介在価値を感じられる仕事で地元に貢献──その矢先に起きた転機
ランスタッドの前身である当時のフジスタッフは、北関東を地盤にしていたローカル色の強い人材会社。東京から群馬にUターンし、地元で働きたいと考えていた猿谷にとって最高の企業でした。
「自分が介在することによって付加価値を生み出せる仕事に就きたいと思っていたのが私のキャリアのスタート。人材ビジネスは企業や人の成長をサポートできて、感謝されながら対価を得られる素晴らしい仕事だと思い、この業界に飛び込みました。買収のタイミングでは執行役員兼営業企画本部長というポジションでランスタッドにジョインさせていただきました」
典型的な日系企業であったフジスタッフのメンバーにとっては、まさか外資系企業に買収されるとは想定外。まさに、黒船来航のように戦々恐々としていたメンバーが多かったと言います。地元で働きたいと考えて転職した猿谷も、ここで再び東京に出ることに。しかも、予想もしなかったグローバルカンパニーの役員になったのです。
「当時は全く英語は使っていませんでしたし、東京の生活に辟易して戻ってきたのにまた東京かと思いました(笑)。一方で、ランスタッドに統合してからの業務プロセスはとても合理的で効率的。新たな学びがたくさん得られると肌で感じおもしろみがあったので、すぐにポジティブに切り替えられました」
標準化したオペレーションで、ロスを見つけて改善していく。ビジネスコンセプトを大事にし、それに基づきサービスを展開していく。そういったランスタッドの文化は肌に合っていたと猿谷は語ります。
「営業活動の中でのインプットがどう業績につながるのか、アウトプットを改善するためアクションにどう落としていくべきなのか。そういったサイクルをとても重要視していると感じました。
以前は『まあとりあえずやってみるか』という文化が強かった。決してそのこと自体が悪いわけではないのですが、計画して実行した後に振り返り、最適解を探して再実行に移すというアプローチはとても新鮮でした」
39歳で社長に就任。多様でフラットなグローバルカンパニーで全力疾走
それと同時に、今までは日本の文化の中だけで決めていたことを、グローバルの方向性に合わせていく必要が出てきました。日本の文化とグローバルの進むべき方向性の間で生じるギャップを埋めながらの舵取りには、グローバルカンパニーならではの難しさもあります。
「グローバルからの提案に対して完全に受身になるのではなく、日本での“あるべき姿”を主張し、意見交換をして理想の形を模索していく。それにより新しいプロダクトや多様性に富んだサービスが生み出せると考えています」
意見交換の重要性は社内でも同様です。多様な人が働くランスタッドでも、人材派遣を主とするスタッフィング事業本部は99%以上が日本人メンバー。
一方で、グローバリゼーションが進むプロフェッショナル事業本部は、日本人の方が少数派という人員構成です。
「社内にもさまざまな文化が存在しているのがランスタッドのおもしろさ。部門間でいろいろと意見交換をすることで生まれる多様性も多々あります。国籍や性別だけではなく、シニアの方やハンディキャップを抱えた方など、多様な方を迎え入れて活躍の場を創出していくことで、いろいろな形でシナジーが生まれるのを感じます」
今では英語でコミュニケーションを取る猿谷自身も、さまざまな文化に触れることで“自身の中でのグローバル化”を進めることができたと話します。グローバルカンパニーとなり、社風はオープンでフラットな雰囲気に。
年齢や社歴に関係なく成長を望む人を全力でサポートする制度が整い、意欲があれば20代でも積極的にマネジメントに携わる機会を勝ち取ることができます(ランスタッドの「自ら新しい挑戦ができる様々な制度」を見てみる⇒ここをクリック)。
「私も39歳で代表取締役社長兼COOを拝命しました。常に新しいミッションを与えられ、幾多のチャレンジをさせてもらえるので、それを達成していくことで私自身の成長につなげられています。さまざまな課題に取り組んでいるときは必死ですが、チャレンジが多い方が私はおもしろいですね」
真の“People business”を構築するために。一人ひとりに最大限の価値
