ShoProの矯正教育事業。人生に生きる喜びと前向きに進む力を

▲転職後、最初に勤務した喜連川センター。その後、黒羽刑務所勤務を経て再び喜連川センターで責任者として勤務しています

ShoProの矯正教育事業は2007年に始まりました。

教育事業の知見を活かし、公共事業の一環として、罪を犯した人に対する教育をやってみないかとお声がけいただいたのがきっかけです。

日本初の官民の協力による刑務所運営となる「美祢社会復帰促進センター」(山口県美祢市)をはじめ、全国5か所の運営に携わりながら、それ以外の刑務所や少年院等刑事施設にも、更生や社会復帰を支援するさまざまな教育資材を納入しています。

成人かつ受刑者への支援は、「子どもの教育」というカテゴリーから大きく離れていたのですが、今では大きな事業のひとつになっています。

私たちが矯正事業を担う意義としては、企業理念である「エデュテインメントを通じて、人生をより前向きに、より豊かに!」に表われていると感じます。再スタートする人生に生きる喜びを持ち、前向きに進むために、更生と教育は不可欠なものだと思うのです。

本来幼少期に身に着けるべきは学力よりも、生きる力の基礎だと私たちは考えています。

ですから、ShoProで展開する教育プログラムには、他者に対する優しさ、時には我慢したり折り合いをつける心の柔軟性、さまざまな遊びの中から自分の好きを見つける自主性など、人生を前向きに豊かに過ごすための基礎を取り入れています。

受刑者が出所後に再犯しないようにするという、先を見据えた方針が、巡り巡って子どもたちへ伝えるべきことや生きる力を育む教育につながっているのだと思っています。

2021年現在、ShoProは「分類業務」「教育業務」「職業訓練」といった3分野を担当しています。

その中で私が働いている官民協働の喜連川社会復帰促進センター(以下、「喜連川センター」という)では、教育業務と分類業務を担当しています。教員やキャリアコンサルタント、社会福祉士などさまざまな専門性を持つ職員いる中で、マネージャーとして全員の業務と、施設運営を統括しています。

教育業務は、たとえば薬物で捕まった人に対し薬物の危険性を説くこと、殺人で捕まった人に対して「命の大切さ」を教えるなどの教育をしています。

分類業務では、入所してきた人と面接し、今後刑務所内でどのような関りをすればよいのかを検討し、出所後はどの人(例えば家族)につなげればいいのか、どのような就労や福祉につなげるのがよいのかと検討したり調整したりしています。

また、喜連川センターは、ShoProだけなく 警備業務や作業業務などでは複数の民間業者が参画しています。

刑務所には犯罪の種類や刑期によっていろいろな施設があるのですが、喜連川センターは刑期が8年未満と比較的短く、かつ初犯で刑務所に来る男性対象の刑務所です。そのような人のほうが教育的な効果が見込まれるということで、われわれ民間企業が入りそのノウハウで教育をはじめ運営をしています。

人との関わり、小さなことの積み重ねで、世の中は変わるかもしれない

▲一般的にはあまり知られていない刑務所のこと……取り組んでいることや実践を発信することも大切なことと普段から意識しているそうです

矯正教育に携わる前は、主に知的障がい者の方と関わる仕事をしていました。そのときに、刑務所を出所されて社会復帰された方の講演会があり、聴きに行ったことがありました。

その講演会で、世の中には知られていない事実をお聞きしました。

それは「刑務所には知的障がいを持つ方もたくさんいる」という内容でした。知的障がい者の方は障害者手帳を持っていたり、通院されていたり、地域で活動する福祉団体の窓口などに相談されていたり。そういった福祉のネットワークが広がっているんですが、そことの接点がない人たちはたくさんいるんですね。その結果、生きづらさにつながって犯罪に走ってしまうのです。

私はその事実を知ってから、「なぜそのようなことになっているのだろう」と、ずっと心の片隅に引っ掛かりを感じていました。そんな中、ShoProが運営に携わっている刑務所での採用募集があり、応募したという次第です。

入社後、特に印象に残っているのは、とある殺人未遂の犯罪者に対し指導をしたことです。

犯罪を擁護する訳ではないのですが、その人がものすごく凶悪な感じかと言えばそうではないんですね。小さいころから家庭内や学校で孤立していた背景を持ち、心の弱さやコミュニケーション能力の欠如があったこと。そして、追い詰められ判断の基準が狂ってしまったため、本当は他にも選択肢があったはずなのに、それらを見つけられない状態だったのです。

本人は「分からない」「探せない」「聞けない」という考えになってしまい、最終的に「幸せそうな人を殺すしかない」という間違った選択肢しか見えなくなり、連続殺人未遂事件を犯してしまったのです。

