多様なメンバーが「インクルージョン」したチームこそ「格段に強くなる」

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岩屋 「多様なバックグラウンドや経験を持つ社員が、互いの強みやアイデアを活かしながら協力して働くことがイノベーションを生み出し、パフォーマンスをあげる原動力になる──これが原点です。 そのため、性別、人種・民族、信仰、 LGBTQIA+、年齢や障がいの有無に関わらず、すべての人が公平に働ける企業を目指しています。私自身、女性の上司や海外で多種多様な人々と働いた経験があったため、多様性のある職場環境というのはごく自然なことでした。

ただ、事業部長をしていた時に、どのマネジャーも本人と似たようなメンバーでのチーム構成を好む傾向にあることに気づきました。つまり、人間は同質なものを『意識せずに選ぶ』傾向があるということです。似たようなメンバーで構成されたチームは、チームワークは良いのですが、新しい発想が生まれにくく、『異質なものを排除』するような傾向になりがち。一方、多種多様なタイプが混ざっているチームの方が、多角的な視点から物事を検証することができ、変化に強い。こうした経験から、自分とは異なるタイプのメンバーを敢えて取り入れるということを意識するようにしてきました」

実際、サノフィが製品やサービスを提供している医療従事者や患者さんは、多様性に富んでいます。自分たちが多様性のない偏った組織では、顧客が求める製品やサービスが提供できるとは思えない、と岩屋は危機感をにじませます。世の中の流れや多様性を自分の組織にも反映する必要があると述べる一方で、「ダイバーシティ」だけで「インクルージョン」がないと組織は強くならない、と岩屋は指摘します。

岩屋 「多様性のあるメンバーを揃えても自分のやり方を押し付けていては、チームは強くなりません。メンバーの違いを認め、任せ、エンパワーしなければならない。任せるということは、任せられた人にも責任が伴うので、必然的に一人ひとりが力を発揮しないといけなくなる。

また、同質なメンバーがそろったチームでは、話も通じやすい一方で、多様性があるチームでは、ちゃんと意図や目的が相互理解できているか、言葉を尽くして説明するなどコミュニケーションを工夫しなければならない。お互いを受け入れつつ、チームがまとまることに時間を取られるかもしれない。ただ、そこを乗り越えられると同質な人間が集まった組織よりも『格段に強くなる』はずです」

“all in(全員参加)”をスローガンに「3つの柱」で進めるD&I戦略

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岩屋 「サノフィでは、全従業員が参加するという意味の“all in”をスローガンとして2025年までの目標を設定し、グローバル全体でD&Iを推進しています。D&Iを通してサノフィが目指しているのは、会社組織に地域社会の多様性を反映し、社員がベストなパフォーマンスを発揮できる職場環境を整え、患者さんの治療に変革をもたらすことです。日本でもグローバルの戦略をベースに、3つの柱に沿って活動を推進しています」

岩屋が語る3つの柱とは、

1.「多様性を反映したリーダーシップを確立する」

2.「誰もがベストパフォーマンスを発揮できる職場環境を構築する」

3.「多様なコミュニティとの協働」

というもので、それぞれにおいて取り組みがスタートしています。

岩屋 「1については、多様な視点を反映し、患者さんと顧客のニーズに十分応えていけるような組織を作るため、まずは現状を把握し、明確な目標とKPIを設定するところから始めています。
具体的目標のひとつに、グローバル全体で2025年までに管理職の女性比率を50%に引き上げることが含まれています。この高い目標値について、社内から『女性優遇にならないか』という声があがったのは事実です。ただ、D&Iを推進する取り組みというのは、性別に関係なく、全員が同じスタートラインに立てるようにすること。そのために揃わない部分があるのであれば適切な支援を行い、集中的に教育に注力していく。そして、さらに魅力的な会社を皆で築いていきたいと考えています。

2つめの柱を通じて達成したいことは、ダイバーシティを通じて皆が創造力を発揮できるようにするということです。具体的には、柔軟性のある多様な働き方を推進したり、職場で不便さを感じる課題を解消し、すべての社員が働きやすいようアクセシビリティを改善したり、テクノロジーの向上を通じて、皆が安心して自分らしく働くことができるよう、職場環境の改善を進めていきます。また、育児や介護を担う社員の働き方も尊重し、休暇制度やサポート体制をさらに強化していきます。

3つめの柱で目指していることは、外部ステークホルダーと共にD&Iを推進することです。医療に変化をもたらすためには、多様性を組織内だけにとどまらせず、社会的によい影響を与えていく必要があると考えています。リーダーが率先してCSR活動に取り組み、社員のボランティア精神を高めるプロジェクトを率いるよう支援・推奨していきます」

