薬局運営マネジメントから薬局事務職の教育見直しまで。一人三役のブロック長

▲北筑後 兼 南筑後・佐賀ブロック長として、25店舗160名のマネジメントに従事

2021年10月に福岡県中部から南部にかけるエリアと佐賀県を管轄する、北筑後 兼 南筑後・佐賀ブロック長に就任した小野 悠介さん。同年4月には北部九州地区運営部の「かかりつけ薬剤師」の推進担当者、さらに同年8月からは全社の人財育成会議メンバーも担っています。人財育成会議とは、様々な部署が連携して人財育成や社内制度の在り方を考えるために発足したもので、ブロック長としての経験や実績を買われ、アサインされました。

小野 「前任地では長崎県の壱岐・対馬のふたつの離島を担当していて、配下スタッフ数は合計80人ぐらいでした。異動後は薬剤師80人、RCS(ラウンド・ケア・スタッフ:薬局事務職)76人という約2倍のスタッフが在籍するブロックを管轄し、法令遵守や数値管理、医療機関との連携のための折衝、スタッフの育成などのマネジメント業務を担当しています。

マネジメントの面では、ブロック内にある25店舗の薬局長と主にやり取りをしていて、人員不足や運営の難しさを訴えられるケースもあれば、数値目標への取り組みを提案される場合もあります。それらに対して前向きに薬局運営できるように動機付けを試みたり、提案に対しては内容を深めるためにこちらから質問を投げかけたりするケースもあります。いずれにしても会社の方針に沿って、みんなが同じ方向を向けるようになることが大事と考えています」

調剤薬局は日本全国で6万以上存在し、コンビニよりも多いと言われています。そんな調剤薬局を取り巻く環境は、刻々と変化しています。「選ばれる薬局になるために、時代に合わせて今後大きく変わっていく必要がある」と小野さんは指摘します。

小野 「顧客満足度や法令遵守、個人情報など、クリーンかつ厳正な運用が求められる業界なので、リスクをしっかりイチから見直す必要があると考えております。環境変化に伴い、薬局が担う役割も変化してきています。先ほど述べた人財育成会議の中でとくに自分が担当するのはRCS(薬局事務職)教育の見直しですが、RCSの役割自体の見直しも必要な時期にきていると思います」

薬剤師だけでなく薬局事務職の重要性を強調する小野さんが、総合メディカルに入社を決めた理由の一つとして「自身がスペシャリストでなく、ジェネラリストでありたいと思っていた」という一面を挙げます。

小野 「薬剤師としての専門性のみを突き詰めるよりもそれを活かして、『どう薬局を良くしていくか』という店舗運営や、経営的な部分にもアプローチしたい想いがありました。直接患者さんに貢献するのも素晴らしいことですが、そう考えられる仲間や店舗をいっぱい増やせたら、より良い医療が実現すると考えています。

自分ひとりでコツコツと進めていくよりも、みんなとチームになって多くの人に貢献していきたかったため、なるべく大きい会社でチャレンジしたいと思ったのです」

キャリアアップに必要な能力や抜けている部分を認識。研修で発想に変化

▲新人時代に毎日つけていた日記。新入社員のリアルな成長が記されている

2006年に大阪薬科大学を卒業し、新卒で総合メディカルに入社した小野さん。薬剤師として南筑後・佐賀ブロック そうごう薬局 四箇店に配属されます。

小野 「将来的に人に何かを伝えたり教えたりするにあたり、自分も結果を出した実績があることが非常に大事になると思い、まずは一流の薬剤師になりたいという気持ちを抱いていました。

新入社員時代には1年半程、日誌を書き続けていました。この先、新入社員と話す機会があったときに『自分の入社時はこういう気持ちだったよ』と、リアルに伝えられるようになれるかなと思い、何人ぐらいの患者さんと話してどう思った、上司である薬局長はこういうことを話していてそのときの自分はこう思った──といったことを書き留めました」

 2009年に同ブロックで教育担当、薬局長に昇格。薬局長になるために受講した研修で「マネジャーとして必要な能力に対する学びを得ることができた」と語ります。

小野 「実際に薬局長になったときに突然RCSさんから『これやっていいですか?』と訊かれ、『私が判断をしなければならないのだ』と思った瞬間、研修で学んだ内容を一気に思い出すことができました。

自分の中では『どっちでもいいよ』といいたかったのですが、どちらがいいか分からずに質問をしている人にそう答えるのは役職者として失格ですし、『根拠をつけて回答しなければ』と思いました。自分の中で、これまでとは違う頭の使い方の必要性を感じた場面でした」

2014年に鹿児島ブロックへ異動し、薬局長として、ブロックのサブリーダーを務めます。翌年には鹿児島兼沖縄ブロックのブロック長に昇格します。ブロック長への昇格条件に含まれる研修でも、思い出深い学びがあったと振り返ります。

小野 「チーム作りについて体系的に、ステップごとに学びました。それまではスタッフに対してタスクなどに関する目的を伝えて『詳しく具体的に話ができたから、みんなわかってくれただろう』と満足している部分がありました。それが研修によって、自分の伝え方に抜けているポイントがあることや、タスクを遂行するだけでなく、スタッフのモチベーションがチーム作りに重要である点に気づかされました。

