高度な知識や技術を駆使した「製缶システムの構築」がミッション
東洋製罐では、金属・プラスチックなど、さまざまな素材を活かした包装容器を開発・製造しています。脇坂が所属するテクニカルセンター設備技術開発部制御グループは、容器を生産する製缶システムの構築をミッションとして掲げています。また、制御グループは、システムにおける電気回路の設計や、設備を動かすためのプログラミングの考案、各種センサーおよび画像処理機を使った検査設備の開発が主な業務です。
製缶設備は、お客様が求める仕様に合わせて構築する場合もあれば、他部署の要望に応えて設計することも少なくありません。仕様が決まった製缶設備の図面を基に、ソフトウェアを使って回路を組み立てていきます。
脇坂 「缶だけでなく、PETボトルや食品用のパウチを製造する設備も手掛けていて、業務は多岐にわたります。そのため個人差はありますが、1人の担当者が3つほど平行して進めていることもあります。『パウチならこの人、金属ならあの人』といったように、それぞれの容器に精通するエキスパートもいますが、繁忙期には互いの業務をフォローし合いながら進めています」
脇坂が勤務するテクニカルセンターには、高度なプログラミング技術を身に付けたメンバーが多数在籍しています。プログラミングといってもさまざまな種類があり、大学で専門的に学んできた新入社員でも、使っているものが異なれば一から指導することもあるといいます。グループには中途採用者も多く、パソコンベースのプログラミングを得意とするメンバーや、PLC(programmable logic controller)と呼ばれる制御機器を用いたプログラミングで経験を積んできたメンバーもいます。
脇坂 「私はもともと、設備の制御設計であるPLCを専門としてきました。自らの実務と平行して、若手社員を連れて新規設備を立ち上げるなど、OJTで技術指導にも取り組んでいます。お客様の工場を訪ねて新しい設備を設計することもあれば、既存設備の改善やブラッシュアップを任されることも多いですね。ご要望に的確に応えるためにも、工場の方々と一緒に作業をするケースがほとんどです」
設備をより良くするためには、自ら各工場に足を運ぶ必要があると語る脇坂。コロナ禍で頻度は減っているものの、以前は多い年で1年のうち3割は出張することもあったといいます。出張には若手社員が同行することも多く、実際に設備を見ながら技術教育を行うこともあります。
脇坂 「私は2021年に副主査になりました。後輩を指導するだけでなく、若手社員と上司をつなぐパイプ役として、円滑なコミュニケーションを図ることも大切な役割です。とくに若手は上司に直接意見をするのが難しいと思うので、職場環境の改善要望など、積極的にヒアリングするよう心掛けています。コロナの影響でプログラミングなどは在宅でも作業してもらいますが、こうした対応も含めて対面で伝えたいことが多いので、私は出社することがほとんどですね」
容器製造の国内トップメーカーでモノづくりに携わりたい
脇坂が東洋製罐に入社したのは、大学で見かけた求人票がきっかけです。大学では応用電子システムを専攻し、電気的な知識や回路の設計、プログラミングなどの基礎を学ぶ中、いずれは電気の分野で働きたいと思っていたと語る脇坂。また、メーカーである東洋製罐なら、これらの技術を活かせると考えたのです。
脇坂 「正直、最初は会社名さえ知りませんでした。しかし調べてみると、容器の国内トップメーカーであることがわかったんです。誰もが必ず手にするものを製造できることに魅力を感じ、入社したいと思うようになりました。技術力はもちろんですが、私はモノづくりにも興味があったので携わってみたいと思いました。また、面接時は業務の説明だけでなく、趣味やプライベートが話題になるなど、話しやすいフランクな雰囲気だったんです。『人間関係を大事にする企業』という印象を持ったのも、東洋製罐に決めた大きな理由です」
脇坂は入社後、3年間は開発本部(現・テクニカルセンター)に在籍。大学時代に身に付けた知識や技術を活かせたことから、苦手意識もなく業務を受け入れることができたといいます。その後2年間は、ジョブローテーションの一環として、東洋製罐の広島工場に勤務します。広島工場での経験は、これまでの業務と異なり苦労することもありましたが、それ以上に得るものも大きかったと語ります。
脇坂 「広島工場での仕事は、開発本部の業務とは大きく異なりました。工務課の電気係に務めることになり、設備の保守やメンテナンス、修理を担当するなど“設計する側”から“使う側”になったわけです。
最初は苦労したものの、日常的に設備を間近で見て、触れて、知識や経験が増えていった点が非常に良かったですね。出張だけではできない経験もあり、気づきも多かったです。この経験をきっかけに、現場で求められる仕様や、使いやすさについて意識できるようになったのは大きな収穫です」
