この記事は【#PRLT(Lightning Text) Advent Calendar 2022】の4日目(12月4日分)にエントリーしています。
先日わが家の6歳になる娘が、本棚からおもむろに1冊の絵本を取り出してきた。
そう、井之上パブリックリレーションズの井之上 喬会長が監修を務め、パブリック・リレーションズのエッセンスが詰め込まれている絵本「なかなおり」である。
その絵本を一緒に読みながら、子どもたちはこんなに素直なのに、私たち大人は果たしてこの教えを実践できているのだろうか?と自問自答してしまった。今回は、2022年を振り返りながら、今だからこそPRパーソンに必要なスキルについて改めて考えていきたい。
パブリック・リレーションズの本質を改めて知りたい方、PRの英才教育をしたいお母さま、お父さまは、ぜひご一読いただけると幸いです。
目次)
1.どうして大人たちは「なかなおり」できないのか
2.絵本から学ぶパブリック・リレーションズ「3つ」のキーワード
3.PRパーソンが求められる時代がやってきた
4.膝を突き合わせて、もっとPRの話をしよう。
1.どうして大人たちは「なかなおり」できないのか
改めましてこんにちは。PR TableでPR/Evangelistをしておりますクボ ケイタです。
当社では、企業の人的魅力を広めるPRプラットフォームサービス「talentbook」を軸にデジタルPR支援を法人様向けに提供しているのですが、「働く人」のストーリーやノウハウが日々公開されているメディアとしての側面もあります(この記事もtalentbookで書いています)。
そういった意味で僕自身も、実務家としてだけではなく支援側として人事・広報の方々と接する機会も多いですし、さまざまな側面から俯瞰してPRに触れることで社会におけるPRの存在意義を再認識する、そんな一年でもありました。
ちょうど一年前には、こんな記事を書きました。
今年を振り返ってみると、2月には「PR TALK」というオウンドメディアを立ち上げて、とにかくたくさんのPRパーソンと対話をしてきました。もはやライフワークのようになってきたイベントのモデレートやラジオのパーソナリティー活動を通じて「訊く」ことの魅力を再認識できたのも2022年でした(累計20名のPRパーソンにラジオに来ていただき、コラボイベント・セミナーは全27回開催することができました。関わって頂いた皆さま、ありがとうございました!)。
「場」をつくり、問いを投げかけることで、新しい出会いや作品が生まれたりする。まさに“関係づくりのご褒美”だな、と思っております。
一方で、世間を見渡すといわゆる不祥事や社員・経営者の言動による炎上などで、危機管理対策など「守りの広報」について意識する機会も多く、毎月のように事例が生まれていた一年だったような気がします(奇しくも広報会議の2023年1月号は「危機管理広報」特集。このテーマのより専門的な話はぜひ本誌を読んでみてください)。
あえて個々の事案について触れることはしませんが、経営者の不祥事のみならず、個人対個人の対立構造が、パブリックを巻き込むことで企業の問題になっていったり、PRを扱う会社が批判を浴びたりと、さまざまな角度から石が飛び交っていました。
自分が広報の立場にたって憑依しているうちに辛くなってきて、Twitterをそっと閉じたこともしばしば。そして視点は違えど、世界では今も国同士の争いが続いています。
どうして大人たちは「なかなおり」がこんなに下手なのだろう?
2.絵本から学ぶパブリック・リレーションズ「3つ」のキーワード
2018年某日、PR Tableに入社した僕は、オフィスの壁に並ぶおしゃれな雑誌や洋書の中で、異彩を放っていたある本を手に取りました。
それが、きずな絵本シリーズ「なかなおり」です。
▲当時の渋谷オフィスで「なかなおり」を読む僕の写真がなぜか出てきた
絵本のストーリーとしては、おうちを作りたいクマくんが、木の取り合いでビーバーくんや森の仲間たちと喧嘩になるのですが、突然現れたリスおばあちゃんに教えてもらった「なかなおりのうた」をきっかけに、自分が間違っていたことに気づき、仲間たちと関係性を修復していくというシンプルな物語です。
本書には、社会で出会うさまざまな人ときずなをつくり、協力して目標を達成するパブリック・リレーションズという方法のエッセンスがつまっています。
パブリック・リレーションズにおいて大切な3つのキーワードは以下の3つ。
1)倫理観 (おもいやり)
2)双方向性コミュニケーション (お互い話し合う)
3)自己修正 (間違っていたらなおす)
ストーリーに当てはめると、クマくんが、ビーバーくんの気持ちに立って考え(倫理観)、ビーバー君の気持ちに気づいたクマくんはビーバーくんと話して(双方向性コミュニケーション)、謝って木を返します(自己修正)。クマくんは仲直りしたビーバーくんや、森のみんな(社会)ときずなを深め、協力してもらうことで、お家を作るという目標を達成するという流れです。
実際に自分の子どもたちを見ていると、友達や兄弟同士で喧嘩をしても自己修正していくんですよね。大人が叱って納得するというよりは、自分達で気づいて、コミュニケーションをとり、正しい方向に進んで成長していくんです。
