「ダイバーシティ(多様性)」「エクイティ(公平性)」「インクルージョン(包括性)」(以下、DE&I)がうたわれる昨今。企業経営においては、SDGsでうたわれているような「誰一人取り残さない」社会を実現するだけではなく、個々人のバックグラウンドや個性を活かすことで、イノベーションや成長を加速し、企業優位性を高めるべく、DE&Iに関する取り組みが積極的に行われています。

また、個々人に注目してみると、ビジネスパーソンの中でもミレニアム世代やZ世代はインターネットやSNSの普及により多様な価値観に触れながら育った世代であり、多様な意見や価値観に理解があると言われている世代でもあります。

それゆえに、仕事をする上でも自己実現やライフワークバランスの実現、自律的なキャリア形成など、「自分らしさを発揮したい」「自分らしく働きたい」と考える方も多いのではないでしょうか。

DE&Iに関する取り組みや働き方改革、キャリア形成支援などを通して、従業員の自己実現やライフワークバランスを支援している企業も多い中で、今現在、自分らしく働いている人たちはどのように自分らしさを見い出し、自分らしさを発揮しているのでしょうか?

本記事では、自分らしく働き、企業で活躍しているビジネスパーソンの経験談を通して、自分らしく働くためのヒントをご紹介します。

自己実現にワークライフバランス──「自分らしく働く」とは?

「自分らしく働く」といっても、定義は人によってさまざまですし、その時々によって変わることもあるでしょう。そこで今回は、いくつかの例をご紹介します。

・好きなことを仕事にする
好きなことは人によっても異なりますし、自分の感性や直感による「好き」という気持ちは、自分らしさを表現する上でわかりやすいものです。プライベートで楽しむだけでなく、仕事で好きなことに取り組むことで、仕事を楽しみ、自分らしさを発揮できるかもしれません。

・得意を仕事にする
得意な度合いや得意な物事の組み合わせなどは人それぞれです。また、得意なことがあると、自分に自信を持つことができますから、仕事にも自分らしさが現れるでしょう。

・自分らしさを発揮できる環境で働く
一緒に働きたい人がいる環境や自分の意志や行動が尊重される環境なども、自分らしさを発揮できる要素になります。もちろん、自己中心的になってしまうことは、他の人の自分らしさを否定してしまったり損なってしまったりする可能性もあるので、注意が必要です。

・自分自身のライフスタイル(働き方、プライベートとの両立)に合わせて働く
副業や兼業、趣味と仕事との両立、家庭の都合に合わせた働き方などが実現できることも、自分らしく働くことにつながります。

・自分の軸や判断基準を持つ
これまで紹介してきた項目はもちろんですが、そうした項目を含む、自分の中で譲れるものと譲れないもの、何かを決断するときに基準とする軸やラインなどを自分自身の中に持っておくことも、自分らしさを失わずに過ごすことができるのではないでしょうか。

自分らしさを見つけるための行動とは?

「自分らしさ」は、それまで人生の中で経験したり、見聞きしたりしたものを自分の中で咀嚼し、取捨選択をしたり、組み合わせたりした結果ともいえます。「自分らしさ」とはなんだろうか?と悩んでいる方は次のようなアクションを起こしてみるのもいいかもしれません。

・自己分析をしてみる
まずはこれまでの経験や思い出を振り返り、自分が嬉しかったことや楽しかったこと、また好きなことや得意なことなどを一度棚卸ししてみるのも良いかもしれません。その上で、どうしたら同じように嬉しさや喜びを再現できるのか、得意なことを発揮する環境やシチュエーションを考えてみると、自分らしく働くための基準や大切にしたい価値観が見えてくるのではないでしょうか。

・他の人と対話してみる
自分が把握している自分と、他人からみた自分は違う見え方をしていることもあり、自分では気づきにくい魅力や「らしさ」があるものです。身近な人に話を聞いてみるのも一つの手です。

