全員参加のマインドで取り組んだCSRプロジェクトのスタートアップ

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“人々の暮らしをより良くするため、科学のもたらす奇跡を追求する”。この新たな使命を軸に、約100カ国で医薬品関連の事業を展開するサノフィ・グループは、DE&Iの取り組みをグローバル規模で加速させています。日本法人においても、職種も役職も多様なメンバーで構成された、プロジェクトチームが発足しました。

その中の一つがCSRチーム。リーダーは、医療用医薬品の臨床試験に携わる、医薬開発本部 臨床試験統括部長の小原です。

小原 「学生の頃はボランティアで、子ども会のキャンプの引率をしたり、経済的に困難がある子どもに塾で教えたりはしていました。でも社会人になってからは、意識してボランティアに取り組んだことはなく……。チーム発足時は正直『CSRってなに?』と、全くピンと来ていませんでした(笑)」

小原も含め、メンバー全員が畑違いのプロジェクトに挑むことに。第一ステップとして『DE&Iとは?』『CSRとは?』といった疑問の解消から始めたと、小原は語ります。

小原 「サノフィは既に様々なCSR活動を展開していると再認識しました。最貧困層への医療アクセスの確保、環境保全のための温室効果ガス削減、車両のカーボンニュートラル化、そしてクリスマスチャリティーなどのボランティア活動。

DE&I全体の新たなコンセプトは『all in.(全員参加)』ですので、プロジェクトチームでは、“誰もが参加でき、社員の人生を豊かにすることにつながる”、ボランティア活動を推進することにしました。

一方で、『ボランティアは会社にやれと言われてやるものなのか?』『わざわざ活動を宣言するのはボランティア精神としていかがなものか』という意見や、すでに自分の信念のもとに活動している人もたくさんいて。多種多様な社員全員で活動を推進するために、さまざまな考えも尊重しながら、自主的な参加を促す風土作りをしました。活動で得た気づきを周囲に共有する──その輪を広げていくことが第一の目標でした」

通常業務とは異なる課題を託されたプロジェクト。小原とチーム員の挑戦が始まりました。

推進するのは、自分自身の社会貢献活動“MySR”

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社員一人ひとりが自らボランティアや社会貢献について考え、アクションを起こす社会貢献活動を『MySR』と称し、プロジェクトを始動させた小原たち。

まず始めたのは、社内報を活用した呼びかけです。「SRじぃ(爺)」というキャラクターを作ってキャッチーにするなど、参加への敷居を下げる工夫をふんだんに盛り込みました。

小原 「社員一人ひとりに行動を起こしてもらいたい。でも、急にボランティアをやりましょうと呼びかけても、僕らが感じたような『なんでボランティアに会社で取り組むのか?』『CSRって何?』といった疑問が生じて時間がかかります。

そのため、プロジェクトチームで生じたディスカッションを基礎的な部分から、すべて開示しました。開示方法は“説明する役”と“わからない役”をたてた動画がメイン。誰にでもわかりやすい言葉づかいで、知識のない相手への説明を前提にシナリオを作成しました」

社内報には、すでに積極的にボランティアに取り組んでいる社員のインタビュー『MySRストーリー』も配信しました。

小原 「動物保護支援や、難病治療のお子さんに付き添うご家族のための滞在施設ドナルド・マクドナルド・ハウスの支援を継続している方の想い、お子さんの障がいがきっかけで支援活動を開始し、同志や人生の目標を得たストーリーなど、MySR実施の入り口として、モデルケースを紹介しました。

同じ会社の仲間の熱い想いに心が動かされ、社員からストーリーを募集する段階では多くの投稿が寄せられました。MySRを実施した人が自身の体験を共有できる環境整備にもつながったんです」

さらに、「全員参加」のための仕掛けも強化。社員の多様性に合わせ、26ものボランティアメニューを集めました。メニューリストは選択しやすいようにチャート式を採用。リモートでできる活動や、短時間で実施できる活動も加えました。

その結果、4カ月の活動を通して、延べ1,041名もの社員がCSR活動に参加しました。病気と闘う子どもたちとそのご家族を支援する、ドナルド・マクドナルド・ハウス支援では、社員とその家族約500名が参加。15年続く全国の医療機関へのチャリティでも、例年より多い約600枚のクリスマスカードを贈呈できました。

