これまでに“ない”成果をあげる仕事

▲トヨタ自動車 コネクティッドカンパニー 池田貴匡

私は、次世代車のコックピットのUX/UI開発に、フロントエンドエンジニアとして携わっています。コックピットとは、運転席周辺のことを指しますが、ディスプレイやメーターなどのデザインを設計・開発し評価することで、お客様のニーズを汲みながら、より早いサイクルで開発することを目指しています。

これまでは今までに「ある」製品をベースに仕事をしていましたが、今はこれまでに「ない」成果をあげ、プロダクト開発を進める必要があります。自分たちで設計を組み、プログラムも書くのはもちろんのこと、品質や生産効率をあげるためのプロセスをどう踏むかなど、工程のしくみづくりから自分たちで行う必要があるんです。

そのため、以前に比べ、ものをつくる上でわからないことは自分で手を動かしながら検証し、知見をためられるようになりましたね。

昨年までは、クルマに搭載されるカメラ機能の活用に関する業務に携わっていたのですが、パートナー会社へ製品製作をお願いしていたので、要求書や仕様書を書き、開発に関する各種報告を受けつつ、対応するのが主な仕事でした。

しかし現在は自分たちの手で設計や達成目標を議論して、プログラムも書いて検証できるので、ここが以前までの仕事との大きな違いですね。内製開発を行うからこそ、テスト・検証まで自分たちで行えることが魅力です。

純粋に”ものづくり”を楽しむトヨタの社員に惹かれた学生時代

▲ネットワーク管理のアルバイトにて

大学2年生からプログラミングに関わっているのですが、コンピューターサイエンス系の研究室にはいったことがきっかけでした。研究以外にも、大学のネットワークの管理をするアルバイトも行っていましたね。

もっと研究に打ち込みたいと思い修士まで進んだのですが、博士課程まで進むかは躊躇していました。というのも、一度社会に出て、自分たちが研究している技術が社会でどう役立っているのか、技術的な観点だけでなくビジネス面でも学びたいと考えていたからです。

トヨタへの入社を決めたきっかけは、トヨタに内定した研究室の先輩に誘われた勉強会でした。自分がまったく想像していなかった自動車とソフトウェアが相互につながり、自律的にサービスが運営されていく話を聞き、技術的にも難しくかつチャレンジングだと感じ、興味を持ちました。

また、勉強会に参加していた社員へ「仕事は楽しいですか?」と投げかけると、その人は真っ直ぐな目で「楽しい」と答えたのがとても印象的で……。トヨタの社員の方々がものづくりを純粋に楽しんでいることが伝わり、トヨタに惹かれたんです。

トヨタに入社してからは、ビジネスや組織という観点からものづくりと向き合えるようになりました。学生時代は、新しい技術で実現できることばかりを考えていたので、「他分野ではできるのに、なぜ自動車でこの技術を実現できないのか」と感じることもあったんです。

しかし、入社後、クルマならではの視点――たとえば人命最優先という考えや、お客様視点でコストと新機能のバランスをどうとるかというビジネス的な考え方――を得ることができ、何を最優先につくるか、どういう技術に信頼性があるかなど、クルマ目線で議論し、考えられるようになりました。

また、学生時代は個人主義的な研究が中心だったので、トヨタのDNAであるTPS(トヨタ生産方式)も私にとって大きな学びでした。学生の時はテクニックや知見が属人化し体系化できなかったようなレベルのことも、トヨタでは要素を細かく分解し体系化することで組織全体でものづくりや生産性向上につなげようとすることが印象的ですし、おもしろいです。

トヨタのソフトウェアエンジニアならではの経験とやりがい

▲尊敬する上司との癒しのひと時(写真左)

フロントエンドエンジニアとして感じるのは、プログラムを書いて、ただテストをすれば良いというわけではないことです。

TPSの精神に通ずるのですが、トヨタには既存のしくみに本当に無駄がないか、プロセスを解体してもっと良いしくみを議論する文化があります。たとえば、既存の開発プロセスを明示的に分解・可視化し、開発プロセスにおけるボトルネックや手戻りなどのムラ・ムダを議論しながらプロセスを改善しています。普通にエンジニアをしているだけでは、全体最適を意識しながら開発を行う経験はなかなかできないと思います。

自分たちで効率が良く、かつ、品質を高められるようなしくみをつくることができるのは、大変ですが価値のあることだと思っています。全体の生産効率やプロダクトの品質を、ひとつひとつ改善しながら開発が進んでいく過程に寄与できるのはやりがいがありますね。

私たちの会社では、TPSに根ざしたワードを毎日のように耳にするので、嫌でもこのような考え方に興味を持ちます。だからこそ自分で勉強するし、学んだ知識によって開発がうまくいくと、おもしろいですね。

会社としての規模が大きいほど影響範囲も大きく、だからこその楽しさもあります。既存のしくみにただ従うのではなく、自分たちで新しいしくみをつくろうという根本的な議論ができるのが、トヨタの良いところです。

今後の目標としては、まずソフトウェアエンジニアとしての戦闘力をあげ、一人前になれるよう研鑽を積みたいです。規模が大きい分、全体最適を見ながら目の前の技術だけでなく、ビジネスや品質、技術や商品の魅力を踏まえつつ、技術的な話を深くできるようになりたいですね。

そして最終的には、学生時代から興味を持ち始めたコンピュータやネットワーク分野の技術と、入社後に興味を持ったプロセス改善や全体最適などの技術をうまく掛け合わせられる人間になりたいです。

ゼロからイチを生み出す仕事。目指すはクルマをスマホのようなデバイスに!

プログラミングなどで手を動かしているとミクロな視点に陥ってしまい、マクロな話をしていると、ミクロな視点が疎かになってしまうことが自身の課題です。今後は、虫の目の視点も、鳥の目の視点も両方持ちあわせ、状況に合わせ柔軟に使いこなせるようになりたいです。

そのためにも、マインド面では絶えずオープンマインドを大事にしています。一番はお客様のために良い製品をつくること。そのために、チームと目標を共有しつつ、チームメンバーの困難に気づけるよう目を配ることで、広い視野で業務を行うことができると考えています。

技術面では、絶えず勉強を欠かず、基礎を大事にしたいです。AIや自動運転などの技術も、コンピュータとして基礎をたどればベースは同じなんです。アーキテクチャにしてもOSにしてもアプリケーションにしても、自動車最適なサービスをつくるために、コンピュータサイエンスの基礎はこれからもしっかり固めていきたいです。大手町オフィスに、コンピュータサイエンスに長けている人が多くいるので、その人たちの知見をたくさん吸収しています。

中長期的な目標としては、「クルマをスマートフォンのようなデバイス」にしたいです。自動運転の進化が進むと、車室内のユーザーにフリーな時間が増え、手持ち無沙汰になってしまいますが、サードパーティが開発したアプリケーションも搭載できるプラットフォームを作れると、クルマの可能性をもっと広げられると思います。クルマはただの移動手段ではなく、無限の可能性を持ったモビリティになっていくのだと思います。

ただ、システムの堅牢性や互換性、拡張性などなど様々な面を綿密に考慮する必要があります。実現までの道のりは険しいですが、スマートなプラットフォームは10年以内にはできると信じています。そんな未来を見据えつつ、今後はOSや配信などのアーキテクチャを、私自身で設計できるようになりたいですね。