D&Iの意識向上を担う「D&I アウェアネス」プロジェクトチームの取り組み

サノフィでは、D&Iの取り組みをグローバル規模で推進しています。全社員が参加するという意味を込め、掲げたスローガンは、“all in.”。D&Iの活動を通じて目指すのは、会社組織に地域社会の多様性を反映し、社員がベストのパフォーマンスを発揮できる職場環境を整えること。そして、患者さんの治療に変革をもたらすこと。

2021年秋には、包括的に取り組んでいくために、次の5つのチームが立ち上がりました。

1 D&I アウェアネス  2 日々の行動変容  3 新しい働き方&アクセシビリティーの向上  4 社員のウェルビーイング  5 CSR(企業の社会的責任)

各プロジェクトのメンバーたちは、通常業務のかたわら、さまざまなアイデアを出し合いながら主体的に活動を展開しています。

免疫領域フランチャイズ 皮膚領域戦略部の責任者を務める名川 隆志は、「D&I アウェアネス」のプロジェクトメンバーに選出されたひとり。普段は皮膚科の医師を対象とするイベントの企画・運営といったマーケティング業務に携わりながら、D&Iの推進活動に取り組んでいます。

名川 「『D&I アウェアネス』チームは、マーケティングや営業、臨床開発、デジタル部門、サプライチェーン、安全性部門など職種も役職も多様なメンバーで構成されています。私たちの目標は、社員のD&Iに対する認知・理解を促し、実際の行動変容へと結びつけていくこと。

D&Iとひと口にいっても、年齢や人種、文化の違い、LGBTQIA+などさまざまな要素があります。そこで、まず『何に特化するか』がとても重要になるため、社内でアンケートを取ることから始めました」

その結果、障がいや文化・考え方の違いなどに対しては関心が高かった一方で、LGBTQIA+への関心が最も低いという状況が浮き彫りに。まずはここを改善しようと、LGBTQIA+を最初のテーマに据えて活動することを決めたのです。

守りよりも攻め。会社の発展のためには、D&Iカルチャーの浸透が不可欠

「D&I アウェアネス」のリーダーを任された時の心境について、名川は次のように語ります。

名川 「会社がD&Iに本気で取り組むのであれば、当事者としてプロジェクトを引っ張っていく立場になりたいと、前々から思っていました。

というのも、私が通常担当しているのは、サノフィの注力製品。これからも売上の拡大に貢献し、会社を引っ張っていくためには、もっといろいろなことを受け入れてイノベーションを起こしていかなければいけない。そのためには、自分の部門を超えて、サノフィ全体で変革を起こす必要があると、日頃から強く感じていたからです」

このチームで最初に考えたのが、「なぜ会社にD&IやLGBTQIA+などへの取り組みが必要なのか」ということでした。その根本的な問いへの答えを軸に持って活動することが、もっとも重要だと名川は考えています。

名川 「性別・年齢・経験・国籍……と、自分が慣れている環境にいるほうが楽だという思いは皆同じではないでしょうか。そのほうが失敗も少ないのですが、実は大成功もない。大きく世の中が変化している中で、自分たちも変化を受け入れ、競争力を高めていくことが成功につながる、と考えています。

 “守りよりも攻め”、“受け身よりも積極的に動く”という姿勢が、サノフィの今後の成功を左右するはず。だからこそ、D&Iは社内に絶対に根付かせなければならない考え方であり、カルチャーである。まずはチームでその思いを共有しました。そして私たちの思いと、LGBTQIA+などの認知・理解を社内に広げていけるように、具体的なアクションを考えていきました」

社内研修や外部講師によるレクチャー、ニュースレター配信で学びを提供

具体的なアクションとしてチームが始めた活動は主に3つ。1つめは、D&Iに関するオンライン社内講座です。

名川 「グローバルで活用されていた教材が実践的でわかりやすかったため、それを日本でも活用することに。“アンコンシャスバイアス”という、無意識な偏見が知らないうちに人を傷つけてしまうことについて学ぶ講座で、2021年12月時点で全社員のうちの63%が受講しました」