活動後に生じた社員の変化、自身と家族の成長

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思わぬ効果も生じました。

小原 「ある部が社内SNSで、CSR参加ストーリーを自主的に投稿していたんです。プロジェクトチームでも体験談募集をしていたのですが、各部署のコミュニティでも自発的に、草の根のようにCSR活動の体験共有が展開されていて……。とても嬉しかったです。それ以外でも、社員の関心の高まりを感じます。今後一層CSRの輪が広がっていく予感がしますね」

また、プロジェクトを通して小原自身も成長を感じたといいます。

小原 「今回のプロジェクトを通して、マルチタスクをこなせる限界値が高まりました。通常業務の領域とCSRのタスクを重ねると結構大変でしたが、勉強になりました。

また、MySR StoryやCSR解説など、一つひとつの発信の仕方や構成に、メンバーのアイデアが散りばめられていて、そこからの学びも多かったです。

その豊富なアイデアは、チーム内にインクルージョンな雰囲気があったからこそ生まれたものでした。

実は最初に、本部長クラスのチーム員が、『ここでは職位を越えてフラットにやろう』と言ってくれたんです。それに、数カ月でプロジェクトを展開するには、どんどん意見を出し合ってとにかくやってみるしかなかった。だから、誰もが臆せずアイデアを言えて、それがどんどん形になっていきました。

通常業務と並行ですし、それぞれある程度負荷はあったんですよ。それでも楽しく前向きな雰囲気が失われなかったのは、アイデアが実現していく充実感と、インクルージョンな環境が寄与していました」

CSRだけでなくDE&I全体を理解しようと改めて向き合ったことで、知識が増え、考え方も広がったという小原。

小原 「もう一つ余波的な影響は、子どもがDE&IやCSR、LGBTQA+に興味を持って一緒に勉強できたこと。プロジェクトで実施したDE&Iセミナーの動画を見ていたら、息子が隣に座ってきて『これ学校でも言ってたよ』と話をしたり、一緒にCSRボランティアに参加したり。良い刺激になって家族で成長できました」

サノフィのCSR活動の今後:「CSRをしているサノフィ」と認知される姿を目指したい

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小原 「今後もプロジェクトチームの活動は続きます。
これまでは、私たちチームが水先案内人の役割を担って、社員それぞれが自ら考えたMySRに取り組み、学び・気づきを得ることが第一の目標でした。次は、MySRから得られた各々の経験を礎に、さらに発展させることに焦点を当てます。社会貢献について考えられる土壌ができた今、それらに共通の方向性を持たせた活動に発展できないかと考えています。

プロジェクトメンバーの間に、インクルージョンで楽しく前向きな環境が根付いたので、一層精力的に活動を前進していけると確信しています。また、チームで築いたこのインクルージョンなマインドは、それぞれの部署で必ず活かされると思うんです。DE&Iプロジェクトを通じて、多様性を一層包括できる輪が広がっていくと感じます」

最後に、社員へのメッセージや今後の展望をこう語ります。

小原 「私たちメンバーも試行錯誤し、自分の考えを整理しながら、それでもとりあえずやってみようと動いてきました。すると、変化と達成感があって、なんだかんだ言っても人のためになることはやっぱり気持ちが良いね、という共通認識が生まれました。社員の皆さんには、『まずは一緒にやってみよう!』と伝えたいです。

社外においては、よりインパクトのある成果をもとに、CSRに取り組んでいるサノフィとして一目置かれる存在を目指したいです。去年は土台となる社員のマインド作りが進みました。次のフェーズは、『自身にとっての社会的責任』『会社にとっての社会的責任』を社員自身が考える習慣がつき、会社の戦略と社員のマインド・行動が結びつくこと。

“プロジェクトチームがやる”といった仕組みや枠組みにとらわれないで、一人ひとりが自発的に“結果を出すために何をやるか”と考えることで、よりアジャイルにアクションに結び付ける必要があると考えています。会社としてCSRどう進めるか、社員とコミュニケーションをとりながら、それに沿った戦略的なCSRを考えることが鍵になってくると思います」

ますますの飛躍が期待されるサノフィのCSR活動。DE&Iプロジェクトを介して社員の感性やスキルが一層豊かになり、実務にもポジティブな影響が出ることも期待されます。