不動産を取り扱う者はプロでなければいけない──日本の不動産業界に革新を
私がRE/MAXに加盟した理由は、以前よりアメリカのエージェント制度に興味があったからです。アメリカの不動産エージェントというのは、日本で言う弁護士・税理士などの士業と同格くらいの社会的ポジションがあるんですよね。
なぜかと言うと、それだけ個人個人がより多くのことを学んで知識を深め、クライアント一人ひとりのために精一杯の活動をしているから。自分で知識を蓄えるのが当然というスタイルが定着しているからこそ、社会におけるポジショニングが取れているのです。
しかし残念ながら日本の不動産営業職はまだそのポジションにはいないのが現状。
日本でもっと地位向上するには、これまでと視点を変え、お客様のために日々学び続けることが必要だと個人的には思っています。
というのも、住宅ローンはお客様が命をかけて組んでいるものなのです。団体信用生命保険に入って、命を担保としてお金を2千万3千万4千万と借りる……。そして今まで貯めてこられた自己資金を出して不動産を購入されるわけです。「あなたに任せた」と。
ですからやはり、私たち不動産を取り扱う者はプロでなければいけないと思っています。
しかし、お客様の生涯をかけた財産を扱うにもかかわらず、売ることのみが-正義-となっている取引をこれまで何度も見てきました。
専門知識を有していないお客様に、不動産を持つことへのメリット・デメリットの説明が不十分だったり、またそれだけに終わらず、業者の都合のいい様に商売にしてしまったりということも。
私は今独立して、企業の枠にとらわれない不動産エージェントです。だからこそクライアントファーストに努め、ついてしまった世間のイメージを少しでも払拭できたらと思っています。
死ぬまでずっと成長していきたい──柔道家から不動産業界への転身
学生時代はまったく勉強せず、柔道一筋の毎日を過ごしていました。卒業後もそのままアスリートの実業団に入ったので、同年代の方より就職時期も、社会人として蓄えている情報量も遅れてのスタートでしたね。
オリンピック予選敗退後、所属先の業種には興味が持てなかったため、別の業種で仕事を探していると、就職情報誌に「3年で支店長_年収1000万円超」「営業車シーマ(当時の高級車)貸与」という魅力的な広告が……。
社会経験の少ない筋肉青年は、そんな理由で不動産業界に足を踏み入れることになりました(笑)。
皆がそうとは限らないのですが、アスリートの場合、自分が強くなることに対しては非常に貪欲ですが、机に向かう作業はほぼありません。
なので当初は右も左もわからない状態で不動産業界に飛び込みましたが、やはり最初の5年6年は苦労しました。なにせ学生時代は机の中が漫画ばかりで勉強はろくにしておらず、とにかくものを知りませんでしたからね(笑)。
ただこの業界でお客様に高額なものを提案するには、さすがにものを知らなくてはいけないと感じ、そこから勉強を始めました。
勉強していく中で、わかったことは「無知の知」です。
つまり、知識を得るために一生懸命に勉強をすればするほど自分がいかに知識がないかがわかってしまうということ……。
でも、だからこそ学び続けていけるのかもしれません。
私は中学・高校・大学と勉強しなかった分を取り返すべく、それ以降は頑張って勉強してきました。それでも、お客様に知識不足ゆえに申し訳ないことをしてしまった経験もあります。
そんな失敗を繰り返さないためにも宅建業法や・建築基準法、民法は最低限、そこから、業法を含め各法律関係、裁判の事例等にひと通り学びました。
知識量の理想としてはお客様が10質問してきた際に、8、9はその場で返せる程度の知識を持っていたいですね。また残りの1つに関しては、「概略はわかるのですが、間違いがないか確認してもよろしいでしょうか?」というくらいまでの知識量がほしいです。
知れば知るほどわからないことが出てくるので、いまでも毎日何かしら調べることを習慣にしています(笑)。頭が正常に動く以上、死ぬまではずっと成長していきたいという、このスタイルを大切にしたいですね。
多様なメンバーと過ごす刺激的な日々。RE/MAXで新たな発想が生まれる
RE/MAXのエージェントには本当にいろいろな方々がおられます。