2つめは、外部講師によるレクチャー。認定NPO法人 虹色ダイバーシティの方々に協力を仰ぎ、LGBTQIA+についてレクチャーを2回実施。各回、約700~1,000人の社員がライブ視聴しました。

名川 「私たちは普段、医療現場の方たちと仕事をする機会が多いので、テーマとしてお願いしたのが『医療現場でLGBTQの方が困ることって何だろう?』。このアプローチによって、テーマを通じて社員一人ひとりが自分事として考えるきっかけになりましたし、顧客や社員が抱えているかもしれない、目に見えない違いに対してどのように配慮をすべきか想像力を養えたことにも価値があると思います」

3つめは、「D&I アウェアネス通信」というニュースレターの配信。主にチームのメンバーが書籍や外部レクチャーで学んだことをもとに作成しています。

名川「ニュースレターでは、そもそもD&Iとは何なのか、なぜ日本人にD&Iが必要なのか、など、誰もが抱いていそうな疑問を題材にしました。

たとえば『インクルージョンって何なの?』という記事では、ダイバーシティはさまざまな果物が盛られているフルーツバスケットで、インクルージョンはそれらがうまく混じり合ってできた美味しいミックスジュースです、と比喩を使って説明。いろんな人財が融合して、大きな価値を生み出せる状態こそ真のD&Iである、という内容で、わかりやすいと好評でした」

さまざまな活動を展開する中で、社員たちからは「レクチャーを受けた後に、自分の子どもとLGBTQIA+について話し合った」「アンコンシャスバイアスの学びの後、見えないところで自分が差別してしまっているのではないかと意識するようになった」など、さまざまな反応があったといいます。

名川 「私もこの活動に携わる前は、D&IやLGBTQIA+についてとくに深く学ぼうとはしていなかったんです。でも、気付かないうちに少数派の人の心を傷つけてしまうケースは、日常的にあることを学び、知識を身に付けて対応することの大切さがわかりました」

傍観者から評論家、そして当事者に。「インクルージョン」な職場を目指して

社員からの良い反応に手ごたえを感じる一方、一連の活動の中で、人の気持ちを動かすこと、自分事として考えさせることの難しさを痛感したという名川。そのため、D&Iに対して関心の薄い「傍観者」をすぐに「当事者」にすることを目指すのではなく、まずは「評論家」にすることを目指しています。

名川 「『評論家』とは、こうした活動に対してイエスかノーどちらかの意見がある=興味がある状態。関心を持ってもらえさえすれば、それがやがて『当事者』になる可能性を秘めています。これは本業のマーケティング分野でも同じで、『傍観者』が『評論家』になって初めてモノやサービスが動き始めるんですよね」

加えて、D&Iのスローガンである“all in.”を実現するには、「諦めずにやり続けることが大事」と力強く語ります。

名川 「社員全員を『当事者』にするには、活動をしっかり継続し、世代を交代しながらより深く根付かせていく必要があります。そのためにはまず、私自身が『当事者』に変わり、他責ではなく自責で考えて取り組んでいきたい。自分たちが集めた多彩な人財をどうインクルージョンしていくのか、誰もが気兼ねなく意見できる環境をどう作っていくのか、責任を持って進めていきたいですね」

LGBTQIA+をテーマとした活動の次のステップは、「アライ」を増やすこと。アライとは、LGBTQIA+を理解し、それに関わる活動を支援する人のことです。2022年は、アライであることを意思表示できるツールの制作や外部イベントへの参加など、LGBTQIA+の方たちをインクルージョンできる環境を作りたいと話します。

名川 「多様な人を採用すれば、ダイバーシティを実現できます。でも重要なのは、本当にその人たちが働きやすく、個性を活かせる職場環境になっているか、というインクルージョンの部分。2022年は、そこに着手していきます」

名川たちの最終目標は、単に豪華な果物を集めた「フルーツバスケット」ではなく、個性が溶け合った価値ある「ミックスジュース」を作ること。誰もが自分らしく働ける、強く魅力的な組織──その実現を目指して、D&I活動を継続していきます。