従業員のモチベーションをさらに高める──工場長としての大きなミッション

2022年現在、入社26年目を迎えた坂口。そんな坂口は2020年4月より、東洋製罐の大阪工場で工場長を務めています。

坂口 「西日本には5つの工場がありますが、大阪工場はペットボトル生産の基幹拠点です。“お客様へ高い品質の製品を安定して供給すること”を工場の第一のミッションとして日々の生産活動にあたっています。

工場長としてのミッションは、まず工場を円滑に運営して収益をもたらすことです。工場長は一般企業だと部長のポジションになり、私のすぐ下の役職は課長になります。生産管理課、製造課、品質課があって、その課長陣とは毎朝ミーティングを行い、前日の生産実績や安全の話などして、コミュニケーションをとりながら連携して工場運営を行っています」

坂口は業務判断や収益管理だけでなく、従業員満足度を向上させる取り組みも行っています。こうした取り組みの背景には、大阪工場に赴任して感じた“ある想い”があったといいます。

坂口 「もうひとつのミッションとして、“従業員が働きやすい職場づくり”を掲げています。私は工場長として赴任した際、まずとても規律正しい職場だと感じたのですが、同時に従業員の自己成長や自己実現については、あまり意識付けられていないイメージを持ちました。工場として生産性を高めるには従業員個々の能力向上が必要です。

そのためには、働く上でやりがいを感じ、前向きに生産活動に従事する中で自己成長してもらうことが重要になると思うんです。そこで、その基本となる『働きやすい職場づくり』をミッションに取り入れたいと思いました」

そこで坂口は、それぞれの想いを知るため、80名を超える従業員一人ひとりとの面談を実施しました。

坂口 「以前、在籍していたテクニカルセンターでも、同じくらいの人数と面談を行っていたので経験はありました。もちろん、従業員の正直な想いのすべてが、私に伝えられるわけではありません。しかし、それでも少しずつ見えてくる部分がありました。このようなコミュニケーションを通じて、ボトムアップを後押しする取り組みは、今後も積極的にやっていきたいですね」

大阪工場では、2021年度から職場環境改善のためのワーキンググループを発足しました。最初のテーマは「モチベーションアップのためのさらなる取り組み」です。

坂口 「今までも施策はありましたが、より仕事のやりがいにフォーカスした取り組みにしていくために、課長陣と勉強会を行い、試行錯誤しながら進めています。具体的には、社内で基本的なコミュニケーションがとれていることを前提として、そこから仕事の目的をきちんと伝達し、仕事のやり方を個々で考えてもらいます。その後、仕事の出来映えに対して周囲が前向きなフィードバックをする、という4ステップを回していくという進め方です。

この基本的なコミュニケーションというはじめのステップがポイントで、従業員の普段の仕事ぶりを見ていると、ライン状況や品質管理の連絡など必要な話は当然しているんですが、上司や他部署への相談といった+αの話が少ないんですよね。一方通行ではなく、フラットなコミュニケーションを上下間でつくるのが難しいと感じました。規律正しいという良い面は維持しつつ、風通しの良い職場を作るために何をすべきか考えています」

従業員の自己成長を目指す上で、意思の疎通がさらに気軽にできる職場づくりに尽力したいと熱く語る坂口。その想いの原点となるのは、23年間在籍したテクニカルセンター時代にありました。

おおらかな風土が東洋製罐入社の決め手──忘れられない上司との出会い

1996年、坂口は理系大学院を卒業後、東洋製罐に入社。大学院では数値解析(コンピューターを使った計算)の研究をしており、それが活かせる職場への就職を考えていました。そこで、さまざまな企業の面接を受けますが、東洋製罐に決めた理由は意外なところにあったのです。

坂口 「いろいろな会社を受けましたが、東洋製罐の面接に行ったとき、『歴史や伝統のある企業って雰囲気が全然違うな』って思ったんです。一言でいえば“おおらか”だったんですよ。そこに魅力を感じて入社を決めました。

実は、他社で最終面接まで進んでいたのですが、当時の人事課長から『うちにおいでよ』と連絡をもらったことも大きかったですね。学生だった私に対しても、非常にフランクに接してくれました。こうした会社の雰囲気や人柄の良さから、『いい会社なんだろうな』とピンと来たんですよ」

温かくおおらかな雰囲気が決め手となり、東洋製罐に入社した坂口。大阪工場での1年間の研修を経て、1997年から2020年までの23年間を、テクニカルセンターで過ごしました。

坂口 「テクニカルセンターでは、5つの部署を経験しました。製品や金型の設計、加工技術の開発などを担当しましたが、学生時代に学んだコンピューターやデータ分析の基礎が役立つ場面も多々ありましたね」

