コンテストで生まれたブレイクスルー。案件成功につながる「質問のチカラ」

▲2019年度「感動コンテスト」での山口のプレゼンテーションシーン

「感動コンテスト」とは2011年から年1回開催している、全事業を対象にした社内の公募制イベントだ。「感動の技術化」というポジティブドリームパーソンズ(以下、PDP)が独自で開発したサービスメソッドスキルの向上や働きがい、モチベーション向上のために行なっており、今回で9回目となる。

山口 「これまではオフラインで会場に集まって開催していました。ただ、新型コロナウイルス流行により集まることにリスクがありましたので、書類審査から決勝戦まで全4回の審査をぼぼオンラインで実施しました」

山口は感動コンテストに過去3回ファイナリストとして決勝戦に出場。2020年度の第9回大会では、2回目のウェディング部門優勝と総合優勝を果たした実力派である。

山口 「私の所属するウェディング部門は今回60名以上のエントリーがあり、最終的には決勝戦に4名ファイナリストとして進むことができました。

実は、初めて参加したときはすごいなという空気感に圧倒されて、ファイナリストの足元にも及ばない状況で……。しかし、出場をきっかけに気持ちが変わりました」

コンテストを通じて、山口はお客様への「質問のクオリティー」の重要性に気づけたという。

山口 「どんな案件においても、すべては質問が鍵を握っているなと日頃から思っています。最初に出場した際の総評で役員がおっしゃっていたことですが、そこから自分のプランニングが変わってきたと思っています。

たとえば、通常は新郎新婦の真意をうかがうために事前に記入いただくヒアリングシートをもとに打ち合わせを進めていくのですが、なかなかお客様と打ち解けられなかったり、本心なのかと疑問に感じたりすることがあるんです」


それを払拭するため、山口はシートに書いてあることとまったく関係ない質問を意図的に取り入れたという。

山口 「たとえば、自分のことを話したくない方に対してはそれぞれの学生時代を遡っていただいて、結婚式のゲストと関わってきた時代は人生の中で何色だったのかと聞きます。グレーなど暗い色味のときは、だいたいつらい時代ですよね。仲間はずれにあったとか、親との関係性が悪かったとか……。色だと事実情報の裏にある想いにたどり着けることがあり、そこから提案内容を組み立てていくこともあります」

山口はコンテストへの参加をきっかけに、ちょっとおもしろい、人に興味を持ってもらえるような質問を投げることで、お客様の本心に寄り添っていけるという手応えを感じていた。

コロナ禍で変わる世界──変わらないのは「寄り添う気持ち」

▲山口 彩乃

2020年度開催(2020年10月~2021年2月にわたって実施)の感動コンテストのテーマは「今だから変えたこと、変えなかったこと」。

コロナになり、これまでの山口のプランニングで変えたこと、変えなかったことは何だったのだろうか。

山口 「テーマを軸に考えたとき、基本的に想いを変える必要はないと思っていました。何にしてもお客様の結婚式をやりたい気持ちはコロナ前後で変わりませんし、結婚式に望むものも変わっていません。ただ、お客様との打ち合わせの方法とか、ゲストへの心配りの仕方はやはり変わってきたと思います」

コロナ禍において、お客様の不安は打ち合わせの中で出ることは少ない一方、急な電話やメールの問い合わせが増えた。その中で山口も感じたことが多々あったという。

山口 「相談を受けたときは、コロナ禍の中で結婚式をやるかどうかではなくて、お客様の気持ちが折れないようにすることに必死だったという印象がありますね。お二人の気持ちとしてはやりたくても、周りの意見や世間的な見え方が関わってくるところがありますので……。

さらに、職業的に難しい場合もありますよね、医療従事者でない場合も、薬に関連するお仕事の方や商品開発をしている方など、大企業になればなるほど会社から開催を止められるケースも多いです」

新郎新婦のフォローはもちろん、時にプランナーとして親御さまに連絡したこともあった山口。

山口 「『親がこうやって言うんです』と新郎新婦から言われたら『プランナーにご連絡ください』とお伝えすることもありました。私も結構強気だったかもしれませんね。

こういった状況でもちろん結婚式の中止も考える方もいます。やると決断したお客様でも、今は本当にやりたい姿ではないと思うんです。全員マスクをしている、呼びたいゲストを制限するなど、どんな比重にせよ従来通りの開催が難しい中で、人はどんどん諦めてしまうのだなという一種の怖さを感じました。

ですから、やると決めたお客様にはとことん寄り添いたいですし、やらないと決めたお客様にも、また次に式をあげたいと思ってもらえるようなアフターケアを考えるようになりました。最終的にお二人の味方でいられるのはウェディングプランナーしかいませんからね」

こうして、新郎新婦に寄り添う自身を「責任者というよりは先生という感じ」と表現する。ただ、求められることに応えるのではなく、その先を見据えて導いていくのが山口なのだ。

