エンジニアとしてキャリアを重ね、約束された未来もあった。が——?

失敗から学ぶ。

失敗をおそれない。

あのときの失敗が今の自分をかたちづくっている──

ビジネスにおいて“失敗“は、大いなるジレンマを孕む表現です。

もちろんできれば、失敗しない方がいい。

だけど、時と場合、そして人によっては、失敗から成功以上の何かを得ることもある。

齋藤 諒一は、あえて“失敗しない”キャリアを経て、今に至ります。今回はそんな彼のエンジニア人生とSHOWROOMでの活躍にスポットを当てていきたいと思います。

齋藤 「高校時代からエンジニアリングに興味があり、高専に進学しました。卒業後は、独立系の大手SIerに入社。システムの受託開発をメインで展開する会社で、最初に携わったのはカメラの撮影データを管理するシステム開発でした。

もともとカメラが好きで、親の一眼レフを借りて撮影に行ったりしていたんです。だから、自分の専門性であるエンジニアリングと、好きなものとしてのカメラを掛け合わせた仕事ができるのはうってつけだと思いました」

約5年間その仕事に従事した後、Webサービスの開発部署へ異動。そこからは、B2C系Webサービスの開発を行うことになりました。

その後も齋藤は、顧客の要望に応えるシステム開発というクライアントワークを通して、エンジニアリングのスキルを磨いていきます。

自らプレイヤーとして開発を行ないながら、一方ではメンバーを束ねるマネジメントとしての役割も課されるようになっていきました。

齋藤 「最終的には40~50名の部下がいる立場を務めていました。約1,000名のスタッフがいる企業で、30歳ちょっとで、部長に次ぐくらいの役職。あえて自分で言いますが、いわゆる“出世コース“ですね(笑)。

率直に言って、仕事に大きな不満があるわけでもなく、ありがたいことですが、会社からはある程度期待してもらえている実感もありました。客観的に言って、非常に恵まれた状況で働いていたと思います」

一方で、胸のうちにはどこかくすぶる想いがあったのも事実です。

SIerとしてクライアントワークを突き詰めていく中でぶつかった高い壁。

それは少しずつ齋藤の心で仕事に対する疑問符へと姿を変え、やがて無視できないほどに大きくなっていったのでした。

自らの想いに耳を傾け、SHOWROOMという未知なる可能性を選んだ

ビジネスにはそれぞれの良し悪しがあり、一元的に見ることはできません。

大切なのは、ひとりひとりが仕事に対する価値観において、何を大切にするか。

その点で齋藤は、自分の想いに正直になろうとするには、今いる場所を変える必要がある、という結論に至ったのです。

齋藤 「突き詰めて考えていくと、クライアントワークとして開発を受託するビジネスに限界を感じてしまったんです。

マネジメントという立場の目線も大きかったと思いますが、受託者から自社のビジネスを見つめると、本質的には“労働力の提供“になってしまう、という発想から逃れられなくなりました。

いかに受託数を増やすか、イコールいかに人を確保するかが重要で、自分たちの開発したシステムが市場や社会にどんな価値を与えるのかということは求められない。自分の中で“なんのために仕事をしているんだ?“という疑問が日毎にふくらんでいったんです」

転職を決意した齋藤は、さまざまな企業の話を聞きました。

その中でも、なぜSHOWROOMを選んだのか──

齋藤 「率直に言うと、自分にとって一番わけのわからないサービスだったから(笑)。これは私の持論ですが、極端に言えば、エンターテインメントがなくなっても、社会は問題なく成立するはずです。

“なくても成立してしまうもの“に対して市場が存在し、時間や情熱を傾ける人、お金を払って楽しもうとする人がいる。その理由を、自分では論理的に言語化できません。

ロジックはあるはずですが、おそらく定性的な面が強い上に、人によって感じる価値が変化する、というのも難しいなと感じました」

SHOWROOMには実に多様なステークホルダーが存在します。

夢を持ってコンテンツ配信を始める人。

おこづかい稼ぎが目的の人。

有名になるための手段として使う人。

齋藤 「『SHOWROOMを通じて夢をかなえたい』と言う人の“夢”って、十人十色のはずなんです。その上、その夢がかなったかどうかの指標もちがう。デビューそのものが夢の実現とする人もいれば、あくまでも通過点に過ぎないと考える人もいるでしょう。

さらに、視聴者にしてもSHOWROOMに求めるものや温度感は異なるはずです。こんなにも多様な人たちにとって、役立つプラットフォームとして価値を提供していくには、並々ならぬバランス感覚が求められると思っています。

そして、その難しさと、ユーザーの声を当事者として受けられる環境こそ、私が転職を通じて求めていたものでした」

こうして2018年3月、齋藤は新たな挑戦の場としてのSHOWROOMにジョインしました。

過酷なフィールドでがんばる人たちがいる。だから自分も、がんばれる。

エンジニアとして働く齋藤にとって、仕事をがんばるための原動力とはどこから湧いてくるのでしょうか?

