当初は「ダイバーシティ」という言葉も知らなかった
もともと、いろいろなことに挑戦したいと思う好奇心の強い子どもだったと思います。小学生のころから、リーダーとしての役割を担うことが多く、中学生になってから高校生までは学級委員長や副委員長を務めることもありました。周りの友達に声をかけられたのがきっかけで、「やって損することはない。やってみよう」という気持ちでいろいろなことに積極的に取り組む中高生時代を送りました。
流通経済大学に進学して2年目、新型コロナウイルス感染症の影響により授業はすべてオンラインになりました。1年生の間にできた友人とはLINEや電話などで連絡をとっていたものの、リアルで会える場面がなくなってしまったことで寂しい思いもしました。コロナ禍は、地元・福島県の実家に帰ってオンライン授業を受ける中、大学の友人にも会えず、アルバイトもできず厳しい状況の中ではありましたが、自分の慣れ親しんだ地元の居心地の良さや、小さいころから仲の良かった地元の友人の存在が僕にとって、とても大きな支えになりました。
そんな状況の中で2年次の研究テーマに選んだのが、「SDGs」です。福島の魅力度の調査を行い、その魅力を活かした持続可能な地域社会づくりを自分の大好きな地元で行えないか考えていました。その折、授業内のお誘いで有志学生によるSDGsに関する勉強会FFFR(Fridays For Future RKU)に参加することとなり、そこでダイバーシティ共創センターが2022年4月に設立されること、立ち上げのメンバーを募集していることを知りました。「ダイバーシティ」という言葉すらも知らなかった僕ですが、「いろいろ経験しておくことは将来に役立つかも」と思い、まずは参加してみることにしました。
共創する中で気づくことができた、僕を支えてくれる人たちの存在
ダイバーシティ共創センターでは自分は何に取り組むことになるのだろう?と受け身の姿勢で最初の説明会に参加したのですが、予想は見事に裏切られました。センターの活動内容は、参加したメンバーでこれからつくっていくというもので、より主体性が求められることもわかりました。学級委員や学生によるセミナー運営など、今まで自分が積極的に企画に取り組んできた経験が活かせるかもしれないと思い、それからはチームに馴染むのは早かったと思います。
センターの開設前は、「チームづくりセッション」と称して、センターの教員や職員、学生たちみんなでこれからやっていきたいことについて自由に対話を行いました。最初に僕が担当したのが、そのセッション前に参加者同士が打ち解けるためのアイスブレイク。セッションには毎回新しいメンバーが加わるので、打ち解けた話しやすい空気をつくるため、みんなでレクリエーションに取り組むアイスブレイクはとても重要です。僕も「アイスブレイクって何!?」というところからスタートしたのですが、自分なりに調べてみたり、センターで共に活動する先輩に話を聞いてみたりしてなんとか企画をつくっていきました。
初めてアイスブレイクを行った際は、みんなに受け入れてもらえるかどうか、不安と緊張があったのですが、予想以上に参加者たちが本気で取り組んでくれました。アイスブレイクが終わったとき、拍手と歓声が上がり、みんなの楽しんでいる表情が見えたときには本当に嬉しかったです。また、いろいろな方と共創する中で、自分は常に多くの人に支えてもらっているということにも気づくことができました。
誰もが抱える「ひとりぼっちの不安」を少しでも払拭したい
2023年1月現在、センターの活動として僕が取り組んでいるのが「よっ友づくりプロジェクト」です。これは、学生同士のつながりが弱まりがちなコロナ禍において、学生同士が仲良くなるきっかけをつくり、学生の居場所をつくるプロジェクトで、センターのセッションの中で生まれました。具体的には、いろいろなゼミに僕たちプロジェクトメンバーがお邪魔して、マシュマロチャレンジ(※)や絵しりとりなどのレクリエーションを行うことで、授業内の学生同士の交流を促す活動をしています。
