いつかはプロフェッショナルになりたい。歩む過程で気づいた別の選択肢
新卒で入社したのは、証券会社系列のシステム子会社でした。1980年代後半で、IT業界が注目を浴び始めたころ。ITを生業とする会社に入社できたので、「せっかくなら事業の根幹に携わりたい」という想いがあり、経理、プリセールスを経て、エンジニアになりました。実務に携わってみて、仕事の奥深さに気づくとともに、突き詰めていく感覚が自分には合っていると感じました。
その会社で10年近く勤めたころ、証券業界には「株式手数料完全自由化」という時代が到来します。そんな折に、オンライントレード会社の立ち上げに誘われました。準備段階で、やることは山積みでしたが、最先端の会社の立ち上げに伴うシステムの最上流工程にゼロから携われると考えたら、必ずキャリアの糧になると信じて思い切って転職しました。
転職した先の大変さは、想像を遥かに上回っていました。不規則な生活で体調を崩したところに、事業の立上げフェーズという初めての経験も重なって、自分の技量が足りないと思い知り、1年ほどで退職したんです。
そのタイミングで改めて「自分が何をやりたいか」を見つめ直した結果、「プロフェッショナルになりたい」という想いにたどり着きました。目指すなら、ITサービスを提供するプロフェッショナル。とくに自分の力不足を実感したITの上流工程を中心に、もっと自分の技術に磨きを掛けたいという想いを持って、大手SIerに入社しました。
入社後、上流工程におけるプロジェクトマネージャーの仕事は、全体の進捗・品質管理、人材管理のウエイトが高いことがわかりました。出世する分マネジメント業務が増えるのは当然ですが、そこからマネジメントをしたいのか、技術を磨くというキャリアプランを突き詰めたいのか、次第に迷いが生じるようになっていきました。
データ活用のプロフェッショナルへ。探求心がたどり着いた先
キャリアの選択に迷いが生じ、「自分は何を突き詰めたいのか?」と改めて疑問を突き付けられた気がしました。その中で、エンジニアとしての経験・スキルを磨き、ITサービスを提供するプロになりたいという想いは持ち続けていました。
何度も深く答えを求めていった先に、「データ」の重要性がありました。
要求開発・要件定義でもプロジェクトマネジメントでも、ITシステムを導入するにはデータを上手く扱えなければ始まりません。たとえば、システムとデータの置き換えのタイミングを比べると、データは複数世代のシステム間を移行して長く活用され続けます。システムのライフサイクルより、データのライフサイクルの方が長い。会社を支え続ける基盤になるのはデータだと、ふと気がつきました。
ちょうど良いタイミングで誘いもあって転職し、コンサルタントとして、クライアント企業の課題解決に従事することになりました。ここではまさに、データをいかに活用するかという視点で、さまざまなコンサルティングを経験しました。
この会社には長く勤めて充実感があった一方で、「最後の一歩」に踏み込めないという悔しさを感じるようになっていきました。外部のコンサルタントという立場上、最後の決断はやはりお客様が行うものだからです。外部からの働きかけではなく、事業会社側でデータに関わることができれば、もどかしさの解消につながるのではないか──最後の意思決定に携わる経験が、データを扱うことを突き詰めるためには必要だと考えました。
そんな折、不思議なご縁があるもので、当時のクライアント企業にいた方が、シナネンホールディングス株式会社に入社されたと聞きました。しかも、DX推進へまさに注力しようとしているタイミングで、データマネジメント分野の経験者を求めているところだと声をかけてもらったんです。まさに今、自分がやりたいことができるこの会社でチャレンジしたいと思い立ち、シナネンホールディングスへの入社を決めました。
課題=伸びしろでやりがいを実感。ポジティブシンキングで自身の成長にもつながる
データとは、事実・記録であり、無味乾燥なものだからこそ、そのデータをいかに価値あるものにしていけるかが大切です。
「データ・情報・知識・知恵」とよくいわれます。客観的な事実であるデータを人が活用できる“情報”に加工し、洞察を加えて“知識”に変え、意思決定に役立つ“知恵”に昇華させる。こうしてデータの価値を少しずつ高めていくことには技量が問われます。
シナネンホールディングスに入社して、データのプロフェッショナルとして自分が担うべきは、まさにこの部分だなと実感しています。
シナネンホールディングスグループの事業は多岐にわたります。BtoCのビジネスもBtoBのビジネスも手掛けていて、それぞれの事業会社・部署ごとでもターゲット顧客が異なります。その分データも、最適な活用方法も変わってきます。私は、事業会社・部門ごとの事情を把握した上で、それぞれの目的に応じてデータを活用してもらえるよう、積極的にアドバイスをしています。
ただ、シナネンホールディングスには、この活用に至るまでのプロセスがまだまだ未完成で、システム化されていない(紙やEXCELで、特定の有識者に頼って管理されている)データも山ほど存在します。ロードマップを日々更新し、少しずつゴールに近づいていくという感覚で課題解決に取り組んでいます。
一つひとつのタスクを進めることは、大変だと感じることもありますし、不安がないといえば嘘になります。でも、ものは考えようです。課題は伸びしろだと思えば、当社には「伸びしろしかない!」「やりがいしかない!」ともいえます。
自分の力で会社を変えて、伸びしろを広げていけるって、なかなかできる経験じゃありません。それこそ逆境を楽しむことで、やりがいに変えていくことが、自分の成長にとってもプラスになるのではと考えています。
プロフェッショナルとして、データを活用するための“型”をつくる
2022年度は、グループで「風土改革」の推進を掲げて、シナネンホールディングスの変革リーダーを務めています。変革リーダーは、風土改革を業務として積極推進する役割を担います。改革を率先・垂範する立場にある者として、とくにデータ活用やDXを進める機運を高めていきたいと考えています。
それを推進できるかは、企業風土による部分も大きいと思っています。「データを活用するともっと効率的に良い仕事ができるようになる」「これから企業としての成長を目指すにはDXが欠かせない」など、一人ひとりが信じて意識できるようになれば、大きく前進できるはずです。また、風土改革に積極的に関わることで、いろいろな事業会社の方々と話す機会が増え、うまくデータを収集して、もっと活用方法を伝えることができると思いました。
まだ変革リーダーとしての日は浅いですが、風土改革を通じて会社を良い方向に導くのはもちろん、自分の成長にとって糧になるように取り組んでいきたいと思っています。データ活用は、マネジメントする組織、役割の定義や設計、ルールづくりを行い、組織立って進めていく必要があります。まだ道半ばではありますが、データに強いシナネンホールディングスグループを実現していくのが目標です。
定義・ルールというと、ちょっと堅いイメージがするからか、周りから「佐藤さんって型にこだわるね~」と言われることがあります。自分でも思い当たる節があります(笑)。
実はコンサルタントになったのと同じタイミングで、17年ほど空手道の稽古を続けているんです。日本人は「型」という独自の優れた伝承、習得方法によって「心」と「技」を継承してきました。空手道も「型」を稽古して心身の調和を図ることで、さまざまな応用へとつなげることができます。
データも同じように型を見極めること(モデリング)が、その後のデータを作るプロセスや活用方法に影響するほど重要です。データマネジメントの道と空手道を歩んでいることで、このあたりが染みこんでいるのかもしれません。
型があるから、可能性も広がる。データのプロフェッショナルとして、この会社で組織立ったデータ活用を進め、成長の基盤となる“型”をつくっていきたいと思っています。