現場実務もシステム設定も自前。現場を裏から支える縁の下の力持ち

物流業・倉庫業と聞くと、検品や梱包などの現場仕事がイメージされる。事実、2022年4月現在、SLGのアルバイトを含めた79名の従業員の内、71人が現場で働いている。

そんな中で、岩岡 正真の一日はパソコンと向き合っての仕事が多い。彼の経営統括部での業務は多岐に渡るが、主な業務は物流関連システムの設定だ。

岩岡 「当社の倉庫では複数のお客様の商品を保管・発送しています。ECサイトの運営をしている企業様がメインなのですが、ECサイトの運営にはAmazonや楽天市場などのECサイト、決済システム、配送システムなど多くのシステムが必要です。さらには、クライアント様によって使われているシステムが異なります。そのため、現場で効率的に作業を行うためにはそれぞれの企業ごとのデータを、当社のフォーマットでシステムに集約する必要があるのです。普段はそのための情報の繋ぎ込みを行っております。

たとえば、ECサイトからは『誰が、どの商品を、何点購入した』という、情報を知ることができます。しかし実際に我々が倉庫から商品を発送するには、お客様のオーダーや商品サイズに合わせた梱包方法の情報、商品と一緒に入れるチラシやパンフレット、支払い用紙や、納品書、販売ショップのサンキューレターなどの同梱物、その他にも、各配送会社から発送するための伝票(送り状)を出力するための情報が必要になります。

そのため、それらの情報の繋ぎ込み、また、現場で情報を閲覧するモバイル端末やタブレット端末などの機器類の設定も必要になります。経営統括部ではこれら、現場を運営するうえで欠かせない裏側部分を担っております」

実はSLGは、倉庫会社では珍しい、自社でシステム部門を持っている会社であり、岩岡はここに強みを感じている。

岩岡 「物流に携わる会社は何かしらのスペシャリストであることが多いんです。たとえば梱包方法を早くするスペシャリストで、当社の何倍もの出荷数を実現したり、システムに特化したSEがいることで、当社よりシステムに詳しかったりする会社は探せばいくらでもあります。

しかし、それらをマルチで上流から下流まで単独で解決できる会社はものすごく少ないようなんです。物流面をフルフィルメント(受注→データの連携→在庫管理→梱包→加工→システム連携→出荷を一括で行うこと)でできる倉庫が少ない分、そこでバリューを出せているのではないでしょうか」

EC業界の傾向として、倉庫はものを預かって出荷するという実務的な作業だけを担っていて、クライアントのシステムとの繋ぎ込みは外注してシステム会社に依頼するということが多くなっている。つまり、何かシステムの問題が発生した場合、クライアントとシステム担当のやり取りでは完結せず、間に倉庫会社が入るので、反映までにリードタイムがかかってしまうのだ。

岩岡 「当社はシステム機能を自社で持っているので、お客様へのレスポンス速度を上げることができます。また、お客様ごとにカスタマイズができるので、他の倉庫で対応できない部分まで幅広く、かつ細かく対応することができるのです。

実際、当社の倉庫をご利用いただいているお客様には、運用方法が複雑という理由で他の倉庫を断られ、お困りになっていた企業様も多くいらっしゃいます。それをシステムで解決し、実現できるところは当社の物流会社としての大きな強みになっていると感じますし、私自身がやりがいを感じる点でもあります」

いち派遣スタッフから始まったエスプールでのキャリア

今ではSLG随一のシステム担当者である岩岡だが、キャリアの初めからデジタル畑を歩んできたわけではない。

岩岡は元々、10年ほど前からグループ会社のエスプールヒューマンソリューションズ(以下SHS)の派遣スタッフとして関西で働いていた。そこからエスプールグループでアルバイト、契約社員、正社員と立場を変えながらキャリアを重ねてきた。

岩岡 「SHSでは店頭販売やキャンペーンを行ったり、コーディネーターとして人材派遣業をやったり、コールセンターの現場をやったりとさまざまな業務に携わりました。2019年に関西支店で現場責任者をやっていた際に、エスプールグループの役員である佐久間 雄介から『困っているところがあるので手伝ってくれないか』と声をかけられたことをきっかけにSLGに来ました」

SLGへの異動はそれまで自身が経験してきた業種、職種とは大きく異なっていたが、戸惑いやためらいはなかったと言う。

岩岡 「エスプールには物流業界で働きたいという思いで就職したわけではありませんでした。しかし、仕事を選択する上では、『コーディネーター』や『営業パーソン』など名詞で選ぶのではなく、『人が困っていることを解決したい』という動詞で選びたいという考え方をしています。ですから、物流は営業等含め全くの未経験でしたが、自分の力を必要とされているのであればと、あまり悩むこともなくやってみようと思いました」

SLGに入って初めの半年ほどは、営業部で基本的な営業の流れを学んだ。その経験を活かし、現在もシステム設定の業務とは別に、新規案件を現場で立ち上げるまでのスケジュールのハンドリングや、既存のクライアントのお困りごとをシステムで解決するための提案を行っている。

