こうした現状を投資家は懸念?
アップルの株価が急落し、市場全体に影響を与えていましたが、10月から発売した新型iPhoneの増産中止要請や販売台数のクォータリーでの発表を行わないことはすでに11月5日に報道されていましたので、不思議だなと思っていました。
トランプ大統領の選挙公約である関税の引き上げを本当に実施すれば、景気に悪影響を与え、米国だけがその影響から免れることなどできないということはわかっているでしょう。雇用を守るという目先の目標達成はできるかもしれませんが、リセッション(景気後退)になれば大量の雇用削減に結びつきます。
世界の秩序を急激に変えることはいろいろなところに歪を発生させます。
自国優先の人気取り(ポピュリズム)の政治が米国だけでなく、ブラジルでもドイツでも起き、誰も冷静に世界の経済を取りまとめていくことができません。 サミットも先進国の意見を取りまとめることができず、影響力を弱めています。 こうした現状を投資家は懸念していたのでしょうね。 10月の米国雇用統計も非農業部門で25万人増と足元の景気は弱くありません。12月7日に発表される統計でも悪くなければ、FRB(連邦準備制度理事会)は12月19日のFOMC(連邦公開市場委員会)で予定通り金利を上げるでしょう。
米国は金融による経済の調整機能を保持したいので、リーマンショック以来取り続けていたゼロ金利政策から脱却し調整機能としての「糊代」を手に入れたいのですが、例えば日本のように金融危機時よりももっと強烈な金融緩和政策をとっており、その余裕はありません。 新興国はもっと余裕がないのです。 したがって、米国が金利を上げ続けることは米国にとってプラスですが、投資家は価値が下がる通貨を換金してドルに戻そうとするので、新興国の金融が回らず、グローバルに金融が連鎖破綻する懸念が表面化します。 過去には1997年7月にタイバーツが急落して始まったアジア通貨危機があります。 新興国に貸していた資金が焦げ付き、日本でも山一證券や北海道拓殖銀行が破綻し金融危機が発生しました。 投資家はこれを連想しているのかもしれません。
しかし、株式市場がこれまで過熱していて、直ちに大きな調整を余儀なくされるのかといえばそんなことはありません。 株価収益率は歴史的に見ても過熱の状況を示していません。 サブプライムローンのような過剰な信用供与があるわけでもないのです。 結論を言えば、株価は調整の域を出ていませんが、投資家の疑心暗鬼は意外に強いので、日柄はかかるのかもしれません。