本音にたどり着いた末に実現した「コロナ禍における理想の結婚式」

▲コロナ配慮と新郎新婦の真意を汲み、メインテーブルをセンターに組んだ斬新なレイアウト

山口 「今回コンテストで出させていただいたお客様の案件も、コロナという状況下でやれるかどうかの瀬戸際でした。お二人はやりたいという想いを持っていたものの、親御さんや御親戚からは本当に式をするのかと懸念が広がっていたんです」

加えて、お客様はSNSなどに溢れるたくさんの情報や反応を気にしており、やりたいことが見えなくなっていたという。希望はあるもののやりたいことがわからず、コロナの心配に加え、トレンドの中で自分のニーズを見出しにくいという現代特有の悩みも持っていた。

山口 「すごくスタイルが良くて綺麗なご新婦様で、どのドレスを着ても似合っていたんですよね。でも、ウエディングドレスだけで20〜30着くらい試着してそれでも決まらないということがあり……。そこからポロポロといろいろな悩みが出てきました」

山口が担当したご新婦様は、人が好きだからこそ「人の想い」に振り回されていたのだ。彼女は確固たる自分の意見があるわけではなく、「周りからどう思ってもらえるのがベストか」を考えていた。

山口 「ドレスショップからオンラインでつなげてもらい、私も直接話しながらドレスを選んで決めましたね。最終的に誰かに背中を押してほしいというのもあったと思いますが、そこからいろいろと関わりが深まっていきました。

もちろんご新婦様は見え方を気にされていましたが、本質的に本人がやりたかったことではないと思うんです。ですから、今回は人を大切にする方だからこそできる結婚式として、今の時代でどんなものができるか考えました」

山口は結婚式のレイアウトもこれまでに無い形にした。ソーシャルディスタンスをとるというコロナ禍の対策と新婦の真意を汲んだ結果、メインテーブルを真ん中に配置したのだ。

山口 「ソーシャルディスタンスを絶対に守ることが出来る距離感でないとつくれないので、テーブル数も何卓までと制限し、テーブルセットに合うように人数を設定していくなどこれまでに無いアプローチでした。

最終的に単純に集まれる場所をつくろうというところにたどり着き、テーブルは置かずにやることに、お二人も賛成してくださいました。大切なゲストと話をする時間が過ごせればいいという、シンプルな2人の本音に添った結果です。すごく難しかったですが、この本心にたどり着いたことが嬉しかったですね」

「人」だからこそできる結婚式の形を追求する──プランナーの醍醐味とは

▲2020年度「感動コンテスト」でファイナリストメンバーと共に

山口が2013年の入社時から在籍した会場、「ザ ランドマークスクエア トーキョー」は、品川駅周辺の都市再開発のため、2021年3月に閉館した。ここにいたからこそ学べたことは大きいと山口はいう。

山口 「『ザ ランドマークスクエア トーキョー』は大小合わせて6バンケットある大型会場で、常に1分1秒を戦っているような感覚でした。披露宴は前後半45分をそれぞれどう使うかが鍵になりますので、その時間の使い方も主賓の人数によっては限られてしまうわけです。

お二人の真意に応えるためにはどういう時間配分で何をやったらいいのかということを結びつけて考えられるようになったのは、この会場で学んだからこそだと思います」

育ってきた会場の閉館とコロナ禍を通じて、結婚式のあり方をあらためて見つめ直した山口はこう振り返る。

山口 「これだけ辛い想いをしたご新郎、ご新婦様はこの時代以上にいるのかなと思っています。長い方だと台風とコロナで延期していて、お子さまが大きくなっているお客様も多くいます。なので、式を迎えられること自体がこれまで以上に感慨深くなりました。

結婚式を辞める人の大半は『想像』でやめてしまうと思うんです。ゲストがこう思うのではないかとか、本当に自分たちのベストなものができるのかとか……。そういう想像を超える幸せが結婚式にはあるともっと皆さんに伝えていかなければいけないですし、味わってほしいなと強く思います」

実はコロナ以前は、今後IT化によりプランナーがいなくても結婚式を選び、実現できる時代が来てしまうのではと思っていた山口。しかしコロナを通じて、改めて実感したことがある。

山口 「コロナ禍になり、お客様の中には昨日まであんなに仲良く話していたのに、急にお客様の対応が変わってしまったことも実際にあり、人が怖いと感じることもあったんです。

でも一方で、コロナを迎えて、人の気持ちがわかるのはやっぱり人だと実感しました。人情的で粋なことができる。これはロボットではできないことで、人にしかできないことですよね。今後のプランニングに向けて大きく考えが改められました」

感動コンテストの経験を経てお客様の真意を引き出す「質問力」を高め、コロナを経て打合わせこそが人としてプランニングに関われることの醍醐味だと気づいた山口。

山口 「ただ、一緒に楽しく打ち合わせをするのがプランナーのあるべき姿だと思っていますし、さまざまなことに一緒に泣いたり悩んだりできることがプランナーの仕事の醍醐味だと思います。形は変わってもプランナーのマインド自体は変わらないんだなと思いました」

山口は育った場所「ザ ランドマークスクエア トーキョー」を巣立ち、新天地である大阪でこれからもお客様の心に寄り添っていく。