「転勤」について、みなさんはどのようなイメージを持っているでしょうか?それまでとは異なる仕事環境、見知らぬ土地での生活となれば、不安要素の方が大きいという方も多いかと思います。実際、就活生の中には転勤の有無を重視している方も多いようです。
一方で、転勤をきっかけに新たなチャレンジをしたり、経験の幅が広がったりしたビジネスパーソンも多数います。そこで本記事では、就活生やビジネスパーソンを対象にした転勤に関する調査結果のご紹介と、転勤経験者の経験談をご紹介します。
「転勤」をネガティブなイメージだけで受け取るのではなく、自身のキャリアを広げる一つの手段として考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか?
就職活動中の学生は「転勤」をどう考えているの?
株式会社学情(本社:東京都千代田区)が2025年3月卒業(修了)予定の大学生・大学院生を対象に実施した調査によれば、転勤のない企業は「志望度が上がる」と回答した学生は8割に迫ります。
また、勤務地や転勤の有無について、「最優先で重視する」と回答した学生が19.4%、「最優先ではないが重視する」と回答した学生も7割に達するという結果になりました。
同調査では、「仕事内容や給与が同じであれば、転勤のない企業のほうが好ましい」「勤務地はどこに住むかにも直結するので重視している」「転勤の有無よりも、どこに転勤の可能性があるかが気になる」といった声が寄せられており、就職活動において、多くの学生が勤務地や転勤の有無を重視しているということがわかります。
■調査概要
・調査期間:2023年8月9日~2023年8月22日
・調査機関:株式会社学情
・調査対象:あさがくナビ2025(ダイレクトリクルーティングサイト会員数No.1)へのサイト来訪者
・有効回答数:387件
・調査方法:Web上でのアンケート調査
※ 各項目の数値は小数点第二位を四捨五入し小数点第一位までを表記しているため、択一式回答の合計が100.0%にならない場合があります
転勤に対するイメージが二分になった社会人
就職活動中の学生の中では転勤がない方が好ましいという結果になり、あまり転勤に対してポジティブなイメージが無いようです。では、企業で働いているビジネスパーソンは転勤をどのように捉えているのでしょうか?
求人検索エンジン「Indeed(インディード)」の日本法人、Indeed Japan株式会社(本社:東京都港区、以下Indeed)が、転勤に関する求人動向・意識調査を実施。20~50代で現在の雇用形態が正社員または公務員の4,480名を対象に実された、転勤」に関する意識調査では、転勤に対するイメージは「どちらとも言えない」という意見が多いものの、肯定派・否定派は二分の傾向が見受けられました。
また、回答者全体と転勤経験者の回答を比較すると、転勤経験者はポジティブな印象を抱いている方がが多いという結果となりました。
転勤経験者が転勤して良かったと感じたこととしては、1位「通勤時間が減った(21.2%)」、2位「新しい環境で気分転換できた(20.3%)」、3位「良い経験を積むことができた(18.2%)」といった項目が上位にランクインしており、経験したからこそ実感できるものもあったようです。
■ 調査概要
<転勤に関する求人動向調査>
・調査主体:Indeed Japan株式会社
・調査対象期間:2018年1月1日〜2023年4月30日
・調査方法:対象期間において、Indeed上に掲載された正社員求人のうち「転勤なし」に言及している求人の割合を算出
<転勤に対するイメージに関する調査>
・調査主体:Indeed Japan株式会社
・調査対象:20~50代で現在の雇用形態が正社員または公務員の男女4,480名
・割付方法:性年代とエリアをそれぞれ掛け合わせて均等割り付けにてアンケートを回収。公務員を含む正社員の人口構成比に基づいてウェイトバック集計を実施。
・調査方法:インターネット調査
・調査期間:2023年3月24日~4月5日
※ 構成比(%)は小数第2位以下を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合があります
転勤経験者が転勤で得たものとは?
