法務の専門家としてランスタッドに入社するまで

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──ランスタッド法務部門ヘッドになるまでの経歴を教えてください。

佐藤 「大学を卒業後、アメリカの大学院でMBAを取得し、外資系銀行の東京支店に幹部候補として入社しました。ファイナンシャルコントロール、個人金融部門支店の支店長、当時銀行業界ではパイオニアだったコールセンターの統括部長など、さまざまな業務を経験し、10年目に家庭の事情で退職。その後移り住んだハワイでロースクールに通い、弁護士資格を取りました。

日本に戻ってからは外資系法律事務所でのマネジメント業務、ラグジュアリーブランドの日本支社での管理部門統括業務を経て、フリーランスに身を転じ、業務委託としてランスタッドで契約の翻訳などを手掛けることになりました。

しばらくして、オランダ本社が目指す『専門家集団としての法務』への組織変革を推進するためにプロジェクトリードとしてランスタッドに入社しました。プロジェクトが完了した時点で、正式にリーガル&コンプライアンス本部の本部長として着任し、以降この職に携わってきました」

──ランスタッドの印象とその後10年の変化や取り組みについて教えてください。

佐藤 「ランスタッドは、社員をトランスフォームし、グローバル企業としての文化をつくり上げていきたいという希望があり、ランスタッドジャパンとしても変革を推進していましたので、自分のこれまでの経歴やスキルが活かせる環境に魅力を感じました。時代とともに訪れる変化の中にあっても常に取り組んできたのは、『アウト・オブ・コンフォート・ゾーン』を推奨・実践することです。

人材サービスは許認可事業ですので、法務が深く入り込んでリスク管理とコンプライアンスの観点から営業をサポートし、紛争解決するため、専門性を高め、営業と対等な立場で現場を先導できる法務になることを目指しました。現状をいかに打破するか、従前の枠を取り払って変わっていくか、つまり法務メンバーのマインドセットチェンジと行動変容がメインの課題でした。

定期的にサービス満足度調査を行い、その結果をもとに、チーム全員でどうすれば良きビジネスパートナーとして現場が必要とし望むサポートを提供できるかについて常に話し合い、さまざまな試みを実行することによって守ると同時に攻める法務を目指してきました」

アメリカと日本で築いたキャリア

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──ランスタッドに入社するまでのキャリアを教えてください。

安田 「大学のころにニューヨークに渡り、卒業後そのまま現地で仕事をしていました。弁護士になる前はエンターテインメント業界で自分の制作会社を持ち、全米やヨーロッパを毎日飛び回っていました。その後、弁護士になりマンハッタンの法律事務所で実務を計10年。そのときの日本企業のクライアントから社内弁護士になってほしいと誘われて、2015年に日本に戻って来るまで30年余をニューヨークで過ごしました。

グローバル案件に対応できる法務部をゼロからつくるというミッションの下、グロスボーダー事業案件やコンプライアンスプログラム推進のため、欧米・アジア諸国を飛び回りました。5年半ほどの在籍中、後半の2年間は執行役員を務めましたので、日本の企業経営について多くのことを学ぶことができました。経営戦略としてグローバル化が一段落したところで、この日本企業から離れ、もともといたエンターテイメント業界の動画配信会社に法務部長として移りました。将来的には外資系企業の環境の中でも仕事をしてみたいと思っていたところ、ランスタッドとご縁があり入社しました」

──もともと人材業界に興味があったのでしょうか?

安田 「ロースクールに入ったころから多くのリクルーターと頻繁に情報共有していました。卒業して弁護士になってからは、キャリア相談や人生相談をたくさん受けてきました。リクルーターが身近でしたし、リクルーター的視点で相談にのることも多かったので、いつか人材紹介会社で仕事をするのも良いかなと思っていたところに、ランスタッドから誘いがあり、縁を感じたところが入口です」

──ランスタッドに入社していかがでしたか?

