インターネット上で商品を購入したことがある方は多いのではないでしょうか。スマートフォン一つあれば、自宅から買い物ができて、早ければ翌日には商品が届く。また、実店舗で商品を手に取らずとも、スムーズに買い物ができたり、ブランドの世界観を体験できたりと、商品の販売に加えて、プラスαな購買体験を提供しているのがEC業界です。
本記事では、EC業界について、そして実際にECにまつわる仕事をしている方々の声をご紹介していきます。就職活動の情報収集にぜひ活用してみてください。
「EC業界」とは?
「EC」はElectronic Commerceの略語で、直訳すると電子商取引、つまりインターネット上での商取引を指します。一般的にはインターネット通販を指すことが多い言葉です。通販の中にはテレビショッピングやカタログ通販、新聞や折り込みチラシを介しての通販も含まれるため、その中の一種と捉えて良いでしょう。
そんなEC業界ですが、経済産業省の「令和3年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」によれば、2021年度の消費者向けの電子商取引の市場規模は20.7兆円。市場の成長は著しく、2013年度は11.2兆円、2016年度は15.1兆円と急激な成長を遂げていることがわかります。
▲BtoC-EC市場規模の経年推移(単位:億円)(画像:経済産業省 電子商取引に関する市場調査より)
また、インターネット上のビジネスですから、その歴史は20数年の若い業界であることも特徴です。歴史は浅いですが、技術の進歩と共にソリューションやサービスが生まれ、日々変化している業界でもあるのです。
EC業界の企業と仕事
インターネットの普及と共に、私たちの生活の中になくてはならない存在となったEC業界にはどのような仕事があるのでしょうか?
▶︎ECサイト運営企業の仕事
・マーケティング/プロモーション
商品やサイトを知ってもらい、商品を購入してもらうために広告やSNSの運用などを行います。また、購入キャンペーンやイベントなどの販促企画も行います。
・商品企画/仕入れ
メーカーが製造した商品を仕入れ、販売しているケースと自社でオリジナルの商品を製造販売しているケースがあります。市場やトレンドを見ながら商品を企画したり仕入れたりします。
・製造
自社で商品を製造している場合、メーカー企業と同様に生産技術や生産管理、品質保証などの業務があります。
・商品撮影
ECサイトで商品を購入する場合、手にとって触り心地や色味を購入者自身が確認することができません。そのため、綺麗でありながらも実際の質感や色味をしっかりと伝えられる商品写真が必要になります。
・ECサイト運営/管理
ECサイトの構築に携わるだけでなく、季節ごとに商品を入れ替えたり、商品を購入してもらいやすい画像や商品説明文に差し替えたりと、サイトの更新を行います。
・エンジニア/デザイナー
ECサイトの制作などは外部企業に委託するケースも多くありますが、大手企業では自社内にエンジニアやデザイナーが所属していることもあります。
・在庫管理
商品の販売数を確認し、品切れや過剰在庫を抑制します。自社のECサイトだけではなく、Amazonや楽天市場などのECモール、実店舗など複数の販路があるケースも多く、その場合は管理が複雑になるため、在庫管理ツールなどを用いて管理を行います。
・物流
購入者からは見えない部分ではありますが、商品を不備なく発送する上では重要な役割です。保管や発送を外部企業に委託するケースもありますが、大規模であれば自社倉庫で保管発送をしているケースもありますし、小規模であれば自身のオフィスに在庫を置き梱包発送するケースもあります。
・カスタマーサポート
商品に対する問い合わせや商品到着後の問い合わせなどに対応します。電話だけでなくメールやチャットなど問い合わせの手段は企業によって異なります。また、企業によっては問い合わせの対応だけでなく、購入後にフォローの電話をしたり、商品の案内をしたりすることもあります。
▶︎ECサイト運営を支えるソリューション・サービス
・ECサイト構築プラットフォーム
BASEやSTORESなど簡単にECサイトを作れるものから、機能デザインともにカスタマイズ性が高いものまで幅広いECサイト構築プラットフォームがあります。
・ECサイト構築
BASEやSTORESは自身で簡単にECサイトを作ることができますが、ブランドの世界観を実現したり機能をカスタマイズしたりする場合はECサイトの構築が可能なサイト制作企業へ委託することがあります。
・決済
銀行振り込みやコンビニ払い、クレジットカードなど決済手段は多様です。また、消費者にとってECサイトを運営する企業と直接金銭のやりとりをするハードルは高いですし、ECサイト運営企業にとっても多様な決済手段を取り揃えることは難しいもの。
そこで、決済代行会社と契約をし、セキュリティ面での懸念を払拭しながら複数の決済手段を取り揃えているECサイトが多くあります。