そんなテクニカルセンター時代、坂口に重要な出会いが訪れます。多くの刺激や勇気をくれたのは、後に東洋製罐の社長となる中山 伊知郎でした。

坂口 「中山は、私がペットボトルの成形技術開発に携わっていたときの上司で、当時は部長でした。今だとコスト削減が重要視されがちですが、中山は当時、『技術者は価値を作るためにお金を使えるようになりなさい』という話をしていたんです。それは決して無駄金を使うというわけでなく、何かを始めるときや作りたいものには、ちゃんとお金をかけることも必要だと教わりました。こうした中山の言葉は、今でも私の心に強く残っています」

他にも坂口には、中山について忘れられないエピソードがあります。

坂口 「我々が作った成形機を、本社役員の前で試運転する場面がありました。そのときに中山は、機械から毎分200本で出てくる製品の受け取り役を一緒にしてくれて、『俺にいつまでこんなことやらせるんだ!』って冗談をいいながら機械を15分位で止めさせたんですよね。これは私の勝手な想像なのですが、なぜ中山がこんなことをしたかというと、まだ完成の一歩手前だったので長時間の運転は難しいと思っていたのでしょう。技術的な課題も良く分かった上で、部下が作った成形機の披露を成功裏に終わらせてくれました。

そういう気持ちを感じると、我々部下は課題を克服しようと勝手に奮起するんですよね。まさにモチベーションアップだと思います。そうした姿や周りの人の動かし方など学ぶことがたくさんあり、今の私にもつながっている部分が多くあると思います」

中山との出会いによって、坂口は従業員たちとの接し方においても大きな影響を受けました。頑張りを認める存在の大切さを知ったからこそ、自らもその役割を担おうと日々奮闘しています。

周囲の協力とバランスをとることの大切さ──キャリアアップで得た“気づき”

23年間のテクニカルセンター時代に5つの部署を経験し、係長、課長、そして現在の工場長まで昇進した坂口。そんな坂口には、キャリアアップで得た重要な気づきがあるといいます。

坂口 「立場が変わるにつれて、『本当に自分1人でできることって少ないんだな』と実感します。たとえば研究開発時代、担当係長・課長1人でできることもけっこうあったんですよ。しかし、工場単位のように規模が大きくなると、お金やメンバーなど、あらゆる調整が必要になります。それがなかなか大変でして、周囲をどう動かしていくか、というのが難しいところでもあります」

そういった中で、坂口がマネジメント業務の際に重視しているのが“バランス”だといいます。

坂口 「バランスをとることは、昔から大事にしていることの1つです。というのも、周囲の人を動かすことを考えると、何かしらのバランスは必ずとっていかないといけません。多くのことはトレードオフ(一方を得ると、一方を失う)になっていると感じますし、そこをクリアするためには、何か一つを単純に突き詰めれば良い、ということはほとんどありません。

たとえば、お客様のご要望と改善にかかるコスト、納期と生産能力など、さまざまな課題があります。そんな自分たちが置かれている状況を俯瞰して、適切な判断をすることが重要です。立場が上がるにつれ、幅広い視野を持ち、視座を高くすることの重要性を感じています」

キャリアアップを経て、坂口は自分1人でできることの少なさを実感したと語ります。──しかし、そこで感じるのは無力感ではなく、大きな仕事を現場で動かしている従業員一人ひとりの大切さでした。従業員を大切にする原点には、良き上司との出会いのみならず、立場の変化による気づきも大きく関係していたのです。

従業員たちが自己成長できる好循環を作りたい

さまざまな取り組みを通じて、坂口は今後描くビジョンについて次のように語ります。

坂口 「私が一番成し遂げたいことは、自分も含めた従業員たちの『自己成長』ですね。個々が自分の成長を実感できて、その結果モチベーションが上がるという、好循環を作りたいと思っています。それが最終的に『自己実現』のレベルにまで達すれば最高ですが、私自身もまだまだ道半ばです。

また、自分の成長を実感してもらうためには、周囲の人間の言葉、日ごろのコミュニケーション、査定、表彰、なんらかの数字や形など、さまざまなアプローチがあると思います。このようなフィードバックが活発に行われて、背中を押してくれる環境を作ることが、私の、そして工場の大きなビジョンなんです」

従業員の成長を応援したいという熱い想いを持っている坂口。また、仕事に対するポリシーについてこう話します。

坂口 「実際に『仕事が面白くて仕方がない』という人って少ないと思うんですよね。その中で人との関わり合いであったり、何かしら自分にエンジンをかけたり、ドライビングフォースになるようなものがあると、仕事の楽しさややる気につながると思っているので、そこも強化したいですね」

お客様へ高い品質の製品を安定して届けるためには、従業員にとって働きやすく、やりがいの感じられる職場環境を作らなければならないと語る坂口。そして従業員にやりがいを感じてもらうためには、活発なフィードバックによって、互いにモチベーションアップできる雰囲気を作り出すことが不可欠──このように、すべてがつながっていることを、坂口は工場長として強く意識しています。

お客様、会社、そして従業員のすべてに好循環をもたらすべく、今日も坂口は奮闘します。