一方で、メイン業務のシステムについては苦労することも多かったという。

岩岡 「元々システムをやっていた人間ではなく、SLGに来て初めてシステムに触れ、開発言語や専門用語を学ぶような状況でした。勉強してできるようになったというより、とにかく試行錯誤を繰り返しながら覚えてきました(笑)。2年経って、やっと人並みにシステムの話ができるというようになってきたかなという感じです」

システム化で人の困りごとを解決──人力・手動の限界を超える

岩岡の「人が困っていたら解決したい」という思いは、経営統括部の多岐にわたる仕事内容と非常にマッチしていた。社内からのシステム改修依頼はもちろんのこと、システム担当としてクライアントとのやり取りが増えていく中で、社外からもシステムについて相談されることが増えてきた。

岩岡 「私が担当になってから相談を受けたお客様の中で、印象に残っている出来事があります。そのお客様は購入者が自由に商品を組み合わせて注文できるサービスを展開していたのですが、その組み合わせパターンが4万パターンほどになっていました。そうなると、新たな商品ができたときや、商品がリニューアルしたときに、4万パターン全ての情報を修正しないといけなくなってしまっていたんです。

そこで、当社でセット品のプログラムを組み、マスタとなる商品のデータだけを修正する形式にしました。それまで、4万パターンを人力で修正していた手間がなくなりました。また、手動でやっていたことにより当然ミスも発生していたのですが、それもシステム化することでなくなりました。

さらに、今まで先方の社員の方が二晩徹夜でやっていた作業が一瞬でできるようになったので、浮いた時間を広告戦略や販売状況の分析など、売り上げを上げるための本来のコア業務に使えるようになったとお喜びの声をいただきました」

一方、物流業界のこれまでの慣習もあって、スムーズにシステム化できないこともあったという。

岩岡 「あるお客様は、それまで自社倉庫でやっていて、月100件ほどの出荷を自社社員で対応していたのですが、テレビ番組で取り上げられたことで注文が一気に3.5倍にも増えて、想定外の繁忙期がきてしまったんです。このままでは社員が疲弊して倒れてしまうということで、相談をいただきました。

その当時、商品の梱包の仕方がマニュアル化されておらず、その会社の社員の方達は、長年の経験で商品を見ただけでどの資材を使うかを判断するという、いわゆる属人化された状態でした」

しかし、アウトソーシング事業を行っているSLGとして、自社スタッフに一から経験して覚えさせるという選択肢はなかった。

岩岡 「マニュアル化されていないものをシステムで管理するのは非常に難しく、先方の社員とともにルールに落とし込む作業はかなり苦労しました。まずは30種類あった商品をそれぞれの梱包サイズごとに大きく5パターンに規格分け。次に商品同士の組み合わせによりどの梱包サイズになるかも表にして、それらをシステムで判断できるプログラムを組みました」

地道で大変な作業を経て、システム化したメリットは大きかった。

岩岡 「そこまでの作業は大変でしたが、一度作ってしまえば、個人の経験などに依存することなく業務を進められるようになりました。システムで制御することで梱包の指示を出してくれるので、極端な話、その日に初めて来たような派遣スタッフでも、ピッキングリストさえあれば、何年もやってきた社員と同じような梱包ができるようになりました。現場でスムーズに作業が行われていると嬉しくなりますね」

今後は人員の輩出にも力を入れたい

人を育て、知識を広げていく。それが困りごとの解決につながる

今後について、岩岡には明確な目標があるという。

岩岡 「当社はシステムに強みがある倉庫会社だと思っています。しかし以前は、システム担当が私と前任者の二人しかいなかったので、どうしても限られた人だけの知見に頼った運営になってしまっていました。

今は人数も揃ってきて、後進の育成にも注力できるようになってきたので、苦労して手に入れた知見を社内に伝播させて、お客様への対応の速度を上げ、現場からの提案の機会を増やせるよう、人員の輩出をしていきたいです」

それが岩岡の目指す「人のお困りごとを解決する」に繋がっていくと感じている。

岩岡 「ただ新規案件を増やすことによって、単純に当社の売り上げを伸ばしていくだけでなく、既存のお客様に対してもさらにシステムで課題を解決していくことで、提案の幅を広げ、お客様自身の売り上げにもつながるようになっていければ良いと思っています」

得た知識は社内だけでなく、社外にも広げていこうと考えている。

岩岡 「親会社のエスプール本体に『はたらぼ』という部署があります。その協力を得て、システムについて理解を深めてもらうための動画をYouTubeにアップしています。そこでは新たにEC業界に参入しようとしているようなお客様に見てもらえるような動画や、既存のお客様向けに、よりシステムについての理解を深めてもらうための動画を公開しています。

それを見たお客様が、自社でもさまざまな広告戦略を取れるんじゃないか、このシステムを使えばもっと面白い施策を取れるんじゃないか、という選択肢を増やすためのツールとして使っていただけたらなと思ってます」

システムで物流を支え、お困りごとを解決したい。

岩岡はこれからもその目標に向かい、走り続ける。