各部門のシステム導入と維持管理などITインフラを担うセクション

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──情報システム部について教えてください。

情報システム部は、会社のIT環境を整える部門です。各部署の社員が業務を適切かつ効率的に遂行できるようインフラを含めたシステム導入と維持管理を行っています。

情報システム部には会計や営業部門などのシステムを担当する「ITビジネス推進一課」、薬の開発や販売後の市場調査などのシステムを担う「ITビジネス推進二課」、新薬の研究や工場の生産関連のシステムを担う「生産研究システム課」のほか、新しいIT技術の導入検討や全社のITインフラのベースとなる部分を任されている「IT企画推進課」の4つの課があります。私は「IT企画推進課」の課長として日々の業務に携わっています。

──IT企画推進課としての高橋さんの業務内容について教えてください。

いろいろありますが、最近とくに力を入れて取り組んだのは、リモートワークに対応したITの導入です。コロナ禍でリモートワークが本格的に始まった2020年3月ころは、大規模なリモートワークに対応したIT環境ではありませんでした。多くの社員が会社のネットワークに接続しようとすると、回線の太さが足りなくて、VPN(Virtual Private Network)(※)が切れてしまうトラブルが発生していました。
※VPN:あるネットワークの中に、別のプライベートなネットワークを仮想的に作り出す技術のこと

そこで、まずは回線を増幅し、社員がスムーズに利用できるようにしました。さらに、クラウドのVPN回線を使ってアクセス環境を分散させることで、より多くの社員が安定して会社のネットワークに接続できるようにしたんです。途中で回線が切れてしまうというトラブルの改善につなげました。

安定したネットワークの実現に加え、私たちが大切にしたのは、安全なネットワークの構築でした。製薬会社にとってセキュリティーは最重要課題の1つです。リモートワーク中に起こる、PCに対する外部からの脅威を完全にシャットアウトするための施策を検討中です。

──各部署がさまざまな情報を取り扱っているだけに、セキュリティーはたしかに重要ですね。

そうなんです。そのため、全社員に会社が貸与するPCやスマートフォンを業務で使用してもらっています。それだけでなく、セキュリティーのためにスマートフォンからアクセスするときは、セキュアブラウザを経由しないと社内システムが使えないように制限をかけていました。

ところが、それでは使いづらく不便だという意見が多かったんです。そこで、セキュリティーを担保しつつ、特定のセキュアブラウザを使わなくてもスマートフォンでメールを開いたり、チャットアプリを気軽に利用できたりするようなシステムに変更しました。個々の用途向けに最適化された形で作られている一般的なアプリを使用して、会社のリソースに接続することで、業務の効率化にも貢献できました。関係者との調整もあり、作業はなかなか大変でしたが、多くの社員にすごく喜んでもらえて、素直に嬉しかったです。

製薬会社のIT担当だからこそ。医薬品に関わるシステムの信頼性を確保する

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──製薬会社の情報システム部だからこそ気をつけている点などあるのでしょうか。

医薬品の品質を確保するには、システムが期待通りに動作し、出力結果の信頼性を確保することが重要です。そのため厚生労働省が決めたガイドラインに従って、製薬会社は医薬品に関わるシステムに対して、適切かどうかを確認するコンピュータ化システムバリデーション(CSV)を実施することが定められています。

CSVとは、開発から運用にいたるまで、システム全般の活動を文書化して記録・保管することです。システムの開発は計画に始まり、仕様、製造、検証、そして報告といった一連の流れに従って行うもので、厚生労働省のガイドラインに沿って、各フェーズで実施する作業をあらかじめ計画し、その計画に従って内容を記録し、証拠も取りながら進める必要があります。これにより、システムが意図した通りに動作することを保証します。そういったことを徹底して行うからこそ、安心して患者さんに安全な薬をお届けすることができるようになります。

──今後はどのようなことを進めていこうと思っていますか?

AIやディープラーニングの活用に力を入れたいと思っています。とくにこれらを使うことで、膨大なデータから医薬品の可能性を検証していく創薬の効率化と、成功確率の向上が期待できるはずです。

さらに、AIによってこれまで手作業だった日常業務を自動化し、業務の効率化を図ることができるのではないかと考えています。実現に向けて、実際に各業務部門と話し合いを行い、どのような課題があり、何を効率化できるかを検討しているところです。

トラブルを起こさない。起きたときには親身・迅速な対応に徹する

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──日常業務において心がけていることは何でしょうか。

ITシステムは今やどんな仕事においても必須です。何か少しでも不具合があると業務が滞ってしまいますので、トラブルを起こさないことはとても大切なこと。とはいえ、ネットワークやサーバーが停止するなどのトラブルはどうしても起きてしまいます。業務への影響を最小限にするのが私たち情報システム部の使命ですので、トラブルが発生した際は迅速に対応しています。

──具体的にはどのような対応をされているのでしょうか?

個別に連絡があった場合は、できるだけ直接コミュニケーションを取るようにしています。最近はリモートワークが中心となっているので、電話やオンラインを使ってテレビ会議方式で可能な限り、直接状況を確認しています。もちろんメールでの対応もありますが、直接話を聞くことで認識の相違もなくなり、相手にも安心してもらえるので。

何に困っているかを直接聞いて、解決し、喜んでくれるところまでちゃんとわかるところにやりがいを感じています。 

──高橋さん自身は情報システム部の一員として、どのような役割を果たそうとされていますか?

前職はITベンダーに勤務していました。そこで約15年間、プログラミングやシステムエンジニア、ITインフラの仕事に携わっていました。このベンダーでの経験は非常に役立っています。当社でも実作業は基本的にベンダーさんにお願いしているので、実作業を経験していないとわからないようなベンダーさんの話を社内でわかりやすく伝える橋渡し役として、業務に活かせています。

今年課長職に昇進してからは、業務に携わる責任をより感じるようになったのと、なるべくメンバーの士気が下がらないように気を配るようになりました。メンバーから連絡をもらったときは時間の許す限り、親身になって話を聞くことも大切にしています。

間接部門でも、見据えているのは患者さんと生活者の皆さんのこと

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──高橋さんにとっての「いつもを、いつまでも。」を聞かせてください。

情報システム部はあくまで間接部門です。したがって患者さんと直接やりとりすることはありませんが、患者さんの「いつもを、いつまでも。」に貢献するために日々奮闘している各部門の方々の業務を微力ながら支えていきたいと思っています。

システムが止まって業務が滞った際、社員が困るだけでなく、その延長線上には患者さん、そして生活者の皆さんがいることを常に意識しています。

さらに、私たちがいち早く便利なITシステムを導入すれば、もしかしたら1日でも早い創薬が実現するかもしれません。また、そういう想いで取り組む日々の積み重ねこそが患者さんの笑顔につながる大切なことだと感じています。

※取材内容は2021年11月時点のものです。