齋藤 「個人的にはエンターテインメント業界の中でも、サッカーとアイドルという領域が興味深いと思っているんです。共通項は、過酷なこと。自分と引き合わせて考えてみると、いつも『自分なんてまだまだだ!まだがんばれる!』と感じるんです」

サッカーとアイドル、ジャンルは大きく異なれども、いずれも20代半ばには本気でセカンドキャリアを考えなければならない業界です。

10代から全力で取り組み、30代にもなればベテランと呼ばれ、最盛期を過ぎたとみなされることも少なくありません。

その上、どんなに真剣に、全力を尽くしてがんばっても、それが報われるとは限りません。

試合に出場できない選手がいて、前列に立てないアイドルが必ず存在するわけですから。

齋藤 「それでも、がんばることをやめるわけにはいかないんです。本当にそこで道が閉ざされてしまうから。ベンチでも、光の当たらない場所にいても、最前線に出るための準備をし続けないといけない。本当に過酷な世界ですよね」

SHOWROOMとして考えた場合、アイドルについてはビジネスと直結する重要な存在です。

「過酷な環境に身を置いている人たちの、力になれるようなサービスでありたい」という齋藤の想いは、SHOWROOMが提供すべき価値のある一端を物語っています。

齋藤 「とくに、まだ知名度のない層を押し上げていきたい想いは強いです。非常に限られたアイドル人生の中で、SHOWROOMとの関わりが少しでも楽しい時間であってほしいんですよね。

エンターテインメントは、やっている側が楽しくなければ見ている側も楽しめません。ときには意外な一面もさらけ出しながら、輝けるプラットフォームでありたいと思うんです」

熱い想いを持って、エンジニアリングの領域で自らの使命を果たす。

そのために全力を尽くす。

エンジニアとしてできることを、真摯に、真剣に。

仕事への情熱があり、確固たるスキルも実績もある齋藤は、さながら過酷さとも失敗とも無縁の存在のように見えてきます。

しかし、その見え方にこそ、彼が自分自身に下した弱点がある……というのです。

得意領域を飛び越えて、失敗すらも認めながら挑戦し続けていきたい

齋藤は「ゼロからアイデアを出すのが非常に苦手だ」と自己分析しています。

育てることは得意でも、最初の種を蒔けないのだ、と。

齋藤 「それは、これまでのその弱点に向き合ってこなかったからだとも自覚しているんです。結局のところ、自分が勝てる領域でしか勝負した経験がないんですよね。

だから、大きな失敗をしたこともない。むしろ、失敗しない道を選んできたというか。今だから言えることですが、20代前半くらいで派手に失敗して転んでおきたかったな、と思いますよ。ここまで着々と階段を上ってきてしまうと、もはやなかなか転べませんから(笑)」

失敗は、成功が保証されていないからこそ起こるもの。

つまり挑戦と非常に近しい文脈にある言葉です。

齋藤 「前田との公開1on1でも、もっとチャレンジしていくこと、自分自身を打ち出しながら世の中からのお墨付きをもらえる実績をつくっていくこと、というアドバイスをもらいました。

成長途上のSHOWROOMでなら、良い意味で失敗ができる環境でもあると思うんです。せっかくここに、事業会社として社内のスタッフやユーザーと向き合える環境にやってきたわけですから、もっと積極的に行動していきたいんですよね。

たとえば、あえて他部署とのミーティングに同席して話をしたり、SHOWROOMのユーザーに会うチャンスがあれば直接お声を聞いてみたり」

2019年度は「SHOWROOM AWARD」の表彰者選考について、自ら意見を出してサイト構築にも参画。当日は現場スタッフとして参加もしました。

齋藤 「SHOWROOMのサービスはユーザーがいてこそ成り立つもの。エンジニアサイドからだと、なかなか直接つながりを意識するのが難しいです。だからこそ、直接ユーザーにお会いしたり、自分がユーザーとしてコンテンツを利用したりといったことは、意識的に行なっています」

担当領域の枠組みも、どんどん飛び越えていく齋藤。ある意味では、開発側とビジネス側のコミュニケーションハブのようなポジションで、SHOWROOMの組織内でもそのプレゼンスを高めていこうと努めています。

あとは外部カンファレンスに登壇して実績をつくったり、ゼロから企画を立ち上げて展開したり……と、今以上に積極的に苦手分野にも挑戦していきたい、と語る齋藤。

失敗と無縁の道を歩んできた男が今、立っている場所からは、限りない可能性と挑戦に満ちた新たな道が見えていることでしょう。