プログラミングに夢中になった学生時代
──まずは、並木さんがITに興味を持つきっかけについてお伺いします。いつごろ、どのようなことがあったのでしょうか?
小学4年生のころに古くなったWindows XPのパソコンを父から譲ってもらいました。Excelで遊ぶようになり、表計算や図の挿入に始まって小学6年のころにはマクロ機能にも触れるように。そこでVBAを知ったことが、プログラミングを始めるきっかけになりました。
今振り返ると「Excelの何がそんなに楽しかったのか?」と疑問なのですが(笑)。当時は「ボタンを押すと数字や図が変わる」という不可思議な仕組みにおもしろさを感じていたのかもしれません。
中学時代はVBAだけでなくVB.NETも覚えて、ちょっとしたツール系のアプリケーションを100本ほど作って遊んでいました。高校では、主にコンピュータについて学んだり体験したりする電気部に入部し、「パソコン甲子園」という競技プログラミングの大会にも出場しました。
その後、縁あってパソコン甲子園を主催する会津大学への進学を決めました。コンピュータ理工学部 コンピュータ理工学科のみで構成された単科大学に興味を惹かれたんです。入学してみると、キャンパスはコンピュータ好きなおもしろい人であふれていました。
──大学時代は、どんなことに取り組んでいましたか?
今の自分にもっとも影響を与えた出来事は、大学1年から修士までかかわった「Aizu Geek Dojo(以下Geek Dojo)」での経験です。「Geek Dojo」とは、3Dプリンタやレーザーカッターといった最新の工作機械が設置されている大学内のラボで、学生が思いついたものをすぐに形にできる場所です。私が大学1年の時にオープンし、私は初代スチューデントアシスタント(SA)、そしてティーチングアシスタント(TA)を務めました。
Geek DojoでのSA、TAの役割は、工作機械を利用する学生に対してモデリングの方法をレクチャーしたり、事故を未然に防ぎながら支援・指導したりすることです。私は教授からの推薦でSAになったのですが、ソフトウェア側の人間なので、それまで工作機械に触れたことは一切ありませんでした。
しかしAdobe IllustratorやCADソフトについて勉強したり、3Dプリンタで棚を作ったりするうちにハードウェアに触れて自己理解が深まり、その楽しさが分かるように。そしてハードウェアもソフトウェアも同じ「モノづくり」だと気づき、自分はモノを生み出すことがとにかく好きなのだと気づいたんです。
その後は、プロジェクトを通じてチームでシステムをゼロから開発して経験を積み、大学院に進学後もたくさんの貴重な開発経験ができました。ある時は、大学からの相談で職員の方と友人の計3名で、コロナ禍での学生支援物資の受付・予約システムを1カ月ほどで作ったり、ある時は他大学での研究室用システム開発を経験したり。
──チャンスとチャレンジにあふれた大学生活だったんですね。
未来への可能性を直感した面接、未経験の技術領域へのチャレンジ
──就職活動についても聞かせてください。選考を受ける企業はどのような軸で選びましたか?
企業選びはとても難しかったです。私のまわりは優秀な人がとても多く、なかなか自分に自信が持てなかったんです。モノづくりがしたい、そして作ったモノに対して愛着を持って育てたいと漠然とは思っていましたが、その気持ちをどのように昇華すべきかが見えていませんでした。
そのため、就活時期になっても積極的には動けず、自分がしたいことも見つけられずにいました。そんなときに知人から教えてもらったのが、企業側からスカウトが届くタイプの就活サイトでした。そして、このサイト経由で声をかけてくれたのがJストリームだったんです。
──応募当時、Jストリームに対してどんな印象を抱いていましたか? また、入社後に印象が変わった部分はありましたか?
BtoBサービスの会社ということもあり、最初はJストリームについてまったく知りませんでした。正直、「大丈夫な会社だろうか?」と不安も感じていましたし(笑)。しかし、その後に企業説明を受けたときは大きな衝撃を受けました。
まだ、動画配信という言葉が一般的でない27年も前から動画事業を手がけていること。数多くの有名企業と取引していること。インフラ構築、配信プラットフォームをはじめとした自社プロダクトの開発、ライブ配信、そして動画制作と動画配信に関連するあらゆる領域を自社でカバーしていることなど、技術力の高さや27年間にわたる蓄積の重みを目の当たりにしたんです。
──アーキテクトの大川さんとの面接が、入社の決め手だったと伺いました。
そうなんです。初めて面接でお話しした際に「大川さんがいる限り、この企業はITエンジニアのための環境をしっかり作ってくれるだろう」と直感しました。
面接では見ず知らずの人と喋る緊張感があるのが普通ですが、大川さんとはまるで知り合いと喋るかのように自然に技術の話ができたんです。また、お話の中で大川さんがとても優れた技術者であることや、ITエンジニアのことを第一に考えて職場環境を整備している方だということが窺い知れました。
実際に、当社はITエンジニアのための人事制度や教育・自己研鑽などをはじめとした施策を多く企画・実行していて、とても働きやすいです。ITエンジニアより営業組織を重視する企業もある中で、とても希少だなと思います。
加えて、未経験の技術領域へチャレンジできるのも魅力的でしたね。私はこれまで多種多様なシステムやアプリを手がけてきましたが、動画配信に関する技術には触れてきませんでした。難しそうというイメージもあり、なかなか手が出せずにいたんです。そのため、ここでの経験は自分自身の勉強にもつながるだろうと考えました。
その上で、「モノづくりが好き」という気持ちを仕事に活かせること、愛着を持って自社プロダクトを育て続けられることの要素が重なり、希望通りの環境でITエンジニアとして安心して技術に打ち込むことができるという結論に至ったのです。
新卒1年目、配属後3カ月で新機能開発を主導
──入社1年目はどのような仕事を手がけましたか?
