予防接種の重要性をもっと伝えたい。小児科医と連携し、自分たちのできることを考える

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サノフィのワクチン領域の歴史は長く、ワクチン開発・提供などを通じて、人々をインフルエンザ菌から守り、ポリオ根絶にも貢献してきました。

國見 「ワクチンの仕事をする前は長くがん領域に関わってきました。がん領域は、がんを縮小させるための”治療”がメインでした。一方ワクチンは病気を”予防”することを目的にしており、領域としては180度真逆だなという印象です。

関わる患者さんも全く異なり、サノフィのワクチンでは子どもがメインになります。最近は夫婦で子どもの予防接種に来ているのを目にすることが多く、自分は妻に任せきりだったな……。と反省の気持ちを込めて、次の世代を担う子どもたちのために貢献できたらという気持ちで仕事と向き合っています」

ワクチンにより毎年何億もの人々がインフルエンザ菌から守られ、ポリオは根絶間近に近づいています。サノフィの公衆衛生の領域への貢献は決して小さくないといえるのでは、と國見は話します。

一方で、サノフィのワクチンの中には、まだ日本に導入されていないものが少なくありません。そこで、國見のチームでは、ワクチン接種の重要性に関する理解を広げ、導入を促す役割を担っています。

國見 「サノフィでは、ワクチン接種に関する啓発活動として、さまざまな取り組みを行っています。とくに、ヒブワクチンや不活化ポリオワクチンなど、幼児を接種対象とするワクチンについては、小児科の先生方に対して働きかけ、定期のみならず任意での予防接種の重要性を訴え、接種を啓発する活動を行ってきました」

その活動の一環として、2013年より開催しているのが、乳児を持つ母親を対象とした予防接種セミナーや小児科内でのワクチン接種業務を見学する研修。実際に乳幼児のお子さんを持つ保護者の考えや疑問点を知りたい、ワクチンを扱う企業としてその声を生かしていきたいという想いから企画したといいます。

國見 「保護者の方には、個人の健康のためだけでなく、社会を守るために予防接種が必要なことや、近年急激に増えたワクチンの種類とその接種時期や回数など、必要なワクチン接種をきちんと完了するためにも、同時接種が不可欠であることなどを説明しています。

また、医療機関の診療時では聞きづらいこともざっくばらんに聞いていただけるよう、クリニックの先生方をお招きした質疑応答タイムも設け、お母さん方が抱いている不安をできるだけ解消できるようにしています」

参加協力していただいた先生からも日常の診療とは違う場所でのコミュニケーションだからか、お母さんたちからの率直な声が聞けたと、好評でした。

また、社員のインターンシップとして小児科クリニックへ社員を受け入れてもらう企画も実施。ワクチン接種の実務を見学から得たナレッジは社員間で共有し、インターンシップ後は、多くの社員が自身の担当先でより現実に即した提案ができるようになったといいます。

國見 「現場の生の声を聴く機会に恵まれ、改めてワクチンを取り扱うメーカーの重要性を認識したと同時に、忙しい業務の中、受け入れに協力してくださった医療関係者の皆様に感謝の気持ちです。私たちの仕事は決して一方通行であってはならず、医療関係者の皆さん、患者さんとつながって初めて良いものができるのだなと感じます。こういった企画を会社・医療機関に提案していくのも自分の役割だと考えています」

公衆衛生へのさらなる貢献のため、医療機関以外へアプローチを拡大

國見が所属するチームのミッションは、ワクチン接種に関してより幅広い領域で正しい情報を提供すること。これまでの前例にとらわれない活動を目指しています。一般的に、これまでのサノフィの活動範囲は、クリニックや一部病院・小規模自治体などに限定されるケースがほとんど。新しいチームでは、規模の大きい自治体を含む公的機関や企業の診療所・自衛隊と対象を広げ、これまで手つかずの領域にも活動を拡大中だといいます。

