誰もがプログラミングを学べて、ものづくりを楽しめるようにしたい
プログラミング教育は、これからの教育で避けては通れない分野です。イギリスやフィンランドをはじめとする諸外国では、すでに小学校からの必修化が進んでいます。
日本でも2020年に小中学校で必修化することが決定しました。すでに実証授業を実施している学校もあります。子どもに習わせたい「習い事ランキング」で1位になっていることからも、その注目度が伺えます。
しかし、学校で教えるにしても、新しく教室を開講するにしても突き当たるのが、3つの大きな課題です。
まず、「教材がない」。教材自体は数多く市販されていますが、内容が少し難しかったり、教え続けるには内容が不足したりしていることがほとんどです。
次に、「講師がいない」。プログラミング経験がある人と、子どもに教えられる人。それが両方できるという人は稀です。
そして最後は、「集客が難しい」。都心部ではまだしも、中都市や小都市では受講者の募集に苦労する傾向があります。
これらの課題をすべて解決するためにエクシードが開発したのが「テックフォーエレメンタリー」です。これは映像授業を活用した子ども向けプログラミング教室で、2017年6月現在、日本全国で100教室以上が加盟しています。
最大の特徴は、講師を新たに雇う必要がないこと。授業は映像で行なうので、プログラミングに関して素人でも開講できます。
映像授業の題材は、Scratchという子ども向けプログラミング教育言語。ゲームをつくりながら、プログラミングの考え方や知識が自然と身に付けられるようになっています。
私たちが加盟者の皆さんに用意しているのは、映像授業や生徒用テキスト、講師用ガイド、集客支援のためのWEBサポート、販促物などです。開講に必要なものはすべて揃っていますし、販促物は自分の教室に合わせてカスタマイズOK。また、初期費用やロイヤリティも比較的安価ですので、あまり予算のない方でも熱意さえあれば開講できます。
そもそも、この「テックフォーエレメンタリー」は、代表である尾市守の”デジタルによるものづくり”へのこだわりからスタートしました。
尾市 「ひとりでも多くの子どもたちに、プログラミングなどを通して、デジタルでものをつくる楽しさを知ってもらいたいと思っています。僕自身がそうだったように……」
変化する時代の中で、進むべき方向性を「教育とIT」に見出す
尾市がプログラミングに出会ったのは小学校2年生のとき。当時はファミコンが発売したばかりで、ようやく家庭にゲーム機が入ってきた頃でしたが、教育熱心だった両親は、ゲームもできてプログラミングもできるMSX(8bitパソコン)を買ってくれたのです。
尾市 「パソコンにカセットを入れればゲームもできましたが、 BASICという言語で簡単なプログラムを作ることに夢中になっていました。すごくシンプルなコマンドで、線を描くとか色をつけるくらいのことしかできなかったんですけど、思い通りに動いたときはうれしくて。いまでも鮮明に覚えています」
当時は、企業にもパソコンが導入されはじめた時代です。当然、プログラミングは一般的な認知度がなく、教材もありませんでした。そこで尾市は、パソコン関係の雑誌を見て、そこに掲載されているサンプルコードを打ち込んでプログラミングを学んでいきました。
そして大学生になる頃、インターネットが登場。尾市は、世界中の人が情報を収集したり発信できるインターネットの魅力にたちまち惹かれていきました。
さらに同時期、彼は海外のNPOの調査や、NPOを支援するNPOで働いた経験を通じて、日本にはNPOのマネジメントを学ぶ場が不足していることを知ります。尾市 「日本のNPOの現状を知るにつれ、“NPOの経営を学ぶような大学のようなものが必要なのでは”という思いを持つようになりました。しかし、そのときの自分には何もなくて。そこで、能力や資金、ネットワーク等を得る為には起業するのが一番の近道ではないかと考え、その第一歩としてIT業界に就職することにしたんです」
セールスフォースなどでエンジニアやコンサルタントとして経験を積んだあと、ベンチャー企業の役員として転職した尾市。そこで最後に携わったのが、河合塾グループのWeb戦略プロジェクトでした。
スケールの大きなプロジェクトに気合十分で取り組んでいた最中、ベンチャー企業の倒産が決定……。しかしプロジェクトマネジャーとして途中で放り出すわけにもいかず、尾市はそのプロジェクトのみを引き継ぐ会社として、エクシードを立ち上げました。
これが図らずも、結果的に尾市の強みと関心が合致する“教育×IT”に進むきっかけとなったのです。2011年7月のことでした。
ワークショップで感じた手応え、社会に必要とされていることを確信