「相手の気持ちを考え、勇気を出して話し、悪いと思えばあやまる」 そんな当たり前のことに改めて気づかされ、大人にもメッセージが響く一冊になっていると思います。
3.PRパーソンが求められる時代がやってきた
さて先日、週刊東洋経済で「氾濫するPR」というインパクトのある見出しで特集が組まれました。界隈でもとても話題になっていましたし、読まれた方も多いのではないかと思います。
そこでは、企業から消費者への「情報伝達」のあり方の変化に触れながら、「PR漬け社会がやってきた」という表現もされていました。
PR会社やマスメディアなどそれぞれの立場で視点は違うと思いますが、僕があえて言いたいのは、「PRパーソンが求められる時代がやってきた」ということです。これはポジショントークでもなんでもありません。
PR=Public Relationsは、職種というよりも概念でありスキルだと思っていて、PR Table的な表現で言うと「ハートのある技術」なんですよね。だから誰もがそれをインストールしてそれぞれの仕事に活かすことができるんです。
概念として捉えると「ステークホルダーとの良好な関係構築」のことを指しますが、情報がこれだけ広がり続ける社会において、利害関係が発生するしないにかかわらず、ステークホルダーは社会全体だと捉えなければなりません。
その視点が欠けていて、炎が燃え広がったケースは非常に多いと感じます。
つまり、情報の広がりをどこまで想像して自己修正できるかを求められるので難易度は格段にあがってきてるんですよね。
結局のところ、上記3つのエッセンスをインストールして実行するために必要なスキルとして「情報リテラシー」や「社会文脈を読む力」もより求められているなというのが実感です。
また、私たちが日々仕事をしている相手は機械ではなく人間。どんなステークホルダーでも「個」との関係づくりが基本にあります。
こちらは、私たちが以前より提唱しているPRの考え方を表した図です。
一人ひとりがステークホルダーと向き合う組織になる。それぞれが「他者への想像力」を持って顧客や採用候補者や株主と向き合い、良い関係性を築いていくこと。
そうした想いを込めて、当社のPR室の正式名称は「パーソナル・リレーションズ室」としています。
全員がPRパーソンであるという前提で、PR室はその先導役を担っていきたいと思っています。
今の時代、簡単にSNSやブログ、オウンドツールを使って個人がアウトプットできます。でも誰しもが、情報発信のリテラシー教育や、パブリック・リレーションズの技術を学んできたわけではありません。きっと来年も数多くの炎上事例が生まれ、そのたびに僕は心を痛めると思います。
だからこそ、2023年は「なかなおり」のエッセンスをインストールし、パーソナル・リレーションズを体現したPRパーソンがより求められる時代になることでしょう。
4.膝を突き合わせて、もっとPRの話をしよう。
こうして振り返ってみると、良くも悪くもPRの存在感が高まった一年だったなと思います。
手前味噌で恐縮ですが、当社では「talentbook」という投稿型ストーリーメディアを前身のPR Tableから数えて約7年間運用してきましたが、思いつく限り炎上事例はまだひとつもありません。これを言うと驚かれるのですが、企業様がご自身で執筆されたストーリーであっても、すべてのストーリーに当社のディレクターが校正および第三者広報的なチェックを挟んでから公開しています(要望に応じて、当社が取材から執筆まで担当するケースも多いです)。
「個」が自由に発信することと、「個」を通じて企業の魅力を伝えることは、似て非なるもので、難易度も異なります。情報が溢れている時代において、より「伝え方のお作法」は世の中から求められてくることでしょう。
「人への投資」に国が舵を切り、デジタル人材の不足により採用を強化する大手企業様のニーズが増え、採用ブランディング支援の実例がかなり増えてきました。こういう時代だからこそ、コンテンツを発信する「場」としての安心感とブランドが、大手企業様に評価いただけるポイントとしてより重要になると確信しています。
採用ブランディングや情報発信に課題をお持ちの方がいらっしゃいましたらいつでもご相談くださいませ(笑)。
また、2023年は、より当社としても社会を巻き込んで話題づくりを仕掛けていきたいですし、どうにか炎上ではない形で存在感を高める一年にしたいと思っています。
社会がよりPRや情報発信のお作法の重要性に気づいていく中で、どのような切り口で読者にメッセージを伝えていくべきか。そうした視点を持ちながら日々仕事をされているメディアや記者の方々との交流をより増やし、ご一緒に仕事したりコラボしたりできる機会を増やしたいです。
そうした関係性を編んで新しい作品を世の中に生み出していく、のがPR/Evangelistとしてのミッションだと思っています。
最後に、PR Tableの社名の由来は、“テーブルを囲み、膝を突き合わせてもっとPRの話をしよう。”です。
この記事を読んで、今年まだ「なかなおり」できていない相手がもし思い浮かんだなら、ぜひその友人や同僚、ご家族・お子様に向き合い、膝を突き合わせて話をしてみてください。
そして、「もっとPRの話がしたい!」と思ったならいつでもお気軽に連絡くださいね。