ビジネスの場において、“存在意義”という意味合いで使われる「パーパス」という言葉。企業理念や経営理念の中にも、企業としての存在意義が組み込まれることもありましたが、近年、改めてパーパスを制定する企業が増えています。

パーパスを明確にすることで、社会や投資家などステークホルダーからの信頼感はもちろん、従業員の社会に貢献しているという意識を育むことができるからです。

一方、自分たちは何のために存在しているのか──それを問うのは、企業だけではなく、就活生も同様です。

本記事では、株式会社学情(本社:東京都千代田区)が、2024年3月卒業(修了)予定の大学生・大学院生を対象に実施したインターネットアンケートの調査結果を元に、Z世代のパーパスへの関心を紐解きます。

就活生の企業のパーパスへの関心

Z世代は「環境や社会に配慮する」「他者を尊重する」「共感を重視する」など、社会や他者と良好な関係を築くことを意識する人が多いと言われています。こうした背景から、学情は学生が仕事選びにおいて「パーパス」をどの程度意識しているのかという調査を実施しました。

まず、「パーパス」を制定する企業に持つ印象についての設問では、「パーパス」を制定する企業は「好感が持てる」と回答した学生が39.7%に上りました。

「どちらかと言えば好感が持てる」33.0%を合わせると、72.7%の学生が「好感が持てる」としています。20代転職希望者を対象に実施した同アンケートと比較すると、「好感が持てる」と回答した割合は9.5ポイント高くなっており、就職活動を控える学生の関心の高さが伺えます。

では、企業のパーパスを知った学生にはどのような変化があるのでしょうか?調査の結果では、「パーパス」を知ると「志望度が上がる」「どちらかと言えば志望度が上がる」と回答した学生が61.9%に上りました。

学生からは、「ただ単にお金を稼ぎたいわけではない」「パーパスを通して、企業が事業を展開する目的を知りたい」「企業が目指す方向性と、自身の関心が一致していると志望度が上がる」といった声が寄せられていると言います。

また、「パーパス」や企業がどのように社会に貢献しようとしているかを、就職活動において「意識する」「どちらかと言えば意識する」と回答した学生が57.0%に達しました。

「パーパスを通じて、企業が目指す方向性と自身が仕事を通して提供したい価値が合致しているか確認することができる」「企業がどのように社会に貢献しようとしているかを知れば、自身が仕事を通してどのように社会に貢献できるかを想像することができる」などの声が上がっています。

自分自身のパーパスへの関心は?

これまで、企業のパーパスについて焦点が当てられてきましたが、学生自身は、自分自身のパーパスについてはどのように考えているのでしょうか?

調査の結果では、自身の「パーパス」や、自身が解決したい社会課題を「意識する」と回答した学生が18.4%に上りました。「どちらかと言えば意識する」26.2%を合わせると、4割以上の学生が自身の「パーパス」や解決したい社会課題を意識していることがわかります。

就職活動の中でも、自己分析や面接を通して自身のパーパスを考える機会も多いでしょう。今回の回答者が2024卒の学生ということもあり、今後本格的に就職活動を進めていくと割合は増えるのかもしれません。

■調査概要
・調査期間:2022年11月12日~11月24日
・調査機関:株式会社学情
・調査対象:「あさがくナビ2024(ダイレクトリクルーティングサイト会員数No.1)」へのサイト来訪者
・有効回答数:370件
・調査方法:Web上でのアンケート調査

※各項目の数値は小数点第二位を四捨五入し小数点第一位までを表記しているため、択一式回答の合計が100.0%にならない場合があります。

パーパス制定に込められる想いとパーパスが生きるとき

パーパス制定の背景にパーパスが働く上でどのような役割を持っているのかなど、パーパスについて触れられたストーリーをご紹介します。

▶︎株式会社ライフワークス

事業内容:企業向け研修、キャリア開発支援に関するコンサルティング、各種講演・セミナーの企画、開発、運営

梅本さん 「困難な状況下で経営の判断や選択を迫られることは、今後もきっとあると思います。そうしたときに、しっかりとした経営判断の軸を持っておきたいと考えるようになりました」

