どの企業にも存在する「労務」という仕事。勤怠管理や給与計算などを担当し、企業にとって必要不可欠な存在です。入社・退職の手続きに限らず、ライフイベントがあったときにも相談先となる労務ですが、普段はどんな仕事をしているのかがわかりにくいという方もいるのではないでしょうか?

本記事では、労務の仕事内容について、また実際に労務担当として働く人々のやりがいをご紹介していきます。就職活動の情報収集にぜひ活用してみてください。

「労務」の仕事とは?

企業によっては「労務」という肩書きを用いないケースや「人事労務」とまとめているケース、所属が総務部門や人事部門と異なるケースもあります。

また、同じように従業員と関わる仕事には「人事」があり、どちらも従業員が働く上で十分な価値を発揮できるようにするという共通点はあるものの、どんなアクションを通して従業員に働きかけているかという点で異なります。

人事は、採用や人事評価などのアクションを通して、従業員の意欲を高め、十分な価値を発揮できるように働きかける仕事。労務は、勤怠管理や福利厚生など、従業員を取り巻く働く環境を整えることによって、従業員が安心して十分な価値を発揮できるように働きかける仕事といえるでしょう。

従業員を守る法律としては労働条件に関する最低基準を定めた「労働基準法」がありますが、労働基準法に違反すれば企業は罰則を受けることもあります。労働時間や休日、安全衛生などの管理を通して従業員を、そして企業を守っているのが労務担当者なのです。

では、労務担当者は実際にどのような業務を行っているのでしょうか?
企業の規模などによって、業務の幅が異なることもありますが、一般的な労務の業務をご紹介します。

▶︎労務の業務

・勤怠管理
従業員の労働時間を取りまとめ、管理します。正確な時間で勤怠が記録されているか、残業時間が多すぎないか、有給休暇を取得できているかなども管理し、場合によっては従業員にヒアリングを行い、是正に取り組みます。

・給与計算
勤怠情報を元に給与を計算します。住民税の集計や納付も行うため、ときには従業員の住む自治体とのやりとりが発生することもあります。また、最低賃金の改訂があった場合に対応するのも労務の仕事です。

・年末調整
年末調整は、1年間に企業が従業員へ支払った給与の中から徴収される所得税の過不足を精算するための手続きです。年末調整には従業員が記載する書類があるため、そうした書類の手配や確認に加えて、市区町村へ給与支払報告書の届出をしたり、税務署へ源泉徴収票の提出を行ったりする必要があります。

・福利厚生
福利厚生には、法律で義務付けられた健康保険料や介護保険料などの「法定福利厚生」と、家賃補助や通勤手当、健康診断の補助や特別休暇などの企業が自由に設けられる「法定外福利厚生」があります。

法定福利厚生は企業によって異なり、キャリア支援・スキルアップを目的にしたものや宿泊施設の割引、ボランティア休暇などさまざまな福利厚生があります。従業員の希望やニーズに合わせて検討を行います。

・社会保険の手続き
社会保険とは、雇用保険や労災保険、健康保険といった保険を指し、加入条件を満たす従業員は加入義務が生じます。社会保険料は3カ月間の平均給与に基づいて算出されるものですが、賞与やボーナスからも社会保険料が控除されます。また産休・育休中は社会保険料が免除されるなど、変動があるのです。そうした変更事項の届出や対応を行います。

・人事関連の規程管理
労働時間や賃金の決定・計算や支払い方法、退職に関する事項のほか、安全衛生や職業訓練、表彰・制裁等を取りまとめた就業規則。常時10名以上の従業員を雇用する企業は就業規則を作成し届出をする義務があります。作成して届出た後も、法改正があったタイミングや企業内のルールに変更があった場合などには改訂を行います。

・安全衛生管理
残業時間の管理や有給休暇の管理だけではなく、健康診断の手配やハラスメント・ストレスマネジメントの研修など、従業員の安全や衛生を管理し、安心して働ける環境づくりを行います。業種によって異なりますが、一定の従業員数を超えると安全委員会・衛生委員会を設置したり、業種に関わらず従業員が50名以上を超えると産業医を選任したりする必要があります。

・入社・退職の手続き
従業員が入社する際には入社書類の準備や説明、就業規則の説明、社会保険や住民税の手続きなどを行います。また、退職時には退職書類の準備や説明、社会保険や住民税の手続きを行います。

・上記にまつわる相談業務
これまでご紹介した業務に関連した相談が従業員から寄せられます。たとえば、住所や氏名の変更があった場合や扶養家族が追加されたり減ったりした場合、産休育休に入る際には労務担当者へ相談がきます。ほかにも、パートやアルバイトで働く従業員が扶養に入っている場合、年間で一定の給与収入を得ると扶養者の税金が増えるため、現時点の給与収入の確認なども労務担当者へ相談が入ることがあります。

従業員が安心して働けるように、従業員を取り巻く環境を整えたり、よりよくするためにさまざまな業務を行っています。従業員だけではなく、国が企業で働く従業員を守るために定めている法律や決まりごとにも日々向き合う必要があり、法律について学び、法改正や労務に関する情報を収集する必要があります。