人との関わりがあれば、もし誰かが一言声を掛けてあげれば、犯行に及ばなかったのではないか。被害者の方たちがそういった目に合わなかったのではないかと痛切に感じました。

私自身普段の生活でも、一言あいさつすることや「ありがとう」と感謝の意を発することは、実践するようにしています。

小さいことですが、その積み重ねがどれだけ大切かということを、犯罪者の指導を通して実感しているからです。たった一言声を発することで、ある人の人生が、また、世の中が変わるかもしれないと思いながら日々を送っています。

民間だからできる教育、社会構築がある

▲50年以上の教育事業で培ってきたノウハウから生まれたワークブック

「怒り」や「不安」などはトラブルになりやすい感情です。そこで、そうした感情の持ち方や考え方を整理するため、ワークブックを作成し受刑者に実施しています。そのワークブックにもShoProのノウハウを活かし、工夫を凝らしています。

たとえば、黒羽刑務所の受刑者の傾向としては最終学歴が中卒や高校中退の方が半数近くを占めているなど、学ぶことに慣れていない人も多い印象です。そのため、内容は濃密ながら、誰が見てもわかりやすいように挿絵を入れるなど、工夫を行ない、刑務所でも「楽しみながら学ぶ」ことができるようにしています。

ワークブックの形式も、実際に自分が怒りを感じたときにどのような行動を取ったか、どのような感じ方をしたのかを書き出しながら振り返りができる形式にしています。

考え方や感情は目には見えないのですが、紙に書き出すことで自分自身の見えない部分を見ることができ、そこに気付きが生まれる。「楽しく学ぶ」を実践してきたShoProだからこそ、どうしたら興味を持つことができるのか?どうしたら集中できるのか?の観点を持った柔らかで効果的なワークブックなんです。

刑事施設の運営に民間企業が関わるからこそ生まれる価値としては、私たちが実施している民間企業独自の教育や職業訓練はもちろん、広報などを通して、刑務所の実情や犯罪を減らすための社会構築をアピールできることが挙げられます。

刑務所はとても閉鎖的な場所ですから、そこでどんな取り組みが行われているかは、一般的にあまり知られていません。しかし、受刑者も刑期を終えると、出所となり、ほとんどの人が我々のいる一般社会に戻っていきます。

どうやってスムーズに社会復帰するのか?
仕事の受け入れ先は?
家族や地域住民との関わりは?

そんな問題を解消し、「犯罪を減らす」=「被害者を減らす」だと知ってもらうことで、社会全体で安心安全な社会を作ることができるのです。

そのための一翼を担うことが、民間の果たす役割のひとつだと思っています。

培った教育ノウハウを還元し、より安心で強い日本社会を目指して

▲次期事業についての説明会でプレゼンテーション中の八木澤

刑務所で実施している「感情」や「考え方」に関する教育のノウハウを、ShoProがメインでやっている子どもの教育分野に対してなんらかの形で還元していきたいです。

私はこの仕事を通じて、「感情や考え方」に対する対処の仕方を伝えることができていれば、多くの人が刑務所に来ることはなかったのではないかと感じています。

それは我々の教育を受けている受刑者も感じていることなんですよね。
「あの時こういうふうに考えていれば良かったんだ」と。

それをShoProの就学前や、児童・学童期の子どもたち向けの教育事業に還元できれば、より安心で強い日本社会になるのではないかと思います。そこに少しでも貢献できるのではないかと考えているので、ぜひそちらの分野へも展開していきたいです。

国の施策として「出所後2年以内に刑務所に再入所する者の割合を令和3年までに20%以上減少」というものがありますが、これは私の大きな目標でもあります。

令和3年の目標値は16%ですが、令和2年犯罪白書によると再入率は16.1%まで減っています。私たちの取り組みは、国と協働して目標達成まであと一歩のところまで来ているんです。たくさんの方の協力を仰ぎながら、犯罪の少ない、笑顔が絶えない社会をつくっていきたいと思います。

個人としても、地域の集まりなど、どんなコミュニティでも積極的に参加していって、ことあるごとに刑務所でやっていることの重要性をアピールしていきたいと思っています。

そのためにもどんどん経験を積んで、より強く社会に発信していけるようになりたいですね。
これも民間人だからできることかも知れません。

そしてなにより、民間人として受刑者と関われる仕事なんて滅多にありません。毎日毎日が貴重な経験ばかりで、とてもやりがいがあります。達成感も責任感も密度が濃く、このような経験ができることにとても恵まれていると感じています。