“顧客志向”の実践者が「カスタマーサクセス」に引かれた理由

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▲セールスフォース・ドットコム 取締役 副社長 古森茂幹

「テクノロジーそのものも大切ですが、お客様の成功にいかに貢献できるか──。お客様と一緒に成功を目指すという考えを学べる環境でキャリアをスタートできたのは幸運でした」

そう語るのは、現在、取締役副社長としてエンタープライズ営業本部(EBU)を率い、主に上場企業へのCRM(Customer Relationship Management/顧客管理システム)の導入提案を指揮する古森茂幹です。

古森は1982年、横河・ヒューレット・パッカード株式会社(2019年現在は日本ヒューレット・パッカード株式会社)に新卒で入社。以来、ITソリューションの法人営業分野で実績を重ねてきました。

古森 「当時の IT業界は、技術の標準化が進んでおらず、テクノロジーが進歩するごとに製品の互換性が失われていく時代でした。そのような状況にありながら、独自のカスタマー志向でお客様に寄り添い、製品の継続性・互換性を重視していた横河・ヒューレット・パッカードの先進的な考え方に、深い感銘を受けたんです」

その後古森は、同社でエンタープライズ部門の営業責任者や役員を歴任。さらなる挑戦の場に選んだのがセールスフォース・ドットコムでした。

古森 「長年の経験から掴んだ ITソリューションの法人営業の要諦は、テクノロジー自体を提案するのではなくて、お客様の過去・現在・将来を見据えて、その流れのなかで “どのようにテクノロジーを有効活用できるか ”を提案するということ。それをさらに深く追求したいと考えるようになったんです」

前職ではインフラ部分の提案がメインだったため、お客様の業務のなかまで深く入り込み、事業の成長まで実感できる機会は多くありませんでした。

古森 「セールスフォース・ドットコムのソリューションは、お客様の課題解決や売上向上に直接的につながるものです。つまり、お客様のビジネスを充分に理解し、より深く関係を構築することが求められます。
カスタマー志向をより突き詰めるという意味で、「カスタマーサクセス」をいち早く提唱し始め、その重要性を訴えてきたセールスフォース・ドットコムでなら、新たな挑戦ができると考えました」

テクノロジーを活用した業務効率化は、お客様と向き合う時間を創出するため

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2015年、古森はセールスフォース・ドットコムに副社長として着任します。入社後にまず率いたのは、スタートアップ企業や中堅企業などを担当してソリューションの提案を行うCBU(コマーシャル営業)でした。

古森はセールスフォース・ドットコムの営業手法について「どの企業よりも本質的だ」と感じたと言います。

古森 「お客様が製品を導入する際、『信頼できる』『うまくいきそうだ』といった感覚、いわゆる “直感 ”も決め手となることが多いと感じます。つまり、営業においては、 “人 ”がお客様の課題を理解、また共感し、お客様と過ごす時間を増やすことが肝心です。お客様と共に過ごす時間をつくるためにも、それ以外の自分の業務にテクノロジーを活用することで自動化し、効率化を図るのがポイントです」

お客様の課題に向き合う時間を確保するために、自社の製品を積極的に活用し、その成功体験をお客様に提案する。それが古森の考え方です。

古森 「お客様の成功のために自信をもって製品を提案するには、製品の善し悪しといった論理的な思考だけでなく、実際の成功体験をもとに納得したものを提案する。これを『セールスフォース・オン・セールフォース』と社内では呼んでいます」

お客様ごとの「サクセス」の違いを踏まえ、営業手法の“切り口”を変える

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▲Salesforce Summer 2016 Osakaに登壇した古森

2019年現在、顧客に上場企業や大企業を抱えるEBUを率いる古森。スタートアップ企業や中堅企業を担当するCBUを率いた頃とは、顧客の企業規模こそ違いますが、セールスフォース・ドットコムの「カスタマーサクセス」というコアバリューはいかなる部門でも普遍性をもつと言います。

古森 「セールスフォース・ドットコムにはカスタマーサクセスの理念が根付いています。担当するお客様が違っても、課題解決のみならず、お客様の実現したいビジョンを捉えて成功を目指すという考え方は変わりません。
ただし、規模やビジネスモデルが異なれば “カスタマーサクセス ”の切り口が違ってくることは確かです」

