予想外の保育事業部配属──畑違いの中芽生えた「教育×メディア」の視点
2020年10月5日(月)より番組の新MCに木村昴さんを迎えて発足した新生「おはスタ」。
夏ごろに前MCであった花江 夏樹さんからお子さまが生まれる予定という報告があり、「ご家族との時間をもっと大切にしていきたい」と花江さんの番組卒業の意向に共感した当社は、花江さんの卒業を歓迎すると同時に、新たな「おはスタ」をつくり始めました。
私自身は2020年現在、「おはスタ」のプロデューサーとして番組制作に携わっていますが、「映像」に対する熱意の根底は、幼少期までさかのぼります。
子どものころから映像が好きで、高校生のころには映像に関わる仕事がしたいと考えたんです。一度地元九州の大学に入ったのですが、自分らしい進路を求め、再受験して東京の学校へ。就活の中でも映像業界に対する熱意を伝えたところ、ShoProに入社が決まりました。
しかし!入社後、HAS総合保育事業部(現・総合保育事業部)企画開発課への配属となったのは驚きました。面接でも映像の話しかしていなかったため、メディア事業本部に行けるだろうと思い込んでいたところ、まさか新規の保育園を開所する仕事になるとは……。完全に予想外でしたね(笑)。
ただ映像以外の仕事にこれまで関心がなかった分、保育事業の仕事すべてが新鮮でした。待機児童の問題などを目の当たりにして、「こんなにも困っている人がいるのか」と目からウロコでしたね。自分の中で革命が起き、保育士の資格を取得するなど、教育への意識が変わっていきました。
とはいえ、総合保育事業部にいるときにも、映像制作をやりたい想いはあったので、施設の運営会社を決めるコンペの中で提案内容に映像の要素を加えていました。施設で開講する子どもたち向けの講座のひとつに、映像制作を体験するという企画を盛り込んだんです。
おそらく教育だけのことを考えていては浮かばないアイディアだったと思います。この提案を含めて評価をいただき、コンペも勝ち抜き、無事運営会社として選定されました。そのころから、「教育だけ」「メディアだけ」ではなく、掛け算をしていくことが大切だと感じるようになりました。
「子どもって〇〇」の型を打ち砕く、エデュテイメントの視点
施設運営会社選定のコンペを通過したころ、TV企画事業部(現クロスメディア事業部)への異動者を募る機会があり、念願のメディア事業本部へと異動することができました。
しかし同じ会社内なのに、異動先では教育部門でどんなことを行っているか知られておらず……。まるで別世界に来たようでした。また、教育部門はエンドユーザーである子どもたちと直接接することができるのですが、当時のメディア部門は子どもと向き合う機会がとても少なかったんです。
その点私は教育現場を経験しました。その経験が最終的なお届け先への配慮──「映像を見た子どもたちはどう思うのか?」「保護者の皆さまがどう思うのか?」という感覚につながり、それが今の「おはスタ」にも活かせていると感じています。
たとえば、おはスタでアイクぬわらさんが英語を教えるコーナーがあるのですが、最初の企画会議の段階では、教科書に載るような例文が多く……。それよりも、教科書に書いていないけど、知っていたらすぐに使えるような英語を伝えたほうが良いとスタッフに伝えました。
子どもたちがすぐにマネできたり、学校で自慢できたり、保護者の皆さまにも役立っていると思ってもらえるような境界線を狙っていくのが大事だという話をスタッフとも重ね、今は理想に近い形になっていると思います。
より理想に近いものを作るためには、思考を柔軟にしておくことが必要です。仕事をしているとどうしても考えが偏り、大人が考える「子どもってこうでしょ?」という発想になってしまいがち。でも「そうじゃないんだ」という感覚は、常にスタッフと共有しておきたいと思っています。
教育現場にいたからこその感覚をメディアに持ち込みながら、見ている子どもにとって結果的に教育になる──そんな番組をつくることで還元していきたいです。それが、ShoProが掲げるエデュテインメントのひとつだと信じています。
ただ、現在もまだまだShoProは教育とメディアの両事業間に壁があり、この思考が共有できていないのはもったいないところですね。お互いがどんな仕事をして、何を求めているかをもっと知っていけたらと考えています。私個人の取り組みだけでもさまざまな発見があるため、社員全員で向き合うことでもっと大きなものが生み出せると思っています。
挑戦志向と働きやすさを生み出したのは、「自由」だった
私は「おはスタ」には2014年から曜日の担当として参画しており、2019年から全体のプロデューサーとして、予算や制作費の管理、台本やVTRのチェックを担当しています。番組は大きなチームの中でつくられていて、制作会社やディレクター、台本作家がいて、ShoProメンバーが番組のプロデュース・監修を行っているんです。
