胚培養士は、“生命の奇跡”を感じられる仕事

普段表舞台に立つことが少ない胚培養士。そもそもどのような職種なのでしょうか。

佐藤 「患者様からお預かりした精子と卵子を受精させて、その胚(はい)を移植するまでの間お世話するのがメインの仕事です。不妊治療にはいくつか種類があります。卵子に精子をふりかけることで受精を促す、自然に近い方法の『体外受精』。精子や卵子に問題がある場合に、卵子に精子を直接注入する『顕微授精』などです。いずれにせよとても繊細な仕事で、技術や体力が必要です」

佐藤自身、SBCに入社する前に不妊治療クリニック2院にてしっかりと経験を積んできた実力の持ち主。過去の経験の中で、胚培養士として大切にする軸を身につけました。

佐藤 「『ゴールを見据えること』を大切にしています。私たちの仕事でいえば、患者様が妊娠されて、無事に出産を迎えられることです。そのためには何が胚にとって一番いいのか、常に追求するようにしています。また、妊娠までにはいろいろなステップがありますから、焦らず一歩ずつクリアしていった先に患者様が妊娠に至った時は“生命の奇跡”を感じますね。妊娠までのステップに対して誠実に向き合うことが胚培養士にとって重要だと思います」

今でこそ、六本木レディースクリニックの胚培養士として欠かせない存在となっている佐藤。しかし現在での活躍に至るまでには、長い下積みと葛藤の日々がありました。

「大変だった」と振り返る過去を乗り越えて。次のステップに進むためにSBCヘ

学生時代は細胞の核移植などに興味があり、応用生物学を専攻した佐藤。所属した研究室で胚培養士という職種に出会い、新卒で不妊治療のクリニックに就職しました。

佐藤 「最初は規模も小さく、こじんまりとしたクリニックに就職しました。そこでは、胚培養士としてのひと通りの経験を積むことができ、『胚培養士として独り立ちできるかな?』と思えるくらいには成長できたのですが、『違うクリニックでいろいろなやり方を学んだり経験を積んでみたい』と思うようになり、4年半で転職を決めました」

そして、規模も大きく不妊治療のパイオニアともいうべきクリニックに転職。1社目で顕微授精まで経験していた佐藤でしたが、「以前のクリニックより忙しい環境で、今までとはまた違ったやり方を覚えることは本当に大変だった」と振り返るほど、ここでは再び基礎を徹底的に叩き込まれました。

佐藤 「日本におけるART(生殖補助医療)を牽引してきた医師と培養士が在籍するクリニックで、『胚にとって1番の環境をつくる』という考えが徹底された環境でした。その中で前のクリニックとは違った新しいやり方や基礎を覚えていくことが大変な日々でしたが、とにかく多くの経験を積むことができました。10年間在籍しましたが、そこでの知識の蓄積は今は財産になっています」

一方で同じクリニックに10年と長く在籍したこともあり、当時の佐藤はどこか自分の中で「変化が必要だ」とも感じていました。

佐藤 「2社目の時に子どもが生まれたのですが、時短勤務できる条件が子どもが3歳になるまでだったんです。そのため仕事と家庭を両立するのが難しくなったことが、転職を考える直接的なきっかけでした。また、どこかで『次のステップへ進んでみたい』とも思っていました。学んでいくばかりでなく、今の知識をどこか別の分野でアウトプットしたり、新しい知見を得る機会が欲しかったんです」

その中で佐藤が知人から紹介されたクリニックが、現在勤務する六本木レディースクリニックです。子どもの保育園との時間調整が可能だったことや、今までの経験を必要としてくれたこともあり、佐藤は転職を決めました。ところがその後、思わぬ試練が佐藤を待っていたのです。

“自分の頑張り”を見てくれている人がいる──研修期間中に受賞した院長賞

今まで小さなクリニックから、大規模のクリニックまで経験してきた佐藤。「クリニックによってやり方が異なるのは当然」とわかっていても、入社時の六本木レディースクリニックのやり方はベストではないと感じる部分もあり、自分の中で受け入れられないことも多々あったといいます。