・物流
在庫を保管するだけでなく、梱包や発送まで対応している物流倉庫が多々あります。ECサイトと物流倉庫の現場をシステムで連携することにより、スムーズな発送を実現しているのです。
・広告
インターネット広告の販売を行っている広告会社だけなく、広告の運用を代理する企業もあります。
・コールセンター
購入者数が多ければ、その分問い合わせも増えるものです。問い合わせ対応やフォローの電話、商品の案内などコールセンターに委託するケースも多々あります。
・コンサルタント
ECサイトで商品を販売する上では、市場やトレンドを読んだり、消費者の心理を理解したりとノウハウやテクニック、多くの知識が必要になります。ECに特化したコンサルタントと契約し、ECサイトを成長させるケースもあります。
・その他
商品管理システムや問い合わせ管理ツール、チャットボットやサイト内検索など、ECサイトにはさまざまなソリューションが組み込まれています。また、商品撮影や商品画像の差し替えなどを代行する企業もあります。
ECサイト運営に携わる人々のやりがい
メーカーに就職してECサイトの担当になったり、SIerでECサイトの構築を担当したりと、ECサイトに携わるきっかけはさまざまです。ECに携わるようになった方々はどのようなキャリアを歩み、どのようなやりがいを感じているのでしょうか?ECに携わる人々の声をピックアップしました。
▶︎株式会社オークローンマーケティング
事業内容:テレビショッピング事業、Eコマース事業、プリントメディアを活用した通販事業、小売・卸販売、直営店運営事業
*ストーリー:マーケティング経験を武器に、ショップジャパンのフィットネスカテゴリーの価値向上へ
・2018年中途入社
・仕事内容:フィットネスカテゴリーのマーケティング責任者として、ゆらころん、スレンダートーンなどのフィットネス商品の販売戦略・メッセージ戦略の開発・実行を担当
・やりがい:
宮田さん 「当社は、ダイレクトマーケティングを中心としたビジネスを展開しています。そのためかなり細かいところまで、さまざまなKPIについて自社で数字を把握しています。日々の細かい提案の一つひとつに対して試算が求められ、ROIに対してとてもシビアです。ダイレクトマーケティングビジネスの厳しさであり、おもしろさですね」
→株式会社オークローンマーケティングの全てのストーリーを見る
▶︎株式会社カインズ
事業内容:ホームセンターチェーンの経営
*ストーリー:小売業のDXとプロダクトマネジメントを推進──“本気”の経営戦略が描くDXの未来
・中途入社
・仕事内容:デジタル戦略本部 デジタルビジネス推進 プロダクトマネジメント部 部長
・やりがい:
下雲さん 「カインズのECも含めたデジタル購買比率を数%から5%、10%に引き上げ、数百億のビジネスに拡大させることは、私自身も経験のないチャレンジです。デジタル領域から携わることで成長に貢献し、結果、私が事業をけん引する存在であれたらうれしい。携わる人全員がウィンウィンで成長できるようなビジネスモデルが作れたらいいですね」
▶︎株式会社コメ兵
事業内容:中古品・新品の宝石・貴金属、時計、バッグ、衣料、きもの、カメラ、楽器などの仕入・販売
*ストーリー:お客様の声を聞き、声を活かす場所──目指すのは、全国で一番のコンタクトセンター
・仕事内容:KOMEHYO公式オンラインストア「KOMEHYO ONLINE」の受注業務を担うWeb事業グループのマネージャーとして、コンタクトセンターの運営とお客様の応対を担当
・やりがい:
坂田さん 「一番の魅力は、さまざまなお客様との接点を持てることです。コンタクトセンターは、KOMEHYOの商品や店舗に興味をもってくださったお客様と最初にコンタクトを取る場所です。電話やチャット、メールを通じて、直接お客様の声を聞ける場所であり、いただいた声をサービス向上に役立てるために社内へ情報発信できる場所です。ですから、コンタクトセンターの役割はすごく重要だと感じています」
▶︎株式会社大丸松坂屋百貨店
事業内容:事業内容:百貨店業
*ストーリー:お客様とデパコスの架け橋になりたい。「DEPACO」編集長の挑戦
・2015年中途入社
・仕事内容:経営戦略本部DX推進部デジタル事業推進部の専任部長兼 メディアコマース「DEPACO(デパコ)」編集長
・やりがい:
DEPACOのターゲットは、デパートのブランド化粧品に興味はあるけれど、どれを選んでいいか分からない、といったデパコス初心者のお客様です。素敵なデパコスとの出会いの架け橋になりたい、と望月は願っています。
望月さん 「私たちのミッションは、“いつでもどこでもコスメを選ぶワクワク感を提供すること”です。なかなか店舗に足を運べない方や、カウンターに座りながらの接客よりも、もっと気軽に買い物をしたいお客様も多いと思います。私たちは、そんなお客様に代わって知りたいことを取材し、情報を発信することを心掛けています。(中略)