安田 「これまでの経験から、ランスタッドで携わる法務領域は多少フォーカスできるという印象です。フォーカスするべき領域の中に、思った以上に多くの課題を抱えていることから、人材サービス業であるがゆえの難しい問題を解決していくことに、今ものすごくやりがいを感じています。

入社してから6カ月間の引き継ぎ期間を通して、このポジションがとても重要で、プレッシャーのかかるポジションだということを理解しました。佐藤 葉子さんという素晴らしい上司、同僚弁護士に恵まれてとても嬉しく思います。これまで本当によくサポートしてもらいましたし、何よりも弁護士として非常に尊敬しています。

私の今までの数十年の経験を振り返りながら、ランスタッドの環境や法務スタイルに合わせて調整していくカリブレーションの時期として最高で、毎日が本当に素晴らしいオン・ザ・ジョブ・トレーニングでした」

ランスタッドの法務として、女性の活躍を推進する立場として

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──ジェンダーやダイバーシティには法務としてどのように取り組んできましたか。

佐藤 「ランスタッドは女性の割合が高い会社ですが、管理職のレベルが高くなるほど女性の割合が低くなっていきます。法務のみならず、会社全体としても、ジェンダーダイバーシティについてはまだまだ改善が必要な課題として抱えています。

本人に能力とやる気がある場合は、その能力を活かす機会を与えることを意識し実践してきました。女性のみならず、障がい者の方も、インクルーシブに均等の機会を用意して、持っている能力を発揮できる環境づくりをしています」

──ダイバーシティの推進のためにこれから取り組んでいくことは?

安田 「ダイバーシティは法務にとって大変重要です。多角的な視点で物事を見て、最善の解決策を探るためには必須。ダイバーシティ推進の中で最も重要なのは女性活躍推進だと思っています。ランスタッドも試行錯誤しながら努力していますが、意見を発して経営にインパクトを与えられるポジションの女性リーダーは圧倒的に少ないと思います。

企業におけるダイバーシティ推進は、トップダウンの強力な戦略がなければ中途半端になると考えますので、ぜひ、ランスタッドで女性取締役を誕生させる活動を推進したいと考えています。社内のさまざまな女性活躍推進の活動もサポートしたいですし、法務としても少なくとも女性が半分ぐらいになるまでは女性採用を進めたいと考えています」

佐藤 「どの国のグループ会社においてもダイバーシティの課題は抱えていると思います。ランスタッドジャパンもジェンダーダイバーシティが浸透してきていて、ここ1~2年で相当数の女性マネジャーが生まれていますから、成果は出てきていると思います。安田さんのような感覚と信念を持って取り組んでいくことが、とても大事で心強いことだと思います」

──働きやすい環境につながる、個々の裁量についてはいかがでしょう。

安田 「ランスタッドが掲げている『Freedom within the frame』がキーワードになります。社員や中間管理職のモチベーションを高めて、成長させ、会社に貢献させるには、本当の意味でフリーダムを認めて、広い意味で働きやすい環境をつくるべきです。マイクロマネジメントをし過ぎるとモチベーションがなくなり、中長期の経営計画や人材の育成にとってはマイナスだと思っています」

佐藤 「理想に向かって確実に成果を出していくためには具体的にどうすべきかを考え実行に移す必要があります。『Freedom within the frame』以外にも、失敗を恐れず、それぞれの立場でリーダーシップを発揮するようにと伝えてはいますが、それができる環境をいかにして会社として用意するかは、まだまだ具体化できていない部分があります。そこは常に意識をして、地道に推し進めていく努力が必要です」

これからのランスタッド──地に足のついた経営戦略の下に成長できるかがカギ

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──ランスタッドのこれからにどのような可能性を感じますか。

安田 「ここしばらくの間に、ランスタッドはさまざまな新しいことを始めています。部署ごとの新しい事業推進キャンペーン、TwitterやInstagramへの投稿を通したマーケティング、Town Hallや役員による主要拠点ツアー、CEO Club、Game ChangerやCEO for a dayなどの表彰などなど。多くのキャンペーンやイベントを、ものすごいモチベーションとエネルギーで進めています。

このモチベーションとエネルギーを、実際にランスタッドの成長、社員の成長、誰もが活躍できる職場環境に結びつけられたら、本当に素晴らしいことだと思います。会社として軸のある経営戦略をたてられるような環境をつくり、社員が持っているモチベーションやエネルギーで、意味のある戦略を推進できたら、素晴らしいOne Randstadの将来が開けていくのではないかと、そこに大きな可能性を感じています」

──経営に携わっていたからこその視点ですね。

安田 「感覚としては『リーガルマインドを持って経営に関われる者』を目指していますし、健全で発展的な経営戦略がないと、気になってしまいます。これまで法務目線の経営の在り方として、ダイバーシティやコンプライアンスを基盤にしつつ、会社は何をどのように目指していくべきか、などということを考えていたので、どうしてもその辺が気になります。

経営戦略の基盤に、ダイバーシティ、コンプライアンス、リーガルマインド育成などをしっかり組み込んでいくことに貢献したいと思っています」