一般的にダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)とは、性別・年齢・国籍などにとらわれず、多様性を認めて受け入れ、それぞれの個性や能力に応じて活躍できる環境を作っていくことをいう。

今回は、株式会社エスプールD&I推進グループの赤星と岳野に話を伺った。

エスプールの中に設置しているD&I推進グループは、社会で浸透している一般的なD&Iに対する考え方とは少し違っている。

障がいのある方や女性の活躍、LGBTといった一般的にD&Iとして取り上げられるマイノリティのみへフォーカスをするのではなく、全従業員を対象として社員一人ひとりにフォーカスして、多様性をサポートしている。

毎年、全従業員に向けたアンケートを実施し、悩みや相談したいことがないかを確認して個々に合わせた対応を行っている。

今回は、そのD&I推進の取り組みの中のひとつ「障がい者雇用率の改善」について取り上げる。

障がい者雇用については、厚生労働省より「民間企業の法定雇用率は2.3%、従業員を43.5人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用しなければならない」と定められている。

これに対し、エスプールグループでは「障がい者雇用率3.0%プロジェクト」を掲げて取り組んできた。

取り組むにあたって悩んだ部分は、現場では障がい者雇用に対するイメージが曖昧で必要な配慮が想像できないということ。

雇用を進めるにあたって、どのような業務に携わっていただけばいいのか、お互いが円滑に働くにはどうしたらいいのか慎重に検討を重ねた。

D&I推進グループ内で慎重に検討してみても、実際に現場で働く責任者に提案したときにうまく意図が伝わらないことも多々あった。

そこで、まずは障がいの特性に関する正しい理解をお互いに深めていく必要があると考えた。

当初は、障がいのある方の特性を踏まえて働きやすい仕事内容を新たに作ろうと考えたが、会社としては「障がいがあることを理由にあえて仕事を作り出す」という特別な措置を行うことはD&Iの本質ではないと考えた。

つまり、一般社員と区別せず、求人募集があるから採用するという一般的な形で採用をしていきたいという意図だった。

そういった考えを踏まえ、今ある仕事やそれぞれが担当している仕事内容の割り振りを練り直して、通常の仕事内容で障がい者枠と一般採用枠を区別することなく採用活動ができるように業務内容を工夫した。

岳野「グループ会社はそれぞれ仕事内容も状況も違います。ある子会社では、すでにある業務内容を抜き出し、それを組み直して障がいのある方でも取り組みやすい内容に変更しました。

設立して間もない子会社では、業務を組み直すやり方ではなく、一般向けの求人内容の中に障がい者雇用も積極的に行っているとアナウンスするなど、会社の状況によってアプローチ方法を変えていました。」

障がい者雇用を推進していく上で同時に取り組んだのは、社内理解のためにどういった研修を行うべきかという点であった。

どのような内容や資料であれば伝わりやすいのか試行錯誤した結果、オンライン研修ではなく全国の現場に直接足を運び、研修を行うことにした。

責任者への理解浸透はもちろんのこと、一緒に働くことになる現地の従業員に対しても障がい理解研修を実施した。

エスプールグループには障がい者雇用を行う子会社があることもあったおかげか、全国のどの現場でも障がい者雇用に関する抵抗感が示されることはなかった。

赤星 「採用活動は特に慎重丁寧に見極めを行っています。応募者本人が自分の障がいの特性を理解し、症状が出た際の対処方法について細かく丁寧にヒアリングをしながら面接を重ねます。選考が進むと実際に就労予定の現場に一緒に行き、その仕事や環境に馴染めそうかどうか職場実習を通して確認をします。また、現場でも受け入れに問題がなさそうかをしっかり確認してもらいます。ご本人と現場双方へのヒアリングに足りない部分があると、後にハレーションとなってしまうのでそこは特に気をつけています。」

岳野「就労支援機関を通して求人募集にエントリーしていただいた方は、機関の方からその方のパーソナル情報が共有されます。障がいの特性、就労先での働き方、能力評価など様々な情報を踏まえた上で採用面接を行っていきます。事前情報があることで、障がいの特性について調べ、その方の得意なこと苦手なことを事前に把握してスムーズに面接ができます。」

赤星「実際に入社されてからは、ご本人とD&I推進グループで定期的な面談を行い、さらに外部の支援機関とも連携しながら継続した就労サポートを行っています。外部の支援機関を利用するのは、会社とは関係のない別の調整役が入ることで相談をしやすい環境を作り、安心感をもってもらうのが目的です。障がいの特性やご本人の性格によって面談の回数も調整しながら、働き始めた後もサポートをしっかり行っています。各グループ会社の責任者や現場で働く従業員の方々が採用段階から障がい者雇用に向き合ってくださっていたので、エスプールグループ全体の障がい者雇用率は3.0%を超えました。」

グループ全社の理解もあり、「障がい者雇用率3.0%プロジェクト」は見事達成した。

さらに雇用率の達成だけではなく、「通院有給」というエスプールグループ独自の取り組みも2021年12月からスタートさせた。

通常では入社後6カ月間は有給の付与がない状態となるが、障がいのある方は定期的に通院をされている方も多く、入社後すぐでも気兼ねなく休みを取得してもらえるように、入社した月から利用できる通院のための有給が別途付与される。

より現実的で利用しやすい制度を取り入れるために、従業員とのコミュニケーションや寄せられる意見を大切にしている。

D&I推進グループが積極的な活動をすることで、もともと一般採用募集で入社していた社員が手帳を開示するケースもみられるようになった。

こうした取り組みの結果、D&I推進グループが採用から関わり、障がい者雇用枠で入社した方で退職となった方はいない。

岳野「面談をしているともっとこんな仕事をしてみたいという意見や、こんなことにチャレンジしてみたいというような意見も上がります。これからも長く定着して働いてもらいながら、色々なことにチャレンジしていただき、障がいがあっても活躍できるということをたくさんの人に見ていただけれたらと思っています。」

D&I推進グループは障がいがある・ないに関わらず、従業員一人ひとりが働きやすいと感じることができるよう、いつでも相談を受け付けている。

キャリアの相談や産育休など取り扱う範囲は多岐にわたっている。

エスプールグループでは、全従業員にとって働きやすい会社となるように独自の取り組みを進めていく。