研究に費やした大学時代から、プログラムの世界へと転身

幼少期の波多野

波多野 佑亮は、大学時代は物理を専攻し、大学院修士課程まで進みました。順当にいけば博士課程、そして研究者という道もありましたが、波多野は研究が向いていないと感じていました。

波多野 「研究や実験ってなかなか思うような答えが出ない。でもプログラムは書いた通りに動く。むしろ自分でコントロールできる分野が、自分には合っているし、おもしろいと感じたんです」

就職活動では、自分にとって身近でありながら、社会に役立つものをつくりたいという想いから企業を探しました。理由は、「自分が使うものじゃないとテンションが上がらないと思ったから」その中で波多野が選んだのは、大手電機メーカーのカシオでした。

波多野 「カシオは携帯電話やデジタルカメラなど身近なものをつくっていたし、商品として良いものをつくっている会社だと思ったからです」

新卒として入社後、波多野は電子楽器を開発する部署に配属。以来、転職するまでの約10年間、電子ピアノやシンセサイザーなど楽器開発、さらに音楽アプリの開発に携わりました。

波多野 「母がピアノの教師だったこともあり、子どものころから楽器をやっていました。入社した時はカシオが楽器もつくっているなんて知らなかったけれど、素直におもしろそうだなと思ったんですよね。ただ正直、携帯電話やデジカメがイケてる会社だと思ったのに、楽器をやることになったのは想定外でしたね」

この電子楽器・アプリの開発経験が、SHOWROOM入社後の波多野にとって大きな力になったのです。

音楽で生きていく、その課題を解決できるかもしれない!

波多野がSHOWROOMに入社したのは2016年でした。

波多野 「転職するずっと前からですが、世の中ではインターネットのゲーム開発が盛り上がっていて、Web系エンジニアがキラキラと輝いて見えていました。一方、自分の仕事はすごく地味だなと……。今思うと大差ないと思いますが、当時は華やかそうだし将来性もありそうだなと感じていたんです」

そんなときでした。オンラインサロンに対談ゲストとして登場した前田の話を聞いて、「このプラットフォームはおもしろそうだ」と直感で興味を持ったのです。「こんな開発をやってみたい」と情熱に駆られ、SHOWROOMで募集しているポジションを調べましたが、エンジニア募集はなし──。

がっかりした波多野でしたが、1週間後、再度チャンスが訪れます。

波多野 「偶然、SHOWROOMのCTO、佐々木と話す機会に恵まれました。それで直接『エンジニア募集してないですか?』って聞いてみたんです。それが入社のきっかけでした」

波多野がSHOWROOMのサービスに興味を持った理由のひとつには、彼が長年抱き続けてきた課題がありました。

それは「音楽だけで生きていくことが難しい」こと。

波多野 「音楽の世界って報われないなと思っていたんです。たとえ音大を卒業しても、オーケストラに入れるのは、その世代のトップの数%だけ。それでも収入は一般企業のサラリーマンレベルです。何かおかしいぞと。でもSHOWROOMを知ったとき、これこそ打開策になるんじゃないかと思ったんです。

私の母はピアノ教室の教師ですし、妻もヴァイオリン教室の教師をしています。音楽で生きる人が身近にいる環境で、ずっとこのモヤモヤを抱えていました」

そんな波多野にとって、SHOWROOMはひとつの光だったのです。

こうしてSHOWROOMに入社した波多野ですが、当時の開発メンバーにおいては最少で4名になった時期もあり、エンジニアという立場にいながらもデータの分析設計業務全般を担っていくことになりました。

得意なものと新しいもの、常に同時進行で取り組みながら成長していく

「SHOWROOMで初めて経験したことも、続けることで得意分野になっている」と波多野はいいます。

たとえばデータ分析、サーバーサイドの開発、Webサービス全般の開発──。前職では経験したことのない分野にSHOWROOMで挑戦し、次々と自分のものにしていきました。率先して新しいことへチャレンジするのは波多野の信条でもあります。

波多野 「新しい分野を経験し、継続することで得意な分野になっていくと思っているので、あえて新しいことをやるようにしています。ただ新しいことばかりだと初心者レベルの仕事になってしまうので、得意な分野と未知の分野を同時進行でやりながら、新しい技術を身に付けて、かつ成果をきっちりあげていこうと意識しています」

印象に残っているのは、2018年12月にリリースしたカラオケ機能の開発です。チームメンバーはたったの3人でしたが、各自の得手不得手が異なったことで進行は非常にスムーズでした。

波多野がカシオの楽器開発や楽器アプリ開発で培った技術は、裏側の機能、音や配信に関わる開発で大いに発揮されました。また表側のユーザーが触れるUI部分に詳しいエンジニアやさらに楽曲の配信元DAMとの窓口など、ビジネスコミュニケーションが得意なエンジニアもいる恵まれた環境でした。

波多野 「自分が専門でないところは他の人が分担できる幸せな環境です。適材適所だと、少数でもこんなにうまく進むんだと実感しました。それに前職で身につけた技術もつながって、昔は地味だと思ったけれど、ひとつの武器になっていたんだなと気づきました。

最近では、開発に関わる人数も増え、いろいろな業務を分担することが増えています。だからこそ、自分自身も何ができるのかをきちんと理解して、かつ周りのリスペクトできるような人と一緒に仕事をしていきたいなと。それが大事だと思うようになりましたね」

ちゃんと使われるものをつくる。そのために欠かせないのは“夢中”

SHOWROOMで、存分に自身の能力を生かしている波多野。

もっとも大事にしている価値観は、「ちゃんと使われるものをつくりたい」。

この視点は学生時代から一貫して変わりません。

波多野 「新しいものは、使われるか使われないかばくち的な要素もあります。使われないものをつくるのは悲しい……。そのため、“せっかくだから使われるものを”というニュアンスではなく、“絶対に使われるものを”という心持ちでつくっています。むしろ使われないものをつくっちゃいけない!という気持ちですね。

だからこそ開発段階では、かなり真剣に考えます。そのためにも私たちのデータ分析があると思っています」

慎重になりますが、もちろんチャレンジの手を休めるつもりはありません。

波多野 「自分が苦手だなと思っていることは常に意識しておくことを大事にしています。苦手なことって、だいたい経験のないことだから。もし経験できるチャンスが出てきたら、あえてやってみようと心がける。そんな流れをつくっておく。経験して得意になれば自分のキャリアにとってもおトクですからね」

そして将来的には、「漠然とだけれど、なんでもできる人になりたい」といいます。

波多野 「すべてをこなせる人には絶対になれませんが、やれる範囲は広げていきたいと考えています。得意なことだけでなく新しいことも同時進行でやるのは、それが目標に近づく手段だと思っているからです。

ただし、『夢中になれないものはやらない』という基準もあります。常にひとつひとつの物事を自分でしっかり考えて吟味していますね」

成長の歩みを止めることのない波多野。音楽で生きていく人たちがさらに報われるチャンスをつくりたいという想いも、SHOWROOMというプラットフォームを得て、実現できる日はそう遠くないかもしれません。