規制緩和による地方銀行を母体とする人材紹介業の増加が、 発足のきっかけに
──doda X 事業開発本部 エージェントソーシング統括部の役割を教えてください。
安島 パーソルキャリアは自社で人材紹介サービス事業を行う一方で、求人案件に見合う転職希望者の獲得に苦戦している人材紹介サービス会社様向けに成果報酬型の人材データベースサービスを提供しています。それがわれわれエージェントソーシング統括部が提供する、ハイクラス人材向けの人材データベース「doda X Professional Search」と、幅広い職種に対応する「dodaMaps」です。エージェントソーシング統括部のビジネスモデルは、お客様からいただいた求人票にマッチする転職希望者をデータベースの中から探し出し、その方が求人企業に採用されると、当社のサービスを利用された人材紹介サービス会社を経由して成功報酬が入るというもの。人材紹介の新しいモデルとして利用が広がっています。
──本プロジェクトの立ち上げた背景を教えてください。
安島 エージェントソーシング統括部がお付き合いしているお客様は、幅広い人材紹介サービス会社の方々です。人材紹介サービス業に造詣の深いお客様も多く、皆さまがお持ちの個々の求人案件に適う人材をご紹介すればビジネスが完結します。しかし2018年3月以降、状況が変わりはじめました。金融庁による規制緩和に伴い、地方銀行が人材紹介サービス事業に参入するようになったからです。地方銀行の多くは融資などを通じて地域の企業と信頼関係を築いており、求人案件を集めることは得意な一方、転職希望者を募る経験や企業と個人をつなぐマッチング経験に乏しく、成約に苦戦されることが少なくありません。そこで立ち上げたのが今回紹介する「地方銀行の人材紹介業立ち上げ支援プロジェクト」です。
地域に根ざした地方銀行が間に入るからこそ、 成立する採用求人案件がある
──プロジェクトの取り組みについて詳しく聞かせてください。
安島 人材紹介サービス業に新規参入された地方銀行のお客様から、人材紹介サービス業をどう運営すべきかわからないという悩みをよく耳にするようになりました。それまでは民間の事業会社が営む人材紹介サービス会社と同じ方法で対応していたのですが、担当者が個別に対応するよりも専任チームを作って対応した方が知見の蓄積が進みます。そこで2019年から準備を進め、2020年4月から本格的に活動を開始しました。立ち上げ当初はどこまでニーズに応えられるかわからず、私を含めたったふたりのメンバーだけに過ぎなかった小さなプロジェクトですが、今では市場の拡大に伴いこのプロジェクトに携わるメンバーは7人まで拡大。今も成長を続けています。
──和光さん、渡邉さんのプロジェクト内での役割を聞かせていただけますか?
和光 私はdodaMapsの営業担当として2022年5月からこの仕事に携わりはじめ、地方銀行を運営母体とする人材紹介サービス会社の支援に携わるようになりました。
渡邉 私は2022年3月にパーソルキャリアに転職し、和光さんと同じくらいのタイミングで、doda X Professional Searchの担当になり、今もこのプロジェクトに関わっています。
──おふたりはこのプロジェクトの意義をどのように感じますか?
和光 こちらの部署に来る前は、非対面型の人材紹介サービス「dodaプラス」で、法人営業と個人面談を兼ねるPA(プロジェクトエージェント)として、地方の顧客企業の採用の難しさや、転職希望者の選択肢の少なさを目の当たりにしていました。地域に根を張る地方銀行を通じて人材のマッチングに寄与することは大いに意義があると感じています。
渡邉 とくに私が担当しているdoda X Professional Searchは、幹部候補や管理職をご紹介するデータベースサービスと言うこともあり、一人ひとりの採用の成否が経営に与える影響は少なくありません。また、取引先企業の財務やビジネスに精通している地方銀行が運営している人材紹介サービスだからこそ、求人を託したいという顧客企業、だからこそ応募しようと思う転職希望者様が一定数いらっしゃいます。そうしたニーズに応えることによって、結果的に地域の経済活性化につなげられることが、プロジェクトの意義だと思います。
手厚いフォローが必要な一方、 改善によって飛躍的なマッチング率につながることも
──民間の事業会社が運営する人材紹介サービス業のお客様への対応と比べると、どんなご苦労がありますか?