・自分以外の人の価値観や考え方に触れる
自分の中では言語化できていないこと、考えたこともないことや価値観もあるでしょう。たくさんの人と話をするのはもちろんのこと、本を読んだり映画を観たり、インターネットで検索してみたりすることで、視野が広がり、自分らしさを見つけるヒントになるかもしれません。

・新しいことに挑戦してみる
新たな経験を積むと、興味や視野も広がり、これまで見えてこなかった自分に出会えることもあるでしょう。

・好きなことや得意なことを磨く
好きなことや得意なこと、興味のあることを追求することで、スキルアップや自信につながり、それが「自分らしさ」につながることもあるでしょう。

自分らしさを見つけるためのアクションをご紹介しました。世の中や周囲の人の価値観や考え方、生き方や働き方を知り、自分自身の価値観や考え方に反映することもアクションの一つではありますが、他の人と比べすぎて、自分自身を卑下してしまったり、諦めたりしてしまっては、意味がありません。あくまでも他の人の意見などは参考程度にし、自分自身と向き合うことが重要です。

自分らしく働くためのヒント

ここからは、企業で自分らしく働いているビジネスパーソンのコンテンツをご紹介します。自分らしさを見つけ、自分らしく働くヒントにしてみてはいかがでしょうか?
※ 掲載内容は記事公開当時の内容です

▶︎Adecco Group

事業内容:人財派遣、人財紹介、アウトソーシングなど、コンサルテーションをベースとしたハイブリッド型の総合人財サービス

仕事内容:派遣社員として就業を希望する方と就業先との最適なマッチングを実現するためのシステム開発を担う

これまでの自身のキャリアをあらためて振り返り、いろいろな面でめぐまれていたと思うと平木さんは語ります。

平木さん 「一つ言えるとしたら、目の前にあるチャンスをきちんとつかめるよう、何事にもチャレンジしてみようという前向きさだけは忘れない方がいい。担当する仕事が変わったり、この歳になって新しい業務に取り組んだりする際には、この分野ではまだ自分は新入社員みたいなものだからだと開き直っています。

本音をいえば、いい歳して恥をかきたくないという思いもありますが、はじめはわからなくても当たり前なわけで、失敗したって大丈夫。深刻に考え過ぎずに、とりあえず『やってみよう』という気持ちで、まず一歩を踏み出すことが大切だと思います」

→ストーリー:人生100年時代だからこそ。いくつになっても一歩を踏み出せば世界は広がっていく

▶︎INTLOOP株式会社

事業内容:事業戦略・業務改革コンサルティング、ITコンサルティング、プロジェクトマネジメント支援、プロフェッショナル人材支援・人材紹介、新規事業開発・営業推進支援、海外進出・販路開拓支援

仕事内容:PMO

宮崎さん 「後々後悔しないように、若い今だからできることをやってみようと思いました。ゲームの吹き替えやWeb CMのナレーション、朗読劇に曲のリリースなど、声優に専念したことでいろんな活動を経験できました。

でも1年半ほど経ったころ、“企業のなかで働く自分”も捨てきれていないことに気づいたんです。ひとつのことを突き詰めている人には『甘い』といわれるかもしれませんが、ふたつの仕事を両立することが私らしい生き方なのでは?と思うようになりました」(中略)

PMOと声優という、二足の草鞋を履く宮崎さん。今後ふたつの仕事を両立して自分らしく働くために、次のような目標を掲げます。

宮崎さん 「PMOの仕事も声優の仕事も、自分がやりたいときにやりたい仕事を選べるような人材になりたい、というのが私の大きな目標です。そのためには、自分の市場価値を高める必要があるので、まずは一つひとつの仕事に真摯に向き合い、スキルを身につけていきたいと思います

→ストーリー:PMOと声優業の「二足の草鞋」こそ、私らしい働き方。柔軟で理解ある環境で両立を目指す

▶︎MANGO株式会社

事業内容:運用型デジタル広告オペレーション事業

仕事内容:コンサルタントとして広告運用に携わる

奥松さん 「性格上、環境に慣れるまで自分の気持ちを全然出せないんですけど、親身になってくれる人が周りにいると自分の殻を破りやすいっていうか。自分らしくいられると実感しました。

