教育者になりたい──その想いから人材系の会社へ

▲朝活イベントに登壇中の楠

2015年4月、大手人材系企業に人材紹介事業部の2期生として入社したのが、楠 拓也のキャリアの始まりでした。しかし、彼は最初から人材系企業を志望していたわけではありません。

楠 「そもそも働くにあたって、『お金をたくさん稼いで、高価なスーツや時計を身に纏い、合コンでモテればいいや』くらいのことしか頭にありませんでした。あとは、昔、父に車をプレゼントすると約束したこともあり、働く=稼ぐことがすべてだと思っていました」

学生時代の先輩や友人は、金融やITなどの大手企業を狙って就職活動していました。一方、楠は彼らとは反対に、大手企業に対して具体的な仕事のイメージが膨らまず、当時魅力を感じることができなかったと言います。

そこで、当初念頭においていた、「働く=稼ぐ」という考えのもと、不動産ベンチャーで選考を受けることに。しかし、そこで社員の人がお金の話ばかりする光景を見て、お金がすべてだと考える職業観に違和感を持ち始めました。

じゃあ自分はなんのために働こうか──そう考えたとき、高校3年生の受験期に出会った塾の英語講師のことを思い出しました。

楠 「受験のためのだけではなく、『そもそも世の中ってね』と社会のしくみや動きから教えてくれる人でした。その人との出会いで、私は英語を好きになり、無事に第一志望校にも合格できました。振り返ると、そんな大人に憧れていたんだと思います」

その英語講師のように、自分も人の心を動かせる教育者になりたい。
こうして彼の中に、人材系企業に就職するという選択肢が生まれたのです。

その後、楠は人材会社に入社。入社した当時は、まだ事業部が立ち上げ時期だったこともあり全体的にルールが曖昧でなんでもアリな状態。新規で開拓したクライアントを、自分なりに考えてゴリゴリ進められる環境でした。

その中で1社、彼にとって強く印象に残っている企業があります。

楠 「神保町にあるITベンダーの企業だったのですが、月末最終日にその企業で成約すれば、部署の目標が達成!というタイミングでした。何度も何度も電話・メールを重ねて、ギリギリラスト1分でメールの返信があり成約。達成したときには、さすがに手が震えましたね。あのときの喜びは忘れられません」

1年目は非常に成績も良く全社で表彰されることに。さらに2年目では最速でチームマネジメントを任せてもらい、順風満帆にものごとが進んでいる手応えを感じていました。

しかし、その後初めての挫折を味わうことになります。

営業から人事へ──背景にあったのは人付き合いの苦手意識の克服

▲入社2年目の頃、同期との飲み会にて(写真右列の真ん中)

初めての挫折は、入社2年目に起こりました。

当時、楠は4人のチームでプレイングリーダーを務めていました。ところが、自分が立案した未熟な戦略や不慣れなマネジメントのせいで、その後しばらく低調。ついには人生初の未達を味わうことになります。

楠 「今思えば、目の前の顧客や部下に向き合わず、パソコン上の数字とにらめっこする日々でした。ただ、その当時はそんな状態に気付くことができませんでしたね。目の前の数字にばかり目が向いてしまい、なんのために、誰のために仕事をするべきかを見失っていました。誰の心も動かせていなかったと思います。

かなり悔しい想いをしましたが、上司がしっかりと見守ってくれたのもあり、数カ月後には自分自身もチームと一緒に自走できるようになっていきました。当時見捨てずにサポートしてくれた上司にはとても感謝しています」

入社して2年がたったころ、楠は少し営業に飽きてしまっていた自分に気付きます。“わかりやすい成果物=人”さえ提供できれば成果を出せる、と高を括ってしまい、人材紹介の営業に物足りなさを感じてしまったのです。

楠 「一方で、『人間関係を構築する』『人に信頼してもらう』ということに対して、自分の中でずっとコンプレックスを抱えていました。学生時代、遊びよりも勉強を優先していたことも多く、人付き合いに対して苦手意識が強かったんですよね」

ビジネスの世界であれば演じられる。お客様と接するときに営業マンとしては信頼してもらえている。しかし、人として信頼してもらえていないのでは……。

そのモヤモヤを克服するために、たまたま社内公募をしていた“人事”に転属を希望し、異動することになりました。

社内報プロジェクトを通して見つけた新たな「問い」

▲インプットが多すぎて忙しかった人事時代。飲み会で寝てしまう楠

楠は人事へ異動後、営業時代に感じた課題から、当初上司に対し強硬な態度で接します。

楠 「しかし、実際に採用の仕事をしてみると、もともと人と関係構築することが苦手だったこともあり、非常に難しさを痛感しました。自分ならできるだろう、と思っていたので完全に鼻をへし折られましたね」