CSR活動やオフィスの再構築……5つのプロジェクトが多角的にアプローチ

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▲ドナルド・マクドナルド・ハウス支援チャリティラン&ウォーク 社員と家族約500名が参加

岩屋 「全社的にD&I戦略を多様なアプローチから実行・推進するために、5つのプロジェクトチームを作りました。それが、
1.D&I アウェアネス
2. 日々の行動変容
3.新しい働き方&アクセシビリティの向上
4.社員のウェルビーイング
5.CSR活動
です。社員が通常業務の傍ら、D&Iを推進するために、さまざまなアイデアを出し合い、活動を展開しています」

とりわけ、CSR活動については、全社員の参加を目指した“all in”の「全社的なボランティアプログラム」を推進。さまざまなボランティア活動に多くの社員が取り組んでいます。昨年11月には、病気と闘う子どもたちとそのご家族を支援するために、ドナルド・マクドナルド・ハウス*支援チャリティラン&ウォークに、社員とその家族約500名が参加。また、サノフィは毎年クリスマスの時期にチャリティ活動に参加しており、昨年もNPO法人ワンダーアートが主催するクリスマスカードプロジェクトに協賛。606枚のクリスマスカードを入院中の子どもたちに届けました。

*ドナルド・マクドナルド・ハウスとは、入院している子どもとお子さんの治療に付き添う家族が『第二のわが家』のように利用できる滞在施設です

岩屋 「私自身は、知的障がい者向けのグループホームで半日ボランティアを行いました。訪れたのは、神奈川県川崎市にあるグルーホームいずみ(NPO法人チャレンジドサポートプロジェクト)の2軒のホームで、利用者の入浴や服薬を介助しました。最初は緊張しましたが、食後の歓談の時間では利用者の方々とすっかり打ち解け、さまざまな時事や2021年の大河ドラマのトピックで会話が弾みました。とても個性豊かな皆さんと交流し、少しでも支援ができたと感じられる貴重な機会となりました。

また、新しい働き方&アクセシビリティの向上という観点では、多様な人材がコラボレーションすることでベストなパフォーマンスを発揮できる環境構築を目的に、昨年本社のオフィスのリノベーションを実施しました。この時に、私の社長室含め、マネジメント層の個室もなくして、集中できるフォーカスエリア、在宅勤務の社員と遠隔でもリアルにつながることができるコラボレーションエリア、リラックスの場としての機能を高めたワーキングカフェなど、快適かつ創造性豊かに働くことができる複数のワークエリアを設けました。

また、これまでも車椅子ユーザーに配慮した自動ドア化や誰でもトイレの設置の提言をテナントビルにしてきましたが、新たに視覚障害のある社員の意見を取り入れ、カフェエリアに点字ブロックを導入しました。このように、サノフィでは、会社のオフィス・自宅・営業車両等、社員が仕事のシーンに最適な場所を選択し、目的意識をもって、自律的に働くことを推奨しています」

サノフィのこれから──2400人強の社員一人ひとりが輝ける強い組織に

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サノフィでは、2025年までにD&Iにおいて具体的な成果を出すことを目指しています。シニアリーダーの男女比を50:50 にすることや、ダイバーシティの企業ランキングで評価されること、そして、社内においては社員がベストなパフォーマンスを発揮できる職場環境を構築すること。D&I戦略の今後の展望について、岩屋には強いメッセージがあります。

岩屋 「D&Iを通じて目指しているのは、2400人強のサノフィ社員、一人ひとりの知恵と力がいかんなく発揮されること。D&Iが浸透していないと、一部のマネジメント層だけが考える組織になってしまう。数十人の知恵と2400人強の知恵、どちらに競争力があるかは明白ですよね。サノフィ全員の力を結集すれば、とても強い組織になる。組織力が上げれば、我々の本来のミッションである、患者さんの治療に変革をもたらすことにつながるはずです」

昨年から強化したD&I活動。社内アンケートや社員から寄せられる声などからも、組織内でD&I意識が確実に向上してきていることを、岩屋は実感しています。

岩屋 「今後は、新型コロナウイルス感染症の状況を見ながら、社員の業務形態に応じた柔軟な働き方の導入や、様々な制度の見直しを進めて、より働きやすく、魅力ある会社へと進化していきます。私たちサノフィのD&I戦略に賛同し、多様性のある会社で力を発揮したい方は是非一緒に働きましょう!」

誰もが自分らしく働き、高め合える組織・社会を目指して走り始めたサノフィ。その取り組みを通じてさらに強く魅力的な企業となり、製薬・治療に変革を起こすことを誓います。