年齢やキャリア、加盟理由や活動スタイルも皆バラバラ。でも、そういったさまざまな形でエージェントとして活躍できるのがRE/MAXの良さだと思っています。
多種多様な方々がおられるので、私も刺激を受けていますね。「そういう発想もあるんだ、おもしろい」と感じることが多いです。
オフィスのミーティングは、「こういうケースどうしたら良いだろう」という質問をすると、皆さん独自の経験から「こういう風にしたらいいのでは?」という活発な意見をたくさんくださいます。
これはさまざまな背景を持つエージェントの皆さんが、これまで培ってきた知識による助言・コメントなので、発想に幅があって実におもしろいんです。
みんな異なる境遇で仕事をしているので、偏りがない意見が聞けるのは、私にとって良い副産物となっています。というのも、私は29年不動産屋をしていますので、実は頭が固まっている方なんです(笑)。
私自身、不動産実務に関しては、これまでプロとして学んできましたので、そういった私の能力をエージェントの皆さんに対してシェアし、エージェントの皆さんからは斬新で新しい発想をシェアしてもらう。そんな関係がつくれるのもRE/MAXならではですね。
また、RE/MAXでは女性が頑張っているケースが多く見られます。もちろん一般的な不動産会社さんにも女性の営業の方はいらっしゃいますが、時間的な拘束などにより、やはりその数はとても少ないように感じます。
しかしRE/MAXの女性エージェントは、システム的に独立開業というスタンスなので、自分の思うように自由に活動されていて、女性特有のコミュニケーション能力で上手にさまざまなコミュニティに入りお仕事につなげています。実際に成果を出されていますしね。
個人的に尊敬している、大学学長であり企業のCEOでもある方の著書にも女性の活躍について触れられていました。
女性にはパワーがあり、これから伸びていく会社には必ず女性が取締役や代表になれるシステムがある──。
女性ならではの柔軟さで、しかも段階的に知識に基づいた実力が身についていくならその底力は量りしれないと思います。
常にクライアントファーストで動く。不動産弱者を救う新たな試み
エージェントをする上で、自分に与えているテーマがいくつかあります。
まずは地元北海道のふるさと創生。
たとえば町の古家をリノベーションして海外に情報を発信するなど、やり方はいろいろあります。海外の資本が入って地価が50倍ほど上がっているニセコという町のように、日本だけで再活性が難しい町でも、町・北海道・海外を結びつけることでふるさと創生は可能になってくると思います。
RE/MAXの世界につながるネットワークを使わない手はありませんよね。
次に、不動産弱者の救済についても考えています。不動産弱者というのは、たとえばフリーランスの方です。個人事業主で仕事されていて相応の収入はあっても銀行から融資を受けにくい現状があるんですよね。
それを改善すべく、新しいかたちの不動産取得方法について複数の会社と共同プロジェクトを進めています。家賃のように毎月支払うことはできるが、ローンは組めない。でも賃貸ではなく分譲マンションがほしい、という方が所有できるシステムを今構築しているんです。
また、昨今のコロナ禍によって職を失い、住宅ローンが支払えず競売一歩手前状態の方も不動産弱者にあたります。
弁護士さんや司法書士さんから最近とくに依頼が多く、複数の債権者と交渉しながら、クライアントファーストで動いています。こういう動きができる不動産業者はまだあまりいないのではないでしょうか。
私は、ナンバーワンは求めていないのですが、クライアントにとっての最適解を提案できるオンリーワンのエージェントでいたいと思っています。そのためにはさまざまな視点を持つことが必要であり、日々の学びはそのためにあります。
でも、その姿勢は嬉しいことに伝わるようで、お付き合いが1年から5年、10年になる方もおり、そんなふうにクライアントの人生に深く関わらせていただけていることは、とてもありがたく誇りです。今後も売買だけでなく不動産というカテゴリーの中で、そのすべてに精通したいと思っています。できることなら、どなたへも最適解の提案が常にできるよう知らないことはなくしていきたいですね。