単純に商品を並べるだけでは既存のECモールなどにはかないません。DEPACOがもともと掲げていた“身近なプロに教わっちゃおう”というコンセプトは変えずに、お客様の身近な存在であることを常に意識しています。そのため編集部のメンバーは顔を出して記事に登場していますし、みんなでブレストしながら、時代に合わせて距離の近い、顔の見える関係を目指しています」
▶︎デル・テクノロジーズ株式会社
事業内容:個人・法人のお客様を対象に、パソコン・モバイル端末から基幹システムやクラウドの導入支援、セキュリティサービスに至るまで包括的な IT ソリューションを提供
*ストーリー:26歳から始めた英語で、外資系企業に転職。eコマースを起点に築いたキャリア
・中途入社
・仕事内容:コンシューマーオンラインビジネスマネージャーとして、自社ECおよび外部ECの戦略策定・販売計画・販促企画・運用改善を担当
・やりがい:
渕上さん 「ECサイトはプラットフォームゆえ、オンラインチーム単独では成果が出せない部署です。売上に関わる価格決定も、仕入れも、物流も、出荷も、カスタマー対応も、主導するのは他部署の方々です。
マーチャンダイジング、マーケティング、オペレーション、ファイナンスなどあらゆる部門の101%を積み重ねる。そこに私たちオンラインチームの改善を加え、すべてのチームの力を掛け算することで120%の成果を出していく。このチームワークこそ、オンラインビジネスの醍醐味です」
▶︎北國フィナンシャルホールディングス社員組合
事業内容:銀行業務を中心にコンサルティング業務、クレジットカード業務、リース業務などの金融サービスを展開
*ストーリー:従業員組合での経験が普段の業務にも大きなプラスに──得られた価値観や気づき
・仕事内容:北國銀行のグループ会社が運営するECモール「COREZO(コレゾ)」の企画担当、従業員組合 執行委員
・やりがい:
清水さん 「過去に大手ECサイトへの出店を経験したことがあるお客様もいらっしゃいましたが、出店費用が高く、ECサイト運営を行う上で必要なITスキルが不足していたため、出店を断念するお客様もいらっしゃいました。また、全国の競合他社と同じ土俵で戦うことになるので、商品が埋もれてしまいやすいことも課題でした。(中略)商品の価格や配送スピードだけ見ると、大手のECモールには勝てません。出店者の熱い思いや商品完成までのストーリーを伝えていくことが、ブランドの価値になると思います」
→北國フィナンシャルホールディングス社員組合の全てのストーリーを見る
▶︎株式会社ポニーキャニオン
事業内容:音楽、教養、文芸、スポーツ、映画、娯楽など各種オーディオ・ビジュアルコンテンツ、及び書籍の企画、制作、販売、映画配給、イベントの企画制作、地方創生事業
*ストーリー:オタクからプロデューサーへ──アニメ関連商品の海外進出のために歩んだ二人三脚
・2017年新卒入社
・仕事内容:営業部署内の製作部でポニーキャニオンのアニメ通販サイト『きゃにめ』のコンテンツ製作を担当
・やりがい:
『きゃにめ』はアニメファンと製作者の懸け橋となるプラットフォームであり、アニメや声優コンテンツの海外展開や新規ファン獲得のための発信源としても拡張性のある場です。
コロナ禍でオフラインのイベント展開が難しい一方、オンラインコンテンツやECの注目が高まっています。高まる需要を肌身で感じながら、杜は新しいフィールドでの歩みを進めています。
杜さん 「製作サイドになることで社内外に新しい人脈や仕事が増えました。スケジュールやバランス調整など、先輩方から教えてもらいながら日々学んでいます。ECに関わる仕事では味わえなかったことを学び、エンタメ業界の渦中で成長を実感しています」
▶︎ユニバーサル ミュージック合同会社
事業内容:音楽ソフト、映像ソフト等の企画、制作、販売
*ストーリー:変化を楽しみ、その先の未来を描く
・仕事内容:D2C本部で「UNIVERSAL MUSIC STORE」の運営を担当(播磨さん)/システム構築を担当(高橋さん)
・やりがい:
播磨さん「『UNIVERSAL MUSIC STORE』は、商品を販売する“お店”であると同時に、情報発信を担う存在でもあります。たとえば、かつてのレコードがCDになり、配信になり、音楽ストリーミングサービスが定着してきた。お客様にお届けする音楽のかたちがどんどん増えています。変化する環境の中で、そのときそのときのお客様のニーズにあわせた商品や情報をお届けできるのが、D2C事業だと思っています。
ユニバーサルミュージックからお届けするアーティストの情報や作品、イベントまでを、シームレスに展開していきたい。それが必然的に『UNIVERSAL MUSIC STORE』の価値となり、差別化にもなると思っています」
→ユニバーサル ミュージック合同会社の全てのストーリーを見る
後編では、ECサイトの運営を支えるソリューションやサービスを提供している企業で働く方々の声をご紹介します。