24年という長い歴史を背負っている番組だからこそ、固定概念が生まれやすい部分もありますが、一方通行の内容・放送のままではダメだという想いは全スタッフが共通認識として持ち、視聴者と共感できる番組づくりを目指して毎日頑張っています。
また、社内・社外問わず、常に文化祭のような雰囲気で「楽しいことをしていこう!」と考えているメンバーが多く、ときにはビジネスとしては成立しないような利益度外視な挑戦に踏み切ることもあります!(笑)
予算管理も私の仕事のひとつですが、「こうしたら子どもたちが喜ぶな」と思うとどうしても財布の紐が緩んでしまいます。テレビに出る子どもたちに充実感を味わってもらうため、セットに力を入れたり、豪華なゲストを呼んだりしたいというアイデアが現場から上がるとOKを出しがちで……。
子どもたちが喜びそうなことなら何でも挑戦できる──24年間挑戦し続けてきたShoProの器の大きさや懐の深さがあるからこそ、番組の自由さを育んだのではないかな、と。さまざまな子ども番組がありますが、直に子どもたちとコミュニケーションをとり、生放送で発信できるのは、「おはスタ」ならではだと自負しています。
この自由さは職場環境にも反映されていると感じています。私自身、今年5月に第二子が生まれ、2歳児と0歳児の父となりました。「今までの形では育児を妻に押し付けてしまう!」と考え、朝の生放送は立ち会うのが普通ですが、リモートでの立ち合いを上司に相談して快く認めてもらったんです。
「仕事を優先して家庭にしわ寄せが生じる」という話はよく聞きますが、私は仕事よりも「自分がイチバン!」という考えです。自分を幸せにできない人間が家族や、ましてや他の人を幸せにできるはずはない、と思っています。
なので、まずは自分や家族の幸せのために仕事場をどう変えていくか、理解や協力を得るためにベストは何か?と考えて提案していくこともポイント。ShoProの懐が広いので、行動することで変えられるのも魅力ですね。
“自分らしさ”を追求できる未来に──「おはスタ」改革の行く末とは
私は今後、「おはスタ」を視聴者参加型の番組として定着させていきたいと考えています。今、電車の中や街中を見回してみると、早い子は2、3歳のころから自分で「YouTube」を自在に使いこなして動画を見るなど、欲しい情報を自ら積極的に取得するようになっています。
一方的に情報を浴びせ続けるだけの番組は、今後選んでもらえないのではないかという危機感があるんです。
だからこれからは「一緒に出ちゃえ!遊んじゃえ!見るだけのテレビはもう終わり!!」という新たなキャッチコピーのもと、子どもたちを参加者として巻き込み、一緒になって番組を成長させていきたいと考えています。
実は就活の際にShoProに応募した時から視聴者参加型の番組をつくりたいと考え、エントリーシートにもリアルタイムに視聴者の声が反映される番組をつくりたいと書いていたんです(笑)。やっとここにきて夢が叶えられそうだと、意気込みながら取り組んでいます。
「おはスタ」を見ていた子どもたちが大人になった時、チャレンジングな番組だったと思いだしてもらえるようなものにしたいですね。「あの時代に意外と難しい挑戦をしていた奴らがいたなら、自分たちの時代でも、もっと挑戦してもいいんじゃないか」と、前向きな気持ちになってほしいです。
また、今はまだ“視聴者=子ども”参加型の番組を試行錯誤しているところですが、今後は、現在の視聴者である子どもたちが親となって番組に参加してくれて、“視聴者=親子”参加型の番組を楽しんでもらいたいな、と。
親子といえば私自身、親となってから視聴者目線が強化されました。親になって「おはスタ」を見ていると、「このコーナー。朝の一番忙しい時間帯に騒がしすぎじゃないか?」と思うようなこともあって……。
そして、うちの上の子も2歳児といえども「おはスタ」を見て楽しいと感じれば見入ったり、つまらないとそっぽ向いたりするので、息子の反応もひとつの指針です。
また、親になったことで子どもに対する感情も変化しました。以前より子どもの「これをやりたい」を大事にしたいと考えるようになったんです。大人が型を作って、それを子どもに押し付けるようなことはしたくありません。
そのためおはスタでも、たとえば「男子はこうあるべき、女子はこうあるべき」といった型にはめるような言葉を使わないように心がけています。こうした番組づくりへのこだわりが、偏見や思い込みのない世界をつくることに少しでも影響できたなら──子どもたちが“自分らしくいられる未来”につながってほしいな!と思っています。