そして、自分らしくいられると自身のパフォーマンスを発揮しやすいと気づいたんです。楽しく働くことで、目標のために積極的に動けるようになることにもつながるなって思います」(中略)

1年を通して、仕事のやりがいを感じるようになった奥松。大事にしている価値観の一つは、「自分を好きでいられる働き方をすること」だと言います。

奥松さん 「うまくいかずに悩むときって『理想と現実のギャップ』があるときだと思うんです。私は、前を向けないときや未来のことを考えられないときに、自分自身が好きではないと感じます。だからこそ、言語化を手伝ってくれたり解決策を一緒に考えてくれたりする上司や周りのメンバーがいる今の環境に心から感謝しています。

課題を見つめて改善していくことで、理想と現実のギャップは埋めていけます。これができている状態が、自分を好きでいられる働き方や環境だと思っています」

→ストーリー:落ち込む自分から前を向く自分へ──「私」を見てくれた場所で「私」にしかできない咲き方を

▶︎株式会社エフアイシーシー / ブランドマーケティング

事業内容:ブランド戦略、ブランディング支援、採用ブランディング、インナーブランディング支援、新規事業・イノベーション支援、マーケティング支援、PR・プロモーション企画・実行、クリエイティブソリューション、イベント企画・運営、地域創生、地域活性化支援、教育機関活性化支援

仕事内容:自分なりの美を再発見するプロジェクト「COLOR Again」に携わる

──だから、自分がどう思うか立ち止まるような「感性」に目を向けることが必要になってくるんだろうね。ちなみに、「自分らしく」というメッセージが世の中にすごく多くなったけど、それについてどう思ってる?

伊藤さん:それにはすごくモヤモヤ。本来の言葉の意味と現状との矛盾を感じます。例えば、写真館で就活用に写真を撮ったとき、いつも使わないような色のリップを選ばれて、これが正解みたいな。

上野さん:アイラインは入れないでおこうとか、口紅の色も変わるし、普段のメイクとは違いますよね。

伊藤さん:ブランドメッセージは、あなたらしくと言っているけど現状の就活メイクが、みんな同じに見えるんですよ。こうじゃなきゃいけない、みたいなことが世の中にはいっぱいあるのに、自分らしさってなんやねんと(笑)。自分らしさと社会の矛盾の中で板挟みになって「結局どうすれば良いんだろう」と困っている人たちも多いんだろうなと。環境に左右されて生きるのはすごく大変。日々自分が感じることに目を向けると、みんな生きやすくなると思います。

→ストーリー:楽しく生きるってなんだろう?同世代のふたりが考えるリアルな「感性」のハナシ

▶︎株式会社 エル・ティー・エス

事業内容:コンサルティング(ビジネスコンサルティング、ITコンサルティング、HRコンサルティング)、ビジネスプロセスマネジメント、デジタル活用サービス

仕事内容:大手製造業の製造現場のデジタル化、先進化を実現する「スマートファクトリー」の推進を担う

小笠原さん 「希望を伝えたときに、応援してもらえる関係性をあらかじめ築いておくことが必要となりますが、エル・ティー・エスは、こちらの希望を伝えたときに背中を押してもらえる良い会社です。

昨今、働き方改革などいろいろなワードが出ていますが、これから明らかに時代は変わっていきます。私の場合は暮らす街を変え、そこで『場と仕事を創る』ということにチャレンジしてきました。また、コロナ禍の前からリモートワークも行ない、新しい働き方も模索していました。

私の例は、一つのケースに過ぎませんが、自分たちで働き方を含めて、未来を変えていかなければならない、そんな時代になっていると考えています。

特に最近の若い世代は、新しい価値観や新しいワークスタイルを持っている人が多いと思います。そういった方々には、ぜひとも新しい“何か”を生み出すことを恐れず、チャレンジしてほしいですね

