一人ひとりの社員を健康面から支援し続ける

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──健康支援課の業務内容について教えてください。

末成 「健康支援課は全社の健康経営を推進するとともに、一人ひとりの社員が活き活きと活躍できるよう、さまざまな健康支援を行っています」

山本 「健康支援課には、保健師・看護師で構成される医療職チームと、キャリアコンサルタント・産業カウンセラーなどの資格を持つ相談員チームがあります。2023年4月現在、私は相談員チームに所属し、専門相談員として社員との面談が主な仕事になります。業務上の相談をメインに、ときにはプライベートな悩みまでさまざまなカウンセリングに対応しています」

──健康支援課として現在、力を入れて取り組んでいることを教えてください。

末成 「いくつかある中で、まず取り組んでいるのは全社員の『卒煙』推進です。喫煙は予防可能な死亡の危険因子と言われており、抗がん剤を扱う大鵬薬品として『卒煙』推進こそ、取り組むべき重要な項目だと考えています。

『2023年喫煙率ゼロ』を目標に掲げ、2020年から喫煙社員への卒煙支援と、卒煙に関する社内ルールの強化と徹底、採用や部門長任命時の要件に非喫煙者であることを付け加えるなど全社一丸となって取り組んでいます」

山本 「着実に成果は出ていて、2020年には15.0%の喫煙率だったのが、21年には9.2%にまで減少しています」

末成 「社長の小林自ら喫煙率ゼロを宣言していることが大きいと思います。ただ、喫煙はあくまで個人の嗜好です。会社から強制されるのではなく、喫煙者が自ら『卒煙』できることを会社として支援していきたいと考えています」

山本 「本人の卒煙意志を支援していくという姿勢は今後も貫きたいですね。それ以外では、社員のみなさんにより健康的に活躍してもらうために、ヘルスリテラシーの向上や生活習慣改善にも力を入れています」

末成 「まだ始めたばかりですが、メンタルヘルスに関する知識を無理のない範囲で少しずつ身につけてもらえるよう、定期的に情報発信をしています。マネージャー職になった社員にはメンタルヘルス・マネジメント検定試験を受けてもらうことで、知識とスキルを身につけてもらうようにしています」

山本 「マネージャー職の方たちがメンタルヘルスについての知識と意識を高めたことで、メンタル面の不調を感じさせる社員に関して、気づきの段階で相談してもらえることも増えてきました」

がんに罹患した社員に寄り添い、就労を支援する

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──病気になっても働き続けられる環境づくりにも力を入れているそうですね。

末成 「抗がん剤を取り扱うメーカーなので、がんに関する知識のある社員は多いのですが、自分や同僚ががんを発症したときに、はたして何ができるのか。抗がん剤メーカーだからこそできることとして、社員のがん就労支援にも力を入れています。具体的には『がんに罹患した社員の就労支援ガイド』を作成し、社員や家族の『がん体験の共有』もしています。

がんに罹患した社員に対しては、医療職チームのメンバーで連携します。まずはどのようながん治療を受けているのかを把握し、就労と治療のスケジュールを立てるなど、その方に合った働き方を実現するため、社内のどの制度を活用するか、会社として何ができるかを考えて支援するようにしています」

山本 「当社の場合、『がんになったから会社を辞めなければ』という社員はいません。この会社でずっと働きたいという想いの強い社員が多いので、その社員が働き続けられる方法を一緒に考えていきます」

末成 「がんの早期発見施策として、医療職チームでは人間ドックの受診率アップにも力を入れています。がんに罹患した社員に私たちの取り組みがどこまで役に立てているのかは正直わかりません。ただ、できる限りがんに罹患した社員とそのご家族に寄り添ってサポートできる体制になるよう心がけています」

山本 「こればかりは何が正解というのがないですからね。模索しながらその人に合った支援をする、それに尽きると思っています」

──その他、社員の健康のために取り組んでいることを教えてください。

末成 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大で、当社も2020年4月から事業所によっては本格的にリモートワーク主体の働き方に移行しました。そこで、運動機会とコミュニケーション機会の提供の場として、オンラインによるストレッチタイムを設けていました。平日の13時から10分間、毎日100名前後の社員が参加してくれました。

2021年からは、社員が各自で好きなときに好きな運動が楽しめるよう、運動実行支援アプリを導入しました。さらにこのアプリを活用して、『New Style 運動会』を同年5月に開催。全社員のうち約60%が参加し、大いに盛り上がりました」

