新型コロナウイルス感染症の流行を機に、大きく変化した働き方。職種や業種に左右されはするものの、コロナ禍以前と比較すると働く場所や働く時間の自由度は高まっています。そうした自由度は就活生の企業選びにどのような影響を与えているのでしょうか?また、「働く環境」や「オフィスの定義」を見直す企業の取り組みとあわせてご紹介します。
【この記事でわかること】
・就活生の希望する勤務スタイル
・フルリモート制度導入企業の事例
・コロナ禍でオフィスのあり方を再定義した企業の事例
「勤務スタイル」は企業の志望度を左右する?
株式会社学情(本社:東京都千代田区)が2024年3月卒業(修了)予定の大学生・大学院生を対象にした「勤務スタイル」に関する調査を実施。その結果からは社会人経験がない就活生だからこその悩みが見えてきました。
本調査によれば、就職活動において、「フルリモート」や「居住地自由」の企業は「志望度が上がる」と回答した学生が58.4%に上りました。
画像提供:学情
回答者からは「現在は東京の大学に通っているものの、卒業後は地元に帰りたい」「住む場所が自由だと選択肢が増える」「居住地自由なら、環境を変えながら仕事をすることができる」「新しい働き方を実践できている、会社の風土や仕組みに興味がある」などの声が寄せられています。
地元へ就職するUターンや、出身地とは異なる地方へ就職するIターンを選択肢とするハードルが低くなっているほか、ワーケーションやアドレスホッパーなど働く場所を頻繁に変えられることへの期待もあるようです。また、リモートワークが一般的になったのはコロナ禍がきっかけともいえますが、時代や従業員のライフスタイルにおけるニーズに沿った働く環境作りを実現していることに魅力を感じている方も多いようです。
半数以上が志望度の向上に影響すると回答している「フルリモート」や「居住地自由」という要素ですが、その一方で「出社の有無」についてはどのように捉えているのでしょうか?
調査の結果では、就職活動において、「出社の機会がある」企業は「志望度が上がる」と回答した学生が、64.1%に達しました。
画像提供:学情
「すべてリモートよりも、出社の機会があるほうが質問もしやすい」「オンラインだけで仕事を覚えるのは不安が大きい」「顔を合わせてコミュニケーションを図るほうが、お互いのことを理解しやすいと思う」「仕事をする上で、人間関係は大切だと思う」といったコメントが寄せられており、リモートワークでの仕事や人間関係への不安が現れる結果となりました。
同社によれば、20代の転職希望者に同様の質問を行ったところ、「『出社の機会』がある企業は志望度が上がる」と回答した割合は48.6%。社会人経験の有無が志望度向上の差の要因となっているようです。
画像提供:学情
フルリモートの会社はどんな工夫をしているの?
コロナ禍を経て、必ずしも出社が必須ではない職種や仕事が明らかになりましたが、中には緊急事態宣言に関わらず、全社フルリモート制度を導入し、オフィスの縮小を選択する企業も増えています。
そうした企業では就活生が不安を抱いている業務やコミュニケーション課題に対して、どのような施策を行っているのでしょうか?また、実際にフルリモートで働く方々はどのようなことを意識して仕事に取り組んでいるのでしょうか?事例と共にご紹介します。
▶︎株式会社ゆめみ
取り組み:福利厚生の一環として「フルリモし放題制度MAX」を導入。ホームオフィス環境に必要なあらゆる機器・什器の支給、ベビーシッター、家事代行などの費用全額補助、海外からの通勤交通費負担などが含まれます。
👉「フルリモし放題制度MAX」正式運用開始~ホームオフィス費用を全額会社負担、最高水準のリモートワーク環境による生産性向上~
▶︎ウイングアーク1st株式会社
取り組み:全社約700名が原則リモートワークのもと、健康経営を加速させています。2021年には全社を対象としたウォーキング大会をリモートで開催し、参加率約8割超を記録。社員の健康増進だけでなく部門対抗などの仕掛けを持たせたことで、コミュニケーションも活性化したことが社外からも評価され、複数のアワードで受賞しています。最近では、社会貢献性を高めたこども食堂とのコラボ企画も実施しているそうです。
▶︎株式会社RevComm
取り組み:創業当初から日本全国どこからでも仕事ができるフルリモート・フルフレックス制を導入。RevCommのみなさんは、この制度を活用してワークライフバランスを確立しています。