※マシュマロチャレンジ:パスタ、テープ、ひも、マシュマロを使って 自立可能なタワーを立てるチームビルディングのためのゲーム。最も高いタワーを作ったチームが優勝する(日本マシュマロチャレンジ協会HPより)
僕自身、入学したばかりのころ、授業中にペアワークなどを行う際に、友人が周りにおらず、ペアを組めないまま自分一人が取り残されてしまうのではないかと不安に思った経験がありました。勇気を出して周囲の人に自分から声をかけてみると、意外にも同じ不安を抱えている学生が多かったのも印象的でした。自分の居場所に不安を抱える学生は僕たちが思う以上に多いのではないかと思います。
自分から行動を起こすことで解決できることもわかりましたが、中には行動を起こすのが苦手な人もいます。自分が行動することで、かつての自分が抱いていたのと同じ不安を少しでもキャンパスで過ごす学生たちから払拭できたらいいなという個人的な願いもあり、「よっ友プロジェクト」に取り組んでいます。
僕がリーダーとして関わるこのプロジェクトは他のチームと違い、メンバーが学生のみで構成されています。4年生になると、卒業論文の執筆や就職に向けた勉強、運転免許の取得など、学生のうちにやっておかなければならないことがたくさんあって、センターの活動を挫折してしまうメンバーもいます。そんなときは、僕の大好きなアーティストUVERworldの楽曲の歌詞の中の一節「全部やって確かめればいいだろう」というフレーズを思い出して自分を奮い立たせています!
自分もやるべきことが多々ある中で、並行してプロジェクトに取り組むのはとても大変ですが、「もう後には引けない。学生だけで最後までやり遂げたい!」という想いで取り組んでいます。
センターのおかげでたくさんの個性に出会うことができた
ダイバーシティ共創センターの活動に参加して良かったことはたくさんあるのですが、中でも学生として授業を受けているだけでは出会えない方々に出会えたことはとても貴重な経験です。とくにセンター長の三木先生や副センター長の西機先生にはたくさん相談しています。学生として授業を受けているときの先生はとても遠い存在で、話をすることすら難しく感じてしまいますが、センターでは、先生や職員の方が、学生である僕たちと同じ目線に立って話しやすい空気を作ってくださっているので、とても近い距離感で、他愛のない会話をしたり、悩みを相談したりしています。
あるとき、僕が担当している「よっ友づくりプロジェクト」について、学生だけでやり遂げられるか不安に思っていることを三木先生に相談しました。すると、先生が「焦る必要はないよ。安藤さんのペースで、ゆっくりやればいいんだよ」と言ってくださったんです。僕は、自分が卒業するまでに企画を終わらせることしか考えておらず、とても焦っていました。そのことを話すと、先生は「そうだよ。そうだよ」と僕の話に耳を傾け、その気持ちを受け止めてくださいました。
先生に話したことで、このプロジェクトを引き継いで行ってくれる仲間の存在や、焦ることで学生の居場所をつくるという本来の目的が霞んでしまうかもしれないということに気づくことができ、ハッとさせられました。そのときに「無理して焦らないでいいんだ」と、とても救われた気持ちになったのは今でも印象に残っています。
「ダイバーシティ」の言葉すらよく知らなかった僕ですが、活動の中で少しずつ見えていなかった世界が見えてきました。たとえば、自分が当たり前に受けている講義。その受講者の中には言語や文化が壁となって、助けを必要としている留学生が存在していること。何気なく使っているトイレも、男子と女子どちらに入るべきか悩んでいる人たちの存在。センターの活動に参加する中で今までは気づかなかった多様性をより意識するようになりました。学内に留学生と英語で交流できるスペースがあるのですが、僕もそこに参加することもあります。
一人ひとりの小さな行動によって、学生が一人ぼっちにならず、お互いの個性を尊重し、思うまま、自由に発言や行動ができる理想のキャンパスに少しでも近づいていけるといいなと思っています。