日本には約350万社の企業があるともいわれますが、そのうち上場企業は3,500社ほど。つまりEBUが担当する上場企業は、国内企業のわずか0.001%ほどにすぎません。しかし、当初古森が指揮を取ったCBUは、スタートアップ企業から中堅・中小企業までを幅広くカバーしており、約350万社の99.99%以上を担当する部門です。

この状況が、古森の言う「切り口の違い」を生み出します。

古森 「カスタマーサクセスを実現する過程として、まずお客様の事業をしっかりと理解して信頼を得ることが必要です。それ自体は CBUも EBUも共通しています。しかし、お客様からの信頼を獲得するために活用できる情報の量や内容が異なるのです」

CBUのお客様は、未上場のスタートアップ企業や中堅企業、小規模な企業のため、当該企業に関する情報を集めようとしても、なかなか集まらないケースもあります。

一方で営業開拓できる企業数は多い。そのためCBUの担当者は、さまざまな業界のお客様を担当して、より多種多様な成功事例を把握しなければなりません。さらに、成長過程にあるスタートアップ企業などは意思決定も早いため、そのスピード感にあわせた提案力が必要になります。

また、EBUのお客様は上場企業であるため、株主や取引先などステークホルダーに向けた公開情報が多く揃っています。

古森 「ただし、誰でもアクセスできる公開情報だけでは、お客様からの信頼は得られません。業界事情などを深く理解した上で、お客様の課題を把握しておく必要があります。そのため、 EBUでは産業分野ごとに担当者を分けています。各担当者はそれぞれの分野を極めて、 “お客様と同じ言葉で話せる ”社員の育成や人員配置を行っています。
さらに、 EBUのお客様は大きな組織であることから、意思決定のプロセスが複雑です。意思決定のプロセスを考慮しながら営業するには、やはり相応の経験が必要にはなりますね」

一見すると、CBUとEBUの両部門間には、営業手法に多くの違いがあるように思えるかもしれません。しかし、それは、企業規模、ビジネスモデルに合わせたアプローチの違いであり、お客様の「カスタマーサクセス」を最優先に考えることに変わりはないのです。

重要なのは“お客様の成功”を支援することへの熱意

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古森 「セールスフォース・ドットコムは全社員が、本当に “お客様のためになるか ”を判断軸に、意見を交わします。社内会議ではお客様の成功につながると思うことを最優先で考えます。カスタマーサクセスを重視する仲間に囲まれながら、お客様と向き合い、成功を実感できることがセールスフォース・ドットコムで働く喜びだと思います」

古森には、営業部門を率いる副社長として各担当者に伝えている想いがあります。

古森 「注文を取りにいくような方法や、契約を継続してもらうための方法を考えるのではなく、お客様に貢献する活動は何かを考えるように伝えています。これがまさにセールスフォース・ドットコムの企業文化に馴染む社員なのだと思います。入社時からテクノロジーに対する深い知見があるとか、営業スキルがあるということだけが決して重要ではありません。
社内にはキャリアを構築する制度等が完備されていますから、さまざまなポストで経験を積み、徐々にテクニカルなスキルを身につけることは可能です。一番重要なのは、お客様と成功を分かち合うカルチャーに共感し、日々の仕事を通じてこれを実践できるかどうかです」

セールスフォース・ドットコムの社員が、お客様の成功に向かって一丸となれるのは、社内に助け合いの文化 「Ohana」(ハワイ語で「家族」を意味する。思いやりや協力で社内の結束を強める、セールスフォース・ドットコムの理念)が根付いているという背景もあります。

古森 「たとえば、営業先で急に何か困ったことに直面した際に、オープンな社内コミュニケーションツールである Chatterで助けを求めたとします。そうすると、全世界の社員から即座に反応があります。話したことのない社員からもアドバイスが届くので、この文化はとてもユニークだと思います(笑)。
私は “カスタマー志向 ”から出発して長年、お客様に寄り添った営業を志してきました。しかし、セールスフォース・ドットコムには、まだまだ自分が成長できるチャンスがあり、お客様の成功に貢献するための機会もたくさん見つけることができると感じます。
また、私自身、社員一人ひとりの夢に寄り添えるような存在になりたいです。たとえそれがどんなに難しいと思える夢であってもです。多様な価値観や経験をもった社員たちに、これからのセールスフォース・ドットコムを盛り上げていってほしいと願っています」