起業後は、河合塾をはじめとした教育機関向けのITコンサルティングをしつつ、自社事業を立ち上げる為に教育系のWebサービスをいくつかリリースしてみるも、マネタイズに苦労するなど、二足の草鞋での試行錯誤の日々が続きました。
しかしそんなある日、友人たちと飲んでいると、たまたまプログラミング教室の話に。
当時はちょうどプログラミング教室が流行りはじめた頃でしたが、学べる場所が都心にしかない。だったら塾などの教育ビジネスをやっている人たちと組めば、地方にまで事業を広げられるんじゃないか……そんな話題で盛り上がりました。
尾市 「やろうと思ったら不思議なもので、メンバーもネットや人づてですぐに集まり、最初のワークショップの会場もメンバーの自宅近くの長野県松本市にあるIT系専門学校が、場所やスタッフ(生徒)、パソコンを貸してくれることになったんです。しかも新聞広告まで出してくれて」
1日体験のワークショップには、なんと50名もの申し込みが入り、開催を2回に分けたほど。反響も非常に大きく、地元新聞の一面でも紹介されました。
尾市 「『子ども向けのプログラミング言語でゲームをつくりませんか』という文句に、楽しそうだからということで多くの方に申し込んでいただきました。子どもたちにとって、それが想像以上に楽しかったようですね。これは世の中に必要とされているなと感じました」
このプログラミング教室を、どのように展開していくか。私たちはまず、FC化を目指してブログをはじめることに。すると、すぐに全国各地から問い合わせがきました。
尾市 「でも全国からの問い合わせすべてに応えるのは、無理があったんですよね。だったら、教材を映像授業にすればいいんじゃないか、と——。そう思って映像を作り始めたのが2015年の秋から年末にかけてです。この時期は本当に忙しかったですね」
尾市のコンサルティング業と並行して、私たちは映像授業とテキストや販促物などを作成し、FC化に必要なパッケージをつくりあげました。こうして、「テックフォーエレメンタリー」が本格稼働しはじめたのです。
加盟者のみなさまと協力し合いながら、サービスをより良いものにしていく
FCの教室をまずはモニター募集してみた結果、想像以上の反響がありました。そして最初に「テックフォーエレメンタリー」に加盟してくれたのは、福岡県にある学習塾の先生でした。その先生自身はプログラミング未経験者だったのですが、子どもたちは映像授業だけできちんと学んでくれたのです。
はじめは当然、何の実績もなかった「テックフォーエレメンタリー」。しかし私たちのサービスに共感してくださり、「加盟したい!」と問い合わせてくれる方々が少なからずいて、そんなみなさんの熱意に押される形で徐々に広がっていきました。
事業開始から半年が経過したとき、千葉県でSTEM教室(科学や数学などの領域に重点をおいた教育)をはじめたという元小学校教師の方が加盟されました。「学校では教えられないことを教えたい」という思いで教室をはじめたそうですが、プログラミング教室でもすぐに20名もの生徒を集めました。
この方は、教室運営者の目線から集客のためのチラシをつくってくれ、現在ではそのチラシは、全国の加盟教室で利用されています。また、最近は、新しく教室を開こうという方に向けた説明会でアドバイスをするなど、本部スタッフ的な役割も担っていただいています。
尾市 「本部と加盟者という関係性ではありますが、上下関係ではなく、みんなでより良いサービスを創っていこうというスタンスなんです。だからできる限り、現場の生の声もどんどん拾って形にしていきます」
現場の意見から夏にスタート予定なのが、映像授業の英語版。英会話教室からの希望で開発しました。ほかにも5歳からタブレットでプログラミングを学べるコースや検定受験用のコースなどをリリースしました。現在は、次のステップの授業(HTML、CSS、javaなど)も準備中ですが、全て加盟教室や保護者などの声を基に企画しています。
2017年6月現在、テックフォーエレメンタリーの加盟教室は100を超え、北海道から九州まで、全国各地でプログラミング教室が開講されています。加盟者のうちの3割は、主婦やフリーランスのエンジニア、定年退職した高齢者など個人の方々も含まれます。
尾市 「私たちとしては、個人の方々にもすごくポテンシャルを感じていて。個人の加盟者が増えれば、全国の市区町村で教室が展開できると思うんですよね。もちろん一方では、全国展開している大手企業との提携なども視野に入れて動いています。ひとりでも多くの子どもたちに、プログラミングを学ぶ機会を提供したいと思っています」
エクシードが見つめる先にいるのは、全国どこに住んでいても、誰でも等しくプログラミング教育を受けられる子どもたちです。プログラミングでものづくりの楽しさを学んでもらうために、私たちはこれからも加盟者のみなさんと手を取り合い、より良いサービスを提供していきます。