こうしてパーパス策定に向けて動き出した梅本さんですが、経営判断の軸をつくる目的以外にも、もうひとつ期待したことがあったと振り返ります。

梅本さん 「パーパスとして明確に言葉にして発信することで、仲間と同じ想いを持って仕事ができたり、パーパスに共感してくれる仲間やお客様が増えたりすれば……。という期待を持っていました。『私たちが描こうとする世界』を表す言葉がビジョンだとしたら、ミッションは『使命』のようなもの。パーパスはそれらとはまた違って、『常にこんな状態でありたい』と宣言する類のものだと捉えています」

→ストーリー:パーパスに込めた想いとこだわり──コロナ禍を機に見つめ直した自社の存在意義

▶︎農林中央金庫

事業内容:食農ビジネス、リテールビジネス、投資ビジネス

近年、気候変動をはじめ、環境・社会課題の深刻化、コロナ禍による働き方・ライフスタイル・価値観の変容など、農林水産業を取り巻く環境は大きく変化し続けています。

それを受け、2023年12月に創立100周年を迎える農林中央金庫は、改めて企業としてのパーパス(存在意義)を定めました。

篠﨑さん 「農林中央金庫のパーパスは、『持てるすべてを「いのち」に向けて』というものです。農林水産業から生まれる『いのち』が、その先に連なるたくさんの『いのち』の営みにつながっている、という考えから定められました」(中略)

現在は、海外クレジット・オルタナティブ投資に関わる企画・執行を担う篠﨑さん。20年以上在籍する農林中央金庫には、ある想いを持って入庫したといいます。

篠﨑さん 「私がこの組織を志望した理由は、『ユニークかつ明確なミッションがある組織は、働きがいがある』と考えていたからです。入庫後は、当社ビジネスの3本柱の1つといわれる『食農法人営業』でキャリアの一歩を踏み出しました」

→ストーリー:持てるすべてを「いのち」にむけて──100周年を迎える農林中央金庫が挑む新領域

▶︎富士通株式会社

事業内容:テクノロジーソリューション、ユビキタスソリューション、デバイスソリューション

個人のパーパスを掘り出し、「一人ひとりのパーパスと、富士通のパーパスとの重なり合いが、変革への原動力となる」と言う考えのもと、グループをあげて「Purpose Carving(パーパス カーヴィング)」に取り組んでいるのが富士通株式会社です。

宮野さん 「『Purpose Carving』とは、自分の軸のようなものを、対話を通じて掘り起こしていくプログラム。『自分はこれから何をしようとしているのか?』『自分にとって大切なことは何か?』『自分が大切にしていることは、今の仕事の方向性と合っているか?』──そうやって自身を振り返り、見つめ直すことで、自分に向いていること・向いていないことを判断したり、それぞれの存在意義や目的を明らかにすることを目指しています」

→ストーリー:「フジトラ」活動で再発見した自分の適性。内省と実践が会社と共に前進する力に

タムラさん 「私とあなたが違う存在であるように、会社のパーパスと個人のパーパスがまったく同じになることはないはず。自分のパーパスを言葉にして認識できると、他者や会社のパーパスと自分のパーパスの『合力』が見えてきます。すでに用意された組織に入るから関係性が生まれるのではなく、それぞれのパーパスから関係性をつくって組織になっていくということがこれから必要になっていくと考えています。

夢物語に聞こえるかもしれませんが、まずは手始めに13万人の富士通グループ全社員が自分のパーパスを語り合えたらおもしろいんじゃないかと思っています。なんたって私のパーパスが『世界の創造性のレベルを1つあげる』というものなので、それすら第一歩です(笑)」

→ストーリー:一人ひとりのパーパスからはじめる、これからの組織マネジメント。Purpose Carvingが持つ可能性とは?


これまでも、就職活動において企業理念や経営理念への共感を大切にしてきた人も多数いると思いますし、それは現在の就職活動においても変わらないでしょう。

そんな中で、「パーパス=存在意義」に注目が集まるのは、社会貢献への関心だけではなく、世の中に数ある企業の中で、その企業がどれだけ世の中に求められている存在なのか、その企業の中に身を置くことで、どれだけ自身の存在意義を高められるのかということへの関心があるのかもしれません。

そういう意味では、「個の時代」と言われる今、またジョブ型雇用へ注目が集まる今、パーパスは個人、企業ともに一段と重要な物になってくるのではないでしょうか。

【関連リンク】
▶︎ビジョン・ミッションに関するコンテンツ一覧