Indeedの調査では転勤を経験したことで、ポジティブなイメージを抱く方も増えているという結果となりましたが、実際に転勤を経験した方は具体的にどのような経験やスキルを得たのでしょうか?ここからは、実際に転勤を経験した方の経験談をご紹介します。
※ 掲載内容は記事公開当時の内容です
▶︎アジア航測株式会社
事業内容:空間情報コンサルタント。高度なセンシング技術をベースとした空間データの収集・解析、活用提案、実施プラン策定まで、一貫した技術サービスを提供
・仕事内容:土砂災害ハザードマップの作成と火山の土砂移動状況の把握などを担当
入社後は神奈川の本社に配属され、4年目で九州支社へと異動。転勤は仕事の幅を広げる良い契機となりました。
菊地さん 「九州は一度も訪れたことがなく、初めて上司から異動の打診を受けたときは驚きました。しかし、火山の多い九州なら必然的に火山の分野に深く携わることができますし、新しい場所で頑張るのも良いと思い、異動を受け入れました。九州支社の国土技術課の社員は約18名で、私が所属している防災グループは8名。人数が少なく複数の分野を皆で協力して行うため、私一人が対応すべき分野が広くなり能力の幅も広がると感じました」
→ストーリー:一人でも多くの人を被害から守りたい。ハザードマップを作成する技術者の信念
▶︎沖電気工業株式会社
事業内容:ソリューションシステムおよびコンポーネント&プラットフォームの各分野における製品の製造・販売、システムの構築・ソリューションの提供、工事・保守・その他サービスなど
・仕事内容:経理部 計画チームで管理会計などを担当
そんな安部にとって、入社後、大きなターニングポイントとなる出来事がありました。入社3年目の春、静岡県(沼津)への転勤となったのです。
安部さん 「沼津にある工場の経理担当として、原価に関わるチームに異動になって……。正直、『せっかく上京したのに、また地方に行かなきゃいけないのか』という思いがありました。沼津工場での仕事内容をまったく理解していなかったので、その不安も大きかったですね」
その後、沼津で2年間を過ごした安部。現地で多くを学び、経理担当として大きく成長するきっかけになったと振り返ります。
安部さん 「結果的に、キャリア形成という視点でいうと、とても勉強になりました。入社後すぐに担当した財務会計は、簿記の知識があれば、会計基準を調べながらなんとか乗り越えられる部分がありました。ですが原価管理や管理会計にかかる業務では、社内の決まり事や過去事例をより考慮する必要がある場面が多く、経験が求められる感覚が大きかったです。
工場の経理を担当したことでひとつステージが上がったというか、知識が格段に増えました。業務を覚える過程で日商簿記2級を取得するなど、大きくスキルアップしたと思っています」
→ストーリー:会社を、社会を支える“縁の下の力持ち”に──終わりなき道をゆく経理担当の道標
▶︎デル・テクノロジーズ株式会社
事業内容:個人・法人のお客様を対象に、パソコン・モバイル端末から基幹システムやクラウドの導入支援、セキュリティサービスに至るまで包括的な IT ソリューションを提供
・仕事内容:外勤営業として直近は金融業界を担当
北口さん 「地方への移住に戸惑いもありましたが、いざ住んでみると宮崎はすごくすてきな場所。東京に戻ってきてからも、年に数回は宮崎に帰るほどお気に入りの場所となりました(笑)。海が近いのでサーフィンを楽しむメンバーもいましたし、私も就業後の時間を趣味に充てる日々を送りました。仕事一辺倒だった毎日から、プライベートも大切にする働き方へ変化し、“ワークライフバランス”を体現できる日々を送ることができました」
→ストーリー:ロールチェンジが活躍のきっかけを作る──デル・テクノロジーズで広がる営業キャリア
▶︎東洋製罐株式会社
事業内容:製缶・製蓋機械や飲料充填設備などの製造販売、飲料充填品・エアゾール製品・一般充填品(液充填製品)の受託製造販売、貨物自動車運送業や倉庫業など
・仕事内容:労務系業務をメインに、総務系業務も担当
石岡工場でキャリアをスタートした飯田さん。総務課の業務に楽しさを感じながら勤務していましたが、入社4年目の転勤で初めて自分のスキル不足に直面したと言います。