→ストーリー:優先するのは“暮らす街”か“刺激”か。生きるように働くために

▶︎デル・テクノロジーズ株式会社

事業内容:個人・法人のお客様を対象に、パソコン・モバイル端末から基幹システムやクラウドの導入支援、セキュリティサービスに至るまで包括的な IT ソリューションを提供

仕事内容:現場で発生する事務作業の依頼を引き受けるチームで働く

福田さん 「楽しそうだと感じるものに向かって動き出せば、きっとまた、自信が持てると思うんです。自己肯定感が下がると、元に戻すのは時間がかかりますから……。

私は長い間、自信をなくしてしまっていましたが、今こうして自分らしく働き、社外ではボランティア活動を行い、ありのままの自分に自信を持ち直すことができました。これからもこの調子で進んでいきたいですね」

→ストーリー:発達障がいを持つ私が自分らしくいられる環境──障がいをオープンにするということ

▶︎富士通株式会社

事業内容:テクノロジーソリューション、ユビキタスソリューション、デバイスソリューション

仕事内容:デジタルシステムプラットフォーム本部CIO Officeでマネージャーを務める

轟木さん 「私は、富士通という会社が好きです。できれば、この先も長く、この会社で働き続けたいと思っているくらい。採用面接で感じた“社風に合っている”は間違いではなかった。むしろ、10年経ってより強く実感しています。だからこそ、長く働き続けるにあたって不便だと感じることは、一つずつ変えていきたいんです。

もっともっと働きやすい会社になっていけば、すてきな人がどんどん集まってくるはず。そんなすてきな会社を辞めたいと思う人はいなくなると思うんです。そんな環境で働くのってとても楽しいし、幸せなこと。私自身が楽しく、そして私らしく働き続けるためにも、よりよい会社に変え続けていきたいです

そのために、いま意識しているのは「還元」だと言う轟木さん。

轟木さん 「自分ひとりで変えられる範囲はとても小さい。会社を変えるような大きな力を生み出すためには、一人ひとりがいかに自身の経験や学びを会社に還元するかが重要だと思います。私自身、昨年はいろいろなことに挑戦しましたし、それは今後も続けていきたいです。ただ、それが私やその周囲だけの挑戦で終わらせず、会社の糧となるよう、得たものはすべて還元していきたいですね」

→ストーリー:「変革」は私らしくいるための選択肢。バズる動画コンテンツと共にめざす未来とは

▶︎株式会社みずほフィナンシャルグループ

事業内容:銀行業務、信託業務、証券業務、その他の金融サービスに係る業務を事業ドメイン(事業活動を行う領域)とする総合金融グループ

仕事内容:みずほ銀行外為事務第一部で課長を務める

豊田さん 「社外のキャリアコンサルタントの先輩から、『君は人に何かを教えるのが好きなようだから、キャリアコンサルタント養成講師の道もあると思う。講師になるための研修に参加してみては?』と提案していただくことがありました。「そんな道もあるのか」と、今後も目の前の気づきをチャンスと捉え、興味・関心に正直に、自分らしくキャリアを広げていきたいと考えています」

何歳からでも、社会人何年目からでも、勇気を出して一歩踏み出せば、新しいつながりが生まれて可能性とキャリアが広がる。大切なのは、“キャリアをともに考えていく”という姿勢だと豊田さんは語ります。

豊田さん 「キャリアについてひとりで悶々と考えるのではなく、友達や上司、同僚に自分の思いを素直に話してみるのがいいと思います。相手からの客観的なフィードバックがヒントやきっかけになることもありますから

→ストーリー:ともに悩み、ともに学び、ともに考える──キャリア支援の伴走者として私ができること


自分らしく働くとはどういうことなのか、また自分らしさを見つけるヒントなどをご紹介してきました。しかし、自分らしさは経験を重ねたり、さまざまな価値観や考えに触れたりするからこそ、見出せるものでもあります。だからこそ、焦ることなく自分と対話を続け、仮説を立て行動してみたり、誰かに話を聞いてもらったりしながら、自分らしさを見つけ、磨いていくことが大切なのではないでしょうか。

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