だということを、広く理解してもらえるよう努力したいです。

振り返れば、大学院を卒業するにあたり多数の先生にお世話になりました。「大西にPh.D.を授与してよかった」と胸を張ってもらえるように。そして後輩にもPh.D.の価値を感じてもらえるように。今後も良い研究テーマをもって研究に励み続けたいと思います。

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