佐藤 「やり方が違って戸惑ったことや、『この方がいいんじゃないか』と思い周りに提案したこともたくさんありました。ですが、当時は『入社して間もない私が言っていいのかな……』と遠慮する気持ちもあって、改善の提案を伝えたあとも悶々としてしまったんです。ちょうどその頃クリニックの拡張移転も重なり、バタバタして培養室の雰囲気が少しずつ悪くなり、私自身も気持ちが落ちこむ日々が続きました」

それでも「患者様の胚にとって一番の環境をつくる」という強い想い のもと、佐藤はクリニックだけでなく運営側である本部スタッフも巻き込んで業務改善を進めていきました。

佐藤 「SBCは院長の考えが柔軟なだけではなく、客観的に判断を行う本部機能が存在しています。運営目線で客観的な意見を伝えてもらえるので、改善スピードが早いと感じました。入社したばかりの私の声を真剣に聞いてくださったことも衝撃的でした」

業務改善を進めたことに加え、特に佐藤にとって転機になったのは、研修期間中に受賞した院長賞の存在です。入社したばかりであっても、「クリニックのために」と提案したことや普段の仕事ぶりを認めてもらえたことが、大きなモチベーションになったといいます。

佐藤 「本当に驚きましたが、すごく嬉しかったです。一緒に働くスタッフのためにもっと貢献したいという想いが強くなりました。今では一人ひとりが働きやすい職場環境をつくるため、スタッフと相談しながらシステムの再構築や業務改善を行っています」

一人きりで頑張っているつもりでも、誰かがその姿を見てくれています。そして日頃から想いを聞いてくれて、何かの形で活かしてくれる場があります。スタッフ同士のコミュニケーションの細やかさ、自分を必要としてくれる人々の存在が、佐藤にとってかけがえのないものになっています。

この仕事で大切なのは、患者様に寄り添い、想いを汲み取れること

SBCで働く時間が長くなるにつれ、スタッフ一人ひとりの振る舞いから、企業理念である「三方良し」を実感する機会が増えたと感じている佐藤。

佐藤 「今までのクリニックでは『治療方針を一度決めたら変えない』ことも多かったのですが、SBCの医師は患者様と密接にコミュニケーションを取りながら、どの治療方針がベストなのかを探って、常に患者様の期待に応えようとしています。そしてそのために必要な『患者様と何でも話せる信頼関係』を、意識的につくっているなと感じますね。受付カウンセラーや看護師など他の職種も含めて、すごく患者様想いだなと感じています」

生命の始まりである胚を預かるという、大きな責任が伴う胚培養士の仕事。佐藤には胚培養士として大切にしている想いがあります。

佐藤 「患者様の『新しい生命を授かりたい』という想いに、しっかりと向き合うことですね。そこがブレてはいけないと思いますし、そのために必要なことを、アンテナを高く張って取り入れていくことが大切です」

2022年には初めて胚培養士の新卒採用を行ったSBC。今後も毎年新卒採用を行い、確かな技術と熱い想いを持った胚培養士を育成することで、より多くの患者様のニーズに応えていきます。

その背景を踏まえて、最後に佐藤は一緒に働きたいと思う人の人物像をこう語りました。

佐藤 「働くスタッフや患者様としっかりコミュニケーションを取れる方と一緒に働きたいです。培養室は閉鎖的な環境なので、中には人と話すことが苦手な方もけっこういます。ですが、仕事は一人でしているわけではありません。

また、患者様の中には、自分たちの治療に関わる人のことを知りたい方もいらっしゃいます。患者様のニーズに応えるためにもコミュニケーションが大切だと思います。そして、患者様や胚のことを一番に考えられる人と働きたいですね。患者様の気持ちに寄り添い、理解しようとするコミュニケーションを大切にできる方、患者様の想いを汲み取って形にできる胚培養士が増えていけばいいなと思っています。

また、特に新卒で入職された方など胚培養士としての経験が浅い方は患者様と接することで、気持ちを込めて仕事ができると思います」

これまで知られる機会が少なかった胚培養士という職種。佐藤は不妊治療には欠かすことのできない存在として、これからも『患者様や胚にとって一番の環境は何か』を常に考えて患者様の想いに向き合い続けます。