40~60代のベテランたちにも臆さず声をかける
2020年4月に入社し、久喜工場の製造課に所属する山田。2023年5月現在は、PETボトルの基となるプリフォームの製造ラインでオペレーターを務めています。
山田 「プリフォームをつくる機械に問題が起きていないか、異物などが付いていないかを確認しながら作業を行っています。誰もが知る飲料のボトルから、焼き肉のたれやドレッシングといった食卓に並ぶ調味料まで、さまざまな形状のボトルに携わっています」
山田は自身で工具を用いてカスタマイズすることもあるほどの車好き。そんな趣味の中で培った知見が、仕事の製造現場にも活かされていると言います。
山田 「職場では、機械に何か起きたら工具を手に取って直すことがあるんです。逆に仕事で教わったことが車いじりに活かせることもあって、とても楽しいです」
久喜工場のプリフォームの製造工程は、大きく4ブロックに分けられます。山田が所属するブロックでは、まわりは40~60代のベテランたちばかり。抜きんでて歳の若い山田ですが、年齢問わず交流するコミュニケーションスキルの高さが周囲から評価されています。
山田 「仕事をわからないまま放置しておくと成長の機会を失いますし、コミュニケーションを取らないと相手が何を考えているかもわかりません。たとえば、いざトラブルが起こったとき、話しかけなければ直すこともできないんです。
わからないことがあれば聞いて、教えてもらいながら直すようにしています。そうすれば、また同じ事態が起きても今度は自分で直せるほうにもっていけますから。まだ3年目でわからないことが多いからこそ、少しでも多くのものを得られるようにとの気持ちで自分から話しかけるようにしています」
とはいえ、とっかかりがないと、話しかけることを躊躇してしまうもの。山田が意識しているのは、あいさつをすることだと言います。
山田 「あいさつをしてから、その流れで工程について教えてもらったり、『なんのボトルをつくっているんですか、どんな仕組みなんですか』と簡単な話をしたり。それだけでも、『この人は会社のことを真剣に考えてくれているんだ』という姿勢を見せられます。
誰かを見かけたらすかさず声をかけますし、時間があれば休みの日の過ごし方など、プライベートの話もします。職場のみなさんとは、仕事だけの付き合いではないと思っていますから」
失敗体験から得た学び。日ごろのコミュニケーションが迅速な連携につながった
学生時代はサッカーに打ち込んでいた山田。東洋製罐に入社するにあたって「コミュニケーションスキルを活かして働きたい」という想いがあったと振り返ります。
山田 「普段触れているペットボトルが、どういうふうにつくられているんだろうという興味はもちろんありました。加えて、いままでサッカーを通してチームに指示を出したり、勝つためにどうしたら良いのかチームメイトと話し合ったりして養ったコミュニケーションスキルを活かして、チームで動く仕事がしたいと思っていたんです」
入社し配属が決まってすぐのころ、山田は仕事上でトラブルを起こしてしまいます。その際に事態を収拾できたのも、迅速に先輩とコミュニケーションを取れたからでした。
山田 「機械の回し方や止め方を教えてもらっていた際、メモを取りながら聞いていました。『自分で回してみて』と言われ、教えられた通りにやったつもりだったのですが、間違ったボタンを押してしまい機械を止めてしまったことがありました。すごく焦ってしまって『これ、どうしたらいいんだろう』と頭が真っ白になったことを覚えています」
機械の意図しない停止は、周りに大きな影響を及ぼしかねません。その重大さがわかっていたからこそ落ち着きを失った山田でしたが、すぐに先輩に報告することを怠りませんでした。
山田 「急いで先輩を探しに行って『すみません、間違えて機械を止めてしまったんですが』と深く謝罪した上で助けてもらいました。年齢が近く、4つ上ぐらいの先輩です。もう転勤されてしまったのですが、その先輩もサッカーが好きだったこともあり、日ごろからいろいろな話をしていました」
普段からコミュニケーションを重ね人となりを知っていたことが、非常時の迅速な連携につながったのかもしれないと話す山田。こうした失敗経験も成長の糧にしています。
山田 「また、トラブル発生時、『早く直さなければ』という思いが先に立ち、現場内を走ってしまうことがよくあったんです。そんなとき先輩によく言われていたのが『落ち着いて作業してね。一つひとつゆっくり操作すれば大丈夫だから』ということ。今もときどきその先輩の言葉を思い出し、行動を律するようにしています」
2年ぶりに同期が集った研修では、自身のひとことが交流が深まるきっかけに
そんな山田のコミュニケーションスキルが、周囲に波及して良い影響を与えることも。たとえば、コロナ禍でなかなか集まる機会のなかった同期が、全員で集まることができた東京研修でのこと。
山田 「同期とはいえ2年ぶりの再会だったので、どこかぎこちない空気がありました。自分は沈黙に耐えられなくて、研修プログラムの合間にほかの工場から来ている同期に『今日はどちらからいらっしゃったんですか』と声をかけたんです」
そのひとことを皮切りに、参加者が続々と声をかけ合い始めました。研修ではその後に自己紹介のための時間が設けられていましたが、それを待たずに雰囲気が温まり「先に自己紹介しちゃいませんか」という話に。話はそれぞれの好きなことやプライベートの話題に自然と広がり、親睦を深められました。
本来精神的な支えとなり、会えるはずの同期。コロナ禍では顔を合わせる機会がなく、同期ならではの連帯感が生まれる機会も失われていましたが、この研修以降、日々の相談事を話し合えるような関係が続いていると山田は言います。
山田 「仕事をしていると、どうしてもストレスを感じたり、先輩には言いづらい悩みが生まれたりするもの。でも、同期なら話せることがありますし、自分は相談ごとに乗るのも好きなので、悩んでいる同期がいたら聞いてあげたくなるんです。
会社の人だけでなく友人や家族に対してもそうなんですが、『何かあったら、ひとりで抱え込まないで話してね』と声をかけるようにしています」
「後輩が安心して働ける職場にしたい」。久喜工場のホープが見据えるこれから
今の仕事に配属されて約2年。やりがいを感じるときについてこう話します。
山田 「先輩に迷惑をかけずに、自分でトラブルを直せたときにやりがいを感じます。最初は、何もわからず先輩を頼ることしかできませんでしたが、この2年で機械の仕組みや操作についていろいろな知識を得ることができました。
おかげで、先輩がいない中でトラブルが起こったときに、自分でその機械を直し、ラインを再開してボトルを生産できることが徐々に増えてきました」
現在、チームの中で最も若手の山田ですが、いずれ入ってくるであろう後輩に対しても、親身になってサポートしていきたいと話します。
山田 「以前の自分がそうだったように、入ったばかりの後輩は何もわからないでしょうし、どうしたらいいかきっと困ると思うんです。そんなところを見かけたら、先輩である自分のほうから、『どうしたの?何かわからないことがある?』と声をかけてあげることで、きっと安心して話しやすくなる部分もあると思うんです。
自分自身も、先輩と気軽に話せているおかげで働きやすさを感じているので、同じような環境を後輩にも用意してあげたいですね」
「先輩をもう少し楽にさせてあげることが今の目標です。そのためにプリフォームのオペレーターの仕事ももっともっと極めていきたいですね」と、はにかむ山田。先輩、同期、まだ見ぬ後輩、誰に対しても自ら声をかけ関係を構築していくことは、簡単なようでいてなかなか徹底できることではありません。久喜工場きっての“若手のホープ”のこれからの成長が楽しみです。