新入社員を対象として実施されることが多いメンター制度。メンターは日常業務の指導担当者や上司とは異なり、育成対象者であるメンティのキャリア形成や精神的なサポートをする存在です。
メンター制度の形式もさまざまで、新入社員以外を対象とすることもありますし、メンターが社外の方であるケースもあります。
OJTや上司部下の関係とはまた異なる関係性であるメンター制度ですが、社内で制度を利用したことがある人々はどのように捉えているのでしょうか。
【この記事でわかること】
・メンター制度利用者の満足度
・メンターに求めること
・メンター制度利用者の実体験
多くの人がメンター制度に満足感を感じている?
Confinkle Business Studio合同会社(本社:東京都港区、以下「コンフィンクルビジネススタジオ」)が、社内メンター制度の利用経験がある20代~50代の男女400名に「メンター制度に関する調査」を実施。メンター制度に関する課題やニーズが明らかになりました。
メンター制度に対する満足度を質問したところ、約6割が制度に満足している傾向にあることがわかりました。
画像提供:コンフィンクルビジネススタジオ
満足している利用者からは仕事内容について具体的なアドバイスを受けられる点に加え、キャリア形成や人間関係など仕事のモチベーションに影響しやすいことを相談できる点を評価。一方で、不満を持つ利用者は面談中からメンターとの心の距離を感じており、メンターには話しやすい雰囲気づくりや言いたいことを汲み取る能力も求められていることが分かりました。
社内の別の部署や別のチームメンバーがメンターとなることが多くあります。今回の調査からはメンターが社内の人間だからこそのメリットデメリットも見えてきました。
画像提供:コンフィンクルビジネススタジオ
社内の上司や先輩がメンターの場合、実体験に基づく具体的な話を聞けること、関係者の性格や対応について教えてもらえることが利点として挙がる一方で、人間関係に関するネガティブな話ができない、評価に影響する可能性がある話をしにくいといった弊害が生じていました。
また、社内メンター制度を利用して困ったこととして、 4人に一人がメンターのスキル・経験不足を挙げており、聞きたいことに対して満足な答えを得られていない様子です。その他、メンターと話したくても互いの予定が合わないなど、適切なタイミングで面談を実施できていない現状も浮き彫りになりました。
同調査では社内メンター制度利用者のうち、6割以上が社外メンター制度に関心を持っているという結果も出ており、職場以外の人の意見を聞きたい、他社や他業界のことを知りたいという意見もあがっています。
社内の人間であれば、社内の人間関係や業務について話が通じやすいものですが、人間関係や評価に影響する可能性を見越したり、第三者的な視点を求めたりという理由で、社外メンター制度に興味を持っているようです。
メンターに求める条件とは?
メンター制度に対するホンネが見えてきましたが、では逆にメンターとなる人物にはどういったことを求めているのでしょうか?
画像提供:コンフィンクルビジネススタジオ
調査の結果、制度利用者はメンターが豊富な業務知識・経験を持っていることを最重視しており、メンターに対する社内外の評価も注視していました。同時に、自分の話をよく聞いて理解しようとしてくれること等、仕事ができるビジネスパーソンであるだけでなく良き理解者であることが求められています。
メンターとの面談で話したい内容としては、目の前の仕事や人間関係に加え、キャリア形成やスキルアップなど将来を見据えた相談があがっていました。また、4人に一人は体調・メンタルや、仕事と私生活のバランスに関することを話したいと回答しており、メンターは制度利用者の心と体の健康に目を配れることも重要になってきています。
画像提供:コンフィンクルビジネススタジオ
メンターとして求められる要素やスキルのハードルは比較的高いようですが、これは制度を提供する企業としてもある程度メンター制度のルールや意図を明らかにするなど、期待値のコントロールも必要かもしれません。
メンター制度利用者の声
メンティだけでなく、メンターにとっても成長の機会として、メンター制度に取り組んでいる企業も多いことでしょう。ここでは、実際にメンター制度を活用し、成長を重ねた方々や組織のストーリーをご紹介しようと思います。
◎マーケットワン・ジャパン
▶︎一人だけど、独りじゃない。 夢や理想への道を一緒に見つめてくれる人がいる
明瀬 「実は私自身、入社して半年が過ぎたころ、急に泣き出してしまったことがあるんです。慣れない仕事でいろいろなプレッシャーを感じ、たまりにたまってあふれた涙が止まらなくて……(中略)自分の未熟さを突きつけられて心が折れる経験は、いわば私たちのスタートライン。誰しもが通ってきた道なんです。スキルやマインドは自分で高めるしかないのですが、メンターは心を支えてあげられます」
◎株式会社エスプール
▶︎壁にぶつかりまくる新卒1年目……でも“メンター”がいれば大丈夫!?
桂本 「正直、慣れない環境で同じ業務をしている同期もいないなか、上司以外に頼れる存在がいることは、入社したての自分にとって非常にいい環境でした」
そこからは二人三脚の日々でした。桂本は必死に考え、工夫して、実践してみる。それでもうまくいかなければ、メンターの榎本に相談をする。メンターはその想いや考えを全力で受け止める。職場以外にも安心して相談ができる人がいる、そんな安心感が、新人の目を成果に向けさせることにつながっているのでしょう。
◎株式会社スタイル・エッジ・グループ
▶︎入社半年でのMVP受賞──声が通りやすいスピード感ある環境で存分に力を発揮
SELでは、新卒全員にメンターがつきます。基本は担当のメンターが相談を受けますが、ほかのメンバーも常にグループチャットで状況を把握しています。ですから、ほかのメンバーがフォローすることもできるんです。このような「全員が教育担当」といった意識が共有できていることが、メンターも含めメンバー全員のレベルアップにつながっているのだと思います。
働く上での相談者としてだけではなく、メンター制度を通して、互いに理解しあい、互いを高めあえる存在となることもあるようです。最初はなかなか距離が縮まらないこともあるかもしれません。そんな時はぜひ、経験者のストーリーからヒントを探してみてはいかがでしょうか。