求め続けた経営志向を育む、成長環境
学生時代からバンド活動に明け暮れるなど、エンタメ好きがこうじて華やかなイメージを抱いていた広告会社へ就職した定木。しかし、2年ほど働いた後、リクルートグループへ転職しました。
定木 「小さいころから起業したいという想いが強くあって、起業家を多く輩出しているリクルートの哲学や文化を体感してみたいと思ったんです。それに、広告会社の事業は、あくまで代理事業。製品などオリジナルの商材を持たないビジネスモデルです。
リクルートもユーザーとクライアントの間に入るしくみではあるのですが、その中で自分たちのプラットフォームを持って強みにしている。そうしたビジネスモデルの中で自分がどれだけ戦えるのか、勝負をしてみたかったんです」
起業家として経営への志を定木が持つようになったのは、建築士で事業家だった父親の影響が色濃くありました。
定木 「父が手掛けた建築物は、たとえ父が死んでも社会に残っていくものです。幼いころからそんな仕事に憧れを抱いていました。自分も、後世に残るものをつくりたいと思い続けているんです」
そんな夢への道程として、リクルートグループに転職した定木でしたが、憧れたリクルートであっても大企業ゆえの課題を抱えていることを痛感します。
定木 「リクルートもその前の広告会社も表舞台の華々しいイメージの裏には、クラシカルなところもあるんです。真っ向から勝負してきれいに勝つ。商材がすばらしく、それを提供するための体制がしっかりと整っているからこそだと思います。
しかし、ビジネスにおいては、クライアントのためを思えば、多少強引でも、あるいは自社に得がなかったとしても、クライアントを先導して、期待値を越えていくようなチャレンジも必要です。そんな泥臭い経験をしておく必要を感じていたんです」
自身の経営志向を育てられる環境を求める中で、定木の目に止まったのがSHOWROOMでした。
SHOWROOMで体感したスタートアップのやりがい
定木が入社した、2018年当時、SHOWROOMは、まだ30から 50人程度の組織でした。
定木 「スタートアップとして事業をスケールさせていくフェーズで、組織をつくる側として携われることに魅力を感じました。それに、自分自身10年ほど音楽をやっていて、音楽で生計を立てられずに夢をあきらめていく才能ある人を大勢見てきました。そんな現実を見てきたからこそ、SHOWROOMの事業そのものを自分ごととして捉えられるだろうという直感があったんです」
ただ、当時のSHOWROOMは定木の予想を超えていました。担当する仕事の幅に、それまで勤めた会社との大きな違いを感じたと言います。
定木 「何かひとつの仕事・職種に専念するのではなく、言うなれば目の前の事象すべてが仕事。入社当初からイベントを企画したり、芸能事務所に営業活動したりと、さまざまな業務を担いました。これに加えて当時は、関連する映像やバナー画像などのクリエイティブも自分で手を動かしていましたから、デザイナーも兼ねていたんですよね(笑)」
目の前の仕事に忙殺されるような仕事のスタイルは、まさに定木が求めていた成長環境でした。
定木 「もともと縛られるのが嫌なタイプですし、たぶん自分の領域以外のこともやりたくなっちゃうと思うんですよね、本気でやりたかったら。もちろん業務のキャパシティを考えなくてはいけませんが、その範疇で人に迷惑を掛けないのであれば、幅広い業務を個人でも担当できるようになることが、個人の成長にも、チームの成果にも良い影響をもたらすと思うんです」
また、共に働くSHOWROOMのメンバーは、強い経営志向を持っていました。経営者の立場でどう事業を伸ばすか、事業を成長させるという大事な視点を肌感覚で学ぶことができたと言います。
「定木って優しすぎるよね」──代表・前田に言われたひと言
定木は芸能事務所に対する営業活動や、大型オーディションの企画・プロデュース業など、入社以来培ってきたスキルと経験で今なお幅広い業務を担当しています。
たとえば、SHOWROOM AWARDもそのひとつ。配信者を招待する年に一度の大規模イベントでプロジェクトマネージャーを務めるなど、SHOWROOMの中核的存在です。