2カ月ほど全社研修を行ったあと、社内の共通開発基盤であるJ-Stream Cloudの開発・改修を行うチームに配属となりました。配属当初は簡単なバグ修正や開発環境の整備といった業務から始まり、9月ごろから開発を担当しました。
Jストリームでの初めての開発は、J-Stream Cloudにおける動画の配信形式変換に関する新機能でした。動画配信の形式には、HLS(HTTP Live Streaming)やRTMP(Real Time Messaging Protocol)など複数あるのですが、それぞれ機能面の違いや特徴があります。
当時は、擬似ライブ配信(録画済みの動画ファイルをライブ配信すること)のためにはHLS形式を用い、暗号化ライブ配信や認証配信のためにはRTMP形式を用いる必要がありました。そのため、複数の動画配信形式をシステム側で自動的に変換し、一連の流れを成立できるようJ-Stream Cloud側に機能追加しました。この新機能は、会社でも重視しており入社1年目でこんな大きな仕事を任せてもらえるんだと驚きました。
さらに、開発後のリリースも私が主導で進めることに。メンターの先輩社員に手伝ってもらいながら、なんとか乗り越えたのを覚えています。大変な仕事でしたが、その分刺激的で貴重な経験となりました。
──配属直後から、即戦力としての活躍ぶりですね。その他、印象に残っているプロジェクトはありますか?
動画配信用のチャットサービスをリプレイスしたのも印象的でした。本来はちょっとした機能追加だけで終わる予定だったのですが、その後の性能テストで「処理できるチャット投稿数が想定以上に少ない」ということが判明し、バックエンド側の言語をPythonからGoにまるっと書き換える大規模プロジェクトに様変わりしたんです。
「チャットサービスを作る」ことと「大規模案件にも耐えうるチャットサービスを作る」ことは別物です。Jストリームでは、国際的な有名イベントなどをはじめとした大規模な配信を数多く手がけており、自社が求める開発難易度の高さを感じました。
しかも、プロジェクトに参加していたのは当時入社3年目の先輩社員と、1年目の私。そして、数カ月前に参画いただいた業務委託の方という若手3人でした。最初は戸惑いましたが、3人で「言語をGoに書き換える」という解決方法を導き出し、提案しました。私は、設計・開発を主導しましたが、最終的には、当初の約10倍という大幅なパフォーマンス向上ができたのが本当に嬉しかったですね。
新卒2年目でのテックリード就任
──2年目となる今年4月より、テックリードとして活躍されています。現在はどのような業務を手がけているのですか?
昨年に引き続きJ-Stream Cloudの開発・改修を手がけています。テックリードとして技術選定や設計のリード、コードレビューを含めたコード・品質向上に向けた取組みを行っています。
今までは自分のペースで過ごしていた部分もあったのですが、そんなにのんびりしていられないなと思うようになりました。私が行った技術選定が将来に影響を及ぼしてしまうこともあるので、まずは適切な判断ができるよう技術を磨いていかねばなりません。今春にネットワークスペシャリストの試験を受けたのですが、近くDBスペシャリストの試験も受験する予定です。
──テックリードとして、バックエンド開発上の課題や重点項目について考えを聞かせてください。
じつは、現在J-Stream Cloudの構造をゼロベース思考で考え直すプロジェクトが始まっています。既存のものはAPIが複雑化していてメンテナンスコストが上がっていて、ユーザーフレンドリーではない部分もあります。現在のJ-Stream Cloudは、社内のITエンジニアのみが使用していますが、将来を見据えてそれ以外のユーザーも視野に入れて考え直しています。堅牢性を担保しつつ幅広い次世代モデルという枠組みで発想して、大胆に構造改革すべきときだと考えています。
先ほど「DBスペシャリストの試験を受ける予定だ」と話しましたが、これも次世代を見据えた準備の一つです。ユーザーのリクエスト内容を保存して、今後の行動予測から最適なJ-Stream Cloudの構造を見通したり、使用ボリュームを計測して課金システムを作ったり……。それは新たなビジネスの可能性を含むものになります。
──入社して1年半で、さまざまなミッションや技術に取組まれていますね。
当社は動画配信関連技術がとても高く、その上最新技術を惜しみなく取り込もうとする姿勢があります。新人や若手の意見も大切にして反映してくれる環境なので、私もこの1年半弱でさまざまな経験を積めました。「新しいことにチャレンジして、新しいモノを生み出す」という仕事ができていることが今の何よりのやりがいです。
ITエンジニアとして成長するために私が学生時代から大切にしてきたことは、チャンスを逃さずチャレンジすることでした。チャレンジが次のチャンスをもたらし、チャレンジすることで成長を続けられます。若手の意見を尊重し取り込んでいく当社の環境は、若手ITエンジニアにとってチャンスとチャレンジにあふれています。当社を選んで本当によかったと思っています。
──今後の目標や、理想としているITエンジニア像を教えてください。
まだ先のことはあまりイメージできていないのですが、理想としているのはやはり大川さんです。どんな難題にもスッと答えを出せる、技術力の高いITエンジニアになれたらいいなと思っています。
※ 記載内容は2023年7月時点のものです。その後、状況が変化していることがあります