飯田さん 「石岡工場では、“入社工場の新入社員”という温かい目で見てもらえる環境でした。しかし、転勤先の仙台工場では“担当者として何ができるのか”を問われるようになりましたが、当時の私ではスキルが足りず、求められているレベルには届いていない状態でした。しかも、初めての東北だったので、溶け込めるか不安を感じていました」
慣れない土地でスキル不足に苦しんだ飯田さん。地道な努力で克服していったと振り返ります。
飯田さん 「自分を信頼してもらえるよう努力しました。まずは、従業員の方の相談事や依頼事に対してとにかくレスポンスを早くするように。
あとは、担当者としてのレベルを上げるために必要なPCスキル・法律知識や資格取得の勉強に取り組みつつ、当時の総務課の上司・先輩方や他部門の方々から手厚い指導とフォローをしてもらい、給料計算から修繕業務までとにかくさまざまな業務に積極的に携わらせてもらいました。そういうことを一つひとつ積み重ね、少しずつ溶け込めるようになっていたかなと思います」
この経験以来、飯田は“早いレスポンス”をモットーに、『従業員はお客様』と考えて業務をするように。努力の甲斐あって、2019年からは仙台工場と千歳工場のエリア連携が始まり、仙台工場にいながら千歳工場の業務も任されるようになりました。
→ストーリー:人と関わり喜びを分かち合いたい。行動力を武器に取り組むエリア連携業務
▶︎株式会社ポニーキャニオン
事業内容:音楽、教養、文芸、スポーツ、映画、娯楽など各種オーディオ・ビジュアルコンテンツ、及び書籍の企画、制作、販売、映画配給、イベントの企画制作、地方創生事業
・仕事内容:エリアアライアンス部で地域との連携によるエリア活性化の一助を担う事業を推進
入社後は希望通り営業職に配属。そこから20年間、転勤を繰り返しながらも営業一筋の時代が続きます。その営業活動の中で有江さんは、転勤先の地方の魅力を実感するようになります。
有江さん 「入社して1週間も経たないうちに札幌支店に配属され、札幌で4年半勤務しました。東京出身でしたから、北海道で生活するのはもちろん初めて。地元以外の場所で働くことに最初は前向きだったわけではありませんでしたが、3年ほどが経ったころ、その土地での生活にも仕事にも慣れたことで、一気に視界が開けて、何もかもが楽しくなった気がしたんです。
街を歩けば、これまで気づかなかった地域の魅力が目に入ったり、得意先へ行く道中にガイドブックにも載っていないような絶景を見つけたり。まだまだ自分の知らないことがたくさんあると気づかされてからは1日が24時間では足りないとまで思うようになりました」
その後も有江さんは転勤を重ね、北海道のほかにも大阪や福岡に赴任しましたが、その行く先々で、地方の魅力を発見することになるのでした。
→ストーリー:シャッター通りを蘇らせたい──。転勤先で芽生えた当事者意識と地域活性化への想い
▶︎ランスタッド株式会社
事業内容:人材派遣サービス、人材紹介サービス、テクノロジーサービス、アウトソーシング事業、人事サービス
・仕事内容:新宿CS支店の支店長を務める
最終的に、長岡支店へ転勤する道を選んだ山本さん。文化も、人の特徴も違う地方で多くを学んだことが、キャリアアップへの足がかりとなりました。
山本 「知人がひとりもいない中、必ず成果を出すと決めて新潟へいきました。実際、それが実現できたのは、拠点の方々が温かく迎えてくれたおかげ。人に恵まれ、仕事に集中できる環境が長岡支店にもありました。
マーケットが変わると、人が変わります。いまとなっては、地方勤務をしたことが自分のアドバンテージだと誇れるくらい、本当に貴重な経験を積むことができたと思っています」
→ストーリー:原動力は「人のために」という想い。周囲に支えられ挑戦を続けたこれまでとこれから
リモートワークの普及により、転勤せずとも全国や世界を舞台に職務にあたる方も増えていますが、転勤がある企業は少なくありません。
転勤を経験された方は新しい環境での仕事には不安や苦労があったものの、転勤をきっかけに幅広い経験を積んだり、新たなスキルを得たりした方も多いようです。今回ご紹介したストーリーをきっかけに、転勤を異なる一面から見てみるのはいかがでしょうか?
【関連リンク】
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