研修後は職場でも、チーム作りのプロセスを大事にするようになりました。今まではスタッフにやり方を伝えて数値を追うような形でしたが、スタッフ一人ひとりの動機付けや実際の成功体験を重視するようになりました。モチベーションを確認し、小さな成功体験を積み重ねていけるように意識しています」

常識を超えてこそ変革のヒントあり。ぶれない目標によって効果的な対策を

▲新任ブロック長時代、桜島を背景に。苦労した経験が、飛躍の糧になった

ブロック長就任後に受けた研修の中では、現場の課題解決に向けた具体的な対策についてチームを組んで考案し、実際に成果も生み出しました。その中で印象に残っているのは、「変革を起こすために邪魔になる常識を取っ払うこと」と語ります。

小野 「北部九州にある100程度の店舗を対象に、薬剤師の質の向上を目的として、患者さんへのアプローチに関する課題に取り組みました。話し合いを進めるうち、『これだったらこのくらいで良いですよね』という余計な常識が植え付けられていると、変革は起こせないのだな、と思いました。

強く感じたのはリーダーとして、まず目標をしっかりと定め、逃げないこと。計画の段階で大まかなテーマがあり、そこからある程度ポイントが絞られていくと、あとは何となく関連しそうなことや、簡単なタスクに話が流れていきそうな場面もありました。そこでみんなの意識を本来の目的に戻すために『やっぱりもうちょっと深堀りしようよ』と投げかけるなど、チーム全体を一つの方向に集中させる作業が非常に難しかったです」

こうして苦しみながらも生みだされた取り組みは、実際の現場にも影響を与えました。

小野 「自分たちの思いが実際の現場に伝わり、店舗スタッフ一人ひとりが納得して動ける状況を創り上げることに奮闘しました。リーダーである私とサブリーダーで検討した実行プランをタスクチームのメンバー落とし込み、さらにそのメンバーが各ブロックでその取り組みを各スタッフに伝えていく流れの中で、目的や背景、期待できる成果をどうわかりやすく伝えるか、考える日々でした。

結果として、数値的な面でも成果を上げることができました。調剤薬局は国から『こういうものをすすめてください』『これによって薬剤師の職能を評価します』といった項目が常に提示されます。北部九州エリアの現状と照らし合わせて『ここを伸ばせば、だいぶ薬局としての景色が変わるのではないか』という項目を指摘した結果、実際に全国各エリアの中で最も高い水準に数値を上げることができました。社内の他の地区からも反響があり、全社的にも横展開できるような取り組みを自分たちで実行することができたかな、と思います」

薬剤師からリーダー、そして経営者へ。多角的な視点で会社を動かす人財に

▲現在は経営の領域を学ぶ。よい医療の実現のため、自らを高め続けている

2021年7月から2022年3月に至るまで、「総合メディカルMBAエッセンシャルプログラム」を受講していた小野さん。本プログラムは事業の飛躍に向け果敢にチャレンジする人財に成長機会を提供するもので、社外の経営大学院に通学し経営リテラシーを学ぶとともに、社外交流による人的ネットワークを形成することができます。小野さんは、畑違いの領域を学ぶことについて、このような思いを持っています。

小野 「薬学的な部分とは無関係の経営の領域での学びを深める機会で、受講を希望するにあたり『薬剤師あがりの自分が受けて良いだろうか』と戸惑いもありました。でも人財育成部の部長に相談したら、快くすすめてくれて。

総合メディカルには、やりたいことにチャレンジできる雰囲気が整っていると思います。時期尚早な内容であっても真摯に話をきいてくれて『では、いつごろにそういうことをやろう』と受け入れてもらえる感じです。経営大学院の中でも自分の話をすると、他の受講者から『そんなに手厚く研修が充実している会社を聞いたことがない』といわれます。人財育成にすごく力を入れてくれていると、実感しますね」

国の社会保障費削減対策として、調剤報酬の改定などが影響すれば調剤薬局は半減するとの見立てもあり、またコンプライアンスの面でもさらなる厳格化など、激しい変革が予測される調剤薬局業界。そんな中で「変化に対応するために、会社の仕組みそのものに影響を与えられるポジションにいたいと思う」と展望を語る小野さん。

小野 「ICT(情報通信技術)やAI機能が必ず導入されるでしょうし、薬局に行かなくても薬局を利用できる時代も来ると考えています。環境の変化に対して『これをやってみたらどうか』というチャレンジを発案することで、会社に影響を与えられるようになれればと思います」

各研修を通して研鑽を積み、これからの業界の成り行きにも敏感なセンサーを持ち続ける構えを見せる小野さん。根底には会社ぐるみで業界を押し上げ、「よい医療」を支えたいという想いがあります。

小野 「自分が患者さんに対して貢献するのはすばらしいことですが、同じように取り組んでくれる人をたくさん育てることができれば、より良い薬局ができていくと思います。

世の中にはお一人で多大な貢献をされている方もいますが、それは非常に能力に恵まれているし、とても努力されているからであり、スーパーマンのなせる業だと思うのです。自分はスーパーマンにはなれないタイプと思ったので、私は人や会社を巻きこんで世の中に役立つ薬局や人財を、増やしていきたいですね」

自らを高め、周囲や世の中へ波及させていく──。

総合メディカルで共に汗を流し、知恵を分かちあう同志を増やし、より良い薬局を実現するためにも、小野さんは歩みを止めることはありません。