👉RevCommへの転職を機に沖縄へ移住したBDR セールス*が語るフルリモートでの働き方
▶︎かっこ株式会社
取り組み:仮想デスクトップでセキュリティ問題を解決、オンライン料理教室などでコミュニケーションロスを解決
👉完全テレワークで叶うワークライフバランス ── 自分たちで守る快適な働き方
▶︎株式会社ナラティブベース
取り組み:状況に応じて判断に使っている経験則を「言語化」する『パターン・ランゲージ』を導入し、ナラティブベース流のうまくいくリモートコミュニケーションを可視化・言語化
👉「パターン・ランゲージ」で空気感を可視化?フルリモートでつながりを強固にする秘訣
▶︎シックス・アパート株式会社
取り組み:ビジネスチャットツールの工夫やテレワーク手当を支給するほか、コミュニケーションにおいて『ハイコンテクスト』と『ローコンテクスト』を使い分けることも重視しているそうです。
👉ニューノーマル時代の持続可能な働き方──「全社員毎日テレワーク」を広く世の中へ
withコロナ時代のオフィスのあり方
全社フルリモートを導入し、出社は最低限とする場合、オフィスを縮小したり、なくしたりというケースもあります。その一方で、withコロナの時代に合わせてオフィスを新たにしたり、コロナ禍をきっかけにオフィスという場の定義を検討する企業も少なくありません。ここでは「オフィスのあり方」を見つめ直した3つの事例をご紹介します。
▶︎MANGO株式会社
👉ストーリー:キーワードは「キャリアの離陸」──コロナ禍で見つめ直したオフィスのあり方とは
柴田さん 「リモートワークは、一人でパソコンと向き合って仕事をすることになります。普段は困っていることがあれば隣のメンバーに声をかけるなど、安心して相談できる環境が当たり前だった以前と比べ、不安を抱いたメンバーも多くいたと思います。とくに入社したばかりのメンバーは悩んだことも少なくなかったはずです」
高橋さん 「大切なのは、出社とリモートワークのバランス。『オフィス』という場所は、心理的安全性を保つという大きな役割を果たしていました。こうした気づきが、増床スペースのコンセプトのベースになり、改めて『オフィスで働く意義』を浮き彫りにさせるきっかけにもなりました」
▶︎株式会社ゼネラルパートナーズ
👉ストーリー:本社移転先はシェアオフィス。どこでもだれでも働きやすい環境を作る
東海林さん 「現状の課題も洗い出しながら、本社移転もその一環として実現していかなければなりません。本社移転自体を目的として考えるのではなく、本社移転は全社的な問題や課題を解消するためのひとつの手段だ、と捉えるようにしたのです。そこで、より上位概念から見直していくことになりました」
▶︎株式会社乃村工藝社
👉ストーリー:新しい働き方に合わせたオフィスの在り方をつくる。乃村工藝社の拠点集約プロジェクト
2019年3月から始まったプロジェクトは、翌年の1月から基本的な設計が開始されました。しかし、2020年3月から想定外の新型コロナウイルス感染症の感染拡大にともなって、プロジェクトの投資予算の見直しを余儀なくされました。また、他にもさまざまな苦労がありました。
中川さん 「『こういう方向性でやっていこう』というイメージがある程度できあがっていた中で、新型コロナウイルスが流行しました。モチベーションを高く持って推進していたので、プロジェクトが思うように進まないことへのショックは大きかったです。
ただ、企画やパース作成までは進んでいたものの、具体的な設計業務や発注までは進んでいませんでした。この段階で再検討することは、チャンスでもあると捉えました。『コロナ後のオフィスはどうなるのか?』など、新しい視点から議論を重ねました」
働く場所の自由度は、ワークライフバランスを考える上で重要な要素となります。その一方で、仕事の進め方やコミュニケーションの取り方、帰属意識の形成など意識的な取り組みが求められるケースも多々あります。
withコロナの時代にどんな「場所」で働くことが自分にとって良いのか、またどんな「働く場所」を作り上げるべきなのか──ストーリーを通して情報収集をしてみてはいかがでしょうか?
リモートワークを実践する企業のカルチャーが語られたストーリーをまとめた特集もありますので、ぜひあわせてご覧ください。
関連リンク:リモートワークを実践する企業のカルチャー