友だちがやっていた「ものづくり」の仕事がおもしろそうだったから
高校は普通科で卒業後は地元・三重の旅館で働いていました。1年ほどで正社員になりましたが、友だちがやっていた「ものづくり」の仕事に興味を持ち、精密機器メーカーに転職したんです。仕事はマシニングセンターという工作機械の操作。鉄やアルミの角材を削ったり穴をあけたりという加工工程をプログラムとして機械に打ち込み、図面通りの部品をつくる作業です。
正直言うと入社2年ほどはまったく楽しさがわかりませんでした。プログラムがうまくできなくて作業のスピードも部品の質も上がらず、上司には叱られてばかりで辞めたいと思うくらい。ところが突然、「ものづくりっておもしろい!機械ってすごい!」と気づく日がやって来ました。頭の中でイメージしたプログラムと実際に書いたプログラムが完全にフィットして、機械に思い通りの作業をさせることができたんです。これまで知らず知らず積み重ねた知識や経験が実務と結びつき、まるで間違い探しのクイズ番組などでよく見かける「アハ体験」のようでしたね。
それからは仕事が楽しくて仕方ありませんでした。常に「より早く」「より高品質」を求められる中、不良品の率を下げ、作業スピードを上げるため、最適なプログラムを書くことに夢中になりました。1/100mm以下という誤差の許容範囲を限りなくゼロに近づけることに喜びを感じました。経験値も上がり、入社当時に20分ほどかかっていた作業準備は20秒で終えられるレベルに到達。CADソフトも使えるようになり、自分でも成長を実感できました。
大好きな仕事を続けるためにスタッフサービス・エンジニアリングへ
ところが仕事の楽しさに目覚め、成長に喜びを感じる日々は長く続きませんでした。原因は職場環境です。正当な理由があっても休みづらく、これでは長く働けない、辞めるしかないと考えるようになったんです。ちょうど彼女との結婚も予定していた頃で、せっかく転職するなら次は自分で設計がしてみたいと、前向きに転職活動を始めました。
その中で出会ったのがスタッフサービス・エンジニアリングです。ここは正社員として入社し、大手メーカーなどに配属されるという仕組みで、多くの未経験者をエンジニアへと育成することにも定評がありました。同様の仕組みの会社が「案件があれば連絡します」と言うばかりだったのに対し、スタッフサービス・エンジニアリングはすぐに連絡をくれて、「経験はないけど設計をやりたい」という私を採用してくれたんです。しかも結婚を控え、できれば彼女が住む大阪近郊で働きたいという願いまで叶えてくれました。
最初の就業先は阪神地区にある大手電機メーカー直系の設計会社。仕事は通信装置の構造設計補助で、3D-CADでのモデリングや2次元図面の作成などを担当しました。確かに前職で覚えたCADの知識を活かし、さらに磨いていけるという楽しさはありました。しかし補助はあくまで補助で、指示通りに図面を修正するような業務が7割。「自分で設計する」という仕事とは遠く感じました。3年ほど勤務しましたが、加工の知識やマシニングセンターの経験だけでは歯が立たないことを痛感しました。
それは次の就業先でも同じでした。今度も機械メーカーでプラント設備の設計補助。お客様向けの仕様書や図面の作成まで任されましたが、仕事はやはり補助止まり。このままでは本当の設計にステップアップできないと思い、会社に相談することにしました。スタッフサービス・エンジニアリングには仕事上の悩みや将来について、いつでも相談できるキャリアカウンセラーがいます。そこで私を担当してくれているカウンセラーに「ちゃんと自分で設計する仕事をしたい」と打ち明けたんです。
3社目の就業先でついにチャンス到来
その相談が功を奏したのか、願っていたチャンスが巡ってきました。3社目の就業先は日本を代表するような産業機械メーカー関連の環境プラント会社で、仕事はリサイクル施設の設計。ゴミ処理プラントの粉砕機、ベルトコンベア同士をつなぐシュートの形状の検討や配置計画などを担当することになりました。まっさらな状態から自分で図面を書く。据え付け時をイメージしながら細部の角度などを自分で定義する。同じCADを使う仕事でも、これまでとはまったく違います。
2022年1月の配属から半年ほど、望んでいた仕事にのめり込みました。そして次第に「この楽しさをもっと味わいたい」、「もっと難しい仕事にチャレンジしたい」という気持ちが強くなってきました。ただ、私には高校・大学で学ぶような物理の基礎知識が不足していました。実際に設計上で強度や重力を考えるときに、就業先の若手社員からアドバイスをもらうことが少なくなかったんです。
工学部などで基礎を学んだ社員と、文系高卒の自分との知識の差は歴然。高校時代の自分にとって数学や理科は、将来必要かどうかわからないもの、頑張って学ぶ必要はないものでした。それでも、いつまでもアドバイスをもらうばかりではいられない。もう「勉強が嫌い」なんて言ってはいられません。幸いスタッフサービス・エンジニアリングには、通信講座、書籍購入補助、資格取得支援などキャリアアップを支援する制度が揃っています。まずは本を買って、材料力学の勉強から始めました。
部品の設計から、もっと大きく幅広い設計の仕事を目指して
自分の意志で勉強を始めたものの、そもそも勉強は大の苦手。かなりの苦労や苦痛を伴いました。そこで就業先の先輩に「どうすれば勉強に身が入りますか」と相談したんです。すると「きちんと目標を持つことが大事。まずは2次元CAD利用技術者試験を目指してみれば」とアドバイスしてくれました。CADにはもう10年近く関わっていますし、最初に自信をつけるためにはちょうどいいかもしれない。そんな気持ちで勉強して挑戦すると2022年9月に無事2級を取得。さらに、2023年1月には1級にも合格しました。
それぞれ一発合格したこともびっくりですが、それよりも私が驚いたのは「勉強する習慣」が自然に身についていたことです。最初は苦痛だったのに、毎日仕事が終わった後に勉強し、土日も時間を見つけては勉強するようになりました。課題にかかる時間をストップウォッチで計って成果や成長を自分で確認したりもしました。いまは材料力学のほか微分積分なども勉強中。もちろん通信講座の受講や書籍購入には、会社の支援制度をフル活用させてもらっています。
次の目標は技術士補(機械部門)の資格取得です。まわりからは数年かかると言われますが、今後も機械の仕事をしていくためには必要な資格。明確な目標を定めれば、自分は楽しく継続して勉強できるという自信もついたので、合格を目指して頑張ろうと思っています。
部品にどのくらいの角度をつけるか、ボルトの長さをどうするか。いまはその定義を自分で決められます。据え付け時のイメージもかなりできるようになりました。今後はさらに完成した機械の使い勝手や、据え付けやすさ、メンテナンスのしやすさまで考えた定義づけができるエンジニアになりたいと思っています。そんな定義に必要なのが根拠や裏付け。それには確かな知識や資格が役立ちます。
部品の設計だけでも「機械ってものすごくおもしろい!」「自分で考えて決められるって本当に楽しい!」と実感しています。一方で、私が設計する部品を組み合わせ、機械の配置全体を見ているエンジニアもいます。そこに到達すれば楽しさ・おもしろさは何倍にもなるはず。
だから私はこれからも勉強を続けるつもりです。キャリアカウンセラーや就業先の方の力も借りながら、設計エンジニアとしてのさらに高みを目指していきたいと思っています。