猿谷が入社したころに人材派遣のみの取り扱いだったサービスは、今や多彩なラインナップとデリバリーモデルが拡充。求職者や企業に対してサポートできる領域が格段に広がっています。
「ランスタッドのサービスは多岐にわたっています。学生時のアルバイト派遣や就職時のサポート、結婚‧出産といったライフイベントの変化の中で、派遣という雇用形態で個々のライフスタイルにマッチした働き方も提供できる。
ステップアップでマネージャー職やスペシャリストへの転職をサポートする職業紹介や、エグゼクティブクラスのヘッドハンティングといったサーチ型まで。キャリアの中でのあらゆるタッチポイントでサービスを提供できるのは、ランスタッドになって得た大きな価値です」
それでもまだ、猿谷は現状に満足していません。求職者一人ひとりが求めていること、それぞれのクライアント企業が望んでいることに、この業界はまだまだ応えきれていない、もっとできることがあるのではないかと感じています。人材ビジネスが持つ可能性の大きさを確信しているのです。
「人材ビジネスは、もっと長期的関係性を構築できる。就職や転職のサポートだけでなく、就業中のリスキリングのトレーニングやキャリアカウンセリングなど、もっと長い信頼関係をパートナーとして継続していける。それが、現状のように刹那的な関係で終わっていくのはすごくもったいない。
私たちがパートナーとして貢献し、より一人ひとりに寄り添ったサービスをどう提供していけるか。それが私の考えるPeople businessです」
必要なタッチポイントで的確にタッチし、ニーズに応えていくために。猿谷は今、自動化や省人化できるプロセスのDXもチームと一緒に推し進めています。この業界ではまだまだDXが進んでいないという課題感を抱いているからです。
「People businessはもっと“人”に時間を捧げるべきだと思っています。しかし現状は事務処理やオペレーションに割いている時間も多い。テクノロジーに任せられるものは任せて、私たち人間がやらなくてはいけないのは求職者やクライアントへのサポートの時間を確保することです。必要なタッチポイントに最大限のバリューを発揮できるような仕組み作りをめざしています」
最先端の人材ソリューションカンパニーをめざして
猿谷がめざすのは、ランスタッドをより“強固で信頼される組織”にしていくこと。変化し続けるマーケットの動きに、どれだけ俊敏に対応していけるかが重要なポイントであることは間違いありません。
「どのビジネスにおいても、コロナ禍やリーマンショック、東日本大震災時のように、一時的に雇用の維持が不安定になる情勢があります。
そういった有事から脱却する局面において、最初にその雇用創出をサポートできたのは間違いなく私たち人材業界だと自信を持って言えます。私たちがセーフティーネットとして社会に貢献できる役割はとても大きいということを、これらの経験からもあらためて実感しました」
経済動向や労働市場の変化、テクノロジーの進歩、法改正、災害……。まさにVUCAの時代です。ひとたび不況に転じ先行きが不透明になると、企業はどうしても採用に躊躇してしまうもの。
そのような状況において、企業にとって、また求職者にとっても人材ビジネスは大きな拠り所となり得ると猿谷は語ります。
「平時のサポートはもちろん、何か大きな困難に直面したときこそ頼っていただけるパートナーになりたいと思います。何か起きたときにもしっかりと近くで寄り添えるビジネスをどう組み立てられるか。それが私たちの大きなミッションの一つです」
苦しいときにこそ頼られ、サポートすることができる人材ビジネスという大きなバリュー。それを信じているメンバーと一緒に仕事ができることが、猿谷にとって原動力となっています。
変化に対する新しいアイディアや新しいアプローチ、人材ビジネスのあり方を、メンバーと共に考え向き合っています。
「マーケットに求められているのは現状維持ではなく、柔軟性に富んだ企業力。変化に対応したものだけが勝ち残るのだと思います。その上で、大切にしているのはチームのメンバーで同じゴールをめざすこと。日本のマーケットにマッチしたグローバルのベストプラクティスを導入しながら、最高のサービスを展開し、最先端の人材ソリューションカンパニーをめざしていきます」
※ 記載内容は2023年6月時点のものです