山本 「私はコロナ禍でも何か目標を持とうと思い、ダイエットを決意したんです。アプリを活用して、毎日歩き、10㎏痩せました(笑)。こんな具合に、アプリを話題にしてみんなで盛り上がったという声も届いています。コロナ禍でのコミュニケーション機会の創出につながりました」

社内のバリューチェーンの加速化が患者さんの日常を守ることになる

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──ダイバーシティへの取り組みについても教えてください。

末成 「2014年から第2期『女性活躍推進ワーキンググループ』が始まり、在宅勤務やフレックス勤務などの制度導入、仕事と介護の両立支援、また、子育てと仕事を両立できる環境づくりを目的とした『イクボス企業同盟』にも加盟。育児との両立支援として産休前面談や、育休復職フォーラムなども実施してきました」

山本 「当社ではかなり以前から、結婚や出産を機に会社を辞める社員はほとんどいなくなりましたね」

末成 「そうですね。それと以前の感覚では、『ダイバーシティ=男女差』と認識をしている社員が多かったのですが、2019年に実施した社内アンケートでは、『男女差だけでなく、LGBTQや障がいの有無、さまざまな価値観あってのダイバーシティである』という意見に大きく変化してきたこともあり、2020年度からの第3期は『ダイバーシティ2.0ワーキンググループ』と称し、LGBTQにも取り組んでいます」

──実にさまざまなことに着手していますが、大鵬薬品における「健康支援課」が果たすべき役割は何だと思われますか?

末成 「会社におけるバリューチェーンの加速化だと思っています。製薬会社が薬剤を患者さんへ届けるまでには、基礎研究、製剤の検討、臨床試験での効果と安全性の確認があり、さらに、製造、品質保証、情報提供や情報収集活動などの事業活動のバリューチェーンがあります。社員一人ひとりが、それぞれの機能・場所で、高い専門性を生かすことで、患者さんのもとに薬剤が届けることができます。

社員の健康面を私たちがサポートすることで、事業活動全体が活性化していく。すなわち、このバリューチェーンが加速化すれば、より早く患者さんに良い薬剤を提供することにつながり、患者さんのかけがえのない『いつも』の生活を守ることになると認識しています。さらに言えば、社員の健康支援のみならず、間接的に世界中の患者さんの健康支援にもつながっていくと考えています」

山本 「個人的には私たち専門相談員による面談を通じて、少しでも社員に日々働きがいとやりがいを持ってもらえたらと思っています。また、そのような役割を担っているのだという意識を忘れないようにしています」

末成 「『やりがい』は、会社が持てと言って持てるものではありません。一人ひとりが自分を見つめ直し、行動、食事、睡眠、卒煙、それらの大切さを意識して行動を変えて心身ともに健康となり、さらに良いパフォーマンスを発揮することで、仕事へのやりがいも自然と持てるようになる。そのための支援をするのが私たちの仕事ですね」

社員の日々の健康を支援するため、まずは自分たちが元気で笑顔で

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──「いつもを、いつまでも。」を実現するため、ご自身は何を実践されていますか?

山本 「健康を支援する立場として、まずは自分自身が健康で元気で笑顔でないといけないと思っています。そのために何かしらの楽しみを持つことを心がけています。『来月の末には孫に会う』『誰かと飲みに行く』など、その都度自分なりの楽しみ、あるいは目標を持つと日々が楽しく、活き活きと活動できます。そんなふうに自分なりの目標なり、楽しみなりを見出しながら、いつまでも生きていきたいものです」

末成 「健康支援課のミッションステートメントとして“私たちは『社員の健康』を高め、満ち足りた笑顔あふれる、しあわせな『職場づくり』に貢献します”を掲げています。社員の健康を支えるためにも、まずは自分たちが元気で笑顔でいることが大事。それが健康支援課メンバー全員のミッションでもあります。私自身はしっかり食べてしっかり寝ることを大切にしています(笑)。

また、家族にも会社の関係者にも感謝を積極的に伝えるようにしています。幸い、大鵬薬品には協力的な社員が多いので、遠慮せずに周囲に協力を求め連携しながら、施策の一つひとつを今後も実現させていくよう努めたいです。

このような想いを持って、私たちが活き活きと企業活動を推進することで、世の中すべての人たちが家族や友人たちと笑顔で一緒に過ごす時間、普段『当たり前』だと思っている日常がいつまでも続くようにしていけたらいいなと思っています」