和光 そうですね。人材要件をうかがい、お客様にスカウトメールを通じて集めた候補者様を推薦するだけでは済まない点では、他のお客様よりも念入りな対応が求められるのは事実です。しかも、人材紹介サービス業に欠かせない業務プロセスが未完成であったり、体制が整わず別の業務と兼務されている方がいたりと、お客様ごとに抱えている課題もさまざま。その一方で、不安やお悩みを一つひとつ丁寧に解きほぐし解決を促すことで、マッチング率が飛躍的に向上することも少なくありません。もちろんやりがいを感じますし、こうした経験ができるのはこのプロジェクトならではのおもしろみだと思います。
渡邉 和光さんの言う通り、人材紹介サービス事業の立ち上げ時期やお客様の置かれている環境によって、課題の種類や難易度はさまざまです。現状の課題を洗い出し、整理、共有した上で、どの求人案件を優先的に扱うべきかなど、具体的なアドバイスを求められることが多く、人材紹介サービス業の立ち上げコンサルティングのような仕事でもあります。大変なだけにお客様に感謝される場面が多く、自分が介在する手応えを感じやすい仕事だという印象です。
安島 地域によって産業構造に特徴があったり、企業文化や採用に関する考え方がさまざまなため、それぞれに対応するのは容易ではありません。だからこそ地方銀行の収益力向上に貢献し、人材不足に悩む顧客企業や、地元で仕事を探していらっしゃる転職希望者様、それぞれのお悩みを解消できた喜びはひとしおです。私自身、実家の両親が会社を経営しており、常々地方の求人難、採用難を肌身で感じてきました。こうした企業をひとつでも多く減らせるのであれば、このプロジェクトに取り組む意義は大いにあると思っています。
──プロジェクトの成果についてはいかがでしょう?
安島 2020年から着実に成長と遂げ、2022年度の上半期(4~9月)は、昨年対比194%もの実績を揚げています。このプロジェクトを通じて、山形県や富山県、群馬県など、これまでなかなかご縁がなかった地域のお客様とも取引できるようになり、毎年実施している「doda Valuable Partner Award」においても、私たちがご支援する地方銀行から、初となるベストエージェント賞受賞企業を輩出できました。定量的にも、定性的にも上々の成果が出ています。
人材紹介サービス事業は伸びしろが多く、工夫次第で新しいサービスを興すことも
──改めてお聞きします。皆さんにとってこのプロジェクトを通じて得たことは何だと思いますか?
渡邉 パーソルキャリアは全体で4,000名を超える大きな組織ですが、私たちが所属するエージェントソーシング統括部はまだ30名足らずの小さな所帯です。自ら新しい仕事を作っていくことが求められており、歯車のような働き方とは無縁です。もちろんこのプロジェクトもそう。パーソルキャリアは、安島さんのように地方経済の活性化に貢献したいという想いを起点にサービスを興せるほど社員に裁量を与え任せる企業です。入社早々、こうしたプロジェクトを経験できたのはありがたいことだと思っています。いつか自分が企画したサービスに携わりたいと思うようになったのも、もちろんこのプロジェクトの影響です。
和光 渡邉さんが言うようにエージェントソーシング統括部は組織も小さく、さながら大企業のなかのベンチャー企業のような雰囲気です。自分のがんばりがダイレクトに事業の数字に直結するので、自分の工夫や努力の成果が目に見えやすいのが魅力的ですね。人材紹介サービス業は成熟したビジネスに思われるかもしれませんが、このプロジェクトを見てもわかるように、工夫次第でまだまだ開拓の余地があるビジネスだと思います。私はこのプロジェクトを通じて改めてお客様に寄り添う大切さを学びました。この経験を活かして今後もより良いサービス作りに貢献できたらと思っています。
──今後の取り組みや展望を教えてください。
安島 全国には62行の地方銀行があり、37の第二地方銀行が地域経済を支えています。このうち約9割が人材紹介サービス業の開業に必要な有料職業紹介業の許可を取得し、もしくはその準備をしているそうです。このことからもわかる通り、まだまだビジネスの拡大が期待できます。当面の目標は、まだお取引のない地方銀行の開拓、そして既存のお客様との関係を深めながら、doda X Professional SearchとdodaMapsの活用を広げていくこと。あわよくば、ここにいるおふたりそれぞれが、ご自身の信念に基づいたプロジェクトを興してくれたら、これほど嬉しいことはありません。私自身もこの成果に満足せずチャレンジし続けるつもりです。
※社員の所属組織および取材内容は2022年11月時点のものになります。