なお、専門的な事柄に関しては、顧問の社労士や税理士、弁護士などに相談しアドバイスをもらったり、情報提供を受けたりしながら進行していくこともあります。

「労務」の仕事の魅力

・従業員のライフイベントに寄り添うことができる
結婚や出産、引越しなど従業員のライフイベントに寄り添うことができる労務担当の仕事。

企業という枠を超え、従業員の人生に関わることができる仕事でもあります。法律やルールを遵守するだけではなく、従業員が人生の中でより良い選択ができるよう寄り添い、サポートできるという魅力があります。

・働く上で必要な知識が身に付く
労務担当者も従業員の一人です。労務の仕事で身につけた法律や社会保険に関する知識、手当が支給される条件などを知っていることで、ほかの従業員から相談を受けたときだけではなく自身が該当したときにも役立てることができます。

・従業員や企業を守っているというやりがいを感じられる
福利厚生が拡充されたり、各種研修が行われたりといったアクション、法律に違反していないという事実はわかりやすいですし、最近ではストレスチェックや従業員満足度調査を行うことで、職場環境等の満足度が可視化できるケースも増えています。

それでもなお、従業員が安心して働けているという状況は目に見えにくいものです。しかし、問題が起こらず、従業員が安心して仕事に取り組め、会社が成り立っていることが大切ですから、そうした視点で従業員や企業を守っているというやりがいを感じられるのではないでしょうか。

労務として働く方々の実際の仕事とやりがい

実際に労務として働く方々は、具体的にはどのような業務をしていて、どんなやりがいを感じているのでしょうか?実際に働く方々の声をピックアップしました。
※記載の情報は記事公開当時の内容です。
※総務担当として労務のお仕事をされている方のストーリーも掲載しています。

▶︎株式会社エヌ・ティ・ティ・データ

事業内容:システムインテグレーション事業、ネットワークシステムサービス事業、そのほかこれらに関する一切の事業

・仕事内容:法人向けのビジネスを展開する法人・ソリューション分野で総務(労務)を担当※写真右
・やりがい:

また、総務では、自身の異動のきっかけとなった「働き方改革」に対する熱心な取り組みが行われています。(中略)

関口さん「思った以上に他の分野やグループ会社の総務担当と意見交換する機会が多く、法ソリ分野の社員 3,000名のみならず、累計 10万人を超える NTTグループ全従業員の『働く』に、プラスの影響を与えうる可能性がある業務に携われているんだな、という感覚があります。その分やりがいも大きいです」

→ストーリー:しくみづくり×育成──現場社員の『働く』を支えるふたりの、組織の成長にかける想い

▶︎アジア航測株式会社

事業内容:空間情報コンサルタントとして、高度なセンシング技術をベースとした空間データの収集・解析、活用提案、実施プラン策定まで、一貫した技術サービスを提供

・仕事内容:中部支社 総務経理室・室長
・やりがい:

加藤 「管理部門では『規定や規則なので』ということも多々あるのですが、相談されることは規定・規則を見直す良い機会でもあります。寄り添うことで解決策を一緒に考え、長く勤務してもらうための環境づくりをしていきたいと思っています。

今後は、スキルアップをしてから大阪に戻り、中部支社で築いた人脈を活かしながら自分も働き続け、そして皆さんが働きやすい環境をこれからもつくっていきたいです」

→ストーリー:心身共に健康で、働きやすい会社に──バックオフィス部門で支える室長の想い

▶︎東洋製罐株式会社

事業内容:製缶・製蓋機械や飲料充填設備などの製造販売、飲料充填品・エアゾール製品・一般充填品(液充填製品)の受託製造販売、貨物自動車運送業や倉庫業など

・仕事内容:大阪工場 生産管理課 で総務(人事労務)担当として、担当給与計算、教育関連のほか、新入社員の教育や階層別研修のサポートなどを担当
・やりがい:

宮崎さん 「私が総務課員として大切にしているのは、従業員に気持ちよく働いてもらうことです。

総務グループが従業員のサポート部門である一方、工場は生産活動がメインで、集中して生産できるようにすることが重要です。庶務的なところは私たち総務部門がサポートして、みなさんが働きやすい環境を率先して作っていきたいと思っています」

→ストーリー:いつだって、誰だって生き生きと。子どもの憧れを目指すママのチャレンジ

近年多くの企業が取り組んでいる「働き方改革」を、労務担当者が主導しているケースもあります。また最近では、人材を資本として捉える「人的資本」の開示に注目が集まっており、「人的資本」という言葉を見かける機会が増えた人もいるのではないでしょうか?人的資本の価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる「人的資本経営」を行うべく、取り組みを進める企業も増えています。

人的資本の投資の中には、人材の多様化やリスキリングや学び直しへの投資、従業員エンゲージメントの向上なども挙げられていることから、労務として取り組むことも増えていくことでしょう。 

一貫して、従業員を取り巻く環境を整え、それぞれがより価値を発揮できるように支えている労務という仕事。企業の規模によっても業務内容、業務の幅が異なるため、実際に労務担当として働く方々のストーリーを通して、自分自身に合う企業を見つけてみてはいかがでしょうか?