今までの自分がとても自分本意な人間だったということに気付き、人事の仕事を通して、人の考えていることや価値観をしっかり慮れるように変化していきます。

楠 「しっかりとヒアリングができていないのに採用をしようとしたときは、上司からもめちゃくちゃ怒られましたね。ただただ経歴を並べた浅はかな質問ばかりじゃダメなんですよ。やはり履歴書や経歴書じゃわからないようなその人の価値観に触れていかないと、本当に活躍できるかなんてわかりません。

今思えば、営業のときは数字がメインだったので、目の前の人にあまり向き合えてなかったのだと思います。人事になると、その人の入社後の活躍や人生や、その人の家族や友人など、後ろにいる人たちの人生も担がないといけない。そう思うようになれたのは大きな変化ですね」

人事の仕事と併行して、楠は社内報のプロジェクトにも携わるようになりました。当初の目的は、社内理解を深めて人事業務をより遂行しやすくできるようにすること。楠がプロジェクトオーナーとして人事部を代表して記事を書いていくことになりました。

楠 「月に1回程度、自部署の人のインタビュー記事を書いたり、人事系のコラボイベントの記事を書いたり……コツコツと続けたかいもあってか、記事がきっかけで現場とのコミュニケーションが生まれたり、まったく知らない社員に声を掛けてもらえたり、社内認知が広がっていく実感はありました。やっぱり続けていくことって大事ですね」

そして、採用候補者の方から「御社の記事を見ていたことが、最後入社を決める後押しになったんです」という声を掛けてもらえたことで、楠は新たな「問い」を発見します。

楠 「正直、人事として人並み以上のスキルがあると自負していました。ただ、やっぱりどうにもならないこともある。一部上場だからとか、年収がこれくらいだからとか、外面的な情報だけで判断されてしまい、そもそも出会うことのできない学生がいることが、自分にとってなんとももどかしい事実でした。

人事という仕事は好きですが、あらためてもっと広い世界を知って、それを伝えられるような大人になりたいなって思ったんです。まだまだ自分が見ている世界が狭いようじゃ、相手の視野も広げられないですしね」

PR Tableとの出会いは、まさにそのタイミングで訪れました。

PR Tableへ入社。よりチャレンジングな環境で経験を積むために

ビジネスの現場に戻りたいと考えていた楠の目には、PR Tableのこれから事業をつくっていく手触り感と、チャレンジできる環境が非常に魅力的なものに映りました。そうして、入社を決意します。

楠 「今の時代、企業がしっかりと情報発信をしていかないのは、とてももったいないことだと思います。

前職で最初の上司だった方が、非常にビジネスに知見のある方で。いつも同行してもらうと、担当の僕以上に前のめりでお客さんと仲良くなろうとするんですよね。それで同行が終わるといつも、この技術がどう優れていて、何がすごいのかというのを細かく教えてくださる方でした。

その上司と同行するといつも、自分のコンサルティングがいかに浅はかだったのかを思い知らされましたね。どんな企業にも絶対に魅力はあります。それを、求人票を通してちゃんと伝えていくことが自分の仕事でした」

企業に存在する魅力を眠ったままにせず、しっかりと外側にも伝えていく。こうした考えは、楠のPR Tableにおける活動の原点になっています。

楠 「今、talentbookというサービスの営業をしています。ただ、今までと違って、企業の魅力を私たちが発信するのではなく、企業が自ら情報発信できるお手伝いをしているんです。大事なことなので繰り返しますが(笑)。どんな企業にも絶対に魅力はあります。ただ、今の時代それは企業自らが発信していかないといけない。

営業活動をしていく中で、社内風土の部分でまだまだ情報発信自体に抵抗感のある企業と出会うときもありますが、それを後押しできる存在になっていきたいですね」

楠は、就職活動のときから変わらず、教育者になりたいという夢を常に持ち続けています。それは生きていく上で大事なことを教えてくれた大人がいたから。「偉そうなことを言える立場になるためにも、何より自分が多くの経験をして語れなきゃいけない」。それが彼の原動力です。

楠 「talentbookってかなり新しい発想のサービスなんですよね。まだまだみんな知らないけど、まさにこれから本当に大事になってくるサービス。そんなサービスに自分が携わりながら、事業と一緒に成長できたらこの上ない経験だと思うんです。

もし仮に明日自分が教壇に立てたら、その時点で夢はいったん終わります。それでもまだまだたくさんの経験は追い求めていきたいですね。もっと自分の経験値を積んでいって、たくさんの人の心を動かせる人になりたいです」

楠は歩む道の先に教育者としての自分を描きながら、経験を通じて自身のうちに眠る魅力を引き出し続けます。