自分の手を動かしてものを作ること。形になって世に出た姿が見られる喜び
私が大学時代に研究していたのは、機械力学や機械制御。4年生の時は流体工学を扱っていましたが、正直なところ現在の仕事と結びつきがあるわけではありません。
ただし、実験を主とする研究か計算を主とする研究か、という選択をする際に、私の場合は自分でいろいろ装置を組み立てて研究する方に興味があったので、実験側の研究を選びました。
就職先を考えるにあたっても、実際に世に出るものを自分で作りたい、という思いが強かったので、東洋製罐に興味を持ったのです。
私が最初に東洋製罐を知ったのは、合同企業説明会です。世の中のあらゆるものが何らかの容器に包まれている──包装容器のメーカーであれば、自分が手掛けたものを、日常における多くの場面で見ることができるのでは、と考えて入社を決めました。
自分の手を動かして何かを作ることがもともと好きだったこともありますが、それがきちんと形になって世に出る。両方の希望が叶えられる仕事ができる、と思いました。
入社後、最初は製造課に配属され、製造業務に携わりました。
現場で缶やペットボトルの製造に携わり、機械の仕組みから、実際に現場ではどのようなことを考えているのか、どういった苦労があるのかなどを学びました。2年目から工務課に異動し、機械の保守や点検といった業務を担当しました。ここでは缶を作るという立場から離れることになりましたが、1年目に学んだ現場の考え方やどのような改善が必要とされているのかということを踏まえて仕事に取り組んでいました。やはり現場に入らなければ見えてこないものが確実にあります。このときの経験は、開発の仕事をする上でも、役立っていると思います。
現在私が所属しているテクニカルセンターは、いわば開発の最前線。そこで私は、飲料缶の開発を担当しています。新しく需要のある缶を製造するための機械などを設計するのが仕事です。
試験用のツールを工場に持ちこみ、実際に新しい缶を作りながら現場と一緒に評価して、実際に世に出しても大丈夫かどうかという見極めをするのが一連の流れ。
私は缶胴の担当ですが、蓋、印刷、中身の品質評価、材料の担当など、それぞれに細かく担当が分かれています。それぞれに特化したプロ達とチームとして連携しながら進めています。
予期せぬ現場のトラブルと失敗を通じて体感した、チームを超えたサポート
テクニカルセンターのメンバーは、それぞれが担当分野についてのエキスパートです。私自身も仕事をする中で他の担当者と会話をし、担当外の分野についても勉強になることが非常に多くあります。一方で、自分にとって専門外のことでは分からない事もたくさんあるため、共通言語を探すのが大変だな、と感じることもあります。
ですから、私としては直接のやり取りが大切だと考えています。今は打ち合わせや連絡はメールなどになりがちですが、直接会って話したり、電話であっても直接相手とやり取りしたりすれば、すれ違いは減るのではないかと思います。
これまでで最も大変だったのは、入社して4年目の時にある開発をメインで担当したときのこと。基礎試験のときには何も問題なく缶を作ることができて順調だったのですが、最後の工場での量産試験で予期せぬトラブルが発生してしまったのです。
このとき、私は一人で工場に来ていたので、現場のいろいろな担当の方々と深く会話をしながら、テクニカルセンターにいる先輩方にも電話で相談をして対処の軸を決めました。テクニカルセンターでは若手でも一人で工場へ出張することはよくあり、技術者として自分で責任を持って現場の方と会話をしながら試験を進めなくてはいけません。
このトラブルが起きた時には、とにかく時間が無かったのでいろいろな人にアドバイスをいただいきました。うちの部署は困ったことがあれば同じチームの人だけではなくて部内のたくさんの人が進んで相談に乗ってくれるので、本当に助かりますしサポートが手厚いところだと実感しました。
技術的なことだけではなく、精神面でも都度アドバイスやフォローもいただけますし、追い詰められた心境でいたときに「必ず解決の道筋があるから大丈夫」と言われたのも、非常に印象的でした。
それから私自身が後輩を持つようになって心掛けているのは、相手が納得するまで話をするということです。自分が先輩からそうしていただいたように、相手が安心できるまでとことん話につき合うようにしています。先輩がもう帰りそうな雰囲気のときでも遠慮せずに教えを乞うていたもので(笑)。逆の立場のときはどんな質問でも真摯に答えるよう努めています。
全社が一丸となって取り組むことで、まだ世にないものを作ることができる
入社して7年が経ちますが、やはり自分が手掛けた製品が市場に出て、実際に触れたり飲んだりできることが、自分にとって最も嬉しい瞬間です。機会としてそう頻度が高いわけではありませんが、お客様から直接「これいいね」と言っていただけることもあり、やはり生の声をいただけると「この仕事をやっていて良かったな」と実感します。
また、2018年の冬頃、技術プレゼンもかねてアメリカに行かせていただいたことがありました。これは特殊な案件で、お客様先で東洋製罐が製造した缶にワインを充填して蓋をし、製品として完成するところまでの作業を試験するのが主な目的でした。実際にお客様と顔を合わせてすべての工程を確認し、完成したてのワインをお客様と一緒に飲んだことは、達成感という意味でも最も印象的な経験です。
こうした貴重な経験を踏まえ、現在挑戦しているのは、アルミ缶の世界最軽量化。これまで世にないものを作るということは技術的なハードルがとても高く難しいミッションです。トライ&エラーの繰り返しですし、実際の製造段階では工場に行って稼働している現場のラインを止めて試験をしなくてはならないので、開発チームだけではなく会社一丸となって進めていく必要があるのです。
この開発中のアルミ缶は、毎年世界中の製缶メーカーが集まって行われるcanmaker SUMMITという催しの「プロトタイプ部門」で金賞を受賞しました。
もちろんこうした受賞はとても励みにはなりますが、それよりも私自身としてはやはりお客様の生の声を聞いたり、完成の喜びを分かち合えたりすることのほうに、より大きなやりがいや達成感を感じます。
それぞれの分野のプロフェッショナルとともに開発に取り組める環境が魅力的
東洋製罐という会社は、缶以外にもペットボトルやフィルムパウチなどさまざまな素材の容器を扱っています。同じ会社内にそれぞれの分野のプロフェッショナルがいて簡単に連絡を取り合うことができるので、それぞれの分野の専門家と連携をして新しいものを作り出せることが、一番の強みではないかと思います。このことは、開発に携わる者にとっても非常に魅力的な環境といえます。
今私が取り組んでいる軽量缶は、容器業界や環境への影響には大きな意味があるものですが、実際に製品を手に取るエンドユーザーにとっては気付かない小さな変化かもしれません。私自身はまだまだ目の前のことに精一杯で、先の未来のことは考えられていませんが、いつかは、エンドユーザーが手に取ったときに、その缶を通じて何か新しい経験ができたり驚きを受けたりするといった、何か楽しんでもらえるような缶を作れたらいいな、と考えています。
時間的な制約もある中で、難度の高いミッションにチームとして取り組んでいく今の仕事は、とても楽しくやりがいも十分。加えて、幸いなことに、先輩後輩やチームといった垣根がなくみんながアドバイスし合ってフォローもし合える、とても居心地のいい環境です。
私自身の経験からいえば、自分の手で世に出るものが作りたいという技術系の人にとって、東洋製罐はチャレンジする機会がたくさん得られる場所だと思います。ものづくりに夢のある人は、ぜひ私たちの仲間に加わっていただきたいですね。