広島工場のメンバーと共に働いた経験は、その後のお客様とのコミュニケーションを取る上でも役立っているといいます。いろいろな人と触れ合う中で話題の引き出しが増え、またコミュニケーションの仕方の違いに気づくことで、今では自然体で接することができるようになったと話します。
脇坂 「工場には職人気質な担当者もいますから、若い頃はどうコミュニケーションを取ればいいのかわからなかったんです。ですが、性格やコミュニケーションの仕方の違いだとわかってからは、構えずに自然体で接することができるようになりました。慣れも大きいかと思いますが、出張先ではいろいろな方と出会えるので、今では出張が好きになりました」
我が子に誇れる仕事であることが大きな原動力に
出張が多い脇坂は、国内だけでなくイランやタイ、台湾をはじめ海外に出向く機会もあります。たとえばイランは、2019年から2回にわたり訪問し、現地の工場に導入される自社設備の試運転から立ち合いました。
脇坂 「私が一部を設計したこともあり、稼働に際して2週間ほど滞在しました。日本人スタッフも若干いますが、現地の方々と英語を使って仕事をするケースが多いです。設備の操作説明も私の担当ですが、実は英語があまり得意ではなく、現地スタッフも似たような語学レベルでなかなか大変でしたね。それでも技術に関する用語は世界共通なので、ボディランゲージも交えて、なんとか乗り切りました」
こうした海外での経験も評価され、副主査に任命された脇坂。昇進したことで若手への技術伝承を重んじるようになり、働きやすい職場を築こうという意識も芽生えたといいます。そんな脇坂が仕事をする上で、やりがいを感じる瞬間を次のように話します。
脇坂 「中には、半年ほどかけてイチから作り上げる設備もあり、『自分が作ったんだ』という達成感を味わえることが仕事の醍醐味ですね。回路の設計にもプログラミングにも、それぞれ1、2カ月を要するため、完成したときの喜びはとても大きいです。こうしたやりがいを、もっと後輩に発信していきたいと考えています」
脇坂が最も記憶に残っているのは、入社後間もなく担当した飲料缶の大型プレス機器を設計したことだといいます。自ら回路やプログラミングを組み、本格的に設備を動かした初めての仕事であり、当時の気持ちを脇坂はこう振り返ります。
脇坂 「何もかもが初めての経験でしたので、うまくいかないことも多く、そのたびに先輩社員が教えてくれました。周囲のサポートもあって、ようやく完成したときの感動は今でも忘れられません。最近の話だと、複数デザインのラベルを缶に貼るラベラーという設備を手掛けました。
人気アニメの関連商品でよく用いられ、異なるキャラクターの缶を同時に8種類も生産することができるのです。子どもにも『これ、作ったんだよ』って、自慢できる誇らしい仕事だと感じています」
こうした自分が携わった製品が、世に出ているのを目にしたとき、大きなやりがいを感じると脇坂は語ります。また子どもにも誇れる仕事であることも、脇坂の原動力になっています。
自らがパイプ役となり、役職の垣根をなくした理想のチームを目指す
どの業界においても、技術職は転職しやすい職種といわれ、脇坂の職場でも課題にあげられています。大事に育て上げ、実践的な経験を積んだ社員が辞めてしまうことは、チームのみならず会社にとっても大きな痛手です。
そんな引く手あまたの中で、高い技術力をつけた人材が、東洋製罐で働き続けたいと思ってもらえるように、脇坂は日頃から心掛けていることがあるといいます。
脇坂 「職場の雰囲気を良くするためには、メンバーと積極的にコミュニケーションを取り、とくに若手の意見を丁寧に吸い上げる必要があると考えています。その声を上長であるグループリーダーに届け、一緒に『働きやすさとは何か?』を考えるのも大切な仕事なのです。後輩とリラックスできる関係を築き、息抜きをしながら会社では話せないことも吐き出してもらおうと、ときには彼らを誘ってキャンプに出かけることもあるんです」
他にも若手の仕事に対するモチベーションを上げようと、脇坂は自身の得意分野に関して勉強会を開くことも少なくありません。中でも脇坂が得意とする海外製PLCのプログラミングは、1年間に3、4回ほど勉強会を開き、若手を集めて技術と知識を伝えています。そんな人材育成にも力を入れている脇坂には、目指すべき理想的なチームの姿があります。
脇坂 「私が目指しているのは、プライベートな付き合いも含めて役職の垣根をなくし、円滑なコミュニケーションがとれるチームです。ときには上司と部下で意見し合うことも必要だと思います」
一方で脇坂は自身のキャリアに関して、このように語ります。
脇坂 「私は設備の設計に携わることが本当に好きなので、お客様の要望にも柔軟に対応できるよう、さらに技術力を高めていきたいですね。また今後も上司と若手をつなぐパイプ役になり、理想のチームを作り上げていきたいと思っています」
2022年現在で脇坂は入社17年目になります。一つひとつの仕事に感動できるフレッシュな気持ちを忘れず、今後もメンバーと共にまい進していきます。