國見 「たとえば、任意接種とされているワクチンは、国が費用負担をする定期接種ワクチンと異なり、個人で費用を支払って接種する必要があり、なかなか接種意義が理解されないため接種が進まないという現実があります。そこで、国ではなく、それぞれの自治体主導での公費助成という形で費用負担や接種勧奨を支援できるように、積極的に自治体の保健管理センターなどにアプローチしています」

多くの自治体は定期接種を基本業務にしているため、任意接種の公費助成の必要性を理解してもらうことはかなり高いハードルだといいます。

國見 「それでも任意接種を勧めることの重要性の理解をいただいた行政の方々と協力しながら、みなさんに理解いただきやすい、接種しやすい環境作りに一歩一歩近づいていくことにやりがいを感じています」

自治体へのアプローチの他にも、徐々に手応えを感じ始めているといいます。

國見 「自治体以外のアプローチでは、自衛隊も新しくアプローチをはじめた組織の一つです。海外に派遣され、長期間の集団生活をする職種で、感染症リスクの高い背景因子が揃っています。ただ、組織の特殊性からかこれまで我々のアプローチは受け身でした。

ただ、感染症のリスクが高い背景、というのは製薬会社の使命からも見過ごすことはできず、受け身ではない積極的な情報提供を始めることにしました。ワクチンを取り扱う会社としての責任を果たしたい、という真摯な姿勢でのアプローチを徹底し、少しずつ良い関係が築けてきていると感じています」

ワクチン医療の現状と課題。予防接種への意識向上を目指して

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日本では、国が主導するかたちで各自治体にワクチンの接種を勧奨していますが、自治体によって予防接種の対応はさまざま。そんな中、サノフィでは、就学前の児童に対するワクチン接種に力を入れています。最近は、新型コロナウイルス感染症の拡大にともない、ワクチン接種がより身近になり、特に幼い子どもを持つ保護者のあいだで、ワクチンへの関心が高まっているのを感じているといいます。

國見 「土日は少年野球のコーチを長年務めているのですが、未就学児のお子さんいる親御さんからの質問を多く受けます。特に任意接種ではないワクチンについて、打った方が良いのか、副反応は大丈夫なのか、多くの質問を受けるようになりました」

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴いワクチン接種への関心が高まってはいるものの、就学前の児童へのワクチン接種については乳幼児に比べるとまだまだ関心が低い傾向にあるといいます。

國見 「そうした温度差を埋めるべく、サノフィでは、就学前のワクチン接種の勧奨に注力してきました」

ただ、何十年も発症していない疾患についてはワクチン自体の必要性も理解されにくいという課題もあるといいます。

國見 「医療機関では費用対効果が問題にされることが多いため、何十年と症例のないワクチンは、必要性を訴えかけにくいのが現状です。しかし、たった一例さえも発症させないためには、予防接種は非常に重要なもの。ワクチンの重要性を正しく伝える責務があると思っています」

授かった尊い命が失われないために、ワクチンを必要とする誰もが接種できる環境作りを

サノフィの使命は、“人々の暮らしをより良くするために、科学のもたらす奇跡を追求する”こと。日本にワクチンを導入するためには、まだまだ克服すべきハードルがたくさんありますが、この使命が原動力になっています。

國見 「乳幼児から高齢者まで、必要とするすべての人にワクチンを届けることで、“Life course immunization(生涯を通しての予防接種)”を実現し、授かった尊い命が失われないような社会を作るためのお手伝いができればと思っています。予防医療という観点から、ワクチンが有効な手段となりうることを伝えていきたいですね」

真理を認識するだけでは十分ではない。真理は公表されなければならない——予防接種の概念を大きく進歩させ、数々のワクチンを発明したフランスの細菌学者、パスツールがかつてそういったように、サノフィはこれからも啓蒙活動を続けます。人々を感染症から守るために。世界を代表するワクチンメーカーとしての責務を果たすために。