とくにコンサルティング業務においては、クライアントにどこまで本気で寄り添えるかにこだわりを持っているといいます。そのキッカケを与えたのは代表・前田のひと言でした。
定木 「ちょうど、2019年にSHOWROOM感謝祭というイベントを企画していたときでした。それまでのイベントと違って、SHOWROOMの配信者の方を、視聴者の方と一緒になってねぎらおうというイベントで、立ち上げから当日の運営まですべてを担いました。
ただ、大規模なイベントだけに、どこか自分の中で逃げている部分があったんです。こうしたイベントの責任者が大変な想いをしているのを見てきたので、自分は無難にきれいに終わらせようとしていました。リアルイベントって、プログラムを立てて実行するだけならすぐに形ができちゃいますから」
そんなとき、前田に言われたのが「定木って優しすぎるよね」というひと言でした。
定木 「言い換えると、自分の押しの弱さを指摘されたんですね。周囲のメンバーやクライアントに合わせたコミュニケーションをしていると。それでは、相手にとっても学びがないし、本来の目的を忘れてしまっているということなんです。
イベントにおいても、本当に配信者のためを思ったら、社内で無理と言われたことでも、どう工夫すれば実現できるか考えてやり遂げるべきだと気付かされました。自分が思っている本気は本気じゃなかったと」
これを機に、あらためてイベントの内容を見直した定木。イベント当日まで自身を追い込むように、どうしたら演者のためになるのかと考え尽くしました。開催までには多くの困難もともないましたが、イベント終了後のアンケートでは、それまでのリアルイベントよりも高い評価を参加者から得ました。この出来事が定木の中で“クライアントに寄り添う”という言葉の意味を再定義させたのです。
定木 「このイベントの成功を機に私はクライアントに対峙する上でも、その施策がクライアントの中長期的な利益につながるか、という点に加え、遠慮せず提案をしていくようになりました。もしご担当者の考えと私の意見が食い違ったとしても、より良いプランがあるのであればこれまでの流れを覆してでも提案すべきなんです。対峙している担当者が『喜んでいるから良い』という考えでは不十分なんです」
定木のクライアントファーストの考えは、広告会社時代から大切に育んできたもの。
しかし、代表の前田のひと言が、そこにさらなる強いこだわりを持たせるキッカケとなりました。
いかに会社を動かし続けられるか。かき乱せるか
SHOWROOMという環境に身を投じたことで、自らの成長を強く実感してきた定木は同じ部署で働くメンバーにも同じような成長環境を与えられる存在になりたいと言います。
定木 「クライアントだけじゃなく、社内からも頼られるような人間になりたいと思うんです。一緒に働くメンバーが安心して働ける環境をつくることが私のミッションですね。安心して働くというのは安定を求めることではありません。メンバーが失敗を恐れず果敢にチャレンジできるかどうかなんです」
定木が先導して環境をつくっていきたいと感じるのは危機感を持っているから。それは、SHOWROOMの事業規模が大きくなってきていることで、SHOWROOMの成長環境が失われるのではないかということです。定木が入社したころと変わって会社も組織化され、社員一人ひとりの業務の幅が狭まりつつあります。
定木 「組織化していくことは、既存の事業をスケールさせていく上でも、新しい事業を始めるためにも大切なことです。ただ、そうした流れの中で僕を育ててくれたSHOWROOMの良さ、チャレンジできる環境を保ち続けることが、お客さんのために本気で想像力を働かせることのできる社員をこれからも育てていくために大切なことなんです」
経営志向を育んできた定木は、その力を社外や自身だけでなく、社内へ働かせる立場となりました。身をもって体感してきたSHOWROOMらしさを保つために、いかに会社を動かし続けられるか。そしてメンバーの成長を促すために、いかに組織をかき乱せるか。定木が果たそうとする役割は、